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勇者の師匠は遊び人っ!?  作者: 笠井 裕二
遊び人と勇者の出会い編
31/62

オルレゾー大森林地帯の異変

続きです。



【トロール】とは、エンドゲイト(この世界)の【モンスター】の一種である。

【ゲーム】なんかではお馴染みの【モンスター】であるが、実はその【原型(ベース)】となった【種】は、【神族】あるいは【伝説上の化け物】なんかとして、向こうの世界(地球)の【神話】や【伝承】などにも登場しているのである。

まぁ、これには様々な説が存在するが、ここではその詳細は割愛する。


さて、ではエンドゲイト(この世界)の【トロール】の説明になるが、もちろん一般的には中々遭遇しない様な【モンスター】だが、【冒険者】達としてはそれほど珍しい【モンスター】ではなかった。

と、言うのも、エンドゲイト(この世界)でも非常にポピュラーな【モンスター】として、【ゴブリン】や【オーク】は一般的にも認知度が高いのだが、この【トロール】も、時おり【ゴブリン】や【オーク】と共に姿を現す事があるからである。


客観的な【力量】としては、


【トロール】>【オーク】>【ゴブリン】


となるので、同時に現れたとしても、仲間と言うよりかは【ゴブリン】や【オーク】を【力】で従えているのだが、逆に【生息数】で言うと、


【ゴブリン】>【オーク】>【トロール】


となるので、必然的に一般的な目撃数は減る、と言う訳なのである。


【冒険者】達は、“外の世界”での活動も多くなるので、必然的に【モンスター】との【遭遇率】も高くなる。

故に、【冒険者】達としては【トロール】はそこまで珍しい【モンスター】ではないのである。


一方で、割と頻繁に遭遇する可能性が高い割には、【危険度】は非常に高い。

まぁ、これは野生生物を始め、【魔獣】や【モンスター】全般に言える事だが、基本的に彼らは【本能】で生きている為に、自分以外の生物は、【敵】か【餌】でしかない。

故に、それらに遭遇した際は、高確率で襲われる危険性があるのだ。


【トロール】はその中でも、とりわけ大きな体躯を持ち(身長2m~5mほど)、【人間種】を一撃で撲殺出来るほどの怪力を持ち、極めて高い【再生能力】を有しているのである。

欠点としては、動きが鈍重であり、知性にも欠けるので、ベテラン【冒険者】ならば、例え一人であろうともいくらでも対処のしようはある。

しかし、一つのミスが命取りとなる為、特に新人【冒険者】としては、非常に危険な【モンスター】なのであった。



さて、ここで先程の【神話】や【伝承】云々が関係してくる話なのであるが、【トロール】の【原型(ベース)】となった【種】は、【神族】の端くれであったり、【伝説上の化け物】であったり、あるいは【悪】の尖兵だったりするのである。

つまり、本来はそれだけ強力な【力】を有している【種】なのだが、先程述べた通り、今現在ではベテラン【冒険者】であれば、一人であっても十分な対処が可能なほどに【種】としての【ランク】を落としている。

これは、【人間種】や各種【魔獣】や【モンスター】にも言える事だが、長い時を経て、【血】が薄れていった事が原因だと考えられている。


しかし、その中でも、リタの例にもある様に、時おり【先祖返り】の様に強力な【力】を有した【個体】が現れる事があった。

前述の通り、それらの【個体】の【力】は異常とも呼べるほど強大で、もし、そうした【個体】が現れる事があれば、これは【国家】レベルの危機であった。

もっとも、それほど強力な【力】を有した【個体】が現れる事は稀で、【文献】では、最後に現れたのが数百年ほど前となっていた。


ところが、これはこれまで何度となく言及しているが、【魔神戦争】や【世界同時厄災】の影響で、今現在のエンドゲイト(この世界)では、そうした【神話】や【伝説】規模の【怪物】が現れやすい環境になっていた。

そして、その危険な【個体】が、【交易都市・アングレット】の比較的近郊にて、ひっそりと産声を上げていたのだったーーー。



◇◆◇



すられたサイフ分の稼ぎを補填する為に、俺達は【クエスト】を請け負い、【交易都市・アングレット】からほど近い、【オルレゾー大森林地帯】を訪れていた。



・・・



【交易都市・アングレット】は、エンドゲイト(この世界)でも有数の【大都市】であり、また、かなり特殊な【統治機構】が置かれている所でもあった。

と、言うのも、アングレット(この街)は立地的にも、物流的にも、エンドゲイト(この世界)の中心の一つなのだが、逆に言うと、複数の【国】の【国境】に隣接する土地柄でもあったのだ。

