3 実戦
「全く、さっきは溺れ死ぬかと思ったよ」
そう、先ほどのルグドラの起こした雨で、森の一部は洪水が起きていた。その後ルグドラの起こした風で雨雲は払うことに成功し、今に至る。
だが、雨がやんだ時には辺り1面真っ暗であった
「それだけ我の魔力が大きいということだな!」
フハハ、とルグドラが笑いながら話す。
どうやら、魔力は多いほど大きい魔術が使えるようだ。 うん。 いいねぇ、魔法。 使いこなしてみたいもんだ。
「笑い事じゃねぇだろよ。まぁ、元凶は俺なんだけどさ」
「まずは制御の練習じゃな!
それこそレギルスは完璧に使いこなしておったぞ?」
「どんな感じに使ってたんだ? やっぱり雷とかか?」
「いーや、奴は我の放った攻撃を逸らしたりして、味方同士にぶつけさせたりしておったわい。
力を操るというか、そんな感じじゃのう」
「なにそれ強い」
力が操れるという事は、ベクトルの向きが自由自在に操れると言うことだよな。
あれ、もしかしてこの能力あれば最強行けるんじゃね?
と、思ったが、火を制御するだけであんなになったんだから無理だわな、と考える
「まぁ、まずは身体強化から始めてはどうじゃ? レギルスも、戦いの前は身体強化をしてから戦っておったしの」
「身体強化か、それは、自分の力が何倍になるとかそういうイメージでいいよな?」
「使った事は無いからなんとも言えぬが、そんな感じで良いのではないか?」
「任せろ、「絶対領域」」
そして、俺の身体能力が5倍程になるのをイメージする。 すると、自然と体が軽く感じた
「できた、のか?」
「ほれ、そこの木でも殴ってみれば良かろう?」
そうルグドラに言われ、木を殴ってみることにする
「どっ、せーい!」
「バキッ!」と音を立て木は折れた、折れたのだが、
「痛っだーい!!!」
俺の腕も折れていた
「ふむ、貴様がイメージしたのは力だけでは無かったのでは無いか? 体の強度も高めんといかんとみたいじゃのう」
そう言われ、言い返そうとするが、壮絶な腕の痛みで言い返すことが出来ない。すげぇ痛い。
「自分の腕が治っているところでも、想像してみれば良いと思うぞ」
ナイスルグドラさん!
そう思いつつ、腕が治っているところを想像する。 瞬間、傷は無くなっておりいつもの腕に戻っていた。
でもちょっとまだ痛いな〜
「あぁー、今までで2番目に痛かったよ」
死んだ時の痛みは凄かったからね
「フハハ! 人間はやはり脆い! まぁ、良い教訓になったじゃろう?」
「それもそうだな。 それよりもう、真っ暗だな、この能力で光とかは生み出せると思うか?」
「うむ、我にとっては明るさなど些細な問題に過ぎぬが、その能力ならば可能であると思うぞ。
どの明るさかとかをイメージするのじゃな」
「わかった。」
そういい、電灯をの明るさをイメージした。
「うむ!成功じゃ!」
光は灯っていた
しかし、この能力はなんでもありだな! ただ、実際に戦いながら素早くイメージ出来るか? と、言われればNOだし、まだまだ練習が必要な感じがする。
やはり、得意技とやらを作った方が良いみたいだな
「なんか、簡単に出来そうなのってないか?」
そうルグドラに問いかけると、「ふぬ」と言って思考を巡らせ始める、そして、しばらく経つと
「物を浮かして自由に操る事から始めてはどうだ? その要領で、いずれは力も操れるようになるだろうしの!」
なるほど、流石ルグドラ先生だ。 これは毎日のトレーニングに取り入れてみよう。
そう思い、近くに落ちていた石ころを浮かばしたりしてみる。
すると、思っていたより簡単に動かすことが出来る
「あれ? 意外と簡単にできたな」
「やるではないか! 透はその方面の才能があるのかもしれぬな」
まじか、俺才能あるのか! いや、増長はいかんな、謙虚になろう。
「まぁ、誰でも出来るだろ」
「そんな鼻をひくつかせて言われてもの」
あっさり調子に乗った事がバレた
「む?」
ここでルグドラが突然顔をしかめる
「どうしたんだ?」
「魔物が我らを見ているの。 これも良い機会じゃ、お主戦って見たらどうじゃ? なぁに、ここの魔物は大分弱いから十分勝てると思うぞ?」
「いやいや、無理でしょ」
俺さっきまで普通の人間でしたし
「良いからやってみろい! 我が援護してやるから、安心して突っ込んで来ると良いぞ」
「まず、俺には何処にいるのか分からないのですが」
「そんな時の「絶対領域」であろう?
