勇者アイザワ・トモキの憂鬱 3
続きです。
説明回です。
しつこくならない様に、なおかつ、最低限伝わる様にと考えていますが、はたしてどうでしょうか?
◇◆◇
ガーファンクル王との謁見を終えた俺は、その後、キールさんとロアンさんの案内で、このお城の中を一通り見て回った。
いやいや、広すぎでしょ・・・。
先程までは、一国の王に謁見する事に緊張していてじっくり観察する余裕もなかったのだが、改めて見てみると、豪華絢爛な内装や装飾品の数々に俺は圧倒されてしまった。
広さは、東京ドーム〇個分。って、たまにニュースなんかでそう表現しているが、正直全くピンと来ない。
まぁ、凄い大きさや広さなんだろ~なぁ、くらいの感想しか出てこないので、ここでは俺の主観で、公立高校が十棟ぐらいは軽く入るだろう、って所で一つ広さを感じて貰えればと思う。
その中には、所謂【ロイヤルスイートルーム】とも呼ぶべき贅を尽くすにも程があるだろう、と言う部屋があり、「ここがトモキの滞在する部屋だっ!」と、耳を疑う発言がキールさんから飛び出したりもした。
一般庶民である俺には、一生縁がないと思っていた超高級ホテルも霞むほどの部屋に、俺は軽く目眩すら覚えた。
根っから小市民である俺は、流石にこんな部屋では落ち着くモノも落ち着かないと難色を示した事で軽く一悶着あったのだが、結局「陛下のお客様を無下に扱えませんっ!!!」と、ロアンさんがうっすら涙を浮かべてそう訴えるモンだから、俺は渋々その部屋を使う事に落ち着いた。
いやいや、女の人を泣かせたとあっては、俺は罪悪感に耐えられそうにないからなぁ。
その後、あちこち見て回ったが、結局俺に関係がありそうなのは、その部屋と食堂、トイレに大浴場、後は教練所一帯って所だろうか?
このだだっ広いお城は、どうやら俺の世界で言う所の、政治中枢と軍隊の施設がごっちゃになった様な場所、って感じなんだろう。
まぁ、もっとも、軍隊と言っても、ガーファンクル王の側付きの近衛騎士団や宮廷魔道士と言った、所謂エリートが張り付いているだけで、他の主だった人員は各所に配属されているらしいので、ここにいる人達はその極一部なんだそうだが・・・。
・・・
「んじゃ、後は軽く説明して今日の所は終わるかっ!トモキの世界には【ステータス】ってあったか?」
「いきなりそんな話してもだめですよ、キール。トモキくんは、こちらの世界に来たばかりなんですから、まず【身分証】自体持っていない筈ですからね。」
「あぁっ、そうかっ!」
「しかし、ご心配には及びません。とりあえず仮ではありますが、【騎士団カード】を発行して貰いましたから、こちらを使用すれば問題ありませんよ。」
「さっすが、ロアンは準備がいいぜっ!」
「【騎士団カード】?」
俺達は、今教練所の一画にある建物の一室にいた。
そこは、所謂“作戦会議室”と言うヤツで、ここで“作戦”説明やら“座学”を受けるらしい。
まぁ、学校で言う所の“教室”みたいなモノだな。
規模は桁違いだけど・・・。
後、教練所には学校で言う所の“校庭”や“体育館”、“弓道場”みたいな場所もあった。
そこを使って、剣術や【魔法】の訓練をするらしい。
っつか、やっぱ【魔法】って聞くとテンション上がるよなぁ。
「【騎士団カード】は、【身分証】の一種です。一般市民の持つ【市民証】や、【冒険者】が持つ【冒険者カード】などと基本的には同じですね。ただし、当然【身分証】ですので、これを持つ為にはある一定の【資格】が必要になります。一番手っ取り早く入手可能なのは【冒険者カード】で、これは【冒険者ギルド】で手続きと手数料を支払えば、【犯罪者】でなければ誰でも手に入れる事が出来ます。ただその代わり、【権限】としては一番ランクが低いですが・・・。言い方はアレですが、基本的に【冒険者】と言うのは“流れ者”ですので、【社会的信用】が高くありません。ですから、一般市民ならば受けられる【ローン】など、一部サービスが受けられないといったデメリットがあるのです。具体的には、住宅など大きな買い物をする場合、相当な資金を必要としますから、一般市民なら【ローン】を利用して購入する所を、【冒険者】は全て一括現金払いで賄わなければならないのです。相当優秀な【冒険者】なら、その収入は下手な【貴族】を軽く上回りますが、これは一部の者の話で、大半の【冒険者】達の収入は、一般市民より低いのが実情でしょうね。」
おぅふ・・・。( ̄ω ̄;)
【異世界】に来て、いきなり夢を壊されたぜ・・・。
