勇者アイザワ・トモキの憂鬱 6
続きです。
カッコいい戦闘の描写って難しいです。
◇◆◇
ここで、【異能】について簡単に説明しておこう。
【異能】と言うのは、【異世界人】だけが発現する特殊な【能力】の事で、【時空間】の【穴】を移動した影響で目覚める、とされている。
そもそも、【異世界】の住人が【別世界】に移動する事自体極めて特殊な事例であり、詳しい事は解明が進んでいないのが実状なのだが、ハヤトの見解では、その【異世界】の住人である【異世界人】がその【世界】に【適合】する為に起こる【現象】ではないか、との事である。
もちろん、これは【異世界人】なら誰でも起こりうる【現象】なので、厳密には【地球人】だけに限った話ではないのだが、今現在のこの世界において確認されている【異世界人】は、【魔神戦争】の【英雄達】であるハヤトらや、【女神】・八坂狭霧によって【異世界転移】したトモキと言った【地球人】、もっと言うと【日本人】だけなので、とりあえず、ここでは便宜上【地球人】が発現する【能力】、としておこう。
さて、ではハヤトや【女神】・八坂狭霧も言及していたこの【異能】ではあるが、これは、確かに【チート】染みた【能力】ではあるのだが、前述の通り、この世界の【スキル】などと違い、解明されている点が少ないので、自分が当初どんな【能力】に目覚めているかも分からない状態なのである。
もちろん、トモキの例にもある様に、【ステータス】上に簡単に記載されてはいるものの、具体的に、【異能】がどんなモノなのか、どの様に発動するのかなどは、自力で研究し、仮説を立てて、実証を繰り返しながら、解明していくしかないのである。
トモキの例でいくと、【ステータス】上では【強化系】とだけある。
そこから連想すると、身体能力の【強化】をしてくれる【異能】の様にも感じるが、それなら【ステータス】による身体能力の補正だけでも、この世界に【適合】する、と言う“観点”からは、ある意味事足りるだろう。
しかし、先程も述べた通り、この【異能】と言う【能力】は、【チート】染みた【能力】たりうるので、もちろん、その程度の【力】ではない。
トモキも、【女神】・八坂狭霧から【異能】の事は伝え聞いていたので、この数ヵ月のキールらとの訓練の合間に、【異能】の解明を独自に行っていた。
しかし、まだ【異能】を十全に理解し、使いこなす段階には至っていなかったのだが・・・。
・・・
俺の“内側”から【力】が溢れてくるっ・・・!
俺は、これが何なのか、何となく理解していた。
【異能】の発現の兆候。
こちらの世界に【転移】してから、時々感じていたモノである。
しかし、俺は、今だに【異能】全容を理解してはいなかった。
ただ、“訓練”の時や“模擬戦”の時に、集中力が高まったり、追い詰められたりした時に、その【力】の片鱗を覗かせていた事は何度かあった。
おそらく、俺の“感情”の高まりを“キッカケ”にして、【異能】は発現するのではないかと考えていた。
そして、もう一つ。
「【異能解放】っ。【治癒力強化】っ。」
ブツブツと呟く俺。
俺は、【魔法】や【魔法剣】を参考に、これまで発動の“兆し”を見せながらも、完全に機能しなかった【異能】を、具体的な言葉にして発する事で、発動が成功するのではないかと考えていた。
そして、その結果は成功であった。
【毒】によって麻痺していた身体が回復し、俺はそう確信する。
まぁ、どうしてそうなのかは、またよく分からないが、とにかく、【異能】が使える様になっただけでも、今は大きな前進だろう。
「何ブツブツ言ってンだよっ!?とっとと消えろっつったろっ!!!」
今だに動く気配の無かった俺に、サイゲイは苛立たしげに罵声を浴びせる。
いや、オメーが俺を刺したんだろーがっ!
俺の近くにいたプラドさんも、【呪印石】の影響で凶暴化した【魔獣】や【モンスター】の対応に追われていた。
動けない俺を気遣っての事だろう。
自分だって危ないのに、マジでいい人や( TДT)
それに比べて、コイツときたらっ・・・!
