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勇者の師匠は遊び人っ!?  作者: 笠井 裕二
遊び人と勇者の出会い編
8/62

勇者アイザワ・トモキの憂鬱 6

続きです。


カッコいい戦闘の描写って難しいです。



◇◆◇



ここで、【異能】について簡単に説明しておこう。

【異能】と言うのは、【異世界人】だけが発現する特殊な【能力】の事で、【時空間】の【穴】を移動した影響で目覚める、()()()()()()


そもそも、【異世界】の住人が【別世界】に移動する事自体極めて特殊な事例であり、詳しい事は解明が進んでいないのが実状なのだが、ハヤトの見解では、その【異世界】の住人である【異世界人】がその【世界】に【適合】する為に起こる【現象】ではないか、との事である。


もちろん、これは【異世界人】なら誰でも起こりうる【現象】なので、厳密には【地球人】だけに限った話ではないのだが、今現在のこの世界(エンドゲイト)において確認されている【異世界人】は、【魔神戦争】の【英雄達】であるハヤトらや、【女神】・八坂狭霧(やさかさぎり)によって【異世界転移】したトモキと言った【地球人】、もっと言うと【日本人】だけなので、とりあえず、ここでは便宜上【地球人】が発現する【能力】、としておこう。


さて、ではハヤトや【女神】・八坂狭霧(やさかさぎり)も言及していたこの【異能】ではあるが、これは、確かに【チート】染みた【能力】ではあるのだが、前述の通り、この世界(エンドゲイト)の【スキル】などと違い、解明されている点が少ないので、自分が当初どんな【能力】に目覚めているかも分からない状態なのである。


もちろん、トモキの例にもある様に、【ステータス】上に簡単に記載されてはいるものの、具体的に、【異能(それ)】がどんなモノなのか、どの様に発動するのかなどは、自力で研究し、仮説を立てて、実証を繰り返しながら、解明していくしかないのである。


トモキの例でいくと、【ステータス】上では【強化系】とだけある。

そこから連想すると、身体能力の【強化】をしてくれる【異能】の様にも感じるが、それなら【ステータス】による身体能力の補正だけでも、この世界(エンドゲイト)に【適合】する、と言う“観点”からは、ある意味事足りるだろう。


しかし、先程も述べた通り、この【異能】と言う【能力】は、【チート】染みた【能力】たりうるので、もちろん、その程度の【力】ではない。

トモキも、【女神】・八坂狭霧(やさかさぎり)から【異能】の事は伝え聞いていたので、この数ヵ月のキールらとの訓練の合間に、【異能】の解明を独自に行っていた。

しかし、まだ【異能(それ)】を十全に理解し、使いこなす段階には至っていなかったのだが・・・。



・・・



俺の“内側”から【()】が溢れてくるっ・・・!

俺は、これが()()()()、何となく理解していた。

【異能】の発現の兆候。

こちらの世界(エンドゲイト)に【転移】してから、時々感じていたモノである。

しかし、俺は、今だに【異能(その)】全容を理解してはいなかった。

ただ、“訓練”の時や“模擬戦”の時に、集中力が高まったり、追い詰められたりした時に、その【力】の片鱗を覗かせていた事は何度かあった。

おそらく、俺の“感情”の高まりを“キッカケ”にして、【異能】は発現するのではないかと考えていた。

そして、もう一つ。


「【異能解放】っ。【治癒力強化】っ。」


ブツブツと呟く俺。

俺は、【()()】や【()()()】を参考に、これまで発動の“兆し”を見せながらも、完全に機能しなかった【異能】を、()()()()()()にして発する事で、発動が成功するのではないかと考えていた。

そして、その結果は成功であった。

【毒】によって麻痺していた身体が回復し、俺はそう確信する。

まぁ、どうしてそうなのかは、またよく分からないが、とにかく、【異能】が使()()()()()()()()だけでも、今は大きな前進だろう。


「何ブツブツ言ってンだよっ!?とっとと消えろっつったろっ!!!」


今だに動く気配の無かった俺に、サイゲイは苛立たしげに罵声を浴びせる。

いや、オメーが俺を刺したんだろーがっ!

