第七十一話拓己編「待人」
那祢です。
今回は少し長めになっています。
(終わらなかった。)
楽しんで読んでもらえば嬉しいです。
またあとがきで!
俺はがむしゃらに仕事をする。
時間はもう定時は越している。
なんでしている?
理由は午前午後に営業かけていた所と追加の資料まとめをしているからだ。
そう、朝礼の罰則を。
「お先に失礼します。」
「あ、お疲れ様。」
部署の人たちはどんどんいなくなる。
優午も先ほど
「せんぱい。ほんとすみません!次、飯おごりますから!」
用事があるようで拝むように言いながら帰った。
今部屋にいるのは俺と芦川の二人だ。
芦川も
「先輩、手伝いましょうか?」
と何回も聞いてきたが
「いや大丈夫だよ。」
と断っている。
後輩には借りを作りたくない。
むしろ頼られたい。
その一心だった。
「あの、先輩?」
パソコンに向かう俺に誰かが声をかけてきた。
芦川かな?
振り向くと心配そうな顔をしていた。
「どうした?」
「仕事・・・・」
ああ、また聞いてくるのかな?
「大丈夫だよ。あと一時間いないで終わる。」
そう告げると
「なら二人で・・・」
「それはいい。さっきから断っているだろ。」
「でも二人なら!」
「契約してくれた方、一人一人向き合うのが俺達の仕事だろ?だから俺がやる。」
そう言うと不服そうに見られた。
俺はそのまま作業に戻る。
「先輩。」
呼ばれた。
「んっ?」
俺はパソコンを見ながら返事をする。
「待ってますね?」
「いや、いい。帰っていいよ。」
「一緒に!」
「いや、まだかかるからいい。」
作業に集中するあまり気の無い返事をする。
「・・・・・・・・・」
芦川は黙った。
沈黙
でも俺の横に立っている気配はある。
ー カタカタカタ・・・・ ー
俺は気にしないでパソコンを打つ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
気配はある。
多分芦川だろうが・・・・・
ー ピリピリ・・・ ー
何だろう?
普通ならこう・・・隣に女性がいる柔らかな空気なのに。
ライオンやコブラなど肉食獣にしげしげ見られている感覚だ。
まあ、見られた経験は無いけど。
なんかざわざわする。
放置する事、十五分。
まだ隣にいる!
先ほどの気配が肉食獣から恐竜、エイリアンランクになっている。
これ以上の無視はいけない。
ー ギギギギ・・・・ ー
恐る恐るゆっくりと彼女を見ることにした。
ー じーっ。 ー
「はっ!!!」
眺められている。
何だろうこの感じ。
表すとしたら・・・・そう、狼がいる。
狼に怖いからお肉をあげる。
狼がなつく。
毎日来る。
餌がない。
狼がくる。
狼が待っている。
ずっと待っている。
お肉をくれるまで。
あなたもお肉だろとした顔で見る。
お肉!!!
そう、あんな感じだ。
待たせたからには何かあるだろ?
そんな目だ。
どうする俺!
ここで