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極悪辺境伯の華麗なるメイドRe  作者: かしわしろ
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リア・ローズ3

次の日、私たちは山を登り始める。木々の生い茂っている山の中を直線的に進むということもできるがそれは荷物の少ない冒険者などができることだ。今回のような馬車を使った移動の場合は、道が一つに限られる。通る道がわかっているということは盗賊からはほぼ確実に狙われるということを意味する。


「お前ら、もうそろそろ盗賊が出るエリアだ。気をつけろ。」

いまは馬車の中ではなく、外を歩いている。馬も人間の歩く速度に合わせてゆっくりと足を進めている。これだと盗賊に狙われやすくなると思うかもしれないが、常に外で警戒できる分、奇襲や罠などに気づきやすいということらしい。


「ハーマイド卿、ここは辛抱お願いします。」

ユウトさんがそういう。


「……しかたあるまい。」

てっきり早く進め、というようなことをいうのかと思っていたけど、そうではないらしい。


「とまれ。」

しばらく進むとユウトさんが声を上げる。魔力的なものは何も感じないけど、何かあるのだろうか。


「罠だな。」

でこぼこした地面化と思っていたが、ユウトさんが少しけってみるとべこっと地面がへこんだ。……そのまま行っていたら、馬車がそこに埋まっていたかもしれない。気づけなかった自分が恥ずかしい。今度からは魔力以外の部分にも気をつけて物事を見ることにしよう。


「よく見抜いたな。はまってくれれば簡単だったんだがな。」

そういって盗賊と思われる人たちがぞろぞろと出てくる。だいたい十人くらいだろうか。


「すまないが通してくれないか?」

「通すと思うか?」

リーダーと思われる人の後ろから魔力反応があった。魔法士も数人いるようだ。


「ファイア……」

「バニッシュルーム」

相手の魔法にかぶせるように魔力を拡散させる魔法陣を展開させる。相手の魔法は空中で分散された。


「な、なんだこれは……。」

魔力を使えるものはうろたえているようだ。ちなみにハルさんのエミナさんも魔法が使えなくなっている 。


「リアちゃん、私たちの魔法が使えないんだけど!」

「問題ありません。ここは私が対処します。」

この程度の魔力拡散率では私は自由に魔法を使うことができる。しかし人間が相手の場合は魔法よりも効率の良いものがある。


「黒霧」

私は魔力に瘴気を練り込んでいく。瘴気は濃さにもよるが、数秒浴びただけでも人の生命力を奪うことが可能だ。私は剣を構える。


「華流・黒花かんざし」

黒い霧をまといながら、リーダーと思われる人間に切りかかる。しかし、ギィンという音とともに、私の剣が受け止められた。


「ほう、子供にしてはなかなかつよ……。」

ドサリ。何か話していたようだが、私のまとっている黒い霧に触れた瞬間に地面に倒れた。


「おまえ!何をした!」

他の盗賊たちは驚きの声をあげている。ちなみに私も驚いた。まさかあの程度の魔力で私の剣を受け止められるとは思わなかったのだ。しかしまじまじと盗賊のリーダーが持っていた剣を眺めてみるとあることに気づく。


「聖剣でしたか。」

魔力とは違ったオーラがその剣から漏れ出ていた。


「くっ、やっちまえ!」

他の盗賊たちも標的を私に定め、襲い掛かってくる。


「ライトニング」

私がそう唱えると指先から電撃が飛んでいく。もちろん相手には魔法による防御ができないのでそのまま貫通する。運よくライトニングに当たらなかったものも、電撃にまとわりついている黒い瘴気によって倒れていく。


「お、おい、やばいぞ。お頭もやられちまった!」

「弱音を吐くな、たかがガキ一匹だ……」

そのような声も聞こえた気がしたが、次々に人が倒れていき、そして盗賊の中で立っているものは誰もいなくなった。


「剣一振りと、魔法一発かよ……。」

ユウトさんがそういいながら近づいてくる。


「リアちゃんすごい……。」

グルンレイド領の中ではそんなにすごいことでもないのだが、外の世界は違うらしい。


「やはり魔物の力を使うのか。」

ハーマイド卿がそういう。


「申しわけ……」

私はすぐに不快にさせたことを謝ろうとするが、

「リアはお前を守るためにこの力をつかったんだぜ?」

ユウトさんがそういう。庇ってくれたことはありがたいが、貴族に向かってため口なんですね……。


「……私は悪いとは言っていない。」

そういって馬車の中に戻っていった。


「ありがとうございます。私のために……。」

「いいってことよ、それにリアのことを嫌っているわけでもなさそうだったぜ?」

「……そうでしょうか?」

私は完全に嫌われているものだと思っていたのだが、ユウトさんから見ればそうでもないようだ。私の気づかないことにも気づく、さすが冒険者である。


あれっきり盗賊が出てくることはなかった。盗賊たちの中でも情報共有でもしていて、自分たちが勝てない相手には手を出さないようにでもしているのだろうか。なんにせよ、襲撃を受けないことに越したことはない。

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