勇者アイザワ・トモキの憂鬱 9
続きです。
ギャグ寄りの作品にするつもりが、シリアスが続いてしまいました・・・。
次回辺り、主人公(笑)を出せるかな?
◇◆◇
「主文、【被告人】サイゲイ・ド・ファトゥウスを死刑に処する。並びに、【被告人】と共謀し、我が国に対する多大なる不利益をもたらそうとしたバロー・ド・ファトゥウスの【公爵】の【爵位】を剥奪し、【ファトゥウス家】の解散を命ずる。」
「・・・。」
「ふざけるなっ!私を誰だと思っているのだっ!!??」
朗々とした言葉が、【城塞都市・クヌート】の【元老院議事堂】に響き渡った。
その【裁判長】役の【元老院】・【議長】である男の言葉に、虚な目で虚空を見つめて聞いていたサイゲイと、今だわめき散らすバロー。
そして、どよめく【元老院】・【議員】の面々と、【裁判】を傍聴していた【名門貴族】の面々。
しかし、【議長】は鋭い視線を向けると、良く通る声でそれらを静めた。
「静粛にっ、静粛にっ!判決事由の読み上げの最中ですぞっ?貴殿らも【貴族】の端くれならば、見苦しい態度は控えて頂きたいっ!さて、そう判断した事由。それらは、すでに出揃っている訳ですが、改めて確認していこう。」
それを【元老院議事堂】の隅で眺めていた、ある種【当事者】であるトモキと、彼と行動を共にするキールとロアン、そして、座る位置は別であったが、ガーファンクル王の姿もそこにはあったーーー。
・・・
【暗殺者】・ヒューを捕らえてすぐに、デルキと彼の部下達から、続々と今回の【事件】の【証拠】が上がって来た。
【闇ギルド】に接触して、【闇ギルド】やヒューを動かした【ファトゥウス家】の使者の男は、実はデルキと密かに繋がっていた。
ヒューをして、相当な【手練れ】であると言わしめた使者の男が、一連の【事件】を鑑みて、仕えていた【ファトゥウス家】の状況が分からない筈もない。
と、なれば、次の【就職先】を考えるのは当たり前の話であり、もちろん、どこぞの【武士道】あるいは【騎士道】の如く、仕えるべく【主】と最期まで共にする、と言う考え方の者もいるかもしれないが、生憎彼は【現実主義者】であり、沈みゆく船に座して運命を共にする気など更々無かった。
また、使える【人材】をみすみす逃す様なデルキではなかった。
そうした訳もあり、水面下で使者の男と接触し、交渉の末に彼の“引き抜き”に成功したのだった。
こうして、使者の男は所謂【二重スパイ】として暗躍したのであった。
ただし、その弊害ではないが、間接的に【捜査員】達やトモキを危険に晒したのは、使者の男の【役割】上、仕方のない事でもあった。
もちろん、【捜査員】達やトモキは、その事実は知らないのだが。
また、【暗殺者】・ヒューが思いの外【手練れ】であった事は、デルキをしても計算外であった。
デルキもまさか、エンヴァリオン王国最高峰の【人材】が集う【フィーリッツ城】にて、誰にも気取られる事なくトモキに迫られるとは考えていなかったのである。
トモキの【力】があったお陰で、事なきを得たが、場合によっては、トモキ自身を死なせていた可能性もあったかもしれない。
まぁ、結果オーライではあったが。
さて、そうした事を経て、サイゲイが【呪印石】を【闇ギルド・メルダ】から密かに入手した事、また、それらを揉み消そうと、使者を通じて【ファトゥウス家】が【闇ギルド・メルダ】に【捜査員】達の妨害やトモキの殺害を【依頼】した【証拠】や【証言】が出揃った訳である。
事ここに至れば、サイゲイの死刑と【ファトゥウス家】解散は避けられない事態であり、【元老院】での審議の末に、先の結論に至った訳である。
もちろん、【ファトゥウス家】は【名門貴族】の一つであるから、表向きはあくまで公平な【裁判】を粛々とこなしていた。