「しかしその一方で、【冒険者】は自由でもありますし、【冒険者ギルド】の存在は、ある程度の【犯罪防止】の抑止力にも繋がります。この世界では、まぁ、【魔神戦争】以降は表立った対立はありませんが、国同士による【戦争】や、こちらはもっと身近な脅威ではありますが、【魔獣】や【モンスター】の襲撃などといった事も起こり得ます。【戦争】によって故郷を失う、【魔獣】や【モンスター】の襲撃で故郷を失う、と言った事も珍しくないのです。もちろん、それに対抗する【防衛力】として、私達【騎士団】や【魔道士】、【冒険者】達がおりますが、それでもそうした事態を完全に防ぐ事は残念ながら出来ないのが現状です。故郷を追われた人々も、当然食べていかなければ死んでしまいます。そうして【難民】となった者達が、最終的に【盗賊】に堕ちてしまう、と言った例も多いのです。嫌な話、人から奪う方が楽ですからね。ただし、【盗賊】などの【犯罪者】になるのは相当なリスクがあります。【犯罪者】達は、その【犯罪歴】次第で賞金付きの【討伐対象】になりますから、賞金狙いの【冒険者】達に狙われる事になります。しかも、その【条件】は“生死を問わず”なんて事もしばしばあります。まぁ、捕らえられてもほとんど【死罪】なんですけどね。しかし、【冒険者】として登録しておけば、とりあえず【冒険者カード】が【市民証】代わりにはなりますし、その人の腕次第では、【定職】を得る事も可能です。例えば各種【職人】などですね。また、その国の【市民】となる、つまり【市民証】を正式に取得するには、【市民】からの【推薦】、【保証】が必要になりますから、それなりにハードルは高いですが、不可能ではありません。まぁ、そうした“救済策”を提示しても、【盗賊】になる者はなりますけどね・・・。」
うぅむ、この世界も意外と世知辛いんだなぁ。
しかし、例えファンタジーみたいな世界だとしても、人が生きていく以上働くのは当然か。
「それに、【冒険者】は夢のある職業でもあります。その人の【実力】次第ではありますが、一攫千金も夢物語ではありませんからね。それ故、特に若い男性からは結構人気の職業でもあるんですよ?まぁ、大半の場合は夢破れて家業を継いだり、別の職業に転向するんですけどね。」
何か、芸能界に憧れる若者みたいな感じだなぁ。
「さて、それで【騎士団カード】ですが、これは本来数々の試験を潜り抜けないと手に入れる事が出来ないモノです。私達は国に仕える武官ですから、文武共に優れている事を求められます。言うなれば、【市民】の模範となるべき代表、と言った所でしょうか?それ故に、嫌らしい話、【社会的信用】は非常に高いですし、お給金もかなりのモノですよ?ただし、国に仕える身ですから、それなりに【制限】がありますけどね。具体的には、軍事的・政治的機密漏洩防止の為に、少なくとも退役するまでは他国に行く事を禁じられています。まぁ、作戦活動なら話は別ですけどね?今回トモキくんに使用してもらう【騎士団カード】は、普通の武官達が持つ物とは違い、【権限】や【制限】は何もありません。言うなれば、仮【市民証】の様なモノだと思って下さい。トモキくんは【異世界人】ですから、当然エンヴァリオンの【市民証】を持っていませんし、【冒険者ギルド】で【冒険者カード】を作るのは些か時期尚早ですからね。この世界の事を知らない内は、下手に【外の世界】に関わらない方が良いでしょう。私も伝え聞いただけですのであまり詳しくはありませんが、【異世界人】は特殊な【力】を持っているそうですから、トモキくんが【異世界人】であるとバレると、色々な勢力からその【力】を狙われる可能性は十分にあるでしょう。まぁ、トモキくんの“意思”次第では【外の世界】に飛び出して行く事もあるかと思いますが、少なくとも十分な【知識】と【力】を身に付けるまではお城に滞在される事をお勧めします。トモキくんは、すでにそれなりの武術の心得がある様ですが、【実戦】となると話はまた別ですからね。」
「実際、俺らも散々訓練をしたけど、初めての【実戦】の時はマジでビビったからなぁ。俺らも【魔神戦争】以降に武官になったクチだから、【戦争】自体はまだ経験した事はないが、【冒険者】達の手に追えない【魔獣】の【異常繁殖】や【モンスター】の【怪物行進】の討伐には駆り出される事が結構あるんだ。訓練と表して、【魔獣】や【モンスター】を【間引き】する事もな。端から見れば残酷かもしれんが、俺らも俺らの【生活圏】を守らなければならないからな。これも、言わば生存競争だよ。」
「なるほど・・・。」
【女神様】から、この世界は危険な世界だと聞いてはいたが、実際現地の人の話を聞くとマジでヤバいみたいだなぁ。
【チュートリアル】と表して、まぁ、多少面倒な目にもあったが、ガーファンクル王の協力を得られたのは、ホントラッキーだったのかもしれない。
【女神様】、グッジョブッ!(゜∇^d)!!