俺の近くにいたプラドさんも、【呪印石(カースド・ストーン)】の影響で凶暴化した【魔獣】や【モンスター】の対応に追われていた。

動けない俺を気遣っての事だろう。

自分だって危ないのに、マジでいい人や( TДT)

それに比べて、コイツ(サイゲイ)ときたらっ・・・!


しかし、考えてみれば、動けないキールさんももちろんだが、それを介抱(?)しているサイゲイも危険だろう。

まぁ、そんな事も理解出来ないほど()()()()()と言われればそれまでだが、サイゲイのこの“余裕”はなんだろうか?


「ト、モ、キ、ッ・・・!に、げ、ろ、っ・・・!」


俺と()()、全身に【毒】による麻痺が進行している筈のキールさんは、それでも声を上げて、俺の心配をしてくれる。

いやいや、男の中の男やで。

サイゲイじゃないが、カッコいい人だなぁと思っていた。


「チッ!やはりこのガキを生かしておくと、団長の“心”を独り占め出来ない、か・・・。団長が悲しむといけないと思って、生かしておいたのですが、それなら仕方ないですよね?まぁ、放っておいても【魔獣】や【モンスター】に殺されるとは思いますが、せめて私の手であの世に送ってあげましょう。ああ、団長は()()にいて下さいね?そこは【()()】で守られていますから安全です。しばらく呼吸が苦しいかもしれませんが、すぐに終わらせますからっ・・・!」

「や、や、め、ろ、っ・・・!!!」


なるほど、そう言う事かっ・・・!

【結界】で作った“安全地帯”の中でキールさんを動けなくして、更に【呪印石(カースド・ストーン)】によって【魔獣】や【モンスター】達を引き寄せる。

そうする事によって、サイゲイの望むキールさんと“二人きり”の状況を作り出そうとしたのかっ!

コイツ、マジでイカれてるなぁ。( ̄ω ̄;)

“クレイジーサイコゲイ”、ってトコだろうか?

まぁ、生憎、こっちも殺られるつもりはない。

確かに、普段の俺なら、【ステータス】上はコイツに勝てないかもしれないが、()()()には【異能】がある。

悪いが、油断している隙に一気に決めさせて貰うぞっ!


「【脚力強化】っ!」

「あンっ!?」


()()()()俺を殺すべく、サイゲイはゆったりと近付いて来るが、その油断を突く事にした。

【古流武術】による【歩法】+【ステータス】による身体能力の補正+【異能】の“効果”によって、俺は一気にサイゲイとの間合いを詰めた。

その“効果”が絶大だったのか、若干腹立たしいが、客観的事実として【経験】や【技量】、【レベル】的に俺の数段上にいるサイゲイも、俺のその行動には一切反応出来なかった。

そして、迷う事なくブロードソードで、【呪印石(カースド・ストーン)】を持った腕ごと()()()()()()


「【腕力強化】っ!」


シュッ!ザシュッ!!


