勇者アイザワ・トモキの憂鬱 4
続きです。
作者には、学校の体育やマンガ、アニメ、ゲーム以上の知識はありませんので、戦闘や武術に関しては、完全に作者の妄想で書いております。
◇◆◇
俺がこちらの世界に来て、もうすぐで3ヵ月が過ぎようとしていた。
最初は色々と戸惑う事も多かったが、それにも段々慣れてきた頃だった。
俺の日常は様変わりしたモノの、やっている事自体は学校の授業とそう大差無いかもしれない。
もちろん、その“内容”としては全く別物なのだが、キールさん率いる【エンヴァリオン近衛騎士団】の訓練に参加したり、ロアンさん率いる【宮廷魔道士】の皆さんから【魔法】を教わったり、皆さんと雑談しながらこちらの世界の【一般常識】を学んだりと、割と充実した日々を送っていた。
【エンヴァリオン近衛騎士団】や【宮廷魔道士】の皆さんは、割と若手が多いのか、俺とも年回り的に近しい人々が多かった。
まぁ、ぶっちゃけ武官ってのは身体が資本であるから、向こうのスポーツ選手同様に、現役時代がそう長くないのかもしれない。
それに、エンヴァリオンでは成人年齢が15歳となっているらしく、俺の感覚ではまだまだ若いお兄さんであるキールさんでさえ、【エンヴァリオン近衛騎士団】では団長を務めているし、騎士団在籍年数も11年目に入るベテランなのである。
そこら辺も、細かい所でやはり俺の世界との差異があった。
そんなこんなで、割と皆さんと打ち解けている俺なのだが、それでも一部の人からは敬遠されている節が見受けられた。
まぁ、【異物】である俺が、いくら【異世界人】でガーファンクル王のお墨付きを貰っているとは言え、いきなりやって来て好き勝手やっていたら、そりゃ気に食わない人もいるんだろう。
俺は俺で、この世界で生きていく事に必死だった為、そんな事を気にしている余裕もなかったのが本音である。
しかし、そうした“確執”が原因で、結果的に俺はこの国を出る事となった訳だが・・・。
・・・
「いくぜっ、トモキっ!」
「お願いしますっ!」
キールさんの掛け声を合図に、俺とキールさんの“模擬戦”が開始された。
キールさん、と言うか、この国の騎士の人達が扱う武術は、所謂【エンヴァリオン流武術】と呼ばれる【実戦武術】であり、その“内容”も多岐に渡る。
例えば、日本における今現在の【現代武道】は、細かく“細分化”している傾向にある。
【剣道】なら【剣】の【技術】を、【弓道】なら【弓】の【技術】をそれぞれ“専門的”に扱ってはいるが、どちらかと言うと、【戦闘技術】の鍛錬と言うよりかは、そうした【道】を通しての心身の鍛錬に重きを置いている。
また、銃器や兵器の進化によって【戦争】の形態自体も様変わりしていたり、現代日本では特に【戦争】から長らく遠ざかった事によって、【現代武道】と言うのは、【スポーツ】的要素がより一層強くなっているのである。
もちろん、それは悪い事ではないのだが、こちらの世界での【実戦】に置いては、【現代武道】はハッキリ言うとあまり役に立たないと言わざるを得ないだろう。
実際の【戦闘】に置いて、“専門分野”しか扱えないでは、足手まといも良い所だ。
なぜなら、常に手元に都合良く【武器】がある訳ではないからである。
【実戦】には、“ルール”など存在しない。
もちろん、【対人戦】の、特に【決闘】などの特殊な状況ならその限りではないのだが、こちらの世界には身近な脅威として、【魔獣】や【モンスター】と言った、我々【人間】の【理屈】が全く通用しない存在が跳梁跋扈する世界なのである。