しかし、考えてみれば、動けないキールさんももちろんだが、それを介抱(?)しているサイゲイも危険だろう。
まぁ、そんな事も理解出来ないほど狂っていると言われればそれまでだが、サイゲイのこの“余裕”はなんだろうか?
「ト、モ、キ、ッ・・・!に、げ、ろ、っ・・・!」
俺と違い、全身に【毒】による麻痺が進行している筈のキールさんは、それでも声を上げて、俺の心配をしてくれる。
いやいや、男の中の男やで。
サイゲイじゃないが、カッコいい人だなぁと思っていた。
「チッ!やはりこのガキを生かしておくと、団長の“心”を独り占め出来ない、か・・・。団長が悲しむといけないと思って、生かしておいたのですが、それなら仕方ないですよね?まぁ、放っておいても【魔獣】や【モンスター】に殺されるとは思いますが、せめて私の手であの世に送ってあげましょう。ああ、団長はそこにいて下さいね?そこは【結界】で守られていますから安全です。しばらく呼吸が苦しいかもしれませんが、すぐに終わらせますからっ・・・!」
「や、や、め、ろ、っ・・・!!!」
なるほど、そう言う事かっ・・・!
【結界】で作った“安全地帯”の中でキールさんを動けなくして、更に【呪印石】によって【魔獣】や【モンスター】達を引き寄せる。
そうする事によって、サイゲイの望むキールさんと“二人きり”の状況を作り出そうとしたのかっ!
コイツ、マジでイカれてるなぁ。( ̄ω ̄;)
“クレイジーサイコゲイ”、ってトコだろうか?
まぁ、生憎、こっちも殺られるつもりはない。
確かに、普段の俺なら、【ステータス】上はコイツに勝てないかもしれないが、今の俺には【異能】がある。
悪いが、油断している隙に一気に決めさせて貰うぞっ!
「【脚力強化】っ!」
「あンっ!?」
動けない俺を殺すべく、サイゲイはゆったりと近付いて来るが、その油断を突く事にした。
【古流武術】による【歩法】+【ステータス】による身体能力の補正+【異能】の“効果”によって、俺は一気にサイゲイとの間合いを詰めた。
その“効果”が絶大だったのか、若干腹立たしいが、客観的事実として【経験】や【技量】、【レベル】的に俺の数段上にいるサイゲイも、俺のその行動には一切反応出来なかった。
そして、迷う事なくブロードソードで、【呪印石】を持った腕ごと切り落とした。
「【腕力強化】っ!」
シュッ!ザシュッ!!
「へっ・・・?ぎ、ぎやぁぁぁぁっーーー!!!う、うで、私の腕がぁぁぁぁっーーー!!!」
本当なら、ここで一気に仕留めるべきなんだろうが、甘いと言われ様と流石に殺人は俺も遠慮したい。
それに、サイゲイにはまだまだ聞かねばならない事があるだろうしな。
「【ファイアー】っ!【ヒール】っ!」
「あひっ・・・!!!???」
腕を切り落とされて、のたうち回るサイゲイに向けて、止血の意味で傷口を焼き、【回復魔法】で治療を施す。
その痛みに耐えかねて、サイゲイはぐるんっと白目を剥き、口から泡を吹き、失神していた。
少し残酷かもしれんが、大量の出血は【回復魔法】だけでは止められないからな。
出血大量で死なないだけ有り難いと思ってくれ。
とりあえず、最大の脅威であった【呪印石】の確保に成功し、俺は気絶したサイゲイを引き摺ってキールさんのもとに駆け寄る。
「ト、ト、モキ、っ・・・!?」
「待ってて下さい、キールさんっ!今、【毒】を治療しますからっ!!」
言って、何で俺はこんな事を口走ったのか、自分でも理解していなかった。
しかし、何故か俺は出来る、と確信していた。
自分の【異能】を、【魔法】や【魔法剣】、【スキル】と似た様なモノと解釈していたからかもしれない。
「【治癒力強化】っ!」
「えっ・・・?」
やはり、他者へも【異能】は“効果”を発揮する様だ。
