【冒険者】生活の始まり
続きです。
今回は、繋ぎの回の要素が強めです。
早く、ギャグがやりたいなぁ。
◇◆◇
「それでは、こちらの【冒険者カード】に、アイザワ様の【血】を一滴染み込ませて下さい。それでアイザワ様と【冒険者カード】の【同期】が完了します。よろしければ、こちらの“針”をご利用下さい。」
「分かりました。」
以前にも、ロアンさんに言われて【騎士団カード】に同じ様な手順を踏んだなぁ。
あの時も若干疑問に思ったのだが、この世界の“謎技術”によって、こうする事により、俺の今現在の【ステータス】を【数値化】して確認する事が出来る様になるのである。
この世界には、“遺伝子技術”みたいな物でもあるんじゃろか?
まぁ、詳しい事は分からんが、この世界では、これが“常識”だし、実際便利なので、細かい事はスルーする方向で一つ。
考えても分からんし。
以前に同じ手順を踏んだ時は、短剣の扱いに不慣れだった事もあり、思わぬ傷を負った俺としては素直に“針”を利用する事にする。
プツッ。
「っ。」
鈍い痛みを指先に感じる。
多少痛みにも慣れている俺だが、“注射”みたいな先端が尖ったモノを突き刺す事はあいかわらず苦手であった。
ポタッと【冒険者カード】に【血】を垂らし終わると、俺は持っていた布で患部を覆った。
一応、【薬草】や【ポーション】もあるし、【回復魔法】も使用可能だが、ここで使うのは目立つかもしれないしな。
それに、そこまで大袈裟にする様な傷でもない。
「よろしければ、こちらの“軟膏”をご利用下さい。」
「あっ・・・、ありがとうございます。」
と、思ったら、お姉さんが“軟膏”をくれた。
やっぱり同じ様なやり取りが多いからだろうか?
やけに準備が良かった。
小さな傷なので、その“軟膏”の効果で瞬時に傷が癒える。
「それでは、これで滞りなくお手続きが完了致しました。一応ご確認までに、【冒険者カード】のご利用方法を簡単にご説明致します。基本的には、【市民証】と変わらないのですが、一点だけ、【冒険者カード】には【市民証】には無い特徴がございます。それが、先程も軽く触れましたが【冒険者ランク】が記される点でございます。【冒険者カード】の右上に記載されていますので、ご確認下さい。」
「ふむふむ。」
確かに“F”と刻印されている。
ちなみに、【冒険者カード】や【騎士団カード】は、【日本】で言う所の写真の付いていない【免許証】の様な感じである。
ロアンさんも基本的には同じと言っていたので、【市民証】も似た様なモノなのだろう。
まぁ、俺は年齢的に【免許証】も持った事は無いんだけど、テレビとかでたまに見掛けた事はあるからな。
「【冒険者ギルド】で【依頼】・【クエスト】を受注する時は、お手続き時に【依頼書】と【冒険者カード】を提出して頂く必要がございます。これにより、先程も申し上げた【適正ランク】外の受注を防止しているのですね。この様に、【身分証】としてや、受注時にも結構頻繁に使いますので、紛失や盗難にはくれぐれもご注意下さい。【冒険者カード】を悪用されるケースもございますからね。万が一悪用されて、アイザワ様に不利益が生じたとしても、【冒険者ギルド】では一切責任を負いかねますので、あらかじめ御了承下さい。もちろん、お手続き頂ければ、凍結や再発行は可能ですけれど、再発行にはお金が掛かってしまいます。こちらも、あわせて御了承下さい。」
「分かりました。」
まぁ、これに関しては、【日本】でも似た様なモノだ。
【市民証】・【冒険者カード】・【騎士団カード】の様な【身分証】、それと【ステータス】もだが、は【個人情報】であるから、悪しき者が拾う、あるいは盗んだ場合、悪用されるリスクがある訳だ。
【日本】は比較的治安が良い部類の【国】だったが、この世界は、治安や“モラル”が良いとは言えないから、万が一紛失や盗難に遭った場合は、もちろん一番悪いのは悪用する者達だが、自身も間抜けであった、と言う事である。
「では、最後に、これはお願いになりますので、もちろん、拒否して頂いても構いませんが、よろしければ、【冒険者ギルド】の【データベース】収集の為、【ステータス】登録に御協力頂けませんでしょうか?」
「えっ・・・?」
これで終わりだと思っていた俺は、お姉さんの言葉に疑問符を浮かべた。
その俺の様子に、お姉さんは改めて説明を重ねる。
「先程も申し上げました通り、【冒険者ギルド】側では【冒険者】お一人お一人の【情報】が不足しております。もちろん、【ステータス】は重要な【個人情報】ですから、それぞれの“考え方”を尊重させて頂きますが、管理する側としては、やはり【情報】は多いに越したことはありません。【ステータス】登録して頂ければ、【ランク】が適正であるかが具体的な【数値】として判断可能ですから、【冒険者】の皆様の身の安全を守る一助にもなります。もちろん、【冒険者ギルド】としましても、【情報】の流出を避けるべく、しっかり管理徹底致しますが、それでも流出のリスクは存在しますが・・・。」
「なるほど・・・。」
つまり、【冒険者】登録とは別に、【ステータス】登録をする事によって、より詳細な【情報】を【冒険者ギルド】としては扱う事が出来る訳だ。
それによって、【冒険者】達一人一人の【実力】が、より具体的な【数値】として確認出来るので、その【冒険者】の【ランク】が適正かの判断も可能。
人材が失われる事は【冒険者ギルド】としても懸念する所だから、その協力を募っている、と言う事なのだろう。
ただし、【個人】で管理する場合とは異なり、【冒険者ギルド】から【個人情報】が流出するリスクも出てくるので、“義務”ではなく“お願い”に留まっている、と言う事か・・・。
ふむ、どうしようか・・・?