自然と、そうした理不尽な存在に対抗する為に、扱う【武術】もより実戦的になっていったのであろう。
キールさんの鋭い剣撃が眼前に迫る。
避けられないと悟った俺は、手にしていた【木剣】で受けざるを得なかった。
が、しばしの鍔迫り合いの最中に、不意にキールさんの蹴りが強襲する。
重い剣の軌道を何とか逸らしながら、俺はその蹴りをガードする。
キールさんは、その見た目からは想像もつかないほど、物凄いパワーとスピードの持ち主である。
これは、この世界特有の【ステータス】による身体能力の補正であった。
「っぶねっ!!!」
「おおっ、よく防御したなっ!大抵の奴は、モロに食らうんだがなっ!!」
「これでも、【古流武術】の【使い手】なんですよっ!」
と、こんな感じに、【剣道】ならば絶対に有り得ない【足技】なんかも、【エンヴァリオン流武術】では【剣術】に織り混ぜて普通に放ってくる。
その“場”の状況に合わせて、使える【手】は何でも使う。
それが、【エンヴァリオン流武術】の【極意】であった。
一方の俺も負けてはいない。
俺の使う【古流武術】は、日本の【戦国時代】に端を発したモノらしく、もちろん俺はまだまだ浅野先生に比べたら未熟ではあるが、【現代武道】とは一線を画す【実戦武術】としての性格を色濃く残している。
俺自身、【剣術】に加え、【槍術】、【弓道】、【柔術】なんかの様々な【武術】を総合的に学んでいた。
もちろん、一つの事を極めた人に比べたら、【習熟度】の方は、まぁ、お察しなのであるが、色々な事に対応出来ると言う点では、おそらくこちらの世界に置いては、俺の扱う【古流武術】の方が一日の長があると思われる。
「おぉっ~!トモキの奴、やるじゃねぇ~のっ!!」
「団長の蹴りは効くんだよなぁ。もちろん、団長も手加減してるんだろうけど、あれ食らうと、その日はもう飯が食えなくなるんだよなぁ。」
「あれは辛いよなぁ。まぁ、けど、あれもある意味団長流の洗礼ってヤツなんだろうけどさぁ。」
何か外野から恐ろしい事実が聞こえてきたんだけど。( ; ゜Д゜)
ガード出来てホント良かったぁ~。
「実際、討伐任務に行くと分かるけど、団長が可愛く見えるほど、【魔獣】や【モンスター】ってメチャクチャだもんなぁ。俺なんか、【武器】をぶん投げてくる【ゴブリン】に遭遇した事あるぜっ!」
「俺は【投石】してくるヤツだったな。まぁ、【盾】で防ぎつつ、返り討ちにしてやったけどなっ!」
「【ゴブリン】、悪知恵が働くからなぁ。【罠】も普通に使ってくるし。」
「命乞いとかもな。まぁ、俺らは無視するけどさ。止めを刺すまで油断するなって、散々言われてるからなぁ。」
「実際効果があるらしいからなぁ。【ゴブリン】は醜悪な面してるけど、人に近しい外見に基本俺らよりも小さなナリしてるから、命乞いとかしてる様を見ると哀れに思うんだろうよ。特に新人の【冒険者】なんかが、結構それで犠牲になってるらしいしなぁ。」
「相手は【理屈】の通用しない【モンスター】なんだけどなぁ。まぁ、分からん話じゃないけどさぁ。」
そうなのだ。
まぁ、俺はまだ【実戦】自体はまだ経験していないが、【エンヴァリオン近衛騎士団】の訓練ではそこら辺を徹底的に教え込まれている。