これは、【ファトゥウス家】に対する配慮と言うよりかは、【他家】の【名門貴族】に対する配慮であり、一方的な審理をして断罪した訳ではない事を印象付ける事が狙いであったからである。
【名門貴族】の反発は、デルキやガーファンクル王をしても面倒なモノであった。
だからこそ、【名門貴族】を味方につける上で、その点をクリアしておいたのである。
そうした審理や弁論の末の結論に、どよめきが起こるモノの、誰もがその結果はある種妥当と判断していた。
どよめきの理由は、エンヴァリオン王国でも大きな勢力の一つであった【ファトゥウス公爵家】の【ファトゥウス家】解散によるモノであり、ある意味エンヴァリオン王国の【歴史】が動いた事に対するモノであったのだ。
それを、今だ自分に対する【擁護】の声だと勘違いしていたバローは、見苦しくも、自分の保身を訴えていたのである。
これは、流石に判断を下した【元老院】・【議員】の面々や、傍聴していた【名門貴族】の面々も呆れた様に眺めるのだがーーー。
「ーーー以上の事由から、先の結論に至った。」
「「「「「・・・。」」」」」
改めて【元老院】・【議長】から語られた内容により、【元老院議事堂】は静寂に包まれる。
やはり、サイゲイや【ファトゥウス家】の所業に【擁護】出来る点など何一つ無いのである。
「では、これにて【裁判】をっ・・・。」
「・・・アイツさえ、いなければ・・・。(ボソッ)」
「・・・む?」「「「「「・・・?」」」」」
【議長】が【閉廷】を宣言しようとした所で、サイゲイが絞り出す様にポツリと呟いた。
それは、ひどくか細い声なのにも関わらず、広い【元老院議事堂】に響き渡った。
そして、狂気に染まった目で、ギロリッとトモキを睨め上げる。
当然ながら、一連の事件の【被疑者】であるサイゲイは、拘束され両脇には【憲兵】が控えている。
更に、例の件の折り、トモキによって腕を切り落とされているので、もはや彼は何かアクションを起こせる状況にない筈なのだが、その不気味な圧力は、【当事者】であるトモキだけでなく、その場に居た他の面々にも、言い知れぬ【恐怖感】を与えた。
「【異世界人】さえいなければ、全てが上手くいっていたんだっ!!!悪いのは【異世界人】だっ!!!私は悪くないっ!!!」
「そ、そうだっ!!!わ、私達は悪くないっ!!!」
狂った様にサイゲイが言葉を絞り出す。
それにバローも同調するが、サイゲイも他の面々も、バローには一瞥もくれなかった。
少しずつ、サイゲイはトモキに近付いた様にも見える。
当然、【憲兵】に阻止されるが、その圧力にトモキや他の面々も圧倒された。
そこに、スッとサイゲイとトモキの間にキールが身体を滑り込ませた。
キールの顔には、哀れみにも似た表情が浮かんでいた。
「嗚呼、団長っ!!!そうでしょっ!?私は悪くないんだっ!!!“私達の日々”に突然介入してきた【異世界人】が悪いんだっ!!!私達は上手くやっていたでしょっ!!??」
「・・・。」
狂った様に言葉を繰り返すサイゲイ。
すでに、彼にはマトモな判断力は存在しなかった。
サイゲイの不幸は、彼が“同性愛者”だった事に端を発する。
しかし、“男色”自体は、狭い男社会に置いてはそれほど珍しい事例でもない。
ただ、サイゲイは、その生い立ちによって、そうした事を常に否定されてきた。
それは、サイゲイは三男であるから正式には【跡取り】足り得なかったが、対外的には【ファトゥウス公爵家】に連なる者が、そうした“嗜好”を持っている事が知れると、醜聞に関わるからである。
一方で、それ以外の事では、何不自由なく成長した為、ある種“我慢”とか“忍耐”を苦手ともしていた。
そうした“大人達の都合”により、サイゲイは歪んだ性格を持つに至ってしまったのである。
もっとも、初めてキールを見た時から、サイゲイは、彼としては生まれて初めてとも言える努力を繰り返してきた。
“憧れの人”と共にある為に。