もし、俺にその発想が無かったら、永遠にその事実に気付く事は無かったかもしれない。
しばらくすると、キールさんは自分の身体の状況を確かめる様に、グッグッと手を握ったり開いたりした。
「動けるぞっ・・・!トモキっ、これはっ・・・!?」
「キールさんっ、説明が長くなるので、今はそれは後回しにしましょうっ!状況は、以前として悪いままですからねっ!!!」
そう俺が言うと、キールさんもハッとした。
【呪印石】が破壊されると言う最悪の状況は脱したとは言え、【呪印石】の影響による【魔獣】や【モンスター】の凶暴化は、以前として現在進行形で起こっている。
すばやく【部隊】を立て直して、【呪印石】と共に脱出しなければならないので、ここでのんびりしている時間などないのである。
「そうだったなっ!【部隊】の指揮に戻らなければっ!!!」
「サイゲイは、ここに拘束しておきますっ!どうやらここは【結界】で“安全地帯”になっている様ですし、流石に気絶したサイゲイを連れての脱出は困難でしょうからっ!!【アースバインド】っ!」
言って、拘束の【魔法】を発動させる。
気絶しているサイゲイは、具現化したツタによって縛り上げられた。
しばらく躊躇したキールさんだったが、俺の判断に納得したのか、コクりと頷いた。
「了解だっ!サイゲイは状況が落ち着いたら、後で回収しようっ!!クルータ達の遺体も、回収してやらなければならんしなっ・・・!!!」
言って、チラッと首の転がった3人の遺体をキールさんは視界に入れた。
状況的に考えれば、この3人もおそらく“共犯”なんだろうが、普段の態度は悪かったが、それでも無惨に殺されたのは流石に同情の余地があった。
多分、サイゲイに上手い事言いくるめられて、体良く使い捨てられたのだろうなぁ。
「じゃあ、俺はロアンさんのところに治療に向かいますっ!」
「応っ!頼むぞっ、トモキっ!!!」
俺の意図を察して、キールさんは【部隊】の指揮に戻るべく【魔獣】や【モンスター】の群れに突っ込んで行った。
よしっ、俺も行くかっ!
・・・
プラドはトモキのフォローをする為に、若干【部隊】から離れていたので、孤立して【魔獣】や【モンスター】に囲まれる事となっていた。
しかし、トモキと年回りは近いとは言え、彼も【エンヴァリオン近衛騎士団】と言う、ある意味エンヴァリオン王国で一番の“エリート集団”とも言える【騎士団】に属している身である。
危なげなく、凶暴化して理性を失っている【魔獣】や【モンスター】を仕留めていくが、やはり数の脅威はいかんともし難かった。
時間が経つにつれて、プラドにも疲労の色が見え始める。
そこに、【毒】から回復したトモキが合流した。
「【魔力強化】っ!【エア・ショット】×10っ!!!」
「「「「「「「「「「ギャッ!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」
不可視の空気の圧縮弾が、プラドを取り囲んでいた【魔獣】や【モンスター】を吹っ飛ばした。
「トモキっ!?動いて大丈夫なのかっ!!??」
「ええっ!ご心配お掛けしましたっ!!キールさんを救出して、【呪印石】も確保しましたっ!!!長居は無用ですっ!!!さっさと離脱しましょうっ!!!」
崩れた包囲網から飛び込んできたトモキが、すばやく説明すると、プラドはすぐに頷いた。
「何だか分からんが、とにかく分かったっ!【部隊】に合流しようっ!!」
「了解っ!!!」
状況的に、今は詳しい事を問い質している暇はない。
プラドはそう素早く判断した。
こうして、プラドとトモキは、【部隊】のもとへと後退するのだったーーー。
・・・
「うおぉぉぉぉっーーー!!!」
キールは、疾風の如く戦場を一直線に駆け抜けていた。