これは皆さんからの受け売りではあるが、ぶっちゃけ、油断して殺られてしまったとしても、それはその人自身の“自己責任”なんだが、その結果、フォーメーションなどに【穴】が空いてしまう事で、残りの人達が苦戦を強いられる事がしはしばある。
そうした一人の判断ミスが、最終的に部隊の瓦解に繋がりかねないので、こと【魔獣】や【モンスター】相手に容赦や情けなどご法度なのである、のだそうだ。
そんな話をよそに、俺とキールさんの“模擬戦”は佳境に入っていった。
【ステータス】による身体能力の補正に加え、キールさんの【経験】と【技量】は明らかに俺より数段上であり、俺は劣勢に立たされていた。
それでも、何とか食らい付いていられるのは、ひとえに浅野先生直伝の【古流武術】のお陰である。
これは、所謂“相性”の問題でもあり、また、【武術】の成り立ちの差異によるものでもある。
【エンヴァリオン流武術】は、基本的に【ステータス】による身体能力の補正を前提とし、【魔獣】や【モンスター】に対抗する為に発展してきた【剛】の【技術】であり、結構理論的には大雑把な感が否めない。
もちろん、人によっては【巧い】人もいるのだが、基本的には野性的で荒々しい印象が強いかもしれない。
しかし、シンプル故に強い。
一方の俺の扱う【古流武術】は、人同士が争う事を想定とした【武術】であり、まあ、長い発展の末により洗練されてた【柔】の【技術】となっている。
これは(まぁ、これは俺の予測になってしまうが)、日本人は古来より身体的には優れた民族ではない為に、身体の“使い方”を工夫する事によって、最大の力を出せる様にと研究された結果ではないかと思う。
まぁ、そこら辺の“考察”は、この際どうでも良いのだが、そうした意味で、“相性”は悪くないのである。
もちろん、“柔よく剛を制す”なんて言葉もあるのだが、それも絶対的な“相性”ではないし、【柔】の方が優れているとか、【剛】の方が優れているとかではない。
最終的には、その【使い手】次第である。
「見事なモノだが、攻めないといつまで経っても“勝ち”が見えてこないぞっ、トモキっ!」
「それは、分かって、ます、よっ!」
キールさんは力強い剣撃から、当て身、足技など変幻自在に技を繰り出してくる。
それを何とか捌いている俺だが、これでもまだまだキールさんは手加減しているのだ。
何せ、剣撃→鍔迫り合い→投げからの刺突のコンボとか、剣撃→鍔迫り合い→当て身→間接技からの絞め技と言った殺傷力の高い連続技は一切使って来ないからである。
【地力】の違いは明白である。
ならば、俺も“奥の手”を使って勝機を見出だすしかない。
俺に有って、キールさんに無いモノ。
それは、【魔法】である。
「【ファイアーアロー】っ!」
「っと!?」
攻撃と防御の境目、静と動の混在する一瞬を狙って、俺は【攻撃魔法】である、【火の矢】を設置した。
もちろん、これは“模擬戦”であって、俺もキールさんを焼き殺すつもりはないし、また、キールさんも焼け死ぬつもりはないので、当然の如く避けられるのだが、それも考慮済み、ってか、その避ける方向に誘導するのが俺の狙いである。
狙い通り【ファイアーアロー】を簡単に避けたキールさんだったが、若干体勢を崩しつつ、ほんのわずかな“隙”を見せた。
すかさず、俺はそれを狙って【木剣】で強襲する。
「いやぁぁぁぁっーーー!!!」
集中力が高まっていたのか、俺の主観だが、いつもよりも数倍疾い間合いの“詰め”と剣撃がハマった様に感じていた。
「っ!?」
キールさんは面食らっている。
決まったっーーー!