俺の場合は、【ステータス】上の【数値】はともかく、【異世界人】の特徴らしき【異能】も【ステータス】上に記載されてしまうんだよなぁ。
そう迷っていると、お姉さんは再び口を開いた。
「【スキル】等、アイザワ様が伏せたい部分は選択が可能です。デメリットもありますが、メリットもありますので、是非御協力願えませんでしょうかっ!?」
何だか、“お願い”と言うわりには結構グイグイくるなぁ。
まぁ、それほど状況は切迫している、と言う事かもしれんが。
どっちにしても、【冒険者】として活躍し始めたら、否が応にも、【実力者】は頭角を現す事となる。
俺も、自重するつもりではあるが、命が懸かった場面で手加減をする事など不可能だ。
少なからず“噂”として名前が挙がる可能性を考慮すれば、先に【冒険者ギルド】と良好な関係を構築しておくのも、ある種の【防衛】になるかもしれんか・・・。
「はぁ・・・、そこまで仰るのでしたら、分かりました。ただ、あまり人目に付きたくないので・・・。」
「あ、ありがとうございますっ!では、こちらの“パーテーション”内で承ります。こちらには、【鑑定】や【盗聴】などの対策が徹底されておりますので・・・。」
「分かりました。」
【受付窓口】の奥の“パーテーション”で区切られた場所を指し示すお姉さん。
なるほど、管理は確かに徹底している様だ。
俺は、納得してそちらに移動するのだった。
薄壁一枚で区切られた“パーテーション”内ではあるが、辺りの視線は一先ず遮断される。
それに加え、【鑑定】と【盗聴】対策が施されているならば、簡易的とは言え、わりとしっかりとした“セキュリティ”であった。
すぐにお姉さんも姿を見せ、完全な“マンツーマン”の形が出来上がった。
内心ドキドキしているのは内緒だ。(〃∇〃)
「先に断っておきますが、俺は少々複雑な生い立ちをしていまして・・・。普通の方々とは【ステータス】が異なるとは思いますので、その・・・、びっくりしないで下さいね?」
「はぁ・・・。察するにアイザワ様は“訳あり”なのでございますね?それでしたらご心配には及びません。【冒険者ギルド】では“訳あり”の方々も珍しくありません。詳細は明かせませんが、アイザワ様が【犯罪】や【ルール】を犯した方でない事は、すでに確認済みですから、そうした“事情”を理由に【冒険者ギルド】から受け入れを拒否する事はありませんので、ご安心下さい。」
「へぇ・・・。」
いつの間に・・・。
しかし、考えたら当たり前の話だ。
【冒険者ギルド】には色んな人達が集まるだろうから、何かしらの【対策】を施していないと、【犯罪者】が紛れ込んでしまう可能性は注意すべき点だろうからなぁ。
たぶん、この世界の“謎技術”を使って、【手配書】なんかと【照合】したのだろう、知らんけど。
「それでは・・・、【ステータスオープン】っ!」
名前:アイザワ・トモキ
性別:男
種族:人間
職業:Fランク冒険者
年齢:16歳
レベル:13
HP:296
MP:282
攻撃力:280
防御力:274
力:280
耐久:272
器用さ:296
敏捷性:291
素早さ:288
知性:276
精神:274
運:39
魅力:292
《スキル》
古流武術(上級)、魔法全般(中級)
(特記事項:《異能》 強化系)
おおっ、早速【職業】の項目が【Fランク冒険者】に変わっているっ!
