表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

準備

 「すみませんが、店長、以前に云ってくれていた休日というのを頂きたいのですが」

 「……ああ、良いぞ。行って来い」


 店長さんは普段から口数の少ない人でしたが、とても良い人であることをカエルは知っていました。

 冬眠しないようにダシ汁に使うお湯を使ってお風呂を作ってくれるときも、火傷しないように、それでいて寒くないように調整してくれていたことをよく知っていました。

 店長さんも、大声を出すのが苦手な自分の代わりに吹雪の中でもお客さんを呼んでくれるカエルに感謝していましたし、そのお礼を言葉で云えない自分をもどかしく思っていました。

 口にできない分、手を動かす職人気質の店長さんは、カエルに贈り物を作りました。


 「ありがとうございます、それはなんですか?」

 「……服」


 モチ巾着というオデンダネに使う油揚げの袋を二重にして、中にちょうど良い温度にしたモチを入れてカンピョウを糸代わりにして縫い付けてくれていました。

 他にもいくつかのオデンダネを雪の上を動かしても中身が濡れたり冷めないように袋に入れて渡してくれました。

 お弁当だとカエルにはすぐに分かりました。給料代わりといって持たせてくれたのです。


 「……冬が終わったら、オデン屋は移動だな」

 「お話を聞きに行くだけでですよ。女王さまに会いたいだけですから」

 「……別に冬を終わらせても良いぞ。黒ハンペンのフライだけで……まあ、居酒屋代わりにはなるさ」


 この国の油は良いからな、と店長さんは続けました。

 カエルも、そういえば日に日に黒ハンペンのフライの出る数が増えていることに気付いていました。

 旅をしていれば、色々な物に出会う。そう思いながらカエルは、油揚げの巾着服を着て、お弁当を担いで走り出して……というより、跳ね出していました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