【エンヴァリオン王国】もその一つなのだが、アングレット(この街)が何処の【国】に【所属】しているかによって、その各国のバランスは大きく変わってしまう。

先程も述べた通り、それほどまでに【戦略的価値】も高く、さらに【経済的価値】も非常に高いのである。

事実、アングレット(この街)の【利権】や【支配権】を有する事は、他の【国】に対する大きな【アドバンテージ】になる。

古来より、アングレット(この街)を手にする事は、各国に対して優位に立つ事と同義であった。


しかし、今現在では、アングレット(この街)は何処の【国】にも属さない一種の【中立都市】となっていた。

これは、【魔神戦争】真っ只中、アングレット(この街)の【有識者】達と各国の【トップ】達が協議の末に取り決められた事なのだが、ぶっちゃけると、アングレット(この街)が何処の【国】の【所属】になろうと、その【国】の有利に事を進める為に、人的制限や【関税】を掛ける様になるので、結果的には全体的な物流が滞ってしまう様になるのだ。

これは、長い目で見ると、それぞれの【国】に【悪影響】をもたらしてしまう。

当たり前だ。

結局、【経済】というモノは、人と物を回してナンボである。

それを制限するのだから、結果的にはお互いがお互いに足を引っ張り合う状況になってしまうのだ。

それは、それぞれの【国】にとって損でしかない。

特に、世界全体で【魔神】一派という脅威に立ち向かう為には。


そんな事もあって、今現在のアングレット(この街)は、一つの【都市】でありながら、各国の【共同統治】という“形”ではあるものの、一つの【独立】した【国】でもあるのである。

もっとも、【魔神戦争】が終結した事により、再び【各国】がアングレット(この街)の【利権】や【支配権】を虎視眈々と狙う状況に舞い戻ってはいるが。

目先の【欲】に囚われる者達というのは、いつの世もなかなか尽きないモノである。

ま、そうした難しい話はともかくとして。


立地的には、これは【城塞都市・クヌート】と同様に、その四方を自然の要塞とも言える森や山や湖に囲まれたなだらかな平地に存在した。

と、言うよりも、エンドゲイト(この世界)の自然は非常に過酷な環境であるので、基本的に【人間種】は、比較的安全な平地にその生活圏を求めるのである。

もっとも、【エルフ族】などの様に、自然と調和して生きる【種族】も存在するが。

ただし、人や物の出入りはクヌートの比ではない。

先程も述べた通り、アングレット(この街)は立地的にも、物流的にも、エンドゲイト(この世界)の中心の一つだからだ。

それ故に、ある種【一攫千金】も夢ではなく、世界中から、【商人】や【冒険者】、【職人】などが集まる土地でもあった。


まさに、木を隠すなら森の中と言う言葉通り、ガーファンクル王の【盟友】である【異世界人(カミキ・ハヤト氏)】が居を構えるのに、これほど適した土地はないだろう。

もちろん、俺の“アンダーカバー(偽りの半生)”の【育ての親】の()()の様に、本当の深い森の中で身を隠す手段もあるが、そうすると世情に疎くなる危険性もある。

一方で、アングレット(この街)の様に、人や物で溢れる場所であれば、確かに【異世界人(カミキ・ハヤト氏)】の【力】を狙った様々な勢力が流れてくる事もあるだろうが、その【情報】や様々な世界の【情報】がいち早く彼の耳に入る事になると言う寸法だ。