「へっ・・・?ぎ、ぎやぁぁぁぁっーーー!!!う、うで、私の腕がぁぁぁぁっーーー!!!」


本当なら、ここで一気に仕留めるべきなんだろうが、甘いと言われ様と流石に()()は俺も遠慮したい。

それに、サイゲイ(コイツ)にはまだまだ聞かねばならない事があるだろうしな。


「【ファイアー】っ!【ヒール】っ!」

「あひっ・・・!!!???」


腕を切り落とされて、のたうち回るサイゲイに向けて、止血の意味で傷口を焼き、【回復魔法】で治療を施す。

その痛みに耐えかねて、サイゲイはぐるんっと白目を剥き、口から泡を吹き、失神していた。

少し残酷かもしれんが、大量の出血は【回復魔法】だけでは止められないからな。

出血大量で死なないだけ有り難いと思ってくれ。


とりあえず、最大の脅威であった【呪印石(カースド・ストーン)】の確保に成功し、俺は気絶したサイゲイを引き摺ってキールさんのもとに駆け寄る。


「ト、ト、モキ、っ・・・!?」

「待ってて下さい、キールさんっ!今、【毒】を治療しますからっ!!」


言って、何で俺はこんな事を口走ったのか、自分でも理解していなかった。

しかし、何故か俺は()()()、と確信していた。

自分の【異能】を、【()()】や【()()()】、【()()()】と似た様なモノと解釈していたからかもしれない。


「【治癒力強化】っ!」

「えっ・・・?」


やはり、他者へも【異能】は“効果”を発揮する様だ。

もし、俺にその発想が無かったら、永遠にその事実に気付く事は無かったかもしれない。

しばらくすると、キールさんは自分の身体の状況を確かめる様に、グッグッと手を握ったり開いたりした。


「動けるぞっ・・・!トモキっ、これはっ・・・!?」

「キールさんっ、説明が長くなるので、今はそれは後回しにしましょうっ!状況は、以前として悪いままですからねっ!!!」


そう俺が言うと、キールさんもハッとした。

呪印石(カースド・ストーン)】が破壊されると言う最悪の状況は脱したとは言え、【呪印石(カースド・ストーン)】の影響による【魔獣】や【モンスター】の凶暴化は、以前として現在進行形で起こっている。

すばやく【部隊】を立て直して、【呪印石(カースド・ストーン)】と共に脱出しなければならないので、ここでのんびりしている時間などないのである。


「そうだったなっ!【部隊】の指揮に戻らなければっ!!!」

サイゲイ(コイツ)は、()()に拘束しておきますっ!どうやら()()は【結界】で“安全地帯”になっている様ですし、流石に気絶したサイゲイ(コイツ)を連れての脱出は困難でしょうからっ!!【アースバインド】っ!」


言って、拘束の【魔法】を発動させる。

気絶しているサイゲイは、具現化したツタによって縛り上げられた。

しばらく躊躇したキールさんだったが、俺の判断に納得したのか、コクりと頷いた。


「了解だっ!サイゲイ(コイツ)は状況が落ち着いたら、後で回収しようっ!!クルータ達の遺体も、回収してやらなければならんしなっ・・・!!!」


言って、チラッと()()()()()()3人の遺体をキールさんは視界に入れた。

状況的に考えれば、この3人もおそらく“共犯”なんだろうが、普段の態度は悪かったが、それでも無惨に殺されたのは流石に同情の余地があった。

多分、サイゲイ(コイツ)に上手い事言いくるめられて、(てい)良く使い捨てられたのだろうなぁ。


「じゃあ、俺はロアンさんのところに治療に向かいますっ!」

「応っ!頼むぞっ、トモキっ!!!」


俺の意図を察して、キールさんは【部隊】の指揮に戻るべく【魔獣】や【モンスター】の群れに突っ込んで行った。

よしっ、俺も行くかっ!



・・・



プラドはトモキのフォローをする為に、若干【部隊】から離れていたので、孤立して【魔獣】や【モンスター】に囲まれる事となっていた。

しかし、トモキと年回りは近いとは言え、彼も【エンヴァリオン近衛騎士団】と言う、ある意味エンヴァリオン王国(この国)で一番の“エリート集団”とも言える【騎士団】に属している身である。

危なげなく、凶暴化して理性を失っている【魔獣】や【モンスター】を仕留めていくが、やはり数の脅威はいかんともし難かった。

時間が経つにつれて、プラドにも疲労の色が見え始める。

そこに、【毒】から回復したトモキが合流した。


「【魔力強化】っ!【エア・ショット】×10っ!!!」

「「「「「「「「「「ギャッ!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」


不可視の空気の圧縮弾が、プラドを取り囲んでいた【魔獣】や【モンスター】を吹っ飛ばした。


「トモキっ!?動いて大丈夫なのかっ!!??」

「ええっ!ご心配お掛けしましたっ!!キールさんを救出して、【呪印石(カースド・ストーン)】も確保しましたっ!!!長居は無用ですっ!!!さっさと離脱しましょうっ!!!」