俺は勝利を確信した。
しかし、勝敗は決するまでけして油断してはいけない。
俺は、改めてそう思い知らされた。
「【烈風斬】っ!」
うぇぇぇぇっ~~~!!!???( ; ゜Д゜)
あろう事か、キールさんはニヤリと笑うと、斬撃を飛ばしてきた。
その見えない斬撃自体には、殺傷力はない様だが、突風に伴う砂煙や砂利が俺の視界を奪い、なおかつ、その風力は俺の体勢を簡単に崩してみせた。
「勝負あり、だなっ!」
「っ!?」
俺の視力が戻る頃には、【木剣】を俺の首もとに突き付けて、ニカッと笑うキールさんの姿が見えた。
「一本っ!そこまでっ!」
審判役の騎士団の人の合図で、“模擬戦”が終了した。
「参りました・・・。」
「何、十分だろっ!もう、討伐任務に出ても大丈夫なレベルだぜっ!普通新人は、一年くらいはずっと訓練の繰り返しなんだが、トモキは基礎が出来上がっているからなぁ。それに、トモキの扱う【武術】は非常に面白いし、【魔法】を織り混ぜた攻めも見事だったぜっ!後は、相手を殺傷出来るか、だが、それはトモキの覚悟次第だがなっ!」
「おすっ!っつか、最後のアレは何ですかっ!?斬撃で暴風を発生させた様に見えましたが・・・。」
「おうっ、アレは【烈風斬】って言う俺の【切り札】の一つだよ。俺ら【騎士団】は、基本的に【魔法】が使えない連中で構成されている。まぁ、大体の任務においては、【宮廷魔道士】との連携が前提になってるし、俺らも【弓術】なんかの【遠距離攻撃】の手段を持ってはいるが、混戦や乱戦になると、一々【武器】を持ち変えている暇がない事が往々にしてあるんだ。そんな時に結構重宝する技なんだぜ?トモキも経験した様に、殺傷力自体はないから牽制技になるんだが、砂煙や砂利によって一時的に視界を奪えるし、強風で相手の体勢を崩す事や弓矢の軌道なんかもずらせる、攻防共に使える優れものなんだぜっ?」
「確かに恐ろしい技でした・・・。視界が奪われるのは戦闘中には致命的ですもんねぇ。って、そうではなくっ!・・・えっ?【ステータス】による身体能力の補正ってあんなトンデモ技も可能なんですかっ!?」
「いえいえ、違いますよ、トモキくん。キールの【烈風斬】は、【魔力】を応用した、一種の【魔法剣】なんです。流石に身体能力だけで自然現象レベルの【力】は発揮出来ませんよ。」
“模擬戦”を終えて、キールさんの寸評を聞きながら雑談していると、そこに“模擬戦”を見ていただろうロアンさんが合流した。
何か、後ろでは【宮廷魔道士】の方々がヒソヒソと内緒話をしている。
割と俺ともフレンドリーに接してくれているんだけど、ロアンさんは女性からも人気がある様で、キールさんや俺と親しく会話していると、よくそんな状況になるんだよなぁ。
お前みたいなモンが、私らの王子様(お姉さま)と親しくすんじゃねぇ~よ、ボケがぁ、とかそんな感じだろうか?(被害妄想)
〈現実〉
「きゃあぁぁぁ~。またあのスリーショットよぉっ!」
「尊みがスゴい・・・。」(語彙力喪失)
「トモキくんが来るまで、キール様とロアン様の2強だったんだけど、トモキくんもまた種類の違うイケメンだもんねぇ。」
「ワイルド系イケメンのキール様に、女性に見まごうばかりの中性的なイケメン、ロアン様。そこに突如として現れた、神秘的な王道イケメン、トモキくん・・・。たぎるわぁ。」
「トモキくんにお二方をお付けになったガーファンクル王、グッジョブッ!」(゜∇^d)!!
「貴女はキーロア派?ロアキー派?最近だと、キートモとか、トモキー。ロアトモとか、トモロアなんかも、私は有りだと思うんだけどっ!」(迫真)
「うわっ、コイツやべぇっ!」
「腐ってやがる・・・早すぎたんだ。」
「王道にして正道であるロアキー一択に決まってるじゃないですかっ!!!わたくしはリバは認めませんわよっ!!!」
「オメーもかよっ!?」
「貴女達っ!個人の嗜好を批判するつもりはありませんけれど、それで推しや他人に迷惑を掛けてはいけませんわよっ?」
「そうそう、こうやって陰ながらコッソリ愛でていこうよ!」
「抜け駆け禁止ですわよっ!?」
「けどさぉ、向こうから声掛けられたら、断るのは悪いですわよねぇ~???」
「あぁんっ!?オメーの顔、鏡で見てから出直してこいやっ!!!」