【情報】が重要なのは、今さら議論するまでもないだろう。

そうした意味では、カミキ・ハヤト氏は、おそらく、頭の非常に切れる人なんだろう、と思うが・・・。

正直、【MOB同盟】から得た情報によって、俺の中では彼の評価が乱高下している。

実際に会ってみない事には、その正確な“人となり”は判断がつきそうになかった。


そして、それに関しては、何の因果か、俺と【MOB同盟】は協定を結ぶ事となり、カミキ・ハヤト氏の所在は【MOB同盟(彼ら)】が調べてくれる事となった訳である。

聞いた話によると、ある種【正攻法】ではカミキ・ハヤト氏の【情報】を掴むのは難しいらしい。

しかし、確定情報ではないが、目撃情報のある“夜”の街を張っていれば、少なくともコンタクトを取る事は可能かもしれないそうだ。


しかし、残念ながら、俺は“パーティーメンバー”達のブロックがあるので、“夜”の街に繰り出す事は難しい。

そこで、【MOB同盟(彼ら)】の出番と言う訳である。

色々と衝撃的な出会いではあったが、【MOB同盟(彼ら)】には感謝しよう。

んで、その進捗を待ちながら、俺達はアングレット(この街)でしばらく腰を落ち着けている訳なのだが・・・。



・・・



「こんちわぁ~。」

「ああっ、トモキくんっ!それにリタさんもっ!!良い所に来てくださいましたわっ!!!」

「えっ・・・、ど、どうしたんすか、プリシラさん?」


サイフをすられた俺は、とりあえず適当な【クエスト】を受けようと、リタを伴ってアングレット(この街)の【冒険者ギルド】を訪れていた。


流石にエンドゲイト(この世界)有数の【大都市】だけあって、アングレット(この街)の【冒険者ギルド】は、クヌートよりも更に豪華かつ広大で立派な建物であった。

当然ながら、【冒険者ギルド()アングレット支部()】に集う【冒険者】達も実力者揃いであり、【C(ランク)】以上の猛者達がひしめきあっている。


ちなみに、俺の今現在の【冒険者】としての【ランク】は【D(ランク)】であり、【冒険者】としてはいっぱしを名乗っても問題ないレベルである。

しかし、アングレット(この街)の平均レベルで言えば、下から数えた方が早く、また、俺の“特殊な事情”も知れ渡ってはいない、ハズである。


にも関わらず、俺は、この【受付】のお姉さん、プリシラ・スチュワートさんにしっかり名前を覚えられていた。

まぁ、原因は分かっているんだけどね。

ウチの“パーティーメンバー”達は、アングレット(この街)でも目立ってるからなぁ~。( ̄▽ ̄;)


「ちょっと折り入ってお願いが・・・。少しお時間よろしいですか?」


やや上目遣いで此方を窺うプリシラさん。

当然の様に、プリシラさんも美人さんだ。

以前にも言及したが、【受付窓口】の人達は、基本的に若く見目麗しい女性達で構成されている。

これは、【冒険者ギルド】側の【戦略】であり、基本的に男性【冒険者】が大半を占める【冒険者】稼業では、彼らを上手く動かす必要がある。

しかし、変なプライドもあってか、彼らは男性職員の話は素直には聞かないのである。

逆に、女性、特に見目麗しい女性には、良い所を見せようと、かなり調子良くなったりするのである。

【クレーム】に関しても同様である。

まぁ、それ故に、女性職員をめぐったトラブルなんかもあるんだけどね。

どちらにせよ、男と言うのは、結構単純な生き物なのである。

かくいう俺も、ものの見事にそれに引っ掛かっていた。


「え、ええ・・・。もちろんいいですよ。///」

「コホンッ・・・!プリシラ殿。私も同席してもよろしいですかな?」

「ええ、もちろんです。本当は、ソフィアさんとネーファさんも御一緒ならば良かったのですが・・・。」


じと目で俺とプリシラさんの間に割って入るリタだが、プリシラさんはさもありなんと頷いた。

どうやら、普通に何かの問題事なんだろう。

べべべ、別に残念がってねーし。((((;゜Д゜)))


「ソフィアとネーファさんは、いつのまにかいなくなってたんすよね・・・。まぁ、後で事情は説明しますよ。とりあえず、お話をお聞かせ願えませんか?」

「そうですか。では、こちらへどうぞ。」


コクリと頷くと、プリシラさんは俺達を【冒険者ギルド】の奥へと案内してくれた。



基本的には、【クエスト】の依頼なんかの【手続き】は、【受付窓口】で済ませるのが一般的なのだが、クヌートの【冒険者ギルド】同様に、内々の依頼なんかも存在する。

そうした場合、クヌートの【冒険者ギルド】では“パーテーション”で区切られた一画で打合せをしたのだが、アングレット(この街)の【冒険者ギルド】では、個別の部屋に完全に別れていた。

ここら辺も、各【冒険者ギルド】でやり方の違いが存在するのだろう。

あるいは、それだけアングレット(この街)の【冒険者ギルド】が儲かっているのかもしれないが。


部屋の中は、かなり質素ではあるが、それでもそれなりの調度品が置かれていた。

来客用の簡易的な【応接室】みたいな感じだろうか?

