リョウスケ編
孤独は身近にあり、それが近くなるほど自覚が薄くなる。…皮肉なものだ。
無藤良介:《唯一無二の頭脳、絶望を抱きその身を投ずる。》
生まれつき、運動以外何もかも手に入っていた。運動神経はあえて育てない。育ててしまったら、《この世の底が知れてしまう》からだ。
リョウスケ(人の思考も、記憶も、感情も…全て分かってしまう。こんなのにプライバシーもモラルも無いな。)
その気になればこの世界だって変えることも出来る。しかしそれは浅はかで退屈だ。
リョウスケ「…ゴホ、ゴホゴホ!」
この、病弱な身体が俺の逃げ道だ。いや、この意味は分からなくてもいい。分からない方かいい。
退屈しのぎでクイズ番組に出てみたが、予測通り圧倒的勝利。クイズの神様という称号すら一瞬で奪える。
俺は、あえて病気になるような生活を送っていた。病気になって、この世界から逃走しよう。もちろん、病院にも行かない。家族は俺を気味悪がって俺の弟と一緒に旅立った。
どうやら、その目論みは達成されたみたいだ。
…
目を覚まして、まず此処は何処なのか、自分の記憶はどこまであるのかそれを一瞬で把握しようとするが…
無藤(不可解な現象が積み重なっている。情報も少ない今、俺でも解析は厳しいな。)
俺は、安全の範囲を確認して部屋を出た。
…
俺は自らの契約を見る。
無藤(殺しさえすれば生き残れるが…あまり生には執着してない。出来る限り情報を書き記して死ぬか。)
俺はそこから情報分析を始めた。
…
ゲームマスターというのは、顔や声のトーンが捏造されているな。情報分析は厳しいが、少しは出来た。他の者も簡単に出来たな。…さすがに、このゲームの真相とかは無理だな。この空間自体が異質すぎる。ただ、《異質ということは、今まで俺が考えなかった物という事》だ。少し捻れば答えは出る可能性が存在する。
…
俺に出来たことをなるべくメモに記した。後は死を待つのみだ。
…
俺はいち早くこの世から存在を抹消された。不思議と、足掻くことはしなかったな。人間なら、生きることに必死と思ったのだが。なら、俺は人間じゃないのかもな。
などと、俺に似合わず冗談を吐く。
無藤(やはり、どんなことがあっても、退屈だ。つまらない。だから、だからこそ、人間は欠陥があり、それを《個性》という。失敗作は俺だったのだ。)
俺はその後は無心で、まるで暗黒の海溝に身を投じるようにして体を委ねた。




