盟友の娘との再会(ビター風味)
もう一つの投稿作品「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」に比べると、こちらは少しギャグ寄りかつ設定も結構いい加減です。
まぁ、基本ギャグと言う事で、サラッと流して頂けると幸いです。
◇◆◇
今から20年以上前の話だ。
この世界・【エンドゲイト】で、大きな厄災、【世界同時厄災】が発生した。
エンドゲイトは、俺達【地球人】からしたら所謂【異世界】であり、【ファンタジー】や【ゲーム】の様な世界であった。
この世界では、俺達の様な【人間】の他に、【エルフ】や【ドワーフ】と言った【亜人】や、【人狼】や【妖狐】と言った【獣人】、【精霊】や【妖精】などの存在も数多く生息している。
そして、そのエンドゲイトの【位相】に重なる様に存在する【異界】には、【神族】と【魔族】と言った俺達からしたら【神】や【悪魔】の様な【高次元生命体】も実際に存在している。
この世界では、その様々な【種族】が、時に協力しながら、時に敵対しながら、共生しているのであった。
もちろん、本来ならこの世界と【地球】は、【時空間】や【位相】としては、全く別の【宇宙】に存在する為、気軽に俺達の様な【異世界人】が行き来できる様には繋がっていない。
ただし、地球における【神隠し】の例にもある様に、何らかの要素で【時空震】や【時空の歪み】に巻き込まれた者が、この世界に辿り着く事も稀にある様である。
【異世界人】は、【時空間】の【穴】を移動した影響か、【地球】ではただの一般人に過ぎなかった俺の様なヤツでも、この世界では【超人】の様な、所謂【チート】染みた【異能】を発揮する。
もちろん、この世界の住人の名誉の為にも明言しておくが、それだけで【英雄】になれるほどこの世界は甘くはないが、そうなれる可能性が高い素養を持っているのは事実である。
それ故に、【異世界人】は、様々な国、種族、組織が囲い込みに躍起になっている側面もある。
ま、もっとも、【異世界人】が現れる事など、それこそ百年単位であるかないかと言った感じだったのだが・・・。
しかし、今から20年以上前。
とある【上位魔族】の一派が、【魔神】とまで呼ばれた【魔界】の超実力者を頭とした集団が、突如としてこの世界に対して反旗を翻した。
それが、後に言う【魔神戦争】なのだが、彼らはその手始めに、彼らに取って一番の脅威となるだろう同じ【魔族】や、同等の【力】を持つ【神族】を、【異界】に閉じ込める為、つまり、この世界に干渉されない様に、【異界】の【ゲート】を破壊してしまったのである。
もちろん、これは【時空間】に干渉する行為であった為、様々な【歪み】や【影響】が生じる事となった。
それが【世界同時厄災】であり、当時高校生だった俺達が、この世界に引きずり込まれる要因となったのだが・・・。
「・・・その後、なんやかんやで【英雄達】が【魔神】一派を打ち倒して、この世界にようやく平穏を取り戻したのでした、めでたしめでたし。」
「いやいや、あの滅茶苦茶大変だった壮絶な死闘を、そう簡単に説明されちゃうと、俺達としては立つ瀬がないんだが・・・。」
「けど、あの憧れの【英雄】にこんな所で会えるなんてぇっ~!!!父上がいつも自慢していたんですよっ?俺はかつて【英雄達】と共に戦った事があるんだって・・・。」
「それは本当だよ。ガーファのオッサンには随分世話になった。素人だった俺達を、いっぱしの【戦士】にしてくれたのは、間違いなくガーファのオッサンさ。けど、オッサンは、【魔神戦争】中盤時、先王が崩御されてなぁ~。王位を継ぐのと国を建て直すのに、俺達とは途中で別れたんだ。最後に会ったのは、【魔神戦争】終結後で、君が確か2、3歳の頃かな?」
「そうなんですねっ!!!確かに父上からそんな様な話は聞いていましたが、私自身は覚えておりませんでしたので・・・。」
「まぁ、物心つく前だからなぁ~。」
路地裏で談笑する俺達。
端から見たら若い娘をたぶらかすおじさんの図である。
「しかし、少々疑問があります、ハヤト様っ!!!」
「んっ?何かなっ???」
「【魔神戦争】はもう20年以上も昔の話。なのに、当時私とそう変わらない年齢だった筈のハヤト様が、なぜオジ様になっていらっしゃらないのですかっ!!??」
そう、俺の実年齢は、まぁ色々あってもうほとんど正確には覚えていないんだが、本来なら、40歳くらいはとっくに過ぎている筈である。
しかし、俺の見た目は、ソフィーとそう変わらないくらい。
まぁ、東洋人の容姿は年齢が分かりにくいとは言え、どう高く見積もっても、20歳そこそこにしか見えないのである。
「まぁ、色々あってね・・・。俺は【力】が強すぎるみたいでな。歳は取らない、かもしれないんだ・・・。」
ちょっと苦い記憶なので、俺が珍しく殊勝な顔をしていると、ソフィーはクワッと、それこそ鬼気迫る勢いで俺に詰め寄ってきた。
「な、何ですかっ、それっ!!!女性の永遠の憧れじゃないですかっ!!!どういう【技術】なんですかっ!!??いや、【魔法】っ?それとも【スキル】っ!!??おっ、教えて下さいっ!!!」
「えっ!?あっ、いや、そのぉ~・・・。」
何か変なスイッチ入っちゃったみたい。
まだまだ若いのに、それでも女性は若さを求めるんだろーか?
