天界編:マークサイド3
「死ね!バーンショット!」
超高熱のエネルギー体がこちらへと飛んでくる。
「ハーヴェスト」
「あぁ!エアヴェール!」
ハーヴェストが私たちの前に出て、攻撃を受け止める。
「熱っ!」
「ヒール」
ヴィオラがすぐに回復をする。
「ほう、魔族か。」
二人が睨み合っていた。聖族と魔族、確かに因縁のある関係だが、今回は聖族とグルンレイド、ひいては人間の戦いだ。聖魔大戦など今は関係ない。
「ハーヴェストをアポロンのそばに飛ばして。」
「了解」
ヴィオラの瞳に光が宿る。その瞬間、ハーヴェストが消える。これは時空間魔法ではなく、ヴィオラの所有している神眼の能力だ。魔力消費などは一切ないらしい。
「っ!神眼だと!?」
「その程度で驚いてたら、身が持たんぞ!華流・一刀!」
ハーヴェストの攻撃をアポロンは右腕で防いでいた。なかなかの感知聖法と反射神経だが、それだけでは彼女の攻撃は止められない。
「だぁぁぁっ!」
力任せにアポロンを吹き飛ばし、地面へと叩きつけていた。相変わらずの攻撃力……。
「……さすが魔族、一筋縄ではいかないか。」
右腕から血を流しながら立ち上がっていた。戦闘を観察してわかったが、この相手で一番気をつけなければいけないのは炎系統の聖法だ。
「セイントフレイム……」
「ハーヴェストを私の後ろに!」
次の瞬間には私の後ろにハーヴェストが飛ばされてきた。そしてヴィオラも私の後ろへ移動する。
「ちょこまかと……まとめて消えろ!セイントフレイムウェーブ!」
凄まじい炎の波がこちらへと押し寄せてくる。しかし、私にとってはエネルギー量はそんなに大きな問題ではない。
「本来、私は壁役ではないんですけれどね。」
「な、なに!?……消えた、だと……。」
炎の波は私たちの前から姿を消した。
「一体何をした!」
「普通に威力を弱め、空間を切り離し、切り離した空間ごと混沌へ飛ばしただけですが?」
「戯言を……」
戯言ではなく、真実なのだけれど……。私は聖法を唱えられた瞬間に時間を止め、その空間の中で魔法を唱えただけだ。
「いつみてもすごいものだな。無唱詠唱というものは。」
そう言ってもらえるとやはり嬉しいものだ。しかし無唱詠唱は使用するだけでかなりの魔力を持っていかれるので、あまり多用することはできないけれど。
「ちっ、ならばもう一度唱えるまで!セイント……」
再び同じ聖法を唱えようとしているようだ。しかしこちらには神眼がある。一度見た構築を忘れているわけはない。
「ヴィオラ、聖法は崩せる?」
「もちろん。」
再び神眼が光り輝いていく。すると構築されつつある“セイントフレイムウェーブ“が徐々に崩れていく。
「なんだ、聖法がうまく……」
アポロンは動揺していたが、
「……っ、聖力が強すぎてかなり大変かも。」
こちらもかなりきつそうである。いつまで構築を妨害できるかわからない、この隙をついて早くけりをつけよう。
「ハーヴェスト、私に続いて!」
「了解!」
音速に迫る速さでアポロンへと近づく。
「華流・花かんざし」
「くっ、セイントウォール!」
聖法障壁に受け止められるが、それを破壊する。
「華流・周断」
「がぁっ!」
腹部から血が流れた。が、やはり四天王、すぐに回復をしているようだった。
「おらぁぁっ!」
「……っ!」
頭に強い衝撃が走る。聖力がまとわれた拳で殴られたのだ。
「なめないで、ください!」
私は吹き飛ばされる衝撃を魔法で抑え、アポロンの服を掴んで、殴る。
「がっ……!」
そして地面へと叩きつける。龍技はあまり得意ではないが、殴られたからには殴り返しておかなければ気が済まない。額から流れる血を拭ながら自身に回復魔法を唱える。
「カルメラ、怖い。」
「あぁ、私も魔族の身でありながら恐怖を覚えるほどだぞ……。」
……そう?私は私のことを怖いと思ったことなど一度もない。むしろとてもやさしいメイドだと自負している。