プリシラさんが、俺とリタをその部屋へと通すと、間髪入れずにお茶を持った女性職員が現れる。

柔らかそうなソファーに俺とリタに座る様に促すと、対面にはプリシラさんが腰掛ける。


「どうぞ。」

「あ、ありがとうございます。」

「これは、御丁寧に。」


コトリッと女性職員が間のテーブルにお茶を置くと、俺とリタは礼を述べる。

それにニコリッと微笑むと、女性職員は部屋を出ていった。

な、なんだか、至れり尽くせりだなぁ~。


「それで、お願いと言うのは?」


お茶を一口含むと、リタはそうプリシラさんに促した。

彼女は思い込みが激しく、猪突猛進な傾向にはあるが、礼儀作法は一応心得ていた。


「はい、それなんですが・・・。トモキくん達の“パーティー”に、【調査依頼】を出したいのです。」


上品にお茶を楽しんでいたプリシラさんも、その言葉を受けて本題に入った。


「・・・ちょっと待って下さい。話の腰を折る様で申し訳ないのですが、何故俺達の“パーティー”に【調査依頼】など?客観的に見ても、俺達はアングレット(この街)ではそれほど名の通った“パーティー”ではありません。もっと、適した人達がいるのではないですか?いえ、ご指名頂けるのはありがたいのですが。」


それに俺は待ったをかけた。

これは単純な疑問であった。


俺達がアングレット(この街)の【冒険者ギルド】で活動を始めたのは、ほんの一月ほどの事だ。

もちろん、【B(ランク)冒険者】のソフィア、【C(ランク)冒険者】にして【サムライ】の【称号】を持つリタ、【C(ランク)冒険者】にして高レベルの【魔法使い(マジックキャスター)】であるネーファさんと、アングレット(この街)でも十分上位クラスに食い込むタレント揃いではあるが、それでもやはり【実績】は重要になってくるハズだ。

これで、俺達もアングレット(この街)で認められた【冒険者】になったんだなぁ~、とか、何の疑問も持たずに請け負うと、痛い目に遭いかねない。

それでなくとも、俺の“特殊な事情”に加え、ソフィアの【身分】、リタの【力】に、ネーファさんの【種族】としての価値など、俺達の“パーティー”はトラブルに事欠かないのだ。

例え【冒険者ギルド】とは言え、用心してし過ぎると言う事はないだろう。


「それが・・・、確かにトモキくん達の“パーティー”より【実力】の上でも【実積】の上でも、より上位の“パーティー”がいる事は否定しません。それでも、【冒険者ギルド(私達)】は、トモキくん達の“パーティー”をかなり高く【評価】していますが。」

「「・・・。」」


俺は目線でプリシラさんに先を促した。

リタは、空気を読んでくれたのか、黙り込んでいる。


「そうした方々に依頼を出すには、それなりに金銭的に負担が掛かります。何故なら、“上位パーティー(彼ら)”は、己の【力量】に見合った報酬を要求するからです。これは、当たり前の話ですね。“上位パーティー(彼ら)”も【慈善事業(ボランティア)】で【冒険者】をしている訳ではありませんからね。しかし、今回の【調査依頼】は、“上位パーティー(彼ら)”クラスの【力】が絶対条件でありながら、不確定な【情報】の為に、今のところ“上位パーティー(彼ら)”を動かせる程の予算がおりていません。しかし、事が事だけに放置する訳にもいかない。」

「・・・なるほど、それで俺達に話が来たんですね?【冒険者ギルド(あなた方)】は俺達の“パーティー”をかなり買ってくれているが、客観的に見ると、まだまだ【実績】の浅い“パーティー”、つまり、より安く俺達を動かす事が可能である、と。」

「失礼ながらその通りです。トモキくん達としては、かなり気分が悪いでしょうが・・・。」


申し訳なさそうな表情をプリシラさんは浮かべるが、これは、まぁ、妥当な判断だろう。


「いえ、逆に疑問が解けました。それに、【冒険者】同様に、【冒険者ギルド】だって【慈善事業(ボランティア)】ではないでしょう?様々な【制約】のある中から、最適な手段を選ぶのは当たり前の話だと思います。」