以前は【無職】だったから、ちょっと感動である。
年齢の方も、【騎士団カード】時にもすでに確認済みだが、しっかり一つ上がっている。
俺の誕生日は10月だから、例の件を経てこちらの世界にやって来たのが高一の夏で、それから3ヶ月以上経過しているので、計算としては合ってる。
これだけでも、この世界の“謎技術”が正確である事が分かる。
まぁ、若干凄いを通り越して恐くもあるんだが・・・。
しかし・・・、やはり【スキル】と【特記事項】、特に【特記事項】は【冒険者ギルド】にも隠した方が良いかもしれんなぁ。
俺は、ロアンさんに教わったやり方で、【特記事項】をチョイチョイと隠した。
(特記事項:《異能》 強化系)→(□□□□□□□□□ □□□)
「それでは、アイザワ様、【ステータス】を【コピー】させて頂いてよろしいでしょうか?」
「あ、はい、どうぞ。」
俺が何かしら操作している事は承知の上で、頃合いを見計らってお姉さんはそう声を掛けてきた。
それに、俺も応じる。
「ありがとうございます。では・・・。はぁあっ!!!???」
「っ!!!???」
俺の許可を取ってから、持っていた何かしらの【アイテム】を使って【ステータス】の【コピー】をしながら、軽く確認作業をしていたお姉さんは、急に大声を上げた。
その声に、俺はビクッとした。
「ど、どうかしましたかっ!?」
何か問題でもあったかな?
ちゃんと【隠蔽】は出来ていると思うんだが・・・。
「えっ、あっ、いやっ、これっ、れ、レベル13ってっ・・・!!!それにっ、こ、この【パラメータ】はっ・・・!!!???」
ああ、そういう事か。
ロアンさんの説明だと、この世界の人々は、レベル1のまま一生を終えるのも珍しい事じゃないって話だったな。
なぜなら、【レベル】を上げる為には、他者を倒し他者の生命を取り込む事で、己の【器】を強化するからである。
言うなれば、【魔獣】や【モンスター】、あるいは【人間種】を殺さない限り、【レベル】を上げる事は不可能なのである。
それに、俺はレベル1の時から、浅野師匠の教えの賜物によって、こちらの世界の一般的な人々よりも高い【パラメータ】を持っていた。
それに加えて、【エンヴァリオン近衛騎士団】で訓練と実戦を経験しているので、結構バカげた【数値】にはなっているだろう。
【レベル】で言えば、キールさんとロアンさんの半分にも満たないが、【数値】はすでに半分を越えている。
キールさんとロアンさんの発言通り、順当に【レベル】が上がって行けば、彼らを追い越すのも時間の問題かもしれんなぁ。
「いやいや、だから言ったじゃないですか。少々複雑な生い立ちだって。」
「いやいや、それにしたってこれはっ・・・!」
やっぱり止めときゃ良かったかな?
しかし、後々にバレるより、今の内に偽りの“事情”を【冒険者ギルド】に明かし、先程も考えた通り、【冒険者ギルド】との良好な関係を構築しておくのも一つの手だろう。
客観的に見れば、【ステータス】上の俺の【性能】はかなりのモノだ。
【冒険者ギルド】としても、そんな【人材】を悪い様にはしないだろう。
「・・・実はですね・・・。」
原案・ガーファンクル王、脚色・ロアンさん、演出、アドバイザー・キールさんによる、一応用意していた俺のこちらの世界での“アンダーカバー”をヒソヒソと打ち明け始める。
「俺は、“元・奴隷”らしく、身寄りがいないんですよ。」
「は、はぁ・・・。」
その俺の独白に、お姉さんはどんなリアクションを取ればいいのか分からずに曖昧に頷いていた。
残念ながら、この世界では、【奴隷】と言う【前時代的】かつ【非人道的】な身分も、まだまだ普通に存在している。
その“事情”は様々だが、口減らしの為に実の親に売られる、戦災孤児を捕らえて【人身売買】をする、果ては【犯罪奴隷】なんて特殊な存在もいた。
俺の【設定】は口減らしの為に、幼い頃に【人買い】に売られた、と言う体だ。
しかし、そうした“裏で暗躍する【奴隷商人】達、あるいは【盗賊団】達だが、この世界には、それ以上に危険な存在がいる。
そう、【魔獣】や【モンスター】達だ。
流石に【人身売買】は、【奴隷】と言う存在が普通に存在すると言っても、公の場で堂々と行える様なモノでもない。
それ故、【人身売買】は必然的に人気のない場所で【取引】される事が多い訳だが、中には街や村の“外”で移動なり【取引】なりの最中に【魔獣】や【モンスター】に襲撃される事も珍しい事態ではないのである。