探知とかは簡単なはずじゃ!」
便利だな、「絶対領域」と、思いまだ、展開されつつある「絶対領域」を再利用する。
イメージは、何処に魔物がいるのか、でいっか
そう思いイメージすると、魔物は意外と4匹もいた
姿は分からないが、大きさは分かる。
魔物と呼ぶから大きいと思っていたが、そんな事はなく、大きいやつでも自分より10cmほど小さい。
「こいつらって、本当に殺して良いのか?
その、人間に害がないなら殺すのは可愛そうなんだが」
「安心せい。 魔獣は他種族しか食わん」
「他種族ってなんだよ?」
「我は龍種じゃろう? そしてお主は純人種。 その様な感じで他にもあるのじゃよ。種族がな」
まじか。 ケモミミっ子とか、会いたいな! それこそ男の浪漫だよな! エルフっ子とかさ!
いかんいかん。 集中せんとな。
まずは、と、石を6個浮かび上げ同時に300㌔程の速度で放つ
この時所詮石ころ、と透は思っていたが、石とて普通に投げて当たれば骨折はするのである。
それを300㌔で投げたのだから、優に体を貫通してもおかしくない速度だから、くらう方はたまらない
それが油断している魔物達に当たり、「ギャン!」と言って倒れる音がする
「これは、凄いな」
「だから大丈夫と言ったであろう?」
「ああ、これだけでも十分戦えそうだ」
そう言いながら透は倒れた魔物の元に向かう。
どうやら魔物は犬を大きくしたような感じで、能力など無ければ軽く食い殺されそうな牙もあり、こんなものを倒したのか、という考えに至る。
しかし、石ころ貫通してるし、血はどくどく流れてるし、母さんの死を思い出してしまう。
忘れよう。 あれはきっと、俺が悪いのだろうけど。
「ふむ、魔法が使えなくても、それがあれば大丈夫であろうな」
確かに大丈夫だろう。 しかし、魔法の使い方も知りたいもんだな。カッコイイし!
「ルグドラ、魔法ってどうしたら使えるようになるんだ?」
「そんなもの、自分の魔力を使って使うだけよ。まぁ、貴様に魔力は無いみたいだから使えぬと思うがの」
「まじか、おれ、魔力ないの?」
これは結構ショックだ。だが、魔法使いになれないという事は、童貞じゃ無くなると考える
それなら幾分かマシだな
「うむ、まぁ、魔力の無い人間なんぞ、何人もおるで心配せんで良いぞ」
結構いるらしい
「それを聞いて思ったが、「絶対領域」って、固有魔術と言うからには、魔法なんじゃないのか?」
「うーぬ、、、そこの説明はちと難しいが、簡単にまとめると、固有魔術は世界で1人しか持たない、魔力を使わず発動できる魔法とでも言うのかの、そんな感じじゃ」
流石ルグドラ先生だ。なんでも知っている
「なるほどな、では、この世界の魔術師って結構重宝されたりするのか?」
「そうじゃ。 なんせ数が少ないからの。冒険者のパーティに1人おれば良いほうだわな」
「冒険者?」
「うぬ、まぁお前のイメージしている冒険者と同じ感じだ」
「なるほど」
ふと、周りを見渡すと当たりはシーンとしていて、夜を感じさせてくれる
「そろそろ寝るか」
「ゆっくり寝るが良いぞ。我が守るからの!」
「それなら助かるよ。
そうだ、明日の予定は?」
「そうじゃな、もう1日くらい鍛えてから、近くの街にでも行くとするか。
我は街では小動物の姿にでもなるとするぞ。
目立つからの!」
「人気者は辛いぞハハハ」などと笑うルグドラを無視しつつ、これからどうなるんだろうなぁと、考える。とりあえず、ルグドラの言っていた冒険者にでもなるのが良いだろう。
そして、なるべく考えないようにしていた、自分を刺し殺した男について考える。
この世界に居るなんてことは有り得ないのだろうが、来ていたら必ず復讐してやると決意した。
だが、やっぱり人間の仲間が欲しい。
1人だと不安で怖いからさ。 いきなりこんな世界に放り込まれたんだから、信頼できる仲間を早く作りたいもんだな。
「しかし、お前は普段どうしているんだ?」
少し眠いが、疑問に思い尋ねかける
「それはの、我の能力に預言者という物があっての、それによると、あそこを飛ぶと退屈から解放してくれる、との事じゃったので言ってみただけじゃよ」
「へー、その預言者さんには感謝だな」
まぁ、能力に感謝しても意味は無いと思うがな
そんな事をボヤく
「あ、そうだ、お前猫になれると言ったが、人間にはなれんのか?」
「なれるに決まっておろう! ただ、姿形は己で決めれないのだがな。 なかなかの美形じゃぞ?」
自慢げに話して来るが、どうせオッサンだろうと思う。
喋り方ジジくさいし、そう思ってもしょうがないね!
「まぁ、いずれ見せてよ。
美形というのが嘘でも、見てみたいしさ」
「我が嘘をつくはずがなかろうに。
ギャフンと言われてやるわ!」
そんな事を話しながら、異世界初日は終わりを迎えて行った。
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