第一話
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「カァ~、ペッペ! ったく、何処だよここ?」
神様とやらが地球という、俺がいた世界とは別の世界に送ってきたのは分かっている。だが、気づいて起き上がったら口の中砂だらけだった……。ってか? どういうこった? と、心の中で呟く、とある一人の男。
ビュウウ~、と強い風と共に、巻き上げられた大量の砂が一気に襲ってきた。「うわっ! 何だよ!」急いで立ち上がり砂を避ける男。だが、それでも砂が風に煽られ、次々と纏まって飛んでくる。
「あああーー! うぜえええーーーー!」イラっとしたその男は、手のひらを思い切りブンと、その砂嵐に向かって仰いだ。するとその手のひらから、竜巻の如く強風が舞い起こり、一気に砂嵐を蹴散らした。
「全く。もっとマシなところに落とせってんだ」砂嵐から解放されても、ブツブツ文句を言う男。とりあえず服についた砂をパンパンとはたく。服装は前の世界のまま、白い長袖シャツに麻で出来た長ズボン。鬱陶しい砂嵐は落ち着いたので、とりあえず周りをキョロキョロ見てみる。
「ああー、あれだ。砂漠ってやつだ」ようやく自分の状況を理解した男。この砂だらけの広い地帯は前の世界にもあった。水が一切ない、太陽が燦燦と照り付けとても暑い場所だ。
彼の名はヴァロック。燃えるような赤い髪に身長180cmの長身で、筋骨隆々の逞しい体だ。彼が以前過ごした世界は魔物がいて、魔法が使える世界だった。そして彼は勇者と共に、前の世界の災厄、魔王の脅威から人族を救った英雄の一人だ。
おもむろにポケットを弄り相棒の大剣を探す。彼の大剣は長さ150cm幅30cmでかなり目立つため、神様が気を利かせてストラップにしてある。この世界では武器を持っているのを見られるのは良くないと聞いていたヴァロック。と言うか、すとらっぷって何だ? と、首を傾げ神様の言った言葉を心の中で呟いてみる。前の世界にはスマホがなかったから当然知らない。とにかく、小さくなってポケットに入れていたそれを取り出してみたら、相棒はちんまりと長さ3cmくらいになっていた。
「元に戻れ」神様に言われた通り呟いてみる。すると一気に元の大きさに戻った。キチンと鞘もついたままだ。
「やっぱお前を背負わないと落ちつかねぇな」ニヤっとして白龍の骨で出来た大剣を背負うヴァロック。キラリと柄が太陽に反射して光る。武器を見せるのは、この世界では御法度だって聞いていたのに、さっそく言われた事を無視しているのだが。
「ま、何かあったら小さくすりゃいいんだ」言われた事をさっそく守らない罪悪感なのか、誰に話すわけでもなく独り言を呟く。
「さて、まずは人探しだな」当然土地勘のないヴァロック。何処に向かえばいいのさえ分からないが、ずっと同じ方向に走っていたら何かにぶち当たるだろう、そんな適当な理由で、太陽に向かって走り出した。まるで昔の熱血ドラマのように。
だが、そのスピードは自動車ほどに速い。前の世界では剣鬼と呼ばれ恐れられたヴァロックは、武器を使った攻撃では右に出るものがいないとまで言われ、恐れられ称えられた彼は、その身体能力も人外でなのである。
そして三十分ほど時速60kmくらいで走っていると、遠くの方で何か音が聞こえた。
「お? ありゃあ人だな」嬉しそうに呟くヴァロック。新しい、この地球と言う世界で初めて触れ合う人間。この世界には魔族どころか獣人もエルフもドワーフもおらず、人族しかいないと聞いていたが。
「ん?」近づいてきて徐々に様子が見えてきたが、どうもおかしい。一旦立ち止まり怪訝な表情で細目にしながら見ていると、突然何かがヴァロックのところに飛んできた。
「うわっと!」驚いて飛んできた何かをキャッチする。「……うう」飛んできたのは人だった。三十歳くらいの中年男性だ。頭にはターバンを巻き、肩から麻の布をケープのようにかけ、その手には、ヴァロックが見た事のない、何か黒い小さな塊を大事そうに抱えている。
「え? あ、おい、大丈夫か?」頭から血を流している。怪我をしているようなので、気になって聞いてみたヴァロック。
「……ああ、あんたは?」どうもこの赤毛の大男が助けてくれたらしい。それは何となく分かった中年男性。
因みにヴァロックは、この世界に来る前、(言語理解)の飴を神様より与えられている。なのでこの世界の言葉は理解できるのである。それはどの国の言語でも理解できる優れ物だったりする。
「俺はヴァロックってんだ。怪我してるようだが、何かあったのか?」初めて会った地球と言う世界の人間に、嬉しそうなヴァロック。前の世界でも旅好きだったヴァロックにとって、こういう新たな人との出会いは、どんな時でもテンションが上がるようである。
「何かあったのかって……」頭部を怪我しているからか、血を失い朦朧としながらも、呆れる様子の中年男性。
「まあ任せな。俺が仲間のとこに連れてってやるから」ニッと白い歯を見せ笑って見せるヴァロック。そしておもむろに男性を片手で担いだ。
「え? あ、おい! あそこに戻るのか? それはダメだ!」だが、中年男性は戻りたくない様子。何とかヴァロックから降りようとジタバタ暴れる。
そんな男性の必死の抵抗に、不思議そうにしているヴァロックの元に、またもや何かが飛んできたが、今度は音速に近いスピードだった。
「なんだ?」だが、それを難なく片手でキャッチするヴァロック。ドラゴンさえ一人で倒せるヴァロックにとって、この程度のスピードは大した事ない。
「なんだこりゃ?」不思議そうな顔のヴァロック。そして、シュルルー、とヴァロックの手の中で回転しつつも、徐々に威力を失っていくそれは、ロケット弾だった。
※ネコと転移 https://ncode.syosetu.com/n8527ev/ という長編小説のサブストーリーです。初めて読む人にも分かるように書いているので、お楽しみ頂けたら幸いです。