崩れた包囲網から飛び込んできたトモキが、すばやく説明すると、プラドはすぐに頷いた。


「何だか分からんが、とにかく分かったっ!【部隊】に合流しようっ!!」

「了解っ!!!」


状況的に、今は詳しい事を問い質している暇はない。

プラドはそう素早く判断した。

こうして、プラドとトモキは、【部隊】のもとへと後退するのだったーーー。



・・・



「うおぉぉぉぉっーーー!!!」


キールは、疾風の如く戦場を一直線に駆け抜けていた。

立ちはだかる【魔獣】や【モンスター】を一撃で仕留め、【部隊】に最短距離で合流しようとしていたのだ。

結構無茶苦茶な行動だが、キールの【レベル】と【経験】・【技量】ならば、不可能ではない正面突破であった。

もっとも、キールも通常なら選択しない行動なのだが、今は、少しでも時間が惜しかった。


「みんなっ、待たせたなっ!!!」

「「「「「「「「「「っ!!!!!!!!!!だ、団長っ!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」

「防御陣形を敷けっ!!!【魔道士部隊】を後ろ手に守りつつ、【ルードの森】の外まで後退するっ!!!」


何とか【部隊】に合流を果たした時には、キールと言えどもボロボロの状況であったが、【指揮官】の帰還に、浮き足立っていた【エンヴァリオン近衛騎士団】の統率と士気が回復し、キールもほっと一息吐くのだった。

負傷者は多数出ている様だが、戦死者はまだ出ていない様だ。

個々に応戦していた者達も、集合して密集陣形を組み、徐々に後退を始めるのだったーーー。



・・・



「【治癒力強化】っ!」


俺は今、プラドさんと共に【魔道士部隊】に合流を果たしていた。

【騎士団】の方には、すでにキールさんも復帰しているらしく、プラドさんはそちらに合流し、俺は今だに【毒】によって動けずにいたロアンさんの治療を施していた。

【魔道士部隊】の皆さんも、ロアンさんの脱落にもよく対応し、個別の判断で【魔法】による牽制攻撃や【騎士団】の皆さんの援護攻撃を仕掛けていたのだが、やはり【指揮官】がいないと、全体の意思の統率は困難であった。

それに、ロアンさんには、回収し、今現在俺が預かっている【呪印石(カースド・ストーン)】の扱いについても意見を聞かなければならない。


「ありがとう、トモキくんっ!お陰で助かりましたっ!!!」

「良かったっ、これで何とかなりそうですねっ!!!」

「ええっ!森の中では私達の不利ですっ!一度【ルードの森】を出て、体勢を整えましょうっ!!【騎士団】の援護をしながら、順次後退して下さいっ!!!」


流石にキールさんもロアンさんも状況判断が素早かった。

ここに留まっていても、際限なく【呪印石(カースド・ストーン)】に引き寄せられる【魔獣】や【モンスター】が集まってしまう。

もちろん、【指揮官(キールさんら)】と士気と統率を取り戻した【騎士団】や【魔道士部隊】は無類の強さを誇るものの、疲労は蓄積しているし、わざわざ不利な場所に留まる必要はない。

後退して、【ルードの森】に【防衛線】を構築するのは、的確な判断と言えるだろう。


「ところで、ロアンさん。今、俺が【呪印石(カースド・ストーン)】を預かっているのですが、()()どうしましょう?【封印】がどうのって、キールさんは言っていましたけど・・・。」

「えっ!?サイゲイから、【呪印石(カースド・ストーン)】を奪取出来たのですかっ!!??」


ロアンさんの質問に、俺は簡潔にこれまでの事を説明した。


「なるほど、トモキくんの【異能】が発現したんですね・・・。それを上手く使いこなし、隙を突いてサイゲイから【呪印石(カースド・ストーン)】を奪取した、と・・・。」

「やっぱり、俺がこのまま皆さんといるよりも、さっさと離脱しちゃった方がいいですかね?【異能】を使えば、俺一人でも、クヌートまで逃げられると思いますけど・・・。」

「・・・いえ、むしろ、これは好都合です。幸い、私を含めて、ここには【呪印石(カースド・ストーン)】を【封印】出来る【宮廷魔道士】が大勢います。しかし、今すぐ【封印】するより、【呪印石(カースド・ストーン)】の()()()()して、【ルードの森】の外まで【魔獣】や【モンスター】を()()()()()しまいましょう。【魔獣】や【モンスター】をコントロール出来た方が、色々とやり易いですからねっ!!!」

