胃痛に苦しむ者達
続きです。
◇◆◇
ちょっと待て。( ̄▽ ̄;)
今、ネーファさんは何と言った?
ーその代わりと言ってはなんだが、その、私をお二人のパーティーに加えては貰えないだろうか?ー
何故?
Why?
そうなる“キッカケ”って何かあったっけか?
と、軽く俺が混乱していると、ソフィアが冷静にツッコミを入れる。
「申し出はありがたいんだけど、私もトモキと正式に“パーティー”を組んでる訳じゃないのよねぇ~。まぁ、今回の件で、トモキとの“相性”は良かったから、私の方としては正式な“パーティー”を組む事も吝かじゃないんだけど・・・。」
そうそう。
俺達は、まだ正式に“パーティー”を組んだ訳じゃない。
確かにソフィアの言う通り、【戦闘】における“相性”はバッチリだった。
【前衛】の俺に、【中~遠距離】をカバー出来るソフィア。
まぁ、ソフィアは弓矢を主体としているので、矢のストックが尽きてしまうと、その遠距離射撃の利点も消えてしまうのだが、彼女は【B級冒険者】に登り詰めた猛者だ。
当然、【近接戦闘】の心得も持っているだろうし、そのリスクは熟知している事だろう。
まぁ、彼女の持つ【魔法の袋】があれば、矢のストックの問題も解決出来る訳だが。
それに、戦闘以外の面でも、彼女は非常に頼りになった。
まぁ、若干“アヤシイ”所もあるが、そちらに関しても、別に俺としてはあまり気にならなかった。
故に、ソフィアがそう感じていた事を知って、俺は少しばかり嬉しい気持ちになっていた。
そこ、チョロいとか言わないよーにっ!(`ヘ´)
ネーファさんの加入も、冷静に考えれば“有り”だ。
まぁ、彼女に関しては、先の一件での失態を見ているので、まだ何とも言えないのだが、【エルフ族】の種族的特性は俺も伝え聞いている。
ファンタジー作品でもお馴染みの存在である【エルフ族】は、この世界に置いても、多くの物語や伝承においても語られている様に、特徴的な先の尖った耳、所謂【エルフ耳】に加え、男女共に見目麗しく、なおかつ、【魔法】との親和性が非常に高い事でも有名であるそうだ。
さらに、【人間族】にも引けを取らない“器用さ”を持ち、“筋力”が低い事や“装甲”が薄い事を除けば、ハイスペックな【能力】を有しているらしい。
俺は、今のところ表立って【魔法】が使える事は公表していないので、【魔法使い】系の加入は、“パーティー”の【戦力強化】の面からも、また【戦術】の幅が広がる事からも“有り”、と言う訳である。
まぁ、綺麗なおねーさんと御一緒出来ると言うのも、単純に嬉しくもあるんだが。(//∇//)
しかし、これはソフィアにもまだ言っていないが、俺はそう遠くない未来にエンヴァリオン王国を出て、【交易都市・アングレット】に向かう予定である。
まぁ、ソフィアと出会った事によって、“戦う術”はともかく、【冒険者】に必要不可欠な“コミュ力”や“駆け引き”、“ノウハウ”などに不安がある事が分かったので、ある程度それに慣れる期間は必要だと感じているが。
だが、今はそこまで深い話をする必要もないだろう。
ソフィアの発言からも、どこぞの【ゲーム】の如く、【野良パーティー】に参加する事も珍しくない様なので、お試しで“パーティー”を組んだみるのも“有り”かもしれない。
俺がそう考え事をしていると、いつの間にかソフィアとネーファさんがジーッと俺を凝視していた。
どうやら、その“決定権”は俺に委ねられた様である。
「そ、そうですね。ソフィアの言う通り、俺達はまだ正式な“パーティー”を組んでる訳ではありませんから、いつ解散するとも分かりませんが、それでもよろしければ、俺は別に構いませんが・・・。」
