2 「絶対領域(テリトリー)」
「よし、ついたぞ」
ルグドラがそう言いながらゆっくりと下降する。
「あっという間だったが、あの飛行はなんとかならないのかよ?」
あんなのに乗り続けていたらいずれ気絶しそうだ。
誰もがそう思うだろう
「いやいや、すまんな! 人を乗せるのは久々で気分が高まってしまったわ!」
「あのな? 安全運転という言葉があるんだ。なるべく乗ってる人に負担を与えては行けないんだぞ?」
「うるさいわい!乗せてやるだけ良いではないか!」
ドン!と音を立て森の少し開いたところに着陸する。
「お前なぁ、、」
これではキリがない、切り替えて能力を試すとしよう。
確か男神からの手紙にあった「絶対領域」とは、テリトリーと呼べば発動するらしく、発動したら能力の詳細が頭に流れ込んで来るらしい。
「「絶対領域」とやらを試すのか?」
「ああ、使ってみないと分からないからな。」
「ほう、ならば試してみるが良いぞ!」
何故ルグドラは上から目線なんだろう
そんな事を思いつつ透は言う
「絶対領域!」
瞬間、辺りを光の球体が覆う。
直径100mだろうか、結構広いな。そして頭に能力の詳細が流れ込んで来た。
どうやらこの能力、サークル内ではほとんどの事を可能にするという能力らしい。
瞬間移動も可能にし、落雷、炎岩を吹き飛ばす、回復と言った、この世界でいう魔法で出来ることはイメージ次第で行うことができ、身体強化まで可能らしい。
ここで最強だと思った方よ。残念。
現実は厳しかった!
よーし1丁、雷でも起こしてみようかな!と思い
「雷撃!」
と言って、
「ドガーン!!」
とは言いませんでした。
起こったのは少し太い静電気のようなものが、
「パチッ!」
と言っただけでした。
「えぇ、なんでだ?」
「その能力はな、まともな人間には使えこなせぬよ。脳内で座標をしっかりと定めイメージし、初めて形と成すのだ。
そもそも魔法というのは、実際するものを強化するというのが本来の使い方で、1から生み出すというのは並大抵の者にはできぬわ」
博識顔でなんか凄い大事なことを軽くいうルグドラを見て、少し感心した。
「お前、本当に凄いのな」
しかし、何でこの能力を知ってるんだ?
「ハッハッハ! 六龍に名を連ねる我にとっては常識よ!!
貴様みたいな阿呆とは違うワハハハ!」
こいつ言いながら笑いながったな!
感心と言ったが取り消しだ!
「阿呆という方が阿呆なんだぜ?
そんなことも知らないのかよヘッヘッヘ!」
「そ、そうなのか?
そ、それでは貴様は天才だ!そ、それなら我も天才であろう?」
まだまだだな!ルグドラさんよ!俺の勝ちとさせてもらうぜ!!
まぁ、これ以上はキリがないと思い、軽く流す
「あーそうだね。
てかさ、サラッと言ったけど六龍って何なんだよ?」
「む?我の記憶を見たであろう?」
「見ようとするんだけど、部分的に見るのはとても難しいんだよ。」
そう、実際に飛行中もルグドラの記憶を見ようとしたが、多すぎて何処が何処なのか全く理解出来なかったんだよな。
「そうか、確かに我は数千年も生きているからな!」
「数千年ッ!?」
なるほどそれなら納得が行く。
それだけ多いと部分的に見るのは不可能なわけだ。
「驚いたか小僧!」
「ああ、素直に驚いたよ。
それで、六龍の説明を頼む」
「そうじゃったな、六龍とは過去に邪神が現れた時に、他種族と協力し勝利を収めたそれぞれの龍種の長六匹じゃ、我はその内の一龍なのじゃよ」
なんということでしょう!
凄まじく馬鹿だと思っていた龍は相当強いみたいです!
まぁ、バカには変わり無いんだけどね!
そしてここで褒めたらコイツは調子に乗る。だから、褒めない!
「まぁ、それも所詮は過去の栄光だろ? 問題は今なんだぜ?」
「フハハハハ!
やはり面白いのお前は!並大抵の奴なら我を崇めるのだがな、我が見込んだだけあるぞ!
貴様なら絶対領域を使いこなせるかもしれぬな!」
うん、少し調子に乗りましたね。ルグドラの取り扱いは難しいね。
「しかし何故ルグドラは「絶対領域」の事を知っていたんだ?」
「そんなもの、見たことあるからに決まっているだろう?「絶対領域」という名前とは知らなかったがな」
「見たことあるのか!?」
これは俺だけの能力じゃなかったのかー
透は溜息をついたが、ルグドラの返事は嬉しいものであった。
「ああ、と言っても昔いた六龍、レギルスのものなのだが、あ奴の固有魔術だったはずなのじゃがな」
「固有魔術?」
「ああ、決められたものに与えられる、他のものには使えぬ魔術のことじゃな」
おぉ! まさか六龍と同じ能力だとは!
「その六龍のレギルス? って言うのは今ほどうしているんだ?」
「うむ、それが我にも分からんのだ」
まさかとは思うが六龍が死んだのかな?と思い
「死んだ可能性はないのか?」
「そんな事ありえぬわ!!!」
すっさまじい剣幕で怒鳴られた
少しチビッちゃったよ!えへ!
「そんな言わなくてもいいじゃないか?」
「あ、あぁ、すまぬ。
あ奴は我が何をしても死ななかったのでな。
それに、他の六龍と戦ったのならその土地が消滅するはずなのだ。六龍以外にあやつに勝てる奴はおらぬし、奴が死んだということはない!」
ほぅ、つまりレギルスやらと、ルグドラはライバルだったのか?
まぁ、それを聞くと長くなりそうだから後で聞こう。
「そうだ、まだ「絶対領域」の話の途中だな、簡単に使えそうな使い方を教えてくれよ」
「ほう、そうだな、、我は先ほど、魔法は強化するものと言ったな?つまり、一度生み出したもの、又は既にあるものを大きく、強くすることは可能なのじゃ。分かるな?」
「なるほど、じゃあ試してみるか、」
そう思い周りを見渡すがここは森の中。何も無い
「そうじゃの、では、我が炎を出してやるから強化するのじゃ。うーんと、レギルスが言うに、コツはイメージが大事とか言うていたぞ」
「わかった」
イメージか、じゃあ、炎を大きくするのが簡単そうだな
「ではいくぞ!」
そういうなりルグドラは炎を吐いた。
それに合わせるように、大きくするイメージで!
「絶対領域ッ!」
ルグドラの口から吐かれた少しの炎は、正面方向に拡大する
「そうじゃ、そのまま消さずに保ってみろい!」
そのまま、炎が動かず停滞する様をイメージする。
すると炎は綺麗に空中でメラメラと燃え続ける
「そうじゃ、成功じゃな!
ではそのままその炎を輪っかとかに、操ってみるのじゃ!」
「むぅ、」
これが結構きつかった、だけど、しっかりと炎の幅、火力をイメージすることで、
ライオンが飛ぶような輪っかが出来た
「おぉ! 凄いぞ!
しかし、まさか、な、、、、」
「俺も出来たことに驚いてるよ」
どうやらこの「絶対領域」は、想像力が大事らしい。
この時透は、もう一つの能力「感情移入」の力もあり、「絶対領域」の操作を出来ていたとは気づいていなかった
「ねぇねぇルグドラさん?」
「なんじゃ?」
「これってどうやって消すんだい?」
「フハハハハ! 、、、
知らぬ」
わーお、、、割とマジトーンで言い切ったよ
そして、集中が途切れ焦りが出た瞬間
「バゴーン!!」
火の輪は制御を失い大きな炎の塊となる
「ちょちょちょルグドラ何とかして!」
「ふむ、任せろい!」
「破雨」
そうルグドラが言うや否や凄まじい豪雨が起きる
その雨は一瞬にして炎を消すのだが、、
「ねぇねぇルグドラさん? 雨、止まないね?」
「うむ!実は止め方を忘れての!」
「こんの!ばかやろぉー!!!!」
ルグドラさんはやっぱり、使えない、、
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こうして、異世界初日は夜を迎えて行った