「なるほどっ・・・!」


一番恐いのは、【魔獣】や【モンスター】が無秩序に暴れまわる事であり、俺が一気に【呪印石(カースド・ストーン)】を持って離脱する、あるいは【封印】をして状況を打開しようとしても、当然【呪印石(カースド・ストーン)】の影響はすぐには収まらないから、【呪印石(カースド・ストーン)】で【魔獣】や【モンスター】を()()()()()、【防衛線】にて一気に叩いてから改めて【封印】しようと言うのだ。

短い間に、しかも混乱している状況にも関わらず、ロアンさんのこの冷静な判断力に、俺は改めて脱帽した。


「じゃあ、()()はロアンさんにお預けします。俺は、森の外までの進路を確保するんでっ!」

「了解しましたっ!今のトモキくんなら、心配はないかと思いますが、あまり無茶しないで下さいねっ!!」

「了解っ!!」


近接戦もこなせる俺は、後退する【魔道士部隊】の進路を確保すべく、先行するのだったーーー。



・・・



【異能】を発現させたトモキの八面六臂の活躍は目覚ましかった。

元々の【古流武術】としての【使い手】としての腕前に加えて、“訓練”や“模擬戦”、今回の【()()】で鍛えられた【戦闘経験値】、レベルアップに伴う【ステータス】の大幅な補正、更に発現させた【異能】の“効果”によって、まさしく一騎当千のごとき【力】を発揮していたのだった。


「【魔力強化】っ!【エア・ショット】×10っ!!!」

「「「「「クギァアァァァァッーーー!!!!!」」」」」

「うおぉぉぉぉっーーー!!!」


ザシュッ!ザシュッ!


「「「「「ギャアァァァァッーーー!!!!!」」」」」


「「「「「す、すごいっ・・・!!!!!」」」」」


その光景に、【魔道士部隊】もトモキの援護をしながら、驚愕の表情を浮かべていた。

しかし、ロアンは一人、トモキの状況を正確に把握していた。


「マズいですね・・・。」

「ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・!み、見えたっ・・・!出口だっ・・・!!!」


戦況自体は、トモキ達に有利に事を進められていたが、忘れてはならないのは、トモキは、()()()()()()()()()()()()

剣に【魔法】に、それに加えて、慣れない【異能】の発現を経験し、トモキの体力・精神力などの消耗具合は、ピークに達しようとしていた。

言うなれば、ペース配分も考えずに、全力でここまで駆け抜けて来たのである。

もちろん、これは、新人なら初の【()()】の際に誰もが通る道であった。


「よしっ、【ルードの森】を抜けたぞっ!周囲に敵影なしっ!って、はれっ・・・?」


森を抜けた事によって、張っていた緊張の糸が切れたのか、トモキは力が抜けた様に崩れ落ちる。

それを、ロアンが受け止めた。


「ご苦労様でした、トモキくん。お陰で助かりましたよ。しかし、君はそろそろ限界のようですね。慣れない【()()】に加えて、想定外の【()()】、【異能】の発現と、トモキくんの体力と精神力はすでに底を尽きかけているのですよ。」

「す、すいません、ロアンさん・・・。急に力が尽きた感じになってしまって・・・。」

「いえいえ、良いのですよ。後は我々に任せて、トモキくんは休んでいて下さい。」



・・・



「キターーー(゜∀゜)ーーーー!!!」

「はぁ・・・、尊い・・・。」(語彙力喪失)

「ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・。テメ、それ、誘ってんだろっ・・・!さっさと服脱ぎやがれっ・・・!!!」(野獣の眼光)

「わたくしはロアキー派、わたくしはロアキー派、わたくしはロアキー派・・・。ロアトモ・・・。(ぼそっ)いやいやいやっ!!!」(ブツブツ)

「ああっ、彼女の価値観が今崩壊の危機にっ・・・!!!」

「けど、トモキくん、カッコ良かったよねぇ~。今回は、私もマジでヤバいと思ったもん。」

「キール団長とロアン筆頭の脱落と、サイゲイ副団長の凶行・・・。更に【呪印石カースド・ストーン】の存在。冗談事ではなく、(わたくし)達の全滅の危機も十分に可能性としてありました。それを覆して下さったトモキ()には、感謝しかありませんわね。」