〈・・・どういたしまして~。〉
・・・うん、何やら聞こえた気がするが、今はキールさんとロアンさんの話に集中しようっ!
「さて、長々と説明してきましたが、本来の説明に戻りましょう。【身分証】の重要性は、何となく理解して頂けたと思いますが、今度はもう一つの重要な要素、【ステータス】の説明に移りたいと思います。トモキくん、この【騎士団カード】に、トモキくんの【血】を一滴染み込ませて下さい。ああ、ご安心下さい。傷はすぐに癒しますから。」
そうロアンさんが言うと、キールさんが短剣を俺に差し出した。
うぅ、自分で自分を傷付けるのって結構勇気がいるんだなぁ。
痛いのとか注射なんかは割と平気なんだけど。
「っつ!」
「【ヒール】っ!」
「おいおい、トモキ。薄皮をちょっと削るだけでいいんだぞ?結構ガッツリいったなぁ。まぁ、ロアンの【回復魔法】があるからいいけどよぉ。」
慣れない作業故に、俺は結構深く自分の指を傷付けてしまった。
指が取れないで良かった・・・。
すかさずロアンさんが【呪文】らしきモノを唱えると、俺の傷口はみるみる塞がった。
スゲー、これが【魔法】かぁ。
「トモキくんは、刃物の扱いには不慣れな様ですね。【回復魔法】も万能ではありませんので、怪我には気を付けて下さいね。しかし、これで“準備”は整いました。トモキくん、【騎士団カード】に向かって【ステータスオープン】と唱えてみて下さい。」
「【ステータスオープン】っ!」
言われるがままに俺は“キーワード”を唱える。
すると、まるで“立体映像”の様に、【騎士団カード】からゲームで言う所の【ステータス画面】の様なモノが映し出された。
「おぉっ!!!スゲーッ!!!」
「これがキールが言っていた【ステータス】ですね。字は読めますか?」
「え~と・・・。」
名前:アイザワ・トモキ
性別:男
種族:人間
職業:無職
年齢:15歳
レベル:1
HP:66
MP:52
攻撃力:50
防御力:44
力:50
耐久:42
器用さ:66
敏捷性:61
素早さ:58
知性:46
精神:44
運:9
魅力:62
《スキル》
古流武術(中級)
(特記事項:《異能》 強化系)
「うん、読めますが、意味はよく分かりませんっ!」
「まぁ、比較対象がないですからね。どれ、私達が見てもよろしいですか?」
「ええ、どうぞ。」
何でわざわざ聞いたんだろう?
でかでかと映し出されているから見えるだろうに。
「私達を信用して頂いてありがとうございます。しかし、他人に無闇に【ステータス】を見せてはいけませんよ?」
「えっ?でかでかと表示されていますけど・・・?」
「そうなんですが、本人の許可がないと、通常は他人は見る事が出来ないのです。こう、ぼやけて見えると言いますか・・・。まぁ、それも【鑑定】なんかの【スキル】で盗み見る事も可能なので、普通は【隠蔽】や【偽装】なんかで保護するんですよ。【ステータス】は、言わば【個人情報】ですからね。」
「なるほど・・・。」
知らなければ、俺は常に【個人情報】をただ漏れにする所だったのか・・・。( ; ゜Д゜)
名前や職業や年齢、果ては【スキル】なんかもバレたら、それを悪しき事に利用するヤツがいても不思議じゃないからなぁ。
「どれどれ・・・、ほぅっ!これは凄いっ!レベル1でこの【パラメータ】とはっ!」
「ええ、大したモノです。」
「あれ、これって結構スゴいんですか?」
キールさんとロアンさんが俺の【ステータス】を見ると、感嘆の声を上げた。
俺って結構スゴいの?