「おおっ!では、後はソフィアさん次第ですねっ!!」
「トモキがそう決めたのなら、私に断る理由はないわね。改めてよろしくね、ネーファ。歓迎するわ。」
「っ!はい、よろしくお願いいたします、トモキさん、ソフィアさんっ!!!」(⌒∇⌒)
「よろしくお願いいたします、ネーファさん。」
・・・
トモキの“お目付け役”、かつ“サポート役”であるソフィアだが、ネーファの加入を拒否しなかった。
これは、ネーファがトモキを唆して、己の勢力に取り込もうとしている輩ではない事を、ソフィアは看破していたからである。
ソフィアは、【お姫様】として、普通の少女とは一線を画した“環境下”で成長してきた経緯がある。
それに加えて、色々と危険な目に遭う事も多い【冒険者】生活を経験しているので、“人を見る目”が養われているのであった。
逆に言うと、そうでなければ、体良く利用されてしまう、と言う事でもあるが。
そのソフィアの目から見て、ネーファは“政治的”に危険はないと判断したのである。
ただし、その一方で、ソフィアは自身の身の事はともかく、他者の“恋愛感情”とか、男女の機微には疎い面があった。
ネーファがどういうつもりで“パーティー”加入を申し出たのかは、ソフィアには、その“真意”が分かっていなかったーーー。
・・・
上手くいった、とネーファは考えていた。
ネーファは、【ゴーホウショタ】であるトモキに、強い興味を惹かれていたのである。
以前にも言及したが、ネーファは子供好きである。
しかし、【変態淑女】である彼女は、子供達を、そういう対象としては見ていなかった。
もちろん、それは真っ赤な嘘である。
確かにこれまでは、彼女の【変態淑女】としての“プライド”や、なけなしの“理性”によって、子供達に手を出した事はないのだが、【エルフ族】の長老達が懸念した通り、彼女は子供達をそういう対象として見ていた節があるのは、残念ながら否定出来ない事実であった。
そこに、突如として現れたネーファ好みの、なおかつ【ゴーホウショタ】であるトモキと出会い、彼女の中の“タガ”が外れたとしても、それは無理からぬ事であろう。
ネーファとて、お年頃の女性であるから、人並みに“恋愛”には憧れを抱いている。
もっとも、ネーファの場合は、その対象が、少々特殊ではあるが、トモキ相手であれば、少なくともこの世界では問題視される事もないのであった。
それに、嫌らしい話、ネーファの目から見ても、トモキとソフィアの【実力】は目を見張るモノがあった。
彼らの協力を得られれば、ネーファの“目的”、この世界の不幸な子供達を救う事が、更に現実味を帯びた話になってくるのだ。
ネーファからしたら、この機会を逃す手はなかったーーー。
・・・
「さてと、じゃあ、当初とは予定が大きく変わってしまったけど、当初の【採集クエスト】をさっさと終わらせちゃいましょう。ネーファも悪いけど、付き合ってね、」
「おう。」
「もちろんです。」
そうして俺達は、再び【カザの森】に分け入り、【エキナ草】の群生地を発見し、たんまりと【エキナ草】を採集する事に成功した。
途中、【魔獣】や【モンスター】と遭遇したりもしたが、拍子抜けするほどアッサリ撃退し、【採集クエスト】は完了したのであった。
まぁ、この【採集クエスト】自体は【F級クエスト】らしいので、【B級冒険者】であるソフィアと、【C級冒険者】であるネーファさんが揃っていれば、何か“イレギュラー”でも起こらない限り、この程度の簡単な【クエスト】だった様であるーーー。
◇◆◇
その後、暗くなって来た事もあり、【カザの集落】で俺達は一泊する事とした。