サイゲイも、キールに自身の“思い”が伝わらない事は理解していた。
先の“事情”もあるのだが、何よりキールは所謂“ノーマル”であったからだ。
しかし、共にある事は出来る。
団長と副団長としての“関係”として。
サイゲイも、当初はそれで満足だったのだ。
もちろん、同じ【立場】であり親しげなロアンに“嫉妬”する事もあったのだが、サイゲイの“タガ”が外れるほどのモノではなかった。
歯車が狂ったのは、【異世界人】が現れてからだ。
【異世界人】は、何の努力もなく、自分が求めて止まなかった“ポジション”をアッサリ奪っていったのである。
これは、トモキにしてみたら理不尽な言い掛かりにも等しいが、“愛”に狂ったサイゲイにとっては、どうしようもなく理不尽で納得のいかない事だったのである。
“愛”とは時にとてつもなく尊いモノでもあるが、また、時に非常に厄介なモノでもあり、それにより“視野狭窄”に陥る事もある。
“恋は盲目”なんて言葉もあるくらいだ。
サイゲイの心情は、もはや理屈ではなかった。
強烈な“嫉妬心”に駆られて、いつしか【異世界人】を排除する事だけを考える様になっていく。
それに目を着けたのが、【闇ギルド】を“裏”から操っていた、あの怪しい男達であった。
サイゲイが、【異世界人】排除に向けて間接的に【闇ギルド】に接触した事を知った怪しい男達は、密かにサイゲイと接触していた。
もちろん、その記憶は、怪しい男達の【力】によって無かった事になってはいるが、その時にサイゲイは、その“嫉妬心”を必要以上に“増幅”されて、彼の中に少なくとも存在した【倫理観】とか【道徳心】を塗り潰されてしまったのである。
その末での、先の【事件】であった。
それだけ見ると、サイゲイもある種【被害者】だったと言えなくもない。
もっとも、いくら唆されたとは言え、最終的にその“スイッチ”を押したのは、間違いなくサイゲイ自身の決断であるから、【擁護】する事は出来ないのだが・・・。
今だに喚き散らすサイゲイとバローに、とうとうガーファンクル王が静かに動いた。
「判決はすでに決したっ!その者達を即座にこの場から引っ立てよっ!!!」
「「「「「ハッ!!!!!」」」」」
混沌としていた【元老院議事堂】に響き渡る鶴の一声。
それにより、即座に【憲兵】達は動き出し、サイゲイとバローは強制退場させられる。
その様子に、【元老院】・【議長】は、
「では、これにて【裁判】を【閉廷】とするっ!!!」
と、宣言し、【元老院】・【議員】らや、傍聴していた【名門貴族】の面々達も安堵の声を上げた。
やはり、ガーファンクル王の“カリスマ”は流石であった。
しかし、トモキはその隅で、一人暗い顔をするのだったーーー。
◇◆◇
【裁判】が明けて数日後、俺はキールさんとロアンさんと共に、ガーファンクル王と面会していた。
今日の面会は、内々の事である為に、初めてガーファンクル王と対面した時の様な謁見の間ではなく、【フィーリッツ城】の一室での、極少人数での会談であった。
「やはり出ていくか、トモキ・・・。」
「ええ、一方的に御世話になりっぱなしだったのに申し訳ないのですが・・・。」
「いや、それは別に構わんのだが・・・。」
そう、俺は【フィーリッツ城】を出ていく事にしたのだった。
理由は簡単だ。
心が折れたのである。
「サイゲイの言葉を気にしているのか、トモキっ!?だったらそれは関係ないっ!!アイツの言い分はっ・・・!!!」
「いえ、それだけではありませんよ、キールさん。それに、サイゲイの言い分ももっともです。【異世界人】の事を快く思わない人もいるんですよ。多分、【フィーリッツ城】の中にも、結構な数、ね・・・。」
「・・・それは、否定出来ませんね・・・。」
「・・・うむ、やはりそうなるか・・・。」
元“いじめられっこ”として、人の“悪意”に晒された事は何度となくあったが、それがもとで被害に合うのは、いつも俺自身だった。