「んだとぉ~!?」
「貴女達っ?」
「「「「「何でもありませんわっ!!!!!」」」」」
「よろしい。」
トモキが思うよりも、現実は非情であったーーー。
「【魔法剣】?けど、キールさんの【MP】は“0”でしたよね?それでも、【魔法】が使える、って事ですか?」
「いえいえ、違います。ここら辺は、少し難しい話になるんですが・・・。こほんっ。まず、前提条件として、私達【宮廷魔道士】やトモキくんが扱う【魔法】は、自身の【MP】を利用しますよね?」
「ええ。」
「ですが、【MP】、または【魔力】と言うのは、人一人が扱える量、つまり、【MP保有量】や【魔力保有量】はたかが知れています。」
「ふむふむ。」
「そんな中で、自然現象レベルの【魔法】をバンバン使用していては、すぐに自身の【MP保有量】や【魔力保有量】は底をついてしまいます。それらが底をつくと、我々は【精神疲労】によって、【気絶】ないしは、しばらく使い物にならないレベルに【精神】を消耗してしまいます。戦闘中にそれは致命的ですよね?」
「そうですね。」
「そうならない為にどうするか?それは、自身の【MP】を“呼び水”にして、大気中に溢れている物質や【魔力】を利用する事なのです。例えば、トモキくんが先程何となしに使用した【ファイアーアロー】も、本来なら術者の【MP】を一気に失ってしまうほどの【物理干渉力】を必要とする【魔法】なのですが、トモキくんはこうしてピンピンしています。これは、【魔法】発動の際に、最初の“火種”を引き起こす為に術者本人の【MP】を必要とはしますが、それ以降後は、大気中の物質や【魔力】によって、その【威力】や【効果】を【増幅】する様に【プログラム】が組み込まれているからなのです。例えるなら、焚き火に火を着けるのと似たような感じですね。」
「ほうほう、なるほど。」
確かにライターなんかでも火を出し続けていると、あっという間に“ガス欠”になっちゃうもんなぁ。
それを、【燃料】に燃え移らせる事でライターによる着火は一時的で済むのと似たような感じ、って事なんだろう。
「とまぁ、そんな感じに、大気中には物質や【魔力】が溢れているのですが、上位の【使い手】などになると、【魔法】とは別の形でそれらに【干渉】する事を可能とする者もいるのです。キールの使用した【烈風斬】は、彼自身の【剣気】、【闘気】を“呼び水”に大気中に発生させた風を【増幅】して対象に叩き付ける技ですね。ただし、これは【魔法】と違って個人の【技量】が必要になってきますから、誰にでも使えるモノではありません。キール自身の【固有スキル】と考えた方が良いかもしれませんね。」
「なるほど。だから【MP】を必要としない【魔法剣】なんですねぇ。」
「ま、そうらしいなぁ。俺は、ある日何となしに出来ちまったから、口で説明するのは難しいんだがなぁ。」
ハハハッと笑うキールさんだが、俺は軽く呆れていた。
いや、キールさんのトンデモ技もそうなんだが、改めてこの世界のムチャクチャさに、である。
一応、ロアンさんが言う様に、【理論】的にはしっかり理由がある様だが、向こうの常識を引きずっている俺としたら、何だかなぁって感じであった。
しかし、よく考えてみれば、向こうの世界の常識も割とこちらの世界の人々から見たらワケ分からんかもしれんなぁ。
何となしに使っていた“スマホ”とか“PC”なんかも、その構造や全容を把握している人は極少数だろうし。
細かい事は把握してなくとも使えるのは、ある意味この世界の【魔法】も向こうの【科学技術】もそう大差ないのかもしれない。
その分野の専門家や技術者や研究者でもないのだから、あんまり気にしても仕方ないか。
「まぁ、それはそれとして、ロアンっ!俺はもうトモキを討伐任務に加えても大丈夫だと思うが、お前はどう思う?今の“模擬戦”は見てたんだろ?」
「そうですね。【魔法】の方の飲み込みも早く、すでに【中級】レベルまで習得していますよ。今の“模擬戦”を踏まえても十二分にやれると思います。まぁ、それと生物を殺傷出来るかはまた話は別ですけどね。」
「それは俺も言ったけど、この世界で生きていく以上、遅かれ早かれ避けては通れない道だろ?」