「どうどう、落ち着け、ソフィーちゃん。俺にも詳しい原因が分からんし、何よりあんまりオススメはしないぞ?マトモに歳を取れないんだからな・・・。」
「・・・原因が分からないのなら仕方がありませんね・・・。・・・【エンヴァリオン】に連れ帰って、【実験台】、もとい、保護しなければなりません・・・。大金が動くニオイがしますわっ・・・(ボソボソッ)!!!」
うん、何やら不穏な言葉を呟いてる様だが、バッチリ聞こえてるからね?
「いやいや、ソフィーちゃんも王族なら、【調停者】に手出し出来ないの知ってるでしょっ!!??」
「・・・チッ!!!・・・そう言えばそうでしたわねぇ~。」
オホホホッと上品で魅惑的な笑顔を浮かべるものの、目が笑ってませんけど・・・。
後、今舌打ちしませんでした?
「しかし、なぜ貴方様ほどのお方がこの様な場所でスリやチカンなどの犯罪行為を・・・。やはり、お金に困っておいでなのですねっ?そうでしょうっ!?そうに決まってますわっ!それならば是非とも我が【エンヴァリオン】にっ・・・!!!」
「いやいや、違うからっ!!!【調停者】の仕事だからっ!!!」
「・・・スリやチカンが、ですかっ・・・?」
じと~っ、と蔑んだ目で俺を見るソフィーちゃん。
うん、それに関しては言い訳出来ないんだけどさ。
「こほんっ。それは意見の行き違いだよ、ソフィーちゃん。・・・ところで、君は【調停者】の事はどこまで知っているかなっ???」
「(話をそらしましたわね・・・)いえ、ほとんど何も。先程ハヤト様がおっしゃった様に、【調停者】には手出ししてはならない、って事ぐらいしか・・・。」
「オーケー。それだけ分かってれば、とりあえずは大丈夫。こっからはオフレコで頼むが、【魔神戦争】からこっち、この世界の情勢は緊張状態にあるんだ。それは分かるだろ?」
「確かに、様々な問題が山積している事は存じております。【魔神】一派自体とは、各国・各種族・各勢力が一丸となって戦いましたが、戦後は様々な勢力がお互いを牽制しあう様になってしまいましたからね・・・。特に【魔族】に対する世間の風当たりは強い。まぁ、【魔神】一派を輩出してしまった嫌な前例を作ってしまいましたから、ある意味仕方ないですけどね。」
「さっすが王族だけあって、同い年当時の俺より、よっぽど政治には詳しいな。そう、今はどこも公には動きづらい世の中だ。けれど、【魔神】一派が世界に残した爪痕は大きい。【世界同時厄災】による影響だったり、【魔神】一派の残党だったりね・・・。」
現実では、【ゲーム】の様に【ラスボス】を倒したら【ハッピーエンド】、とはならない。
【魔神戦争】が終わったからと言って、それで即世の中が安定する訳じゃないからな。
「そうですわね。おかげで【冒険者】の需要はかなりの高まりをみせていますわ。」
「・・・そういえば、なんで王族である君が【冒険者】なんて危険な仕事を?いや、“勇者”くんの“お目付け役”である事は何となく分かるんだけどさ。」
「あれっ?父から聞いてませんか?我がアルフガリア家は、元々【傭兵】から身を起こした一族なんです。それ故、代々一定期間【修業】をする慣習があるんですよ。もっとも、父の代になるまでは、長らく本当の旅に出る者はおらず、【冒険者】登録だけして、優秀な護衛をつけつつ、適当に【依頼】をこなしていた程度だったそうですが・・・。」
「ほぉ~ん。ま、本来はそれが正解だわな。っつか、ガーファのオッサンが無茶苦茶なだけか・・・。君もその歳で、相当出来るみたいだけど、全盛期のオッサンはマジで強かったからなぁ~。もちろん、王族ならではの“イザコザ”もあったんだけど、『陰謀?なにそれ?おいしいの?』って感じで、軒並み襲撃者を返り討ちにしてたしねぇ~。」
「ア、ハハハッ・・・。もちろん、私にもそうした事がない、と言えば嘘になりますが、“お目付け役”としての任もありますから、そこまで露骨なモノはほとんど・・・。それに、私は女ですから、王位継承権もそう高くはありませんし、今は情勢が不安定ですから、今【エンヴァリオン】が割れるのは、そうした者達にとっても自分の首を絞める様なモノ。悪知恵の働く者は、むしろ積極的に王家に取り入ってこようとするでしょうからね。」