立ちはだかる【魔獣】や【モンスター】を一撃で仕留め、【部隊】に最短距離で合流しようとしていたのだ。
結構無茶苦茶な行動だが、キールの【レベル】と【経験】・【技量】ならば、不可能ではない正面突破であった。
もっとも、キールも通常なら選択しない行動なのだが、今は、少しでも時間が惜しかった。
「みんなっ、待たせたなっ!!!」
「「「「「「「「「「っ!!!!!!!!!!だ、団長っ!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」
「防御陣形を敷けっ!!!【魔道士部隊】を後ろ手に守りつつ、【ルードの森】の外まで後退するっ!!!」
何とか【部隊】に合流を果たした時には、キールと言えどもボロボロの状況であったが、【指揮官】の帰還に、浮き足立っていた【エンヴァリオン近衛騎士団】の統率と士気が回復し、キールもほっと一息吐くのだった。
負傷者は多数出ている様だが、戦死者はまだ出ていない様だ。
個々に応戦していた者達も、集合して密集陣形を組み、徐々に後退を始めるのだったーーー。
・・・
「【治癒力強化】っ!」
俺は今、プラドさんと共に【魔道士部隊】に合流を果たしていた。
【騎士団】の方には、すでにキールさんも復帰しているらしく、プラドさんはそちらに合流し、俺は今だに【毒】によって動けずにいたロアンさんの治療を施していた。
【魔道士部隊】の皆さんも、ロアンさんの脱落にもよく対応し、個別の判断で【魔法】による牽制攻撃や【騎士団】の皆さんの援護攻撃を仕掛けていたのだが、やはり【指揮官】がいないと、全体の意思の統率は困難であった。
それに、ロアンさんには、回収し、今現在俺が預かっている【呪印石】の扱いについても意見を聞かなければならない。
「ありがとう、トモキくんっ!お陰で助かりましたっ!!!」
「良かったっ、これで何とかなりそうですねっ!!!」
「ええっ!森の中では私達の不利ですっ!一度【ルードの森】を出て、体勢を整えましょうっ!!【騎士団】の援護をしながら、順次後退して下さいっ!!!」
流石にキールさんもロアンさんも状況判断が素早かった。
ここに留まっていても、際限なく【呪印石】に引き寄せられる【魔獣】や【モンスター】が集まってしまう。
もちろん、【指揮官】と士気と統率を取り戻した【騎士団】や【魔道士部隊】は無類の強さを誇るものの、疲労は蓄積しているし、わざわざ不利な場所に留まる必要はない。
後退して、【ルードの森】に【防衛線】を構築するのは、的確な判断と言えるだろう。
「ところで、ロアンさん。今、俺が【呪印石】を預かっているのですが、これどうしましょう?【封印】がどうのって、キールさんは言っていましたけど・・・。」
「えっ!?サイゲイから、【呪印石】を奪取出来たのですかっ!!??」
ロアンさんの質問に、俺は簡潔にこれまでの事を説明した。
「なるほど、トモキくんの【異能】が発現したんですね・・・。それを上手く使いこなし、隙を突いてサイゲイから【呪印石】を奪取した、と・・・。」
「やっぱり、俺がこのまま皆さんといるよりも、さっさと離脱しちゃった方がいいですかね?【異能】を使えば、俺一人でも、クヌートまで逃げられると思いますけど・・・。」
「・・・いえ、むしろ、これは好都合です。幸い、私を含めて、ここには【呪印石】を【封印】出来る【宮廷魔道士】が大勢います。しかし、今すぐ【封印】するより、【呪印石】の特性を利用して、【ルードの森】の外まで【魔獣】や【モンスター】を誘き寄せてしまいましょう。【魔獣】や【モンスター】をコントロール出来た方が、色々とやり易いですからねっ!!!」
「なるほどっ・・・!」