もちろん、この世界の街や村の“外”は危険である事は、そうした者達も百も承知であるから、腕に覚えのある者達を【護衛】に付ける訳だが、【冒険者】達でさえ、油断すれば殺られる事があるのがこの世界の“外”の“常識”である。
当然、【奴隷商人】達や【盗賊団】達は一定数、そうした【魔獣】や【モンスター】達の襲撃により命を落とす事となる訳である。
俺を買った連中も、そうした状況に陥った。
本来ならば、俺もその時に命を落とす筈だった。
しかし、俺はたまたま通りがかったおじさんに助けられたのである。
それが、俺の【育ての親】との出逢いであったーーー。
「俺を育ててくれたおじさんも、どうやら“訳あり”らしく、俺達は森の奥地に隠れる様に住んでいました。流石に俺もおじさんの“事情”は聞かされていませんが、おじさんが“ただ者”ではない事は何となく感じていました。多分ですけど、以前は名のある【冒険者】か【騎士】か何かだったんでしょう。そんな危険な領域で長年生存出来るほどですからね。かく言う俺も、おじさんの手解きを受けて、今日まで生きてこれました。“常識”みたいなモノは、人との接触を極端に避けるおじさんでしたが、それでもたまに訪ねてくる人達はいたので、その人達に教えて貰いました。残念ながら、“事情”が“事情”だけに、俺は【市民証】は所持していませんでしたし、おじさんの“事情”で、【市民】登録するのを躊躇したんじゃないかと思います。まぁ、ただ森で生きる分には必要ではありませんでしたからね。」
「・・・なるほど・・・。その方は、誰かに追われていたのか、はたまた【身分】を隠して隠遁生活をしていたのか・・・。差し障りなければ、その方の御名前をお聞きしても?」
「いいですよ。残念ながら、おじさんはすでに亡くなっていますから、今更隠す事でもないですしね。おじさんの名前はロイ・アルスターです。」
「ロイ・アルスター、ですか・・・。聞いた事はありませんね・・・。それほどの【実力者】ならば、“噂話”にくらいはなってる筈ですから、恐らく【偽名】か、表で名乗っていた名の方が【偽名】だったのか・・・。いずれにせよ、お亡くなりになっているのならば、今更調べようがありませんね・・・。ところで、その方とアイザワの御名前に繋がりがない様ですが・・・?」
「俺の名前は、俺が元々名乗っていた名前だそうです。残念ながら、俺は自分の出生を覚えていませんので、由来は知りませんが・・・。」
「ふむ・・・。アイザワ様の【レベル】と【ステータス】がすでに高いのは、その生い立ちによるモノ、と言う訳ですね?しかし、アイザワ様の【育ての親】は、高い【教養】を持ち、なおかつとてつもない【実力者】だった様ですね。まさか、【魔法】まで扱えるとは・・・。」
「そうなんでしょうか?生憎、俺はそれが普通だと思って生きてきましたので、ちょっとその感覚が分からないのですが・・・。やはり言われた様に、自分の【実力】は隠した方が良いのかなぁ・・・。(ブツブツ)」
「・・・どなたがアイザワ様にそう仰ったかは存じませんが、その意見もある意味間違ってはいませんね。下手に【実力】を持っている事がバレたら、色々と面倒事に巻き込まれる可能性もございますし・・・。他の方には悟られない様にするのがよろしいかもしれませんね・・・。」
うん、いい感じに俺の“アンダーカバー”をお姉さんは信じてくれた様だ。
人を騙すのは少々心苦しいが、バカ正直に【異世界人】である事を話す訳にはいかないからなぁ。
しかし、ある程度【異世界人】の関係者である事を匂わせておいた方が、俺の行動や言動に説得力を持たす事が出来る。
それ故、“架空の存在”であるロイ・アルスターさんをでっち上げたのである。
「しかし、何でまたアイザワ様は【冒険者】になろうと?あ、いえ、差し支えなければ結構です。私の興味本意の質問ですし・・・。」
先程とは別に、好奇心の色をたたえた瞳で俺に訊ねるお姉さん。
【冒険者ギルド】で働いている以上、多少なりとも好奇心が旺盛なのかもしれない。
「いえ、大丈夫ですよ。一番の理由は、やはり【身分証】の確保の為です。先程も申し上げましたが、おじさんはすでに亡くなっていますから、俺には完全に身寄りが無くなってしまいましたからね。森の中で暮らす事も出来たのですが、俺も“外の世界”に興味がありましたし。」