「なるほどねぇ~。ソフィーちゃんも、規模は違うけど、俺と似たような感じって訳か。」
「へっ?」
「【異世界人】の【力】はソフィーちゃんも知ってるだろ?ま、“勇者”くんが身近にいるから分かりやすいと思うけど、俺達ぐらいの“レベル”になると、それこそ、俺達の【力】を取り合ってまた大規模な戦争が起こりかねない。だから、俺達は【調停者】として活動する事を提案し交渉したんだ。あくまで【中立の立場】として俺達の【人権】や【権利】を守るのと引き換えに、【要請】があれば出来る限り【協力】するって条件でな。【世界同時厄災】の影響は、それほどまでに深刻なんだよ。それこそ、【神話】や【伝説】規模の【怪物】が各地で続々と生まれかねない。【冒険者】なら何となく感じているんじゃないか?」
「確かに・・・。【魔獣】や【モンスター】の脅威は変わりませんが、一部では桁違いの強力な個体が現れ始めたと風の噂で聞いた事がありますわ・・・。」
「もちろん、一般的な【冒険者】達に対処出来るなら、それはそれでいいんだけど、そうじゃない場合は、それこそ、下手すれば一国が滅ぼされかねない。しかも、それは対岸の火事ではすまないんだ。ま、だからこそ、俺達を独占する事は、各国、各種族、各勢力にとっても悪手なんだよ。ま、それ故に、皮肉な事に今は何とかバランスが保たれているんだけどね。」
「それで、【調停者】、ですか・・・。」
「そ。ま、やってる事はさっきも言ったけど、ほとんど雑用なんだけどね。」
ソフィーちゃんは納得顔で頷いた。
「けれど、その貴方様が、なぜこの【交易都市・アングレット】に?もしや、【アングレット】に危機が迫っているのですかっ!!??」
「いやいや、そんな事はない、と思う。正直保証は出来ないんだけど、【アングレット】は元々俺の拠点なんだよ。立地的にも、物流的にも、【アングレット】はこの世界の中心の一つだ。それ故、様々な勢力からの俺へのアクセスが比較的容易なのさ。ま、今回は、そこを訪れている“勇者パーティー”の【実力評価】と、場合によっては【指導】を、とあるスジから【要請】されているんだけどね・・・。」
「・・・私達の、ですかっ!?」
「そ。ま、君は当事者だから、これ以上詳しくは言えないんだけどね?」
少し考え込むソフィーちゃん。
ま、考えても分からんと思うぞ?
これは、俺達と【神魔族】上層部の【密約】に関わる事だからな。
「それってもしや、近年、各地に【異世界人】が現れ始めた事と何か関係がありますか・・・?」
ほう、中々鋭い。
が、30点ってトコだな。
「まぁ、ない、とは言わないけどね・・・。ところで、今さらだけど、こんなトコで油売ってて大丈夫か?“勇者”くんの“お目付け役”なんだろ?」
「トモキのサイフを横取り・・・、もとい、取り返しに来たのですが、本当に酒場に置いてきてしまったのですか?」
今、横取りって言わんかった?
いや、スリ盗った俺が言える義理はないだろーが。
「まぁね。彼には自分の【立場】を自覚してもらわなきゃならない。少し観察させてもらったけど、【アングレット】でもあちこちでトラブルを起こしている様だし、しかも、それを【力】で有無を言わさず【解決】してる様だからさ。もちろん、【力】が物を言う時もあるけど、大体は反感を買う事になりかねないからね。ま、一種の“授業料”さ。しかも、あんまり考えていなかったかもしれないけど、もし酒場でやり合っていたら、十中八九お店がメチャクチャになっていた。通常、その“損害賠償”は、暴れた側が支払うべきモノだよ?怒羅権さんと折半でね。ま、大抵の場合は、その【力】に恐れをなして、お店側が泣き寝入りするケースがほとんどだけどね?」
「“損害賠償”っ・・・!?」
おや、ソフィーちゃんの顔が真っ青になり、後退りをしているぞ?