一番恐いのは、【魔獣】や【モンスター】が無秩序に暴れまわる事であり、俺が一気に【呪印石】を持って離脱する、あるいは【封印】をして状況を打開しようとしても、当然【呪印石】の影響はすぐには収まらないから、【呪印石】で【魔獣】や【モンスター】を誘き寄せて、【防衛線】にて一気に叩いてから改めて【封印】しようと言うのだ。
短い間に、しかも混乱している状況にも関わらず、ロアンさんのこの冷静な判断力に、俺は改めて脱帽した。
「じゃあ、これはロアンさんにお預けします。俺は、森の外までの進路を確保するんでっ!」
「了解しましたっ!今のトモキくんなら、心配はないかと思いますが、あまり無茶しないで下さいねっ!!」
「了解っ!!」
近接戦もこなせる俺は、後退する【魔道士部隊】の進路を確保すべく、先行するのだったーーー。
・・・
【異能】を発現させたトモキの八面六臂の活躍は目覚ましかった。
元々の【古流武術】としての【使い手】としての腕前に加えて、“訓練”や“模擬戦”、今回の【実戦】で鍛えられた【戦闘経験値】、レベルアップに伴う【ステータス】の大幅な補正、更に発現させた【異能】の“効果”によって、まさしく一騎当千のごとき【力】を発揮していたのだった。
「【魔力強化】っ!【エア・ショット】×10っ!!!」
「「「「「クギァアァァァァッーーー!!!!!」」」」」
「うおぉぉぉぉっーーー!!!」
ザシュッ!ザシュッ!
「「「「「ギャアァァァァッーーー!!!!!」」」」」
「「「「「す、すごいっ・・・!!!!!」」」」」
その光景に、【魔道士部隊】もトモキの援護をしながら、驚愕の表情を浮かべていた。
しかし、ロアンは一人、トモキの状況を正確に把握していた。
「マズいですね・・・。」
「ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・!み、見えたっ・・・!出口だっ・・・!!!」
戦況自体は、トモキ達に有利に事を進められていたが、忘れてはならないのは、トモキは、今回が初の【実戦】なのである。
剣に【魔法】に、それに加えて、慣れない【異能】の発現を経験し、トモキの体力・精神力などの消耗具合は、ピークに達しようとしていた。
言うなれば、ペース配分も考えずに、全力でここまで駆け抜けて来たのである。
もちろん、これは、新人なら初の【実戦】の際に誰もが通る道であった。
「よしっ、【ルードの森】を抜けたぞっ!周囲に敵影なしっ!って、はれっ・・・?」
森を抜けた事によって、張っていた緊張の糸が切れたのか、トモキは力が抜けた様に崩れ落ちる。
それを、ロアンが受け止めた。
「ご苦労様でした、トモキくん。お陰で助かりましたよ。しかし、君はそろそろ限界のようですね。慣れない【実戦】に加えて、想定外の【事件】、【異能】の発現と、トモキくんの体力と精神力はすでに底を尽きかけているのですよ。」
「す、すいません、ロアンさん・・・。急に力が尽きた感じになってしまって・・・。」
「いえいえ、良いのですよ。後は我々に任せて、トモキくんは休んでいて下さい。」
・・・
「キターーー(゜∀゜)ーーーー!!!」
「はぁ・・・、尊い・・・。」(語彙力喪失)
「ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・。テメ、それ、誘ってんだろっ・・・!さっさと服脱ぎやがれっ・・・!!!」(野獣の眼光)
「わたくしはロアキー派、わたくしはロアキー派、わたくしはロアキー派・・・。ロアトモ・・・。(ぼそっ)いやいやいやっ!!!」(ブツブツ)
「ああっ、彼女の価値観が今崩壊の危機にっ・・・!!!」
「けど、トモキくん、カッコ良かったよねぇ~。今回は、私もマジでヤバいと思ったもん。」