【カザの集落】からクヌートまでは、徒歩でも小一時間ほどで到達出来るのだが、夜は【夜行性】の危険な【魔獣】や【モンスター】達が活性化する時間帯なのである。
その為、基本的に夜に“外”で活動する【冒険者】はいないそうだ。
ただでさえ、夜間であるから視界が悪い訳だし、日中よりも危険な【魔獣】や【モンスター】が徘徊する場所を横断するのは、リスク以外の何物でもないからな。
もちろん、【クエスト】の種類によっては、夜間に“外”で過ごす事を余儀なくされる場合もあるそうだが、その場合も、まだ陽が出ている内に“安全圏”を確保して、暗くなる前に【テント】などを設営してしまうのが普通らしい。
その後は、交代で“見張り”をしながら休息。
陽が出るのを待ってから、再び活動を再開するのである。
ある意味、非常に健康的な生活サイクルと言えるだろう。
まぁ、【魔獣】や【モンスター】の襲撃さえなければ、もっといいのだが・・・。
「ネーファもかなりの【腕】じゃない。あの程度の【盗賊団】に後れを取ったのが信じられないくらいよ。」
「“新人”【冒険者】を【人質】に取られて、冷静さをかいてしまったのよ。【エルフ族】は【他種族】に比べて【出生率】が非常に低いから、それもあって子供を大切にする【種族】なの。その特徴を突かれてしまったのね。今は深く反省してるわ。」
「ほぉ~、そうなんですねぇ~。まぁ、でも、気持ちは分からなくないかなぁ~。実際、俺もあの連中の“振る舞い”に頭に来て、思わず突っ込んじゃったし・・・。」
「そう言えばそうだったわねぇ~、トモキ?“仲間”を放っておいて、勝手に突っ込むのは関心しないわねぇ~?もしあの連中が、もっと【腕】が立って、頭の切れる連中だったら、勝手に分断してくれて、各個撃破が非常に簡単な状況だったと思うんだけど・・・、トモキは私を危険に晒してくれた“落とし前”はどう着けるつもりなのかしらぁ~?」(ゴゴゴゴゴッ)
「「」」
俺達は、今夜泊まる【宿屋】を確保して、夕食取る為に、昼間にネーファさんの【情報】を聞いた例の【食堂兼酒場】を再び訪れていた。
そこで、軽く【打ち上げ&歓迎会】を開いていたのだが・・・。
あの時は色々とあって、うやむやになっていたが、冷静に振り返って、その事を思い出したソフィアから、俺は凄まじいプレッシャーを受けていた。
うむ。
これに関しては、全く持って“言い訳”のしようがない。
生憎【冒険者】“パーティー”による【戦闘経験】は無かったが、俺は【エンヴァリオン騎士団】にもお世話になっていた関係で、【集団】に置ける“役割分担”や“立ち居振舞い”は学んでいた、筈であった。
その中には、【指揮官】からの【命令】を守る事も当然含まれている。
【命令】、と聞くと何だか偉そうな感じに聞こえるかもしれないが、【集団】が各々の“独自判断”で勝手に動いてしまった場合、全体の【統制】が取れずに、逆にお互いがお互いの足を引っ張ってしまって、いらぬ損害を出す恐れがある。
故に、【集団】を纏める【指針】としての、【指揮官】からの【命令】は、必要不可欠なのである。
今回の場合、俺とソフィアの【力量】はこの際無視するとして、【現場経験】や【冒険者】としての【ランク】から鑑みても、【指揮官】、【リーダー】は必然的にソフィアになる。
そのソフィアの意見も聞かず、あまつさえ、彼女が指摘した通りの事を失念して、俺は勝手に突っ込んでしまったのである。
まぁ、ソフィアが“アドリブ”で俺に合わせてくれたから事なきを得たが、場合によっては、俺だけでなく、ソフィアの身も危険に晒す事となっていた訳だ。
彼女が怒るのも無理はない。