「まぁ、そうですね。トモキくんの“事情”を考えれば、一生“争い事”と無縁、と言う訳にはいかないでしょうしねぇ。」
「決まりだなっ!トモキはどうだっ?」
「そうですね。本音を言えば正直恐いですけど、この世界のもう一つの“現実”からは目を逸らしたくありません。俺がこの世界でやれる事ってのが何なのかまだよく分かりませんが、経験を積んでおいて損はないかと思います。それに、ぶっちゃけた話、キールさんやロアンさん、皆さんが一緒なら心強いですしねっ!」
そう俺が発言すると、キールさんとロアンさんは朗らかに破顔した。
「ハハハッ、トモキは正直だなっ!しかし、その判断は悪くはないっ!猪突猛進で突っ込まれるより、慎重なくらいの方がずっと良いからなっ!」
「その通りですね。私達は一人ではありません。一人で気負い過ぎても仕方ありませんし、自分の【役割】をきっちりこなしていれば、“仲間達”を頼る事は有りだと思います。」
「んじゃ、決まりだなっ!」
「はい。」
「ええ。」
そんな感じで、俺はこの世界における、新たな“段階”に進む事となったのだったーーー。
◇◆◇
「チッ、あの【異世界人】、調子に乗りやがって・・・。」
「キールとロアンもな。【平民】出身の分際で、ガーファンクル王の覚えめでたいからと、最近の“立ち居振舞い”は目に余るぞ?」
「しかし、どうする?ガーファンクル王から、【異世界人】には手を出すなと警告されているだろう?」
「皆様方、私にお任せ頂けませんか?」
【エンヴァリオン近衛騎士団】も一枚岩ではない。
ガーファンクルは革新的な男であり、なおかつ一度瓦解しかけた【エンヴァリオン王国】を立て直す為に、優秀な人材は【貴族】・【平民】問わず重用した結果、今現在の様に文官、武官共に【貴族】・【平民】が入り乱れた状態になっていた。
もちろん、大半の【貴族】達も、最初は反発したものの、国の状況を鑑みガーファンクルの判断に渋々ながらも従っていた。
その内、実際に結果を出してきた【平民】出身者達を今では認める様になり、【エンヴァリオン王国】の【貴族】と【平民】の意識の差違はかなり狭まる事となった。
優秀な人材には【貴族】も【平民】もないと、考えを改める者達も現れ始めた。
しかし、いつの世も、時流に乗れない者達、【特権】にしがみつく者達はいるものである。
ここに【密談】を交わしている者達も、所謂【名門貴族】の出身者達なのだが、【実力】に関してはお察しである。
しかし、自分達の事は棚に上げて、【実力】でその【地位】を勝ち取ったキールやロアンに鬱屈とした“嫉妬心”を持っていたのである。
何か汚い事をしたに違いない。
本来なら、そうした【地位】に就くのは自分達なのである。
と、言う様な感じで、実際にはただの思い込みや妄想を愚痴りながら、なけなしの【自尊心】を守っていたのである。
しかし、そこに、【エンヴァリオン近衛騎士団】・副団長にして、同じく【名門貴族】出身のサイゲイが接触してきたのであった。
「これは、サイゲイ殿。一体どういう事です?」
「いえね?ガーファンクル王のご命令とは言え、最近のキール団長とロアン筆頭はトモキ殿に掛かりっきりでしょう?そうなれば、必然的に我ら【貴族】が代行して【組織】を纏めなければならないじゃないですか?しかし、それに対してお二方は我らを軽んじておられるのではないか、と思っているのですよ。もちろん、ガーファンクル王の警告の手前、大層な事をするつもりはありませんが、我ら【貴族】がいなければ、やはり困るのだと示せれば良いと思いませんか?」
「なるほど。」
「確かに。」
「しかし、具体的にどうされるのですか?」
「そこで、討伐任務を利用しようかと考えているのですよ・・・。」
その【密談】が、後に大事になるなどとは、その時の彼らは思いもしていなかったーーー。
誤字・脱字などありましたら、ご指摘頂けると幸いです。
ブクマ登録、評価、感想等頂けると幸いです。お嫌でなかったら、是非ともよろしくお願いいたします。
また、もう一つの投稿作品、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」もボチボチ更新しておりますので、本作共々御一読頂けると幸いです。




