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変態しかいない部活動!!  作者: りりべる
1/6

いまどき部活動必須だなんて聞いてない。



挿絵(By みてみん)



俺、服織はとり 洸夜こうや。高校二年生。

ゆえあって、この花守高等学校に今日から編入します。

高校二年からの編入なんて、二重の意味でドキドキだ。もともと男子校にいたから、女子と仲良くなれるか心配だ。男子に対しては結構フランクなほうだけど、早く馴染めるかな。

ああ本当に心配だ。まったくもって心配だ。

女の子がいっぱい待ってるんだぞ。夢にまで見た、女子のいる高校生活なんだぞ。期待に胸も膨らんじゃうよそりゃ。

でも仕方ないよね、親父の転勤のせいなんだから。ドキドキしちゃってもいいですよね。





「服織 洸夜です。宮高から来ました。よろしくお願いしまっす!」

案内された2ーB教室で、俺は緊張と期待に胸躍らせながらそう挨拶した。

クラスメイトは明るいやつらばかりで、男子も女子もフレンドリーだ。俺が編入してくることがわかってから、ささやかな歓迎の意味を込めてと、教室の後ろの黒板にウェルカムメッセージを沢山書いておいたのだと話してくれた。

黒板に沢山書かれたメッセージをひとつひとつ読んでいると、ああ編入してきてよかったな、としみじみ。

「はとりくん!」

「ふぁ!?はい!!」

女子(可愛い)が、黒板に目を通していた俺の目の前にひょっこりと顔を出す。

驚いて変な声が出てしまった。恥ずかしや。

「やだ、はとりくん可愛い。びっくりしちゃった?」

ごめんね、と舌を出して笑ってみせる。

ギャワイイ・・・。共学最高。

「い、いいよいいよ。で、どうしたの?」

顔に熱が・・・・。赤くなってるのばれないかな。

「この学校ね、一年間はどこかの部活に入らなきゃいけないの。高校なのにだよ?なんでも、近年失われつつある生徒の自主制を・・・高めるだったっけ、鍛えるだったかな」

「部活・・・」

ふむ。部活か・・・。中学の時は逆に帰宅部が許されていたし、前の高校でも帰宅部だったし。

「俺、なんもできることとかないんだけどなー。どうすっかな・・・」

特技って言われると、可愛い女の子を瞬時に見つける、とかだけど、さすがにそれだけではなんの役にも立たない。

そしてそれを今口に出してしまったら、多分この女の子にはムッツリだと思われそうなのでやめておく。

「あたしも一年の時、できないのにテニス部に入っちゃって。一年間大変だったなあ」

えへへと笑う彼女は可愛い。本当に可愛い。目の保養だ・・・。

「じゃあ、俺も下手な部活には入れないな。どうしよう」

にやけないよう気をつけながら考えてはみるが、運動部も文化部も、割と苦労しそうな気がする。どうせ三年になるまでいなくてはならないのなら、なんの特技もない俺が入っても差し支えのなさそうな部活がいい。

「先生に頼めば、部活の一覧表もらえると思うよ。じゃあ、頑張ってね!」

にこりと笑って、彼女は友人たちの元に戻っていった。

oh・・・よく見るとお友達もまた可愛らしい。



「と、いうわけなので、部活の一覧表ください」

放課後、俺は職員室に来ていた。もちろん案内してもらったのだが、緊張して女子には頼めなかったのが悔やまれる。三階から一階までの距離、結構話せるチャンスがあったんじゃないかと。

