第3話『透と現状』
「と、透!」
透が部屋から突然出てきた驚きより、俺の見舞いに来てくれていたことが嬉しい!
にしても、デカイ!183センチあるって言っていたが、女の子になって身長が低くなったせいもあって、余計にデカく見える。
「…ごめん」
「へ」
透は俺の横を素通りして行く。
「……」
いやいや!このまま行かせたらダメだ!透も攻略対象だ。ここで少しでも好感度を上げとかないと!
「あ、あの!」
「はい?」
「少しお話し良いですか?」
「…なに?」
怖っ!女の子に話す時の態度か!嫌いな学校の先生と話す時の態度だろ!
「え〜…っと、私、賢斗君の親戚の乙女河です。あなたは賢斗君の幼馴染みの柿原透さんですよね?」
「そうだけど」
「賢斗君の状態を教えてもらえませんか?事故で怪我をしたことしか知らなくて…」
「…分かった」
透は一度出た集中治療室に入っていく。この部屋で話すってことか。
「お邪魔しま〜す…」
部屋に入ると体がチューブに繋がれた俺らしき患者が寝ていた。
顔は包帯と呼吸器で分からず、体にも包帯が至る所に巻かれている。素人でも見れば分かる…この人は助からない。
「う、うそだろ…!」
現状の深刻さに膝から崩れ落ちる。これが俺なのか…?神様は戻せるって言っていたが、こんなの本当に元に戻るのか?
「これがケントの現状だ」
俺は何も言えなかった。現状を知ってしまった今、俺に出来る事は一体…。
「俺は信じてる。ケントはきっと意識を取り戻して元気になる」
ケントは悔しそうに部屋から出て行く。
「透…」
透。お前はまだ諦めていなんだな…よし!俺もきっと元に戻ってみせる!
改めて覚悟を決めて病室から出ると透の後ろ姿が見えた。
「透…さん!」
声を掛けると止まってくれたので、急いで追い掛ける。
「なに?」
それが後ろから急いで追いかけてきた女の子と話す態度か!笑顔で話せ!歯をもっと見せろ!
「あ、あの賢斗君の家に案内してもらえませんか?透さんって賢斗君の家の横ですよね?」
「…ああ」
透は愛想なく返事をしてズカズカと先を歩いて行く。
病院から出てバス停に移動するまで一言も透は喋らない…。お前さあ!前にも言ったけど、女の子と一緒に居る時は洒落たことの一言二言くらい言えよ!
「透さん。賢斗君から言われたことないですか?女の子と一緒の時は洒落たことくらい言えるようになれって」
「…言われてない」
「言ったよ!なに平然と嘘ついてんだ!」
「あぁ?」
やば…思わずいつものノリでキレちまった!
「い、いえ!こういう風に賢斗君なら言いますよね!ね?!おほほほ…」
「…ああ、そうだな」
そこから無言でバスを待ち、無言でバスに乗り込み、無言でバスで移動する。
透は横でボーっと窓から景色を眺めている。いつもなら透と馬鹿みたいに話してんのにな…。何か話してくてムカムカする!ダメだ、我慢できない。
「あの、透さん」
「…ん?」
「今週のジャンプ読みました?」
「……」
まずい。黙ってしまった。初対面の女の子とジャンプの話はしたくないか。他に話題は…。
「そ、そういえば部活はどうしたんですか?透さんはバスケ部のエースだって賢斗君から聞きましたよ!」
「…今日は休みだ」
「…!」
長年の付き合いだから分かる。コイツのこれ以上は聞くなって態度。前に祐樹と喧嘩した時もこんなかんじだった。
「そうか。なにかあったら相談してくれよ。力になるから」
「…!!」
「え!」
バッと勢いよく俺の顔を見る。ビックリした!急にどうした?!
「すまん…なんでもない」
そのまま目的地まで無言でバスで移動する。
「ここだ」
ボタンを押して降りる。
ここまでくれば分かる。久しぶりに来る見覚えのある道。
「こっちだ」
「はい」
知らないフリをしながら透の案内に着いて行く。
「ここがケントの家だ」
「ありがとうございました」
俺は礼を言って自分の家を眺める。
来てみたは良いけど、入れないんだよな。透との好感度を上げるために来ただけだし…。
「帰ろう!」
「おい」
「え?!」
横の透が不機嫌そうな顔をしている。そりゃそうか…せっかく案内したのに行かないって腹立つよな。
「家の場所が知りたかっただけなので、今日は帰らせてもらいます」
「…お前、本当にケントの親戚か?」
「ギクッ!」
「お前みたいなやつ、ケントから聞いたことないけどな」
まずい!普段はボーっとしいるくせに俺のことになると勘の良いヤツだ!
「そ、そうですか〜?私は透さんのことをよく賢斗君から聞いてますけどね」
「ふ〜ん、例えば?」
透のやつ、調子に乗ってやがるな!良いだろう。長年の幼馴染を甘く見るなよ!
「そうですね〜。例えば祐樹さんが持っていたグラビアアイドルの写真集が羨ましくて欲しくなって、賢斗君に頼んで買ってもらい行ってくれた事とか」
「なっ!」
「例えば、女の子に興味ないフリしてるけど実は巨乳のお姉さんタイプの女性が好きな事とかしか知らないですね〜」
「ケントのやつ喋りやがったのか!」
透の恥ずかしい話なんて両手では数えれないくらい知っている。
「それでは透さん。また学校でお会いしましょう」
俺は手を振りながらバス停へと歩く。勝った!調子に乗るからだ!
今更に言うことではないですが、カクヨムの賞に応募する為の作品の制作に専念したいので1か月ほど休載します。
この作品はすでに1か月以上休載みたいになっていましたので本当に今更ですね。