「ええ、一般的なレベル1の者は、【パラメータ】が20以下、かなりの才能のある者でも30以下が平均値です。まぁ、【職業】によっては、いずれかの数値が100以上に達する人もいますがね。この数値は、ハッキリ言って誇っても良いと思います。よほど優秀な師匠のもとで修行されたんですねぇ。まぁ、【運】の数値が低いのが気にはなりますが・・・。(ボソッ)」
いやぁ、浅野先生を引き合いに出されると、単純に嬉しいぜ。
何せ、あの人は俺の尊敬する人だからなぁ。
「これなら、ある程度【レベル】を上げれば、俺らもあっという間に追い抜かれるだろうなぁ。やっぱ、【異世界人】ってスゲーんだなぁ。」
「いえいえ、これはトモキくん自身の【実力】ですよ。他の【異世界人】達は、最初は【パラメータ】自体は一般的なレベルだったと聞き及んでいますから。まぁ、その特殊な【力】を使いこなす事や【レベル】を上げる事によって、大きく成長した様ですけどね。」
「ふぅ~ん。」
「ちなみに、お二人はどのくらいの【レベル】なんですか?」
「おうっ、【ステータスオープン】っ!ほれ、見ていいぜっ!」
「【ステータスオープン】っ!私もどうぞ。」
どれどれ。
名前:キール・サラマ
性別:男
種族:人間
職業:エンヴァリオン近衛騎士団・団長
年齢:26歳
レベル:38
HP:489
MP:0
攻撃力:451
防御力:424
力:406
耐久:402
器用さ:192
敏捷性:307
素早さ:301
知性:84
精神:91
運:198
魅力:286
《スキル》
エンヴァリオン流武術(超級)、指揮術(一般)、礼儀作法(一般)
名前:ロアン・エンヴァリー
性別:男
種族:人間
職業:エンヴァリオン宮廷魔道士・筆頭
年齢:24歳
レベル:34
HP:291
MP:485
攻撃力:103
防御力:98
力:84
耐久:81
器用さ:264
敏捷性:353
素早さ:354
知性:452
精神:459
運:206
魅力:308
《スキル》
魔法全般(超級)、指揮術(一般)、礼儀作法(一般)
やっぱ、桁が違うなぁ。
その数値がどの程度凄いのかはハッキリ分からんけど、俺が感じていた通り、やはりお二人は今現在の俺より桁違いに強い事は確かなんだろう。
・・・んっ?
・・・あれっ?
・・・俺の目の錯覚かなぁ?
「あの、ロアンさん・・・?えっ、男って・・・?」
「やっぱ初見なら分かんねぇよなぁっ!コイツ、正真正銘の男なんだぜっ?中性的にも程があるっつ~のっ!」
「止めて下さいよっ、キールっ!私だって、この容姿は結構なコンプレックスなんですからねっ!幸い、宮廷魔道士は女性も多い職場なので気は楽ですが、たまに男性から言い寄られるんですよ、私っ!男所帯の騎士団に入っていたらと思うと、私は貞操の危機を本気で感じていたかもしれませんよっ!」
えぇ・・・、マジか・・・。
普通に綺麗な女の人にしか見えんが・・・。
淡い憧れを持っていただけに、何かショックだわ・・・。
っつか、俺って意外と惚れっぽいのかしら・・・?
