天界編:スカーレットサイド3
「華流・剪定」
「シド流・宵凪」
ふたつの剣が何度もぶつかり合う。さらにはそこに攻撃魔法、攻撃聖法などが交わり建物が次々に破壊されていく。幸いわたしたちがここに来た時に、その建物内にいた聖族が続々と逃げ出していたので人的被害はない。
「やはりメルテはすごいな。」
「そうだね。見習いの中で一番といわれているだけある。」
単純な攻撃力で言ったらリアやアナスタシアのには及ばないはずだが、メルテは力の使い方がうまいのだ。相手の弱点や癖を見破ったり、さらには相手の攻撃を利用して反撃に出たりする。これは魔法が得意だからとかそういうのではない。単純な戦闘センスだ。
「そしてよく周りも見ている。」
「確かに。」
以前私もメルテ、リア、アナスタシアのパーティと訓練を行ったことがある。その時にもリアとアナスタシアの行動をよく見て指示をしていた。まだ私を倒せるほどの連携ではないが、ダメージをいくらか負ってしまうほど強くなっていた。
「あっ!みなさん!」
そんなメルテの声が聞こえたかと思うと、光の槍がこちらの方へと飛んできた。
「エアヴェール」
私はヴァイオレットとスカーレット様を包んで空気の層を展開し、受け止める。
「す、すみません!」
アテナの攻撃が私たちに飛んでいってしまったことに対して謝っていた。しかし私たちにとってはこの攻撃もそよ風みたいなものだ。
「私たちのことは気にせずに戦いなさい。」
「はい!」
スカーレット様の言葉を聞いて、メルテは再び戦闘を開始する。
「子供に守られているなんて恥ずかしくないんですか?」
「あ゛?」
「は?」
ヴァイオレットと私が声を出してしまう。一体誰に向かってそのようなことを言っているのだ?私達であればまだいい。ただスカーレット様に対しての発言であれば、本当に許さないんだけど。
「二人とも、落ち着きなさい。」
スカーレット様が止めるのが後数秒遅ければあいつの首が飛んでいたことだろう。ヴァイオレットも剣から手を放す。
「誰に向かって……」
そんな声とともに異常な魔力密度を観測する。一体どこから……っ!
「誰に向かっていってるんですか?」
メルテから表情が消えていた。怖い……。
「ひっ……」
あの、四天王もビビっているんですけど。メルテさん?
「くっ、セイント」
「まず、その口を閉じてもらってもらいます。」
シュッという音だけが聞こえた。
「かはっ……、ぁ、ぁ」
全身に展開されていた聖法障壁を紙のように切り裂き、のどをかき切っていた。事前に治癒聖法が使用されているようで、徐々に傷口がふさがっていく。
「私のことはいくら馬鹿にしてもらってもかまいません。しかし、他のグルンレイドの方々を馬鹿にする発言は絶対に許しません。」
……そうだった。メルテは人一倍グルンレイドの人たちを大切に思っている。だからほかのメイドたちより、そのような発言に敏感になっているのだ。
「やはり、一番危険なのはあなた……セイントアロー!」
「はぁぁぁっ!」
メルテは左腕でその攻撃をかき消す。
「華流奥義・」
腕から血が流れているが回復をせずにそのままアテナへと飛び出す。
「セイントウォール!」
「邪魔ぁぁぁああ!」
聖力の壁に頭からぶつかっていった。そして額からも血を流しながら、そのまま全力でその壁を押し潰そうとしていた。
「ば、馬鹿な!聖力に魔力が勝てるわけ……」
バリン、という音とともに亀裂が走った。
「四天王だか何だか知りませんが、グルンレイドに仇名す存在は等しく私の敵。」
さらにその亀裂が広がっていく。
「覚悟、してくださいね。」
「い、いや、やめ……」
ガラスの割れるような音とともに聖法障壁が破壊された。
「さようなら。轟一線」
体が真っ二つに切り裂かれた。……よく見ると最初にヴァイオレットが切った部分と全く同じ場所だ。
「あぁ……い、痛い……」
「あなた、あまり聖族らしくありませんね。」
まだ息があるのか、メルテがアテナに何かつぶやいている。
「た、助け……」
「スリープ。……その翼もその輪も、まるで作り物みたい。」
話の内容までは聞こえなかったが、メルテは睡眠魔法を唱えたようだ。苦しがっていたアテナが死んだように静かになる。
「スカーレット様、回復をお願いいたします。」
「えぇ。」
そうして四天王アテナはグルンレイドに敗れた。