「キール団長とロアン筆頭の脱落と、サイゲイ副団長の凶行・・・。更に【呪印石】の存在。冗談事ではなく、私達の全滅の危機も十分に可能性としてありました。それを覆して下さったトモキ様には、感謝しかありませんわね。」
「・・・あれっ?あれれぇっ??もしかして、トモキくんにホレたんスかっ!!??」
「い、いえっ!わ、私は別にっ・・・!!!」(///)
「BBA無理すんなっ!!!」(失言)
「ア゛ァ゛!?・・・どなたですか?今、私に対して暴言を吐いたのはっ・・・??【魔獣】や【モンスター】の前に、塵になりたい方がいる様ですわねぇ~・・・!!!」(ゴゴゴゴゴッ)
「「「「「」」」」」
「皆さぁ~んっ!【防衛線】を構築しますよぉっ~!!集合して下さぁ~いっ!!!」
「ほ、ほらほら、ロアン筆頭が呼んでますわよっ!まだまだ戦闘は終わってないのですから、遊んでいる暇はありませんわっ・・・!!!」(アセアセッ)
「そ、そうそうっ!!!」(コクコクッ)
「チッ・・・!・・・まぁ、今は仕方ありませんわね・・・。けど、この件が終わったら、覚えていらしてねっ・・・?」(ゴゴゴゴゴッ)
「「「「「」」」」」((((;゜Д゜)))
・・・
「スゴい【魔力】の奔流を感じますっ・・・!皆さんお疲れでしょうに、やはり俺とは経験が違いますねぇっ・・・!」
「(何か、変な波動を感じますが・・・)え、ええ、そうですね・・・。頼もしい限りですよっ、ハ、ハハハッ・・・!」( ̄▽ ̄;)
「ロアンっ、トモキっ!!!無事かっ!?」
【魔道士部隊】から迸る【魔力】に圧倒されは俺は、そう感想を漏らすと、若干苦い顔をしたロアンさんは、乾いた笑いを溢していた。
何だろうか・・・?
と、そこへ、殿を務めていた【騎士団】の皆さんも、森を抜けて外に出てきた。
それを率いていたキールさんが、俺達に気付いて、声を掛けてきた。
「キールっ!そちらも無事ですねっ!?良かったっ・・・!」
「ああ、トモキのお陰でなっ!で、トモキは大丈夫か?」
「え、ええ、情けない事に、少し【力】を使い過ぎてしまった様で・・・。」
「まぁ、お前は今回が初の【実戦】だったからなぁ。けど、お前がいてホント助かったぜっ!今回ばかりは、俺達だけだったら、もしかしたら全滅していたかもしれんからなっ・・・。」
「そうですねっ・・・。」
キールさんとロアンさんは苦い顔をしてうつむくが、すぐに気を取り直して、情報を交わした。
「んで、これからどうする?」
「もちろん、ここで迎撃します。トモキくんが奪取した【呪印石】を利用して、【魔獣】や【モンスター】を森の外まで誘導。それが済み次第、迎撃と【呪印石】の【封印】を施します。キールは、【防衛線】の構築と、負傷者を後退させて下さい。ここからは長丁場になりますから、狼煙を上げてクヌートに援軍を要請し、迎撃と回復と待機で交代しながら、【魔獣】や【モンスター】の群れが途切れるまでここで持ちこたえますよっ!!!」
「了解っ!!!まぁ、こっからはある意味何時も通りだからなっ!大変だろうが、まぁ、何とかなんだろうっ!!!」
「ですねっ!!!」
そう言うと、キールさんは【部隊】を編成する為に、【騎士団】のもとに戻った。
う~ん、頼もしいぜ。
俺も、今は回復に専念しよう。
回復次第、迎撃に参戦出来る様にな・・・。
・・・
それから、凶暴化した【魔獣】や【モンスター】を鎮圧して、サイゲイらを確保し、【城塞都市・クヌート】に帰還出来たのは、数日の後の事だったーーー。
誤字・脱字がありましたら、ご指摘頂けると幸いです。
ブクマ登録、評価、感想等頂けると幸いです。お嫌でなかったら、是非よろしくお願いいたします。
また、もう一つの投稿作品、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」も、本作共々御一読頂けると幸いです。