「すみませんでしたぁっーーー!!!」orz
俺は、それはそれは見事な“ジャパニーズ土下座”を敢行した。
しかし、ソフィアはそれにピクリとも反応しなかった。
こ、こえぇ~。((((;゜Д゜)))
「ふぅ~ん・・・?・・・で?」
「・・・へっ?で、で?と申されましても・・・。」( ̄▽ ̄;)
「ちっちっちっ。謝るだけなら、“ゴブリン”でも出来るわ。私が言いたいのは、トモキがどう“誠意”を見せるか、よねぇ~?」
「は、はぁ・・・。」
ソフィアの言わんとする事が理解出来ずに、俺は疑問符を乱立させた。
それにソフィアは呆れた様に溜め息を吐くと、諦めた様に呟いた。
「慎重な性格かと思えば、意外と無鉄砲な所があるんだから・・・。このままだと、先が思いやられるわね・・・。(ブツブツ)」
「???」
「・・・じゃあ、トモキには“ペナルティ”を与えるわ。ここの代金と全員分の宿泊代はトモキが支払う事。それでこの件はチャラにしてあげるわ。」
「え゛っ・・・!?・・・ソフィアさん。今回の件での俺の“取り分”、ソフィアさんが7で俺が3なんすけど・・・。いや、それでも、【盗賊団】の“お宝”もあったから、ここの代金と宿泊代を支払っても、余裕でお釣りはくるとは思うけど・・・。」( ̄▽ ̄;)
「“取り分”については、【情報料】込みって事で事前に了解を得ていたと思うけど?それと“ペナルティ”は別問題よ。トモキが気を付けていれば、そうはならなかったと思うけど?」(ゴゴゴゴゴッ)
「喜んで、支払わせて頂きますっ!!!」orz
「結構。」
くそぉっ~~~!
ソフィアの、オニ、アクマっ!!!
「・・・何か?」
「なんでもありませんっ!!!」orz
「さ、流石に私の分まで支払って貰うのは悪い。私の分は自分で支払おう。」
ああ、ネーファさんは天使でいらっしゃるっ!!!(TДT)
「いいのよ、ネーファ。男が支払うって言ってるんだから、お言葉に甘えておけばいいわ。それに、これはトモキに対する“ペナルティ”だからね?失敗をただのお金で補填出来るんなら、安いモンでしょ?【冒険者】の“生命”なんて安いんだからさ。」
「っ!!!」
「っ!!!」
ソフィアのシビアな“死生観”に、俺は衝撃を受けていた。
確かに、“仲間”を持つ事は、もはや自分一人の問題ではない。
俺は、【異能】を発現した事、それなりに“修羅場”を乗り越えた事によって、知らず知らずの内に調子に乗っていたのだろう。
しかし、どれだけ“強く”なろうとも、“生命”なんてモノは、いとも簡単に失われてしまうモノだ。
実際、俺はそれによってこちらの世界に来る事になったのではないのか?
自分の“生命”ならば、まだ諦めもつくのだが、これが“仲間”の“生命”だった場合、俺は何をすれば償う事が出来るだろうか?
そんなものはありはしないのだ。
それは、すでに終わってしまった事柄なのだから。
それを戒める為の“ペナルティ”なのだ。
これは、ソフィアなりの“優しさ”なのかもしれない。
「そう、ですね。ネーファさん、遠慮しないで下さい。ここは俺が支払いますから。俺なりの“ケジメ”ってヤツです。」
「トモキさん・・・。」
俺の言葉に、ソフィアはチラリッと俺を見て頷いた。
やはりそう言う事なのだろう。
「んじゃ、堅苦しい話はこれまでって事で。」
「そうだな。」
「・・・そう、ですね。」
ソフィアはパンッと手を打った。
うんうん、ソフィアも不器用ながらも、心優しい女の子じゃないか。(⌒‐⌒)
「すいませ~んっ!!!“蜂蜜酒”と“串焼き”追加でぇ~!」
「あ、いいですね。私も“蜂蜜酒”お願いしますっ!」
「え゛っ・・・?」
あるぇ~(・3・)?
