天界編:始まり1
突然空が光り輝き出した。次の瞬間、莫大な光エネルギーが降り注ぐ。
メアリーの張っていた魔力障壁を破壊し、屋敷へ直撃する......!ご主人様!!
幸い私の天界していた魔法障壁によって屋敷事態が破壊されることは防げたが、ものすごい振動が伝わってくる。私は慌ててご主人様の部屋へ向かう。
「ご主人様!!!」
「問題ない。」
と言っているが、グラスがひとつ、そして立てかけてあった絵画がひとつ落ちてしまっていた。
「はぁ......!私がいながら申し訳ありません。」
私はすぐに絵画を元に戻す。グラスは粉々に割れてしまっていたので直すことはできず、回収だけする。
「訓練場へ全てのメイドを集めろ。」
「かしこまりました。」
しかし一体何が起こったというのだ。そう考えながら、全てのメイドへ魔法によるメッセージをとばす。
「イ、イザベラ、様、わ、私、申し訳、ありません!!」
涙目になっているメアリーが飛んでくる。たしかに魔法障壁を張っていたのはメアリーだが、今回は仕方がない。最終的な被害それほど出ていないのだ。
「気にしないでください。今回は、例外です。」
「で、ですが......。」
「ご主人様も理解しているはずです。まず、訓練場へ。」
「は、はい!」
メアリーも訓練場へ向かう。私も急がなくては。
--
「集まってもらった理由は言わんぞ?」
全てのメイドが集まった時にご主人様がそう言いだす。
「まずは怪我を負ったものの報告をしろ。」
「はい」
そう言って、魔法による情報共有で得られたことを伝える。
「2名、2名とも自身で瞬時に回復いたしました。」
そう伝えると、静かにうなづく。
「何か知っているものはいるか。」
次にこのようなことを投げかける。
誰も口を開かない。私でさえ何が起きていたのかわからなかったのだ。
「かろうじて観測できました。」
「アシュリー、教えろ。」
たしかにアシュリーなら”観測”できたかもしれない。
「このエネルギー体の出現場所ははるか上空です。魔法......いや、聖法名はホーリートール。おそらくですが、聖族からの攻撃です。」
「なるほどな。」
......っ、なんということだ、これだけの情報で全て理解したということだろうか。私もご主人様を見習わなくては。
メイドたちがざわつき出す。
「静まれ。」
静寂が訪れる。
「なにか来る。」
その瞬間メイドたちが一斉に戦闘態勢に入る。
空から、その中心へ何かが降り立つ。
「おやおや、これは驚きました。まさかこんなにも生きているとは。」
白い髪、翼、そして頭上の輪。まさしく聖族の姿だった。
「貴様は誰だ。」
「申し遅れました。私は名前はロンド。神の使者としてまいりました。グルンレイド様」
不敵な笑みを浮かべる。
「どういうことか説明してもらおう。」
「なに、簡単なことですよ。あなたのメイドが四天王の一人に再起不能なほどのダメージを与えたからです。」
クレアたちの話から聞いている。極東で四天王の一人と戦ったと。
「ただでさえ人間が聖族に危害を加えるのは罪だというのに、よもや四天王に対して攻撃をするとはね。」
「そんな決まりは存在しない。」
「人間としてあるまじき考え方ですね。」
ご主人様に向かってなんて口の聞き方……。私は魔力密度を上昇させ……
「やめろ、イザベラ。」
「……かしこまりました。」
ご主人様の命令であれば仕方がない。私はその聖族を睨みながら後ろへ下がる。
「復讐(報復)、というわけか。」
「いえ、私たちにそのような感情はありません。ただ、目的のためにはここを潰す必要があると考えた、それだけです。」
淡々と聖族はそう語っていた。目的というのは、魔界を支配すること……だろう。
「本当はこれで全滅させるつもりだったのですが、計算が狂いましたね。そんなあなたたちにご褒美です。」
そういうと、翼を広げ空へと待っていく。
逃すと思っ......。
「やめろ。」
「......はい。」
「1日、時間をあげます。せいぜい最後の晩餐を楽しんでくださいね。」
それでは、といって空高くに飛び上がる。
残された私たちの視線は、ただ一人に向けられる。
「報復だ。」
ただ一言そう呟く。
おそらく1日後に再び攻撃がされることだろう。今度は範囲ももっと広いはずだ。私たちだけであれば、対策すれば問題ない。しかし、領民はどうだ?あの攻撃に耐えられるはずがない。
私たちが止めなくては。
「行くぞ。空へ。」
「「「かしこまりました。」」」
全てのメイドが頭を下げる。