「そう言って貰えるとほっとするわ。ほら、【冒険者】って、無駄にプライドが高い人も多いから・・・。」

「はぁ・・・。」


ほっと一息吐き、急にくだけた口調で愚痴をこぼすプリシラさん。

中々、苦労も多い様だなぁ・・・。


「コホンッ・・・!それで、プリシラ殿。具体的にどの様な【調査依頼】なのでしょうか?」

「え、ええ、失礼。実は、アングレット(この街)から比較的近い【オルレゾー大森林地帯】にて、【トロール】の【目撃情報】が相次いでいるのです。」


そのプリシラさんの言葉に、俺達は一瞬困惑してしまった。


「【トロール】なんて、さほど珍しい【モンスター】でもないでしょう・・・。いや、わざわざ【冒険者ギルド】が【調査依頼】を出すほどだ。何か気になる点でも?」


が、わざわざ内々に【調査依頼】を出すほどだ。

通常とは異なる点が存在するのかもしれない。


「ええ。通常の比ではないくらいの【目撃情報】が相次いでいるのですよ。もしかしたら、【異常繁殖(アウトブレイク)】かもしれませんし、【オルレゾー大森林地帯】の奥深くには、【魔力溜まり】も確認されていますから、【冒険者ギルド(我々)】も未確認の新たな【迷宮(ダンジョン)】が発生した可能性もあります。いずれにせよ、アングレット(この街)から比較的近い【エリア】ですから、放置する訳にも参りません。」

「なるほど・・・。一体や複数体なら一般的な“パーティー”でも対処が可能だが、その数が分からないから危険であると判断した。しかし、確定的な【情報】でもないから、その【調査依頼】にはそこまでの予算は割けない。」

「そこで、我らの出番という訳ですな。」


コクリッとプリシラさんは頷いた。


「調査結果次第では、これはアングレット(この街)の危機ですから、アングレット(この街)から予算がおりたり、あるいは【騎士団】などが派遣される事になるでしょうが、その為には、まずはすばやい【情報収集】が求められます。トモキくん達なら、十分にそれが可能と判断した訳ですが・・・。それで、引き受けて貰えるでしょうか・・・?」


さてどうする?

リタの様子を眺めると、彼女はすでに乗り気である様だ。

彼女の性格を考えれば、それは至極当然であろう。

しかし、俺達の実質的な“リーダー”はソフィアである。

俺とリタだけでも受けられる【クエスト】だったならば、一々彼女の許可を取る必要はないが、これはかなり危険な【調査クエスト】であるから、“パーティー”で請け負うべき【案件】だろう。

すなわち、俺の一存で決定出来る事ではなかった。


とりあえず、“パーティーメンバー”と相談する為に、一旦保留にしようとしたところで、先程の女性職員が、ソフィアとネーファさんを伴って再度入室してきた。


「話は聞かせて貰ったわ。その【調査依頼】、私達で請け負わせていただきます。・・・皆も、それで良いかしら?」


女性職員から事情を聞いていたらしいソフィアは、入ってくるなりそう結論を述べる。

珍しく即断即決だなぁ。

もう少し、報酬を巡って()()()かと思っていたが、それには触れずにOKを出すとは。

何かあったんだろうか?


しかし、その決断に俺達も反対はしなかった。

アングレット(この街)自体に危機が迫っているなら、その原因を解消しなげれば、そもそも【冒険者(俺達)】の【商売】は上がったりだからだ。

それに、名を売る、あるいはアングレット(この街)の【冒険者ギルド】に【貸し】を作る上でも、その判断は妥当かもしれない。

まぁ、ソフィアの事だから、何か考えがあってそう決断したんだろう。


「了解だ。」

「もちろんですよっ!」

「問題ありませんよ。」

「あっ、ありがとうございますっ!!!」


こうして、俺達は、【オルレゾー大森林地帯】の【調査依頼】を引き受ける事となった訳であるーーー。











「ところで、【クエスト料】はいくらくらいまでなら支払えるのかしら?」

「あ、えっ?えぇっと、そのぉ~・・・。」


うん、プリシラさんには申し訳ないが、こういう聞きにくい事をズバリと言うソフィアを見て、特にソフィアには問題なさそうだなぁと安心している俺がいるのは内緒である。



誤字・脱字がありましたら、ご指摘頂けると幸いです。


ブクマ登録、評価、感想等頂けると幸いです。是非、よろしくお願いいたします。


また、もう一つの投稿作品、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」も、本作共々、御一読頂けると幸いです。

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