変わり身早くない、お二人とも。
「じゃあ、新たな出会いにかんぱ~いっ!」
「かんぱ~いっ!」
「か、乾杯。」
「さあ、今夜はじゃんじゃん飲むわよぉ~。トモキの“おごり”だしね。」
「ですねっ!」
「・・・。」
【冒険者】稼業を営む女性達は、案外強かなんだと思いました。(小並感)
◇◆◇
一方、【カザの集落】駐在の【憲兵】から報告が上がって来た、【カザの森】で起こった“新人”【冒険者】の行方不明事件の事の顛末を知ったクヌートの【冒険者ギルド】では、【ギルド長】を含めた職員達が、緊急で【会議】を開催していた。
と、言うのも、この世界では、残念ながら【盗賊団】が“シノギ”の一環として、“人拐い”、所謂【人身売買】を生業とする事は、特段珍しい事態ではなかった。
まぁ、まさか“新人”とは言え【冒険者】がその“対象”になった事には驚きを禁じ得なかったが、そこまでは、まだ騒ぐ程の事ではなかったのである。
しかし、問題となるのが、ただの【盗賊団】である筈のその【カザの森】を餌場にしていた連中が、【魔封じの水晶】や、【御禁制の品】である【隷属の首輪】を所持していた事であった。
サイゲイの一件からも分かる通り、これらを所持するとしたら、【闇ギルド】に対する“ツテ”と、莫大な資金が必要不可欠となる。
生憎、【資金力】の観点から、ただの【盗賊団】連中が、それらを所持出来る筈がないのであった。
と、なれば、その【カザの森】を餌場にしていた【盗賊団】連中の“裏”には、何やら“大物”が関与している疑いがある事は明白であった。
「しかし、いずれにせよ、【報告書】だけでは要領を得んな。その【盗賊団】連中を潰した【冒険者】達は、まだ戻らんのかね?」
「はい。この件に関わったのは、【冒険者ギルド】から【特命】を請け負った【エルフ族】の【C級冒険者】、ネーファ・シャルロワと、たまたま【採集クエスト】に【カザの森】を訪れていた【B級冒険者】のソフィア・アルフガリア、その連れである“新人”【冒険者】のアイザワ・トモキなのですが、【カザの集落】駐在の【憲兵】に報告してから、再び【採集クエスト】を再開した様で・・・。おそらく、戻って来るのは、明日になると思われます。」
「え゛っ・・・!?あ、あの、ソフィア・アルフガリアが関わってるの、かっ・・・!!??」
「は、はい。残念ながら・・・。」
職員達は、顔面蒼白になった【ギルド長】、ルディ・サザーランドに同情的な目を向けた。
【冒険者ギルド】の職員達も、もちろんソフィアの事は知っている。
ソフィアは、数少ない【上級冒険者】であるし、数々の功績を挙げているからだ。
しかし、その一方で、これは彼女自身が悪くない事も結構あるのだが、行く先々で【問題】を起こす事でも有名だった。
所謂【トラブルメイカー】、【問題児】として、【冒険者ギルド】の職員達は彼女を認識していた。
ルディの反応も、そうした事を踏まえた事だろうと思ったのである。
しかし、当のルディは、全く別の種類の“焦り”を感じていた。
と、言うのも、これは【冒険者ギルド】の【ギルド長】である彼だけが知っている事だったが、彼だけはソフィアの“本当の身分”を承知しているのである。
もちろん、ガーファンクル王やソフィア自身に“特別扱い無用”の御墨付きは貰っているが、そうは言っても、彼の“立場”からしたら、ソフィアに何かあっては困るのが実際のところであった。
【冒険者ギルド】の【ギルド長】とは言え、実態は“悲しい中間管理職”なのである。
「そ、それならば、【冒険者ギルド】に彼女達が顔を見せたら、すぐに知らせてくれっ!“聞き取り調査”をしなければならんしなっ!!」
「「「「「は、はぁ・・・。」」」」」
「それと、この件はくれぐれも内密に頼むぞっ!【冒険者】達に聞かれても、知らぬ存ぜぬを貫いてくれっ!!!万が一、この件がリタの耳に入ったらっ・・・!!!」((((;゜Д゜)))
「「「「「は、はい、了解しましたっ!!!」」」」」