それ故、ある程度、俺は自分自身が傷付く事には慣れているのだが、逆に言うと、俺の周りの人がどう感じていたかには無頓着であったとも言える。
俺が傷付く事によって、周りの人達も、もしかしたら傷付いていたのかもしれない。
そう考える様になったのは、今回の【事件】で、【異世界人】を起点として、色んな人達に迷惑を与えたからである。
もちろん、ガーファンクル王やキールさんやロアンさん達は、そんな事はないと言うだろうが、彼らはある種【強い側】の人間だからである。
そうではなく、俺が恐れているのは、【弱い側】の人々が、【異世界人】の存在によって被害を被る事だ。
俺にそのつもりがなくとも、【異世界人】と言う存在がそこにいるだけで、騒動を巻き起こすかもしれない。
そうでなくとも、【異世界人】の【力】を付け狙う者達がいないとも限らないのだ。
それで被害を被るのは、いつだって【弱い側】の人々である。
それが何よりも恐かったし、それによって、最終的にそうした人々怒りの矛先が【異世界人】に向くのではないかと危惧しているのである。
サイゲイの言葉ではないが、【異世界人】さえいなければ“日常”を脅かされる事も無かったのに、と感じる者達もいるかもしれない。
・・・もしかしたら、俺の大先輩である【魔神戦争】の【英雄達】も、そうした理由から【表舞台】から姿を消したのかもしれないなぁ。
実際の所はどうか知らないが。
まぁ、そんな訳もあって、俺には、誰が傷付こうがそれすら背負って生きるだけの確固たる【信念】も【覚悟】も今の所ないのだから、ここに留まり続ける理由はもはや無いのである。
幸い、この世界の“常識”や、戦う為の術は身に付けた。
ならば、【異世界人】だと悟られない様に、ひっそりと生きていった方が良いのではないかと考えたのである。
「人の欲望には際限がないし、人の心を縛る事も難しい。俺の【権限】を持ってしても、サイゲイや【ファトゥウス家】の暴走を止める事は出来なかった・・・。いや、トモキには“誤魔化し”を止めておこう。俺は、エンヴァリオン王国の【利益】の為に、サイゲイの事はともかく、【ファトゥウス家】の暴走にはあえて対処しなかったからな。」
「・・・【囮捜査】ってやつですよね?ガーファンクル王の【立場】ならそれも分かりますよ。まぁ、やられた方としては堪ったモンじゃないっすけどね。」
「トモキくん、それはっ・・・!!!」
「いや、いいのだ、ロアン・・・。」
若干嫌味っぽくなってしまったが、これが俺の“本音”である。
ここら辺が、“政治”寄りの人間か、“一般人”寄りの人間かで【価値観】も変わってくる。
そうした事も含めて、ある程度距離を置くべきだと俺は思う。
このままでは、いつしか険悪な関係になる事すらありうるからだ。
「それに、俺は元々この世界の、いや、エンヴァリオン王国の人間じゃありません。【力】を貸す事は出来ても、正直、エンヴァリオン王国の為に命まで懸ける事までは出来ません。そんなヤツがここに留まっていても、皆の“空気”を悪くするだけだ。お世話になっといてなんですが、それが今の俺の“本音”です。」
「まぁ、そうなるわな・・・。分かったぜ、トモキ。元々お前を止める権利なんて、俺らには無いからよ。お前の思った通りにするが良い。」
「・・・すいません・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「いや、謝るのは俺の方だぜ。なんだかんだ言っても、俺も【為政者】だからよ。エンヴァリオン王国の【利益】を最優先に考えちまう。俺も、昔はそんな“大人”が大っキライだったんだけどよ。そんな俺も、今じゃそっち側の人間ってこったな。」
ガッハッハッハッとガーファンクル王は笑うが、その笑い声には力が無かったーーー。
・・・
「・・・。それで、城から出て、その先どうするんだ、トモキ?」
「そうですね・・・。と、言っても、俺には、取れる“選択肢”はそう多くないですけど、とりあえず【冒険者】をしながら今後の事を考えたいと思います。」
「まぁ、そうなるでしょうね。」
一旦空気を変える様に、キールさんが今後の俺の身の振り方を尋ねた。
それに、俺がそう答えると、ロアンさんもそう頷いた。
「ああ、それで、一つトモキに、いや、お前達に伝えておきたい事がある。ちょうど、今なら誰もいないからな・・・。」
そこに、ガーファンクル王が思い出した様に話を切り出した。
「何でしょう?」
「今回の【事件】の“裏”で暗躍していた連中の事だ。と、言っても、確定情報じゃないんだけどな・・・。」
「「っ!?」」
「・・・???【闇ギルド】じゃないんですか?」
その言葉に、キールさんとロアンさんは緊張した面持ちでガーファンクル王を注視した。
俺はと言うと、何の事か分からず、思った事をそのまま聞いてみた。
「もちろん、【闇ギルド】や【ファトゥウス家】が関与した事は、【裁判】でも言及されていたが、更にその“裏”に居ただろう連中の事さ。もっとも、連中は、中々尻尾を掴ませないから、詳しい事はほとんど分かっちゃいない。それ故に、混乱を招く恐れもある為に、あえて公表しちゃいないんだが・・・。」
「・・・もしや、【教団】が関与していた可能性があったんですか?」
「ロアンは知っていたか・・・。」
「何か知ってるのか、ロアンっ!?」
ガーファンクル王に追従する様、ロアンさんがポツリと呟いた。
それに、ガーファンクル王とキールさんが反応する。
「・・・まぁ、“噂”程度のモノですけどね。」
「【教団】って何ですか?」
話の腰を折る様で申し訳ないが、俺だけ“事情”についていけてないので、質問してみる事にした。
「トモキは、もう【魔神戦争】の話は知ってるだろ?」
「ええ。俺の前にこの世界にやって来た【異世界人】達が活躍した【戦争】の事ですよね?・・・そう言えば、俺をこの世界に送ってくれた【女神様】が、【魔神】一派の残党がとうとか、【魔神戦争】の影響で生まれる可能性のある、あるいは復活する可能性のある【神話】や【伝説】規模の【怪物】の討伐がどうとか言ってたっけ・・・。」
「それは本当か、トモキっ!?」
「「っ!?」」
何気無く俺がそう呟くと、ガーファンクル王とキールさんとロアンさんは、驚愕の表情を浮かべて俺に詰め寄ってきた。
「え、ええ。・・・あれ?言ってませんでしたっけ?」
「いや、聞いていない。お前が【神】を名乗る女にこちらの世界に送られて来たってトコまでは聞いたが・・・。」
「そうでしたっけ?とは、言っても、【女神様】の発言だと、俺をこの世界に送る事自体に意味があるとかなんとかで、俺も別に指命みたいなモンを与えられていないし、詳しい事は何も知らんのですが・・・。」
「ふむ、なるほどな・・・。いや、その【神】を名乗る女の意図までは分からんが、【異世界人】をこの世界に送れる程の存在が言及している以上、俄然現実味を帯びてきた話になるな・・・。」
「そうですね・・・。」
「「???」」
俺の言葉に、ガーファンクル王とロアンさんは納得の表情を浮かべるが、キールさんと俺は完全に置いてきぼりであった。
「あ、いや、すまんすまん。で、話を元に戻すと、【教団】ってのは、その【魔神】一派の残党、あるいは、【魔神】の【信奉者】達が設立した【組織】、らしい。あくまで“噂”程度の存在だったんだが、トモキの発言から、実際に存在する可能性はずっと高くなったがな。」
「ああ、なるほど。」
「それで。」
「彼らは人知れず暗躍している様でして、その【目的】は不明ですが、今回の【事件】の様に、あちこちで騒動を“裏”から巻き起こしている様なのですよ。まぁ、実際には存在が確認されていませんでしたから、あくまで“噂”程度の存在だったんですけど・・・。」
「その【教団】が、今回の【事件】に関与していた・・・?」
「あくまで可能性だけどな。と言うのも、調べに対して【闇ギルド】の連中は、【呪印石】の入手経路を覚えていないと【証言】しているんだ。多分、取引のある【山賊ギルド】から入手したんだろう、ってな。これは、ハッキリ言ったらありえない話だ。もちろん、【山賊ギルド】と繋がっていた可能性は否定しないが、他の【密輸品】の取引ならともかく、【呪印石】ほどヤバい代物の取引を忘れる筈がないからだ。トモキもすでに知っていると思うが、それほど【呪印石】はヤバい代物なんだ。この世界に生きる者なら、それを所持していただけで首が飛ぶほどのヤバい代物の入手経路や経緯を、忘れる筈がない。それに、【呪印石】が実際に出回る事も、極めて稀な事だからな。」
「にも関わらず、【闇ギルド】は覚えていないと【証言】、ですか・・・。【闇ギルド】が惚けている可能性もありますが、【教団】の情報が“噂”に対して極端に少ない事を鑑みれば、おそらく【記憶操作】を施している可能性が高いですね・・・。」
「そうだ。何とも厄介な存在だな。【教団】の【目的】が何かは知らんが、十中八九少なくとも“良い事”ではないだろう。それ故、またエンヴァリオン王国を狙ってくる可能性もあるし、もしかしたら【異世界人】を狙ってくる可能性もあるから、お前達とは情報を共有しておこうと思ってな・・・。」
「なるほど・・・。」
【教団】。
俺は、その言葉を深く心に刻み込んだ。
実際に俺は、今回の【事件】で被害を被った一人である。
その【教団】が、今回の【事件】にどの程度関与したかは知らないが、今後も何かしらの関わりがあるかもしれない。
流石に一人で、得たいの知れない【組織】をどうこう出来るとは考えていないが注意は必要だろう。
こうした時に、一人で居る事は不安ではあるのだが、【国】と言う【組織】に関わっていると、先程言及した様な問題も発生するだろうしなぁ・・・。
「トモキ。一人で突っ走るんじゃないぞ。今のお前なら、どんな奴が相手でも後れを取る事はないだろうが、“搦め手”を使ってくる奴等は厄介だからな。」
「いやいや、大丈夫ですよ。流石に俺も、そこまで向こう見ずじゃありませんから。」
「まぁ、そうだろうがな・・・。トモキ、俺が言うのも何だが、仲間を集めろ。お前が信頼出来る仲間をな。それと、【冒険者】になるなら、お前はある意味自由に行動する事が出来る。俺からのせめてもの“アドバイス”だ。【交易都市・アングレット】を目指してみろ。」
「【交易都市・アングレット】?」
「ああ。そこに、お前と同じ【異世界人】が居る、筈だ。俺も正確な所在までは把握していないのだが、俺のかつての仲間で、【魔神戦争】の時に活躍した【英雄達】の一人がそこに居を構えている、らしい。同じ【異世界人】である奴なら、お前の力になってくれると思うぜ?」
「なるほど・・・。」
確かに、同じ【異世界人】なら、俺とは感覚が近いかもしれない。
何かしらの情報が得られるかもしれないし、いずれにせよ、会えるなら会ってみたいな。
とりあえず、俺の今後の“目標”が決まった。
「分かりました。【交易都市・アングレット】に向かってみます。それで、その人は何て名前の人ですか?」
「奴の名前はカミキ・ハヤト。気の良い奴だぜ。」
「カミキ・ハヤト、か・・・。」
こうした事があり、その数日後、俺は【フィーリッツ城】を出て、【交易都市・アングレット】わ目指して旅をする事になったのであるーーー。
誤字・脱字がありましたら、ご指摘頂けると幸いです。
ブクマ登録、評価、感想等頂けると幸いです。是非よろしくお願いいたします。
また、もう一つの投稿作品、「『英雄の因子』所持者の『異世界生活日記』」も、本作共々、御一読頂けると幸いです。