「ああ、今日から来た服織だね。ちょっと待ってなさい」

メガネに七三分けのおっさん教師がくれた部活の一覧表に目を通す。

バスケ部、テニス部、弓道部・・・いや、運動部は飛ばそう。文化部は。・・・下のほうにかたまってるのか。

文化部ならあるいは、俺にもできそうな部活があるはずである。

えーと。茶道部、美術部、パソコン部、書道部、声楽部、吹奏楽部、演劇部・・・・。

なにひとつとして、俺に出来そうなものがない。字は下手くそだし、歌も下手だし、パソコンなんて細かい機能を知らないし。ましてや楽器の演奏なんてできるわけがない。

「あ、あのー。先生」

「ん、入部届はこれね。今書いちゃってもいいよ。先生暇だからね」

「・・・なんの取り柄もない俺でも入れそうな部活ってないっすか?」

自分で言ってて自分で悲しくなってしまった。

「あー、じゃああれか。仕方ないかあ。それ、裏返してみなさい」

手に持った一覧表を指差し、先生が言う。

「??裏?」

不思議に思いつつ、紙を裏返して見ると。

裏面の下の方、紙の隅っこに小さな文字で、『フリーダム同好会』と書かれていた。

「なにこれぇ」

明らかに色々おかしいんだけど。なに、フリーダムって。なにがフリーダム?なんでフリーダム?っていうかなにする部活なんだ。っていうか部活ですらない。同好会だ。

「まだ部員が五人いないからねえ。同好会なんだよ」

「結構怪しい感じするんすけど・・・これなにするとこなんすか」

「実は先生たちもあんまり詳しく知らなくてねえ。でも公式の大会とか、催しものとかに一切出てこないからねえ。多分、いるだけでいいんじゃないかなあ」

うんうんと頷きながら、先生はそう言った。

・・・どういうことなの。先生方がよく把握してないって。大丈夫なのか?

そう思ってはみるものの、他に候補がないのなら仕方ない。いるだけでカウントされるのなら安いものだろう。どうせ三年になれば退部はできるらしいし、それまでの辛抱である。

「わかったっす。結局決めなきゃなんないんすよね」

「うんうん」

「入部するんで、入部届けください」

はいはい、とデスクに戻る先生を横目に、俺は想像してみる。

いるだけでオーケー。もしかしたら、よくあるダラダラっとしているだけでいい部活か?特になにもしていないから、先生方は無関心ということだろうか。なら、結構自由がきくな。ああ、そういう意味でのフリーダムか?それなら悪くはないかもしれない。これに加えて、運命を感じるような可愛い女の子がいれば完璧なのでは。

入部届けにサインしながら、俺はそんなことを考えていた。





「三階の・・・えーと、こっちか?あ、あった」

三階渡り廊下の先の先。行き当たりのすぐ横の壁に、乱雑な文字で『自由』と書かれた紙が貼ってある。

なんだろう、なんだか場所が・・・ものすごく隔離されているような。渡り廊下を渡った先に、他に部活をやっていそうな教室は見当たらなかった。

今は放課後だし、誰もいないということは、この広々とした空間に存在するのはこの部活・・・もとい同好会のみということになる。

あ、さっき俺が入部したから、これで晴れて部活動になるのか。

コンコン。

ドキドキしながら扉をノックする。怖そうな人がいたらどうしよう。

「はーい」

ガラッと開いた扉の先から現れたのは、女の子だった。

(な、なん、だと・・・!?)

服織 洸夜、十七歳の心に電撃走る。

オレンジに近い茶色の髪。ふわふわのボブヘア。大きな丸い目、長いまつ毛。着ているカーディガンはサイズがあっていないのかぶかぶか。長い袖に手のひらまですっぽり隠れたその出で立ち。

なによりずりさがったその大きな黒メガネ。


か、か、か、か、か、か、、、、、、、、、、、


可愛いーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!


ズギャアアン、と効果音がつきそうなほど、俺の心は雷に打たれたかのごとくだ。

これが・・・これが運命?運命なの?ついに俺にも運命が来ちゃったの?運命が運命して運命だから運命の・・・・

「受けだな」

「・・・・えっ?」

真っ赤な顔でじっと見つめたままフリーズした俺を一瞥した美少女が、ぽつりと呟いた。

ん、え、なんて?今なんか言われたような気が。

「きみ!ご用件は?」

打って変わって口元がニヤついている彼女にドギマギしながらも、自分が今日転入してきたこと、入部届けを提出してきとことを告げる。

ドキドキしすぎて二、三回ブザマに噛んでしまった。

でもよし。ここがどんな部活であれ、こんな可愛い子がいるなら天国だ。

もしかしたら、これを期にたくさん話すようになって、気がついたらお互い意識しちゃったりなんかして。お付き合いとか、お付き合いとか、お付き合いとかができる日も夢ではなかったりするんじゃないか?

むふふ、と思わず笑みがこぼれたところで、ツギハギだった俺の言葉を理解したらしい彼女の顔がぱあっと輝いた。

うおお、笑顔が可愛い。

「みんなー!!新入部員だよっ、新入部員がきたよーっ!!」

くるりと踵を返し、袖をバタつかせながら部室の中に消えていく。

は、入ってもいいのか?

