ヒカリ編
お兄ちゃんはわたしの支えで、ゲームを通じて支えが増えた。幸せだ。
愛田光:《幸せは流行病》
わたしのお父さん、お母さんはわたしが物心つく前からいなかったらしい。そうお兄ちゃんから聞いた。
ヒカリ「お兄ちゃん、おはよう!」
キワム「ああ。おはよう。じゃあ、交代しよう。」
わたしたちは2人だけで家畜や穀物、野菜を管理している。朝辺りはお兄ちゃん担当で、夜辺りはわたし担当。たまにお隣さんが手伝いに来てくれたり、わたしのを出荷してお金を稼いだりしてる。特にこれといった不満はなくて、楽しく生活している。
ヒカリ「今日も疲れたー!」
キワム「ははっ、お疲れ。」
わたしたちの地域は海が近くにあれど、所詮は田舎。だからテレビもなくて、外とはある意味分断されてる。まあ、数年前のニュースとかなら風の噂とかで聞くけどね。…ここから街まで片道でも2時間くらいかな?
だから、わたしたちは知らなかった。これから災害が来るなんてこと。
外は雨粒がとても速いスパンで落ちてくる。
キワム「最近雨多いな。水を与えすぎて野菜が枯れないか心配だ。」
ヒカリ「そうだね。風も強くなってきてるし、念入れに見ておかないとね!」
そんなある日…《津波が地域を襲った》。台風の二次被害らしい。
キワム「ヒカリ、逃げるぞ!」
ヒカリ「逃げるってどうやって!?」
キワム「分からない!だが、逃げないよりはマシだ!」
お兄ちゃんに手を引かれ、わたしはついて行くという形になった。
…結局波に捕まって、わたしはお兄ちゃんと一緒に流された。
(ヘイサクウカン-Xの内容を含むので、最後のゲームのみとします。)
…
ヒカリ「ここは?」
気がつくと見知らぬ所にいた。お兄ちゃんは…居ないみたい。
とりあえず、ゆっくりと探検することにした。
開けた場所には少数の人がいた。その人たちと話していると、どうやらこの人たちも被害者らしい。
…
色々あった。こんな陳腐な言葉でしか表現出来ないけど、それ程までに疲労しているのだろう。
裏切り者は私。それは、カオルちゃんが死んだ後に、サイトくんから直接聞かされた。
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サイト「ヒカリさん、ちょっといいかな?」
サイトくんはいつものおっちゃらけた笑顔で言う。
ヒカリ「…何。」
それどころじゃないの。わたしはカオルちゃんが死んじゃって、とても、とても…
サイトくんは辺りを見回して、人がいないことを確認すると、今まで見たことがない表情で言った。
サイト「…ヒカリさん。協力して欲しい。」
ヒカリ「…?」
サイト「裏切り者は…君だ。」
ヒカリ「な、何言って…!」
サイト「しっ。声が大きいよ。今は信じなくてもいい。だけど、もし僕が裏切り者と偽る日が来たら、演技して欲しい。僕を裏切り者と思わせる…ね。」
ヒカリ「…。」
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最初はもちろん信じなかった。だけど、徐々にそう思って来ていた。正確には分からないけど。
そして、そんなサイトくんも死んだ。サイトくんの気持ちを理解した今、わたしは全てをかけて最終審議を行うんだ!…と、そう決意した。
…
みんなの顔色が、絶望に変わっていく。既に自分が死んでいると推理してしまったからだ。
ヒカリ(わたしが、わたしが何とかしないと!みんなを、救い出さないと!)
わたしは1人ずつに希望を叩きつけた。…どちらにしてもわたしは契約で死んでしまう。だから、せめて生きて欲しい!
…
全員扉でこの空間から出た。
意識が遠のいていくが、わたしは不思議と幸せだ。シュウキのお兄さんがこちらを見つめている。わたしは…満足だ。
…
結局、お兄ちゃんとのゲームは思い出せないままかあ。わたし、わたし…
ヒカリ(もっと、生きたかった…!もっと、楽しく笑いたかった!)
これをあの場で言っちゃったら、少し後悔させてしまうだろう。だから言わなかった。…言えなかった。
ヒカリ(…でも、案外笑えたな。このゲームで。意外と楽しかったかも…。)
これからシュウキくん、ランコさん、トオくん、もし、日常に戻れたら、あなた達3人が紡いでいって。そして、幸せになって。わたしの分も、皆の分も。最後に伝えたかったな。幸せって、伝染して広まってくってこと。