「・・・あれっ?あれれぇっ??もしかして、トモキくんにホレたんスかっ!!??」

「い、いえっ!わ、(わたくし)は別にっ・・・!!!」(///)

「BBA無理すんなっ!!!」(失言)

「ア゛ァ゛!?・・・どなたですか?今、(わたくし)に対して暴言を吐いたのはっ・・・??【魔獣】や【モンスター】の前に、塵になりたい方がいる様ですわねぇ~・・・!!!」(ゴゴゴゴゴッ)

「「「「「」」」」」


「皆さぁ~んっ!【防衛線】を構築しますよぉっ~!!集合して下さぁ~いっ!!!」


「ほ、ほらほら、ロアン筆頭が呼んでますわよっ!まだまだ戦闘は終わってないのですから、遊んでいる暇はありませんわっ・・・!!!」(アセアセッ)

「そ、そうそうっ!!!」(コクコクッ)

「チッ・・・!・・・まぁ、今は仕方ありませんわね・・・。けど、この件が終わったら、()()()()()()()()っ・・・?」(ゴゴゴゴゴッ)

「「「「「」」」」」((((;゜Д゜)))



・・・



「スゴい【魔力】の奔流を感じますっ・・・!皆さんお疲れでしょうに、やはり俺とは経験が違いますねぇっ・・・!」

「(何か、変な波動を感じますが・・・)え、ええ、そうですね・・・。頼もしい限りですよっ、ハ、ハハハッ・・・!」( ̄▽ ̄;)

「ロアンっ、トモキっ!!!無事かっ!?」


【魔道士部隊】から迸る【魔力】に圧倒されは俺は、そう感想を漏らすと、若干苦い顔をしたロアンさんは、乾いた笑いを溢していた。

何だろうか・・・?

と、そこへ、殿を務めていた【騎士団】の皆さんも、森を抜けて外に出てきた。

それを率いていたキールさんが、俺達に気付いて、声を掛けてきた。


「キールっ!そちらも無事ですねっ!?良かったっ・・・!」

「ああ、トモキのお陰でなっ!で、トモキは大丈夫か?」

「え、ええ、情けない事に、少し【力】を使い過ぎてしまった様で・・・。」

「まぁ、お前は今回が初の【()()】だったからなぁ。けど、お前がいてホント助かったぜっ!今回ばかりは、俺達だけだったら、もしかしたら全滅していたかもしれんからなっ・・・。」

「そうですねっ・・・。」


キールさんとロアンさんは苦い顔をしてうつむくが、すぐに気を取り直して、情報を交わした。


「んで、これからどうする?」

「もちろん、ここで迎撃します。トモキくんが奪取した【呪印石(カースド・ストーン)】を利用して、【魔獣】や【モンスター】を森の外まで誘導。それが済み次第、迎撃と【呪印石(カースド・ストーン)】の【封印】を施します。キールは、【防衛線】の構築と、負傷者を後退させて下さい。ここからは長丁場になりますから、狼煙を上げてクヌートに援軍を要請し、迎撃と回復と待機で交代しながら、【魔獣】や【モンスター】の群れが途切れるまでここで持ちこたえますよっ!!!」

「了解っ!!!まぁ、こっからはある意味何時も通りだからなっ!大変だろうが、まぁ、何とかなんだろうっ!!!」

「ですねっ!!!」


そう言うと、キールさんは【部隊】を編成する為に、【騎士団】のもとに戻った。

う~ん、頼もしいぜ。

俺も、今は回復に専念しよう。

回復次第、迎撃に参戦出来る様にな・・・。



・・・



それから、凶暴化した【魔獣】や【モンスター】を鎮圧して、サイゲイらを確保し、【城塞都市・クヌート】に帰還出来たのは、数日の後の事だったーーー。



誤字・脱字がありましたら、ご指摘頂けると幸いです。


ブクマ登録、評価、感想等頂けると幸いです。お嫌でなかったら、是非よろしくお願いいたします。


また、もう一つの投稿作品、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」も、本作共々御一読頂けると幸いです。

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