遠慮がちに部屋の中を覗き見た。

「ぶちょー・・・。しんにゅーぶいんどこ?」

「ボクも、ボクもみるー」

あ、あれ?なぜ小学生がこんなところに?

ぱたぱたと駆け寄ってきたのは、どう見ても小学生にしか見えない二人の少女だった。多分双子だ。顔の造りがほとんど同じだし、サイドテールをゆるく纏めた髪型は鏡合わせのように左右にわかれている。学校指定のカーディガンではなくジャージ。

ということはやっぱり小学生なんじゃないか?

「あーはは、ごめんごめん。入ってきていいよっ」

はっとこちらに気づいたメガネ美少女が手招きした。

「おおー!ほんとうにしんにゅーぶいんだ!」

「男だ。ボクの読みでは受けだな。」

双子がまじまじと俺を見上げる。というか、この双子も相当に可愛らしい。まるでお人形さんのようだ。

レベル高いな。ありがとう神よ。俺は別にロリコンではないけど、この可愛さは癒しだ。

と、いうか。またなにか言われたな。ウケ?ウケってなんだ?

「まあ、まずは自己紹介っしょー。ささ、座って座って」

会議用テーブルに備え付けのパイプ椅子に座るよう促され、恐縮っす、なんて言いながら腰掛けた。

ああ、可愛いだけでなく、新人にも優しいのか。彼氏いるのかな・・・。




「よーっし。じゃあ私からっ」

四人仲良く向かい合って座り、最初に手を挙げたのはメガネ美少女だった。

「名前は、七海なななみ 餡子あんこといいます!ななみって書くんだけど、読みは『ナナナミ』なんだよ。変わってるでしょー」

「へえ。あ、あの、餡子ちゃんって呼んでも、その。い、いいか、な」

「あんこでいーよー!みんな大体あんことかあんちゃんとかだし」

うおお。ありがとう。可愛い。優しい。

にこにこ見つめられて、また顔が熱くなる。いやー、いいわあ。この部活いいわあ。最高だわあ・・・。

「じゃあ、次はボクがやるの」

ぴんと片手を挙げ、双子の片割れが言う。

「ボクの名前は雛廻ひなみましろなの。ちなみに言われる前にいっておくけど、ボクたちは幼稚園児でも小学生でもないの。ちゃんと、高校生なの。まだ一年生だけど」

「・・・ああ。もしかしてバレてたか」

バツが悪くなり、ごめんなと謝ると、双子は二人揃ってふるふると首を振った。

「バレバレだったの。そうじゃなくても、よくまちがわれるの。別にふだんは気にしないの。でもたまにたいへんなの」

「二人はイギリス人のクウォーターなんだよ。可愛いでしょ」

あんこがましろの頭をよしよしと撫でる。

なるほど、それで髪の色素が薄いのか。

「で、こっちがボクのお姉ちゃんのまひろなの」

「よ、よろしく、です」

双子の片割れが、少しだけ妹の陰に隠れる仕草が、やっぱり可愛らしい。

「あ、あ、あ、あんこ、に、ましろにまひろか。うんうん、覚えたよ。」

うおおお。意識してる(ついさっきだけど)女子を呼び捨てだなんて、生まれて初めてだ。何度目かの神よありがとう。

双子の方は鏡写しだから、右のサイドテールがましろ、左のサイドテールがまひろか。うん、覚えやすくて助かったな。

「じゃあ、最後は俺が。服織 洸夜。コウヤでいいよ。まだこの学校のことも、この部活のこともわからないことばっかだから・・・。よかったら、仲良くしてくれると嬉しい、な」

へへっ。なんか照れちまうな。こんな可愛い女子たちにじっと見つめられると。

「コウヤかー。うんうん。よろしくねえ。」

「よろしくなの」

「です、です」

ははは、と互いに笑い合う。これからこの学校で、この子たちと部活動していくのか。いやあ、楽しみになってきたぜ。

まだなにをする部活なのかは知らないけど。まあ、あんこの方から説明くらいあるだろう。

「さて。無事に自己紹介も済んだところで」

あんこが切り出すと、双子はなにかを察したのか、うんうんと頷いた。

「???」

なにか始まるのか?そう俺が小首を傾げると。

「もう、もう、もう!!!我慢の限界じゃあああああああ!!!!」

ブッシャアアアア!!!!