もう一人の【問題児】の名を出されて、職員達も打てば響く様に、そう応えるのだった。
「頼むよ、マジで・・・。」
胃痛からか、お腹をさすりながらルディはそう呟くのだったーーー。
「・・・ふぅ~ん。」
◇◆◇
「なあなあ、聞いてくれよっ!!!」
「・・・何だ、パイク。またろくでもない事を聞き付けて来たのか?」
これは何処の世界にもいるのだが、“ゴシップ”好きな者達はやはり一定数いる訳だ。
この“パイク”と呼ばれた【冒険者】もその一人だった。
まぁ、ある意味“噂話”が好きな【冒険者ギルド】職員であるトニアと似た様なモノだが、トニアが信憑性の薄い話は職員同士で留めているのに対して、このパイクはその“裏”も取らずに好き勝手に吹聴して回る厄介者だった。
ただし、その【腕】は悪くない。
“ネタ”を掴む為とは言え、その高い【隠密技術】を駆使して、誰にも気付かれない様に“盗み聞き”する事が得意なのだ。
「そう言うなって。今回の“ネタ”は結構凄いぜ?実はな・・・。」
「ふむふむ・・・。」
そうは言っても、こうした者の話を聞いてしまう者達も一定数いるからこそ、パイクの様な者が調子に乗る結果となる訳だが。
「ほぉ~、それはキナ臭い話だなぁ~。」
「だろ?俺の見解だと、その【盗賊団】の“裏”には、【貴族】の“大物”が絡んでると思うんだよねぇ~。近々クヌートで、“大捕物”があるかもなぁ~。」
「ほぉ~ん・・・。ゲッ!?」
「あん?どした??」
「うしろ、うしろ・・・。(ボソボソ)」
「後ろ・・・?」
「・・・その話、本当ですか?」
「・・・へ?」
「はぁ~・・・。」
話に夢中になっていたパイクともう一人の男の後ろには、いつの間にか女性【冒険者】の姿があった。
「もう一度聞きます。その話は本当ですか?」
一瞬ポカーンッとしたパイクだが、相手が女性、しかもかなりの美少女だったので、鼻の下を伸ばしながらも、自慢気に頷いた。
「おうよ。この【情報屋のパイク】様が手に入れた新鮮な“ネタ”よ。」
「なんとっ・・・!もう一度詳しく聞きせて頂いても?」
「お、おうよっ!」
「あっ、バカっ・・・。」
調子良く、再び語り始めたパイクを男は制止したが、その言葉がパイクの耳に入る事はなかった。
男は、諦めた様に頭を振るのだったーーー。
・・・
「有り難う御座いましたっ!【情報屋のパイク】殿っ!!!」
「おうっ、良いって事よっ!」
握手(+【情報料】)に気を良くしたパイクは、上機嫌で去る美少女に笑顔を浮かべていた。
そこに、チョイチョイと手招きをする、かすかに離れていた先程会話を交わしていた男。
「何だよ、気を使ってくれたのかぁ~?」
男が距離を置いていた“真意”に気付かず、パイクはそう言った。
それに呆れながらも、男はコソコソとパイクに呟いた。
「お前、彼女が誰か、知らないのか?」
「えっ、何、彼女有名人なの?」
「はぁ~、そういえば、お前クヌートに来て、日が浅いんだっけか・・・。」
「まぁ、それでも俺様は【情報通】だから、名前さえ教えてくれりゃ、分かると思うけどよぉ~。」
「聞いたら後悔するぞ・・・。彼女の名前は、“リタ・ブルーム”だ・・・。」
「リタ・ブルーム・・・。リタ・ブルーム・・・。・・・え゛っ・・・!?」
コクリッ。
男は無言で頷いた。
「か、彼女が【サムライ】、リタ・ブルームなのかっ!!!???」
「そうだ・・・。・・・パイク。強く生きろよ・・・。」
「マジかっ・・・。」((((;゜Д゜)))
その意味する所に気付き、パイクは青ざめた表情をするのだったーーー。
誤字・脱字がありましたら、ご指摘頂けると幸いです。
ブクマ登録、評価、感想等頂けると幸いです。是非、よろしくお願いいたします。
また、もう一つの投稿作品、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」も、本作共々、御一読頂けると幸いです。




