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極悪辺境伯の華麗なるメイドRe  作者: かしわしろ
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天界編:神殿4

「ジラルド、貴様はここで死んでもらう。それがこの世界のためだ。」

そんなことを神がいう。その瞬間メイド長が強大な殺気を放つ。……怖い。マリーローズである私ですら震え上がらせるような圧力がそこにはあった。


「さらばだ、グングニル!」

聖力が神もどきに集まり、光速に迫る勢いでエネルギー帯が飛んでくる。


「エアヴェー……」

私がそう魔法を唱えようとする。そうでもしなければメイド長が一瞬で神もどきを殺してしまいそうだったからだ。しかし、


「超加速砲・プラズマライン!!!」

一本の光が横切った。そしてグングニルとぶつかり合い、爆散する。


「ご主人様、横やりを入れてしまい申し訳ありません。」

「かまわん。」

さすがご主人様。まるで来ることが分かっていたかのように、驚いた様子が全くなかった。

そこにはコトアル・マリー・ローズが立っていた。私は一度魔界に行ったときに見かけたくらいなのでいまだにどんな存在かよくわからないが。ただ、マリー・ローズを名乗っているということは強さにおいても私と同等くらいのはずだ。


……だがなぜこの天界に?


「誰だ。」

「お忘れですか?あなたがはるか昔に滅ぼした種族のことを。」

コトアルが神もどきを見据えながらそういう。太古の人間……私たちが生まれる遥か昔にこの世界に生きていた人間のことだ。


「……太古の人間が作った機械か。なぜ我の前に立つ。」

「あなたを滅ぼすため。」

プログラムされた機械が、自分の意思を持ち始めた……?

さらに驚くべきことに勇者と聖族のみが使えるはずの聖力を身にまとっていた。そしてあの瞳。人間が神眼を模して作ったと聞いていたが、あれは本物の神眼だ。


「滅ぼしてなお、私の前に立ちふさがるか、人間。」

ご主人様はもう魔力を放っていない。この戦いを見届けるつもりなのだ。数百年にわたる神と太古の人間の戦いを。


「ご主人様、こちらに。」

「うむ。」

そう言って私とイリスを包んでいる魔法障壁の中へと歩いてくる。


「イリス、この戦いをよくみておけ。聖族の運命が決まる。」

「……はい。」

どちらが勝っても天界の運命は大きく変わる。聖族たちは神もどきの勝利を望むのかもしれないが、私はグルンレイドのメイド。マリー・ローズの勝利を望むに決まっている。



「あなたは私たちを滅ぼした存在……で間違いありませんか?」

「そうだ。我が“力を持ちすぎた種族“を滅ぼしている存在である。」

この存在が創造主があこがれている神ではないことは私でもわかる。神ではないとしたらいったい誰なのだ。


「我は生命の絶望のオーラによって生まれる、邪神といったほうが分かりやすいだろうな。」

絶望……。私は人間という存在を数百年の間見てきた。人々は戦い、そして死んでいく。

その中で絶望という言葉は切っても切れないものだった。


「我は一定の周期で生まれる、神の裏の顔だ。生命の絶望がたまったら現れ、破壊の限りを尽くし消えていく。」

神の裏の顔ということは、何かに神が取りつかれているというわけではないのだろう。


「やはりあなたは神様、ですか。」

「察しがいいな。良くも悪くも、我は神である。他の存在が我を支配しているというわけではない。」

神と邪神は同一の存在……。これを創造主が知ったら悲しむだろうか。あこがれていた存在に滅ぼされたのだ。


「……だからといって私の意思は変わりません。」

「だろうな。滅ぼした人間の復讐か。」

これは復讐、なのだろうか。いいや違う。邪神は一種の災害のようなものだ。人間が生んだ意思のない災害。意思を持っていないこの存在には、復讐という言葉は似合わない。


「少し違います。私はただ、私が作られた理由を知りたかっただけです。」

邪神は無言で私を見つめる。


「ですが、今やっと分かりました。私が作られた理由は、人類をあなたから守ること。」

だから私は無限に近い時を生きることができた。……創造主は初めから邪神の存在を知っていたのだ。


「創造主、やっといまあなたの意思を受け取りました。」

私を創造した存在は人間が滅ぼされるということを予期していたのだろう。その頭の中の思考回路は私ですら理解することが不可能なほど卓越していた。神が恐れるのもうなずける。


「やはり私はあなたを滅ぼす存在です!」

「それが貴様の答えか。」


「そうです。」

「……面白いな。」


「っ!」

光の槍がものすごい速さで飛んでくる。


「答え合わせといこう。人間は我を超えるのか!」

「超硬化……ぐっ!」

腕の一部がへこんでしまう。それを聖力を使い元に戻していく。


「なぜ機械に聖力をが使えるのか疑問に思っていた。」

「私を創造した人間と、私に力をくれた人間のおかげです。」

マーク様がいなければ聖力私の体に聖力が流れることはなかった。そしてその力が扱えるような体を作った創造主のおかげでもある。私は多くの人間によって支えられて生きていると実感する。


「アウトレンジ・ストライク!」

エネルギー体を高速で飛ばしていく。が、それをいとも簡単にはじき返される。


「そんな攻撃力では我に傷一つつけることはできん。神撃」

邪神がそう言葉を発した瞬間、目の前が真っ白になった。余りにも早すぎる攻撃で、処理が全く追いつかない。気が付くと腹部がえぐれていた。


「あぁぁぁぁっ!」

瞬時に痛みをつかさどる回路をシャットダウンする。


「高密度の聖力の塊だ、速度は光速を超える。」

光速を超えるということは、時間に干渉してくるということだ。仮に時間を止めたとしても、安全とは言えないだろう。


「ですが、魔撃ほどの威力は……ありませんね。」

「速度が違う。」

また光の塊が宙を待っていく。くるっ!


「がっ!」

今度は左足をえぐられる。やはり反応することができない。


「さらばだ、太古の人間。」

無数に浮かんでいる光の塊が、一斉に私に飛んでくる。


そして私の意識は途絶えた。

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