先程からちょいちょい漏れ出ているが、どうやら彼女は金の話に敏感なタチな様だな。
・・・ここは、その弱点を利用させて貰う事としようか。
「ま、そういう事。【冒険者】なら、多少の“イザコザ”は仕方ないけど、生憎あの店は俺の馴染みでね。泣き寝入りさせるつもりはないから、ソフィーちゃんも諦めてくれると俺としては助かるんだけど・・・。」
「うっ・・・。」
少し“プレッシャー”を掛けると、気圧された様にソフィーちゃんはうめいた。
この世界の【法律】なんて、ハッキリ言えばほとんどザルみたいなモンだ。
もちろん、街中などではその限りではないが、一歩外に出れば、完全な【実力社会】なのである。
人目につかない路地裏も、ある種の【治外法権】であり、【実力者】ののさばる場所なのである。
それ故、ソフィーちゃんもそれを計算して俺からサイフを奪還する予定だったんだろーが、生憎俺とソフィーちゃんでは、その【実力】に雲泥の差がある。
それを彼女も感じている様だ。
「ま、君達ぐらいの【冒険者】パーティーなら、あの程度の金額はすぐに取り戻せるだろ?諦めて【クエスト】でも受けた方が俺は良いと思うけどね?」
「・・・フゥッー・・・。そうですわね。私も【英雄】とやり合うほど愚かではないつもりですわ。貴方には、まるで勝てるビジョンが見出だせませんもの。ここは、引き下がる事としましょう。」
「悪いね。」
「いえ。トモキを止められなかった責任もありますから。」
肩を竦める様にソフィーちゃんはそう返した。
なかなか“切り替え”が早い。
ま、そうでなければ【冒険者】なんて危険な仕事で長生き出来ないんだけどね。
「“勇者”くんにも、それぐらいの度量や柔軟性が身に付けば良いんだけど・・・。」
「そうですわねぇ~。元々は、良く言えば穏やかな、悪く言えば、少し覇気のない男の子だったんですけど、最近やたらと荒れているんですよ。」
「ほぉ~。【異世界人】特有の【中二病】かな?それは、少し留意しておこう。」
「では、私はパーティーに戻りますが、ハヤト様は先程もおっしゃっていましたが、しばらく私達にくっついてくる予定ですか?」
「まぁね。当然君達の邪魔はしないよ?さっきの【酒場】の一件は例外だったけど、この世界は“自己責任”が基本だし、当初は俺も君達と接触するつもりはなかったし。」
「・・・もしや、【アングレット】に辿り着いた時から私達の【監視】を?」
先程からちょいちょい鋭いな。
彼女はカンが良い方なのかもしれないな。
「ま、仕事だからね。君はあんまり気にする必要はないよ。普段通り過ごしてくれれば良いさ。こっちはこっちで勝手にやるからさ。」
「分かりました。・・・あの、ハヤト様。」
「ん?」
ここにきて、初めてソフィーは心からの“素”の笑顔を俺に向けてくれた。
「今度、是非とも【エンヴァリオン】にいらして下さい。私と一緒なら、父とも会いやすいでしょう?父もきっと喜びますわ。」
「うん、まぁ、それはいいんだけど、痛い事とか【実験台】とかはないよね?」
それを、俺は茶化す様に切り返した。
そう素直に言われると、少しテレ臭いんす・・・。
「そんな事はしませんよっ!!!・・・多分。(ボソッ)」
プクッと膨れっ面を作りながらも、自信無さげにそう呟く。
うん、マジで勘弁してね?
「ま、まぁ、いずれね?」
「ええ。楽しみにしています。・・・それでは。」
そう言って、ソフィーちゃんは踵を返した。
が、数歩歩くと、急に振り返ってニヤッーと、とても良い笑顔を俺に向ける。
「・・・んっ???」
「・・・ところでハヤト様。先程の私に対する“セクハラ行為”について、少しお話が・・・。」
「すんませんでしたっーーー!!!」
結局、“損害賠償”として“慰謝料”と“口止め料”込みで、有り金全部むしり取られちった。(orz)
いやいや、もしそれがガーファのオッサンの耳に届いたら・・・。((((;゜Д゜)))
こえ~、ソフィーちゃん、こえ~。
後、意外としたたかで抜け目がない。
彼女は、あまりからかわない方が良いと僕は思いました。(小並感)
誤字・脱字がありましたら、ご指摘頂けると幸いです。
ブクマ登録、評価、感想等頂けると、作者が調子に乗ります(笑)
と、言うのは冗談ですが、モチベーションが上がりますので、お嫌でなかったら、是非ともよろしくお願いいたします。
もう一つの投稿作品「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」ともども、よろしくお願いいたします。