〈思春期男子なんて、そんなモンですわよぉ~・・・。〉
・・・うん、また何か聞こえた気がするが、とりあえず無視しておこう。
関わるとロクな目に合わん気がするし、主に俺の心の平穏の為に。
「あれっ?キールさんの【MP】が“0”になってますが、これは何ですか?」
「俺は【魔法】が使えないんだよ。【魔法】の才能がないって言った方が良いかもしれんがな。」
「厳密には、多少違うのですが、まぁ、その認識で間違いではありませんね。人によって、“向き不向き”がありますから、キールが【戦士系】の【職業】を選んだのは正解だと思います。【MP】は訓練次第で延びしろのあるモノですが、持って生まれた部分も大きいのです。トモキくんは【MP】も高い数値を持っている様ですが、これが“0”と言う人は決して珍しくないんですよ。中にはどうしても【魔道士】になりたくて、訓練に励む人もいますが、中途半端な【ステータス】構成になってしまう事が大半です。己の【力量】を見定めて、時にはどれかを切り捨てる事も大事なんです。“理想”と“現実”は違う事が多いですからね。」
「なるほどねぇ~。」
MMORPGなんかでも、どの様な【ステータス】構成にするかで明暗が別れる事も多いからなぁ。
現実世界だと、後で【ステータス】構成を振り分け直す、なんて事は不可能だろうしね。
「と、まぁ、この様に【ステータス】は今後の【指針】にもなりますから、非常に重要なのです。この【機能】は、【身分証】には必ずついているんですよ。ただ、先程キールが【レベル】を上げれば云々と言っていましたが、数値自体は訓練次第でも増減が可能です。」
「えっ!?【レベル】を上げないとこの数値って上がらないんじゃないんですかっ!?」
「そんな事はありません。【レベル】を上げると言う事は、言わば己の【器】を強化する事。つまり、他者を倒し他者の生命を取り込む事で、己の【器】を強化しているんです。それによって、自身の【ステータス】の【成長率】が大幅に上がりますから、そう言う“迷信”が信じられている事も多いのですが、一般市民の中には【魔獣】や【モンスター】と戦った事すらない人は大勢います。そうした人達は、もちろんレベル1のままですが、しっかりと己の【職業】に邁進していますよね?もちろん、【レベル】差は大きな意味を持ちますが、【分野】によってはそれは絶対ではないのです。」
「ほぇ~、なるほどぉ~。」
考えてみたら当たり前か。
俺も向こうで、浅野先生から古流武術を学んでいたが、【レベル】や【ステータス】なんてモノは存在しなかった訳だし。
それでも、地道に続ける事で体力やら筋力がついた事は自覚出来たし、技もいくつか身に付けている。
こちらの世界の【ステータス】とは、それを数値化しているに過ぎないって事か。
実際、キールさんとロアンさんの発言から、俺の【ステータス】はレベル1にして一般的なレベルを大きく逸脱している様だし。
これも、浅野先生の教えの賜物って事だな。
残念ながら、俺は目録止まりで死んでしまったが、もし印可、免許、皆伝、口伝と進んでいたら、やはりこの【ステータス】構成もかなり変わったのかもしれない。
それと同じって事だろうな。
「さて、今日の所はこんな感じでしょうか?まぁ、先程も申し上げましたが、トモキくんは【異世界人】ですから、残念ながら一般市民の様な平穏な日常は送れないでしょう。そこは早々に諦めるをつけた方がよろしいかと思います。ですが、十分な【知識】と【力】を身に付ければ、それに近い環境にはなるでしょう。」
「まぁ、【職業】の幅はせばまっちまうが、トモキなら近衛騎士団でも通用するぜっ!何なら騎士団に正式に入隊してもいいっ!」
「あっ、ズルいですよ、キールっ!トモキくんなら、宮廷魔道士にもなれますよっ?歓迎しますっ!」
「えっ!?えっと・・・。」
いきなりスカウトされてしまって、俺は困惑したが、キールさんとロアンさんはいたずらっぽく笑った。
「まぁ、それはトモキの自由だぜっ!何に成るか、何を目指すかはなっ!」
「陛下もトモキくんの自由は保証されましたからね。もちろん、トモキくんの“意思”次第で私達と共にエンヴァリオンに仕えても良いですし、他の【職業】、それこそ、【冒険者】になる事も可能です。まぁ、ゆっくり考えてみて下さい。」
「はぁ・・・。」
何か、もっと先の事みたいに感じていたが、とうやら【進路】を考えなくちゃならんらしい。
しかし、この世界には俺の身内はいないから、働き口は自分で確保しなきゃならんか。
まぁ、とりあえず、ここでお世話になりながら、じっくり考えてみる事としますかねぇーーー。
誤字・脱字がありましたら、ご指摘頂けるとありがたいです。
ブクマ登録、評価、感想等頂けたら幸いです。
お嫌でなかったら、是非お願いします。
また、もう一つの投稿作品、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」の方も、御一読頂けると幸いです。本作共々よろしくお願いいたします。