俺の顔面に勢いよく、とんでもんない量のあんこの鼻血が、ぶっかけられたのだった。







「・・・・・・・・・・」

「あんちゃん、コウヤが固まってるぞ。というか、よく我慢したの。えらいの」

「アッカーン!!!マジでやべえわ!!ひとめ見た瞬間ktkrとは思ったけどマジで可愛い可愛すぎるわ尊いんじゃ!!ヘアピン男子尊い!!照れ顔やべえ!!めくるめくわ!!ありとあらゆるエロ受け顔がめくるめいてるわくっそ!」

・・・・・・・・・・・・・・・。

え?


えええ・・・・・????


ちょっと、あの、ごめん。ちょっとだけ時間もらえます?

今ちょっとモノローグとかできる気がしないんで。

「攻めは意地悪系か!?はたまた王子様系か!?いや、有名人相手に受けてもイイ!!とりまガン攻めに《ピーーーーーーー》とかされて《ピーーー》されてればいい!!うぉおおお、激しく萌え!!禿げ萌え!!」

「あんちゃん、まずは鼻血とめないと。また輸血することになるの」

「はっ!!しまった。でも妄想止まる気がまったくせん!!」

「まひろは・・・《ピーーー》も気になるの」

「んがっふう!!絶対いいやん、完全に尊いやつやん!!尊み秀吉だわぐっじょぶう!!」

「・・・・・・・・・」


耳に駆け込んでくる猥褻な単語を聞き流そうとしてはみてるんだが、なんか無理そうである。

てか、え?あんこさん。あなたさっきまでと色々違うんですけど・・・。

「というわけで・・・。あんちゃんがご所望なの。ビデオじゅんびするから、イケメンに抱かれてきてほしいの」



・・・・俺の思考が変な機械音とともに故障する音を、確かに聞いたのでした。






「・・・腐女子、ねえ」

ようやくあんこが鼻血を抑えつつ、話してくれた内容によると。

「ここは普通とちょっと違う性癖の人間が集まる、ちょっと変わった部活」

「そうそう」

「いや、ちょっとじゃないだろ。だいぶ尋常じゃなくおかしいんだけど」

ちょっと、を強調するあんこ。俺はといえば、自分でも目が死んでるのがわかる。ちなみに、双子に用意してもらったタオルで顔にかかった大量の鼻血を吹いているところである。

「まあ、あんちゃんはホモ関係だとかなりの変態さんなの」

こくこくとまひろも頷く。

「ましろ〜!ちょっとだよう。ちょーっと男子が二人でいるだけで付き合ってると思うくらいで、ちょーっと美形がいるだけでアレで18禁な姿を想像しちゃうだけだよう」

「後戻りできない変態ぶり・・・!」

頭に重いものでも落ちてきたみたいな気分だ。

一目惚れだったんだけどなあ。どうなってるの神様。

「ていうか、俺は美形じゃないじゃん・・・。自分で言うのもなんか悲しいけど」

そう。俺はキラキラ眩しい美形ではない。むしろ顔の造りは地味目だとすら思う。

「世の中にはね、平凡受けというものがあるのよ・・・!」

にやにやと笑いながら言う。

平凡受けってなにそれ。BLするなら美形同士だけで想像してはくれまいか・・・。

「ちなみにボクはエロゲーが趣味。男同士のもやるし、女同士のもやるの」

「えっ、その見た目で!?」

エロゲーする幼女(見た目)って・・・・。

「あっ・・・!もちろん、男女のもやるの」

「いやそこは慌ててカバーするとこじゃない・・・」

なんだろう。詳しく話をされるたび、俺の中のなにか生気的なものが死んでいく気がする。

「ちなみに、おねえちゃんはエロ同人を描いてるの」

「まじで・・・・?」

嘘だろと視線を送ると、まひろはなぜか誇らしげに、ぐっと親指を立ててみせた。

「みる・・・?新刊」

「ノーセンキュー」

完全に色を失った瞳で、俺は答える。





桜がまだ散りきらない四月、高校二年になると共に編入した花守高等学校。

そこで入ることになった部活には、見た目の可愛い変態が三人。

俺、服織 洸夜は、『退部届けを出そう』と心に誓ったのだった。

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