天界編:始まり3
魔王城へやってきた。それにあたって瘴気という問題が発生する。3日程度なら見習いたちでも自身で結界をはっていても問題がないのだが、念のためにメアリーに大規模な結界をはらせる。
「ご主人様、明日は全員で行かれるおつもりですか?」
「見習いたちは魔界へ残す。あとはお前が決めろ。」
「かしこまりました。」
今回の敵の戦闘能力は未知数。確かに見習いを連れて行くのはかなり危険なことだ。
「それではメンバーはこちらで考えておきます。おやすみなさいませ。」
そう言って部屋を出る。この魔王城は魔界最大の城ということもあって、かなり立派な作りとなっていた。グルンレイドの屋敷と比べても内装も劣らない気がする。
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今回のメンバーは次のように決めた。
パーティ1
○ジラルト・マークレイブ・フォン・グルンレイド
イザベラ・マリー・ローズ
メアリー・マリー・ローズ
イリス・ローズ
パーティ2
○マーク・アーサー
ヴィオラ・ローズ
カルメラ・ローズ
ハーヴェスト・ローズ
パーティ3
○スカーレット・マリー・ローズ
ヴァイオレット・マリー・ローズ
アシュリー・マリー・ローズ
メルテ・ローズ
イリスは天界について詳しいため連れて行くことにした。私は天界には一度しか行ったことがないので、わからないことも多いのだ。
パーティ2は勇者であるマークをリーダーとする。ご主人様への態度は目をつけるべきところではあるが、その実力は私も認めている。マークは自身の実力はを隠す癖がある。真の力を解放すればマリーローズに匹敵する強さを出せるはずだ。
残りは見習いの時からよい連携を見せていた三人に決めた。だったら三人だけでもいい気がするが、ヴィオラは正確にはグルンレイドのメイドではないので、マークの許可なしに連れて行くことはできない。試しに聞いてみたところ「ヴィオラを連れて行くなら俺もついて行く」とのことだった。
パーティ3は戦闘部隊である。この中で一番実力のあるスカーレットをリーダーに、マリーローズの二人を加えた。そしてここに一人、見習いを加えた。それがメルテである。メルテ現在の見習いの中で最も強い……というと語弊があるが、誰が見習いのトップかと聞かれれば見習い全員が『メルテ』と答えるのだ。それくらい特出している見習いだ。経験という面でも天界に連れて行くことにした。
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次の日、見習いたちを残して私たちは魔界を出発する。魔界の門を超え、空へ。
「......本日はどちらに?」
魔界の門の前、本来であれば洞窟へ向かうはずのご主人様が今回はそうではない。それを見てか、コトアルが声をかけてきた。
「神に用があってな。」
ご主人様の表情から、これから起こることは容易に想像できる。
「お気をつけて。」
そう言って頭を下げる。苦虫を潰したような表情を下を向いて隠そうとしていたようだが、少し見えてしまった。創造主を神によって滅ぼされた種族。きっとどこか思うところがあるのだろう。
「お前もくるか?」
「申し訳ありません。私は神に逆らうことができません。」
「そうプログラムされているのか?」
「いえ、命令です。」
そうか、と返事をして背を向ける。コトアルは本当に申し訳なさそうな表情でこちらを見ていた。命令、というのはご主人様のことではないだろう。コトアルの創造主、太古の人間達の命令だ。
「ただ、そうだな。一つだけ言っておく。」
「お前はプログラムされた命令に従うマシンだったのだろうが、それは遥か昔のこと。」
「私は昔から言っていたな。命令を聞くだけではなく、己から動け、と。お前はもう、グルンレイドのメイドなのだ。」
そういうと、そのまま歩き進める。コトアルには声をかけたかったが、ご主人様の言葉の後に続けて話すべきではない。今はご主人様の言葉を噛みしめる時だ。
「イザベラ、コトアルを除く全てのものを天界まで送り届けよ。」
「かしこまりました。」
私は時空魔法を詠唱する。