「ふんふん。」
「それと、もう一つ大きな理由としては、おじさんの【遺言】で、とある人に手紙を届ける為に、【交易都市・アングレット】を一応目指していまして。その為には、やはり【冒険者】登録しておいた方が良いかなぁ、と。」
「なるほど・・・。」
俺の【育ての親】であるロイ・アルスターの【裏設定】としては、【歴史】の表舞台から姿を消し、名前を変えた【魔神戦争】の【英雄達】の一人である、と言う体にしている。
彼が俺を拾って育ててくれたが、俺が成人する頃に己の死期を悟り、かつての【仲間達】に宛てた手紙を託したと言う“筋書き”である。
これならば、俺の【レベル】や【ステータス】が高い事が説明出来るし、俺が【冒険者】になった経緯、なぜ【交易都市・アングレット】を目指しているのかの説明がつくと言う訳である。
「貴重なお話と【ステータス情報】の提供ありがとうございました。このお話は、【上層部】に上げても?」
「構いませんよ。俺も【冒険者】に成った以上、出来る限り【冒険者ギルド】とは協力させてもらうつもりですし。もちろん、自分の目的を最優先にさせてもらいますが・・・。」
「当然ですね。分かりました、その様に報告させて頂きます。それと、【ステータス】で伏せたい部分はございますか?」
「そうですねぇ・・・。いえ、【冒険者ギルド】が把握する分には、大丈夫だと思います。自分の【冒険者カード】には個人的に【隠蔽】を施しますし。」
【冒険者ギルド】に【ステータス情報】を提供した以上、【情報】の流出も一つの可能性として視野に入っている。
その【対策】として、俺自身が【異世界人】とバレる可能性の特記事項はすでに【細工】を施しているので、もちろん絶対ではないが、例え【情報】が漏洩したとしても、疑われる程度で確信は持たれないだろう。
【日本人】的な名字である相澤にしても、こちらの世界では珍しいだろうが、過去に【異世界人】が現れた【記録】があるそうなので、その子孫が【日本人】的な名字を持っている事もあるそうである。
それ故、俺の【強さ】にしても、【育ての親】の影響や先祖返りの影響だと“言い訳”が成り立つのである。
まぁ、ロアンさんが言うには、【虚実】をちょっとずつ混ぜて、後は堂々としていれば、俺に疑いを持つ者達も、勝手にあれこれ考えて騙されてくれるそうなので、【設定】にこだわり過ぎる必要もないらしい。
せいぜい、俺にはそうした“バックボーン”がありますよって事さえ忘れなければ良いとか・・・。
「畏まりました。長々とお付き合い頂きまして、まことにありがとうございました。今回担当させて頂きました、ライズ・アンダーソンと申します。また、何かご用命の場合は、私の名をお出し下さい。」
「あ、改めまして、アイザワ・トモキです。その、よ、よろしくお願いします。」
よぉ~し、噛まなかったぞぉ~。(゜∇^d)
内心そんな事を考えながら、知り合いとなった【受付窓口】のお姉さん、ライズさんと改めて挨拶を交わした。
「早速ですが、【依頼】や【クエスト】は受けられますか?」
「ああ、いえ、今日は【冒険者】登録だけで・・・。残念ながら、まだ仲間もいない事ですしね。」
「畏まりました。アイザワ様の御活躍、心より期待しています。」
「あ、ありがとうございます。」
ようやく、【通常業務】の話になったのだが、幸い俺はまだまだ懐には余裕があった。
いきなりガッツリ活躍して悪目立ちするより、普通の【冒険者】の様に、【野良パーティー】に参加しながら、目的地を同じくする仲間を地道に見付けようと考えていた。
ライズさんに別れを告げ、“パーテーション”内から出た俺は、今日のところは一旦【冒険者ギルド】を出る事にした。
「ちょっといいかしら?」
「へっ?」
が、ぼけっと【待合室兼飲み屋兼食堂】を抜けて【冒険者ギルド】を出ようとした所で、俺は不意に声を掛けられた。
それが、後の“パーティーメンバー”であり、俺の“頭痛の種”の一人となる、ソフィア・アルフガリアとの邂逅であったーーー。
誤字・脱字がありましたら、ご指摘頂けると幸いです。
ブクマ登録、評価、感想等頂ける幸いです。是非、よろしくお願いいたします。
また、もう一つの投稿作品、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」も、本作共々、御一読頂ければ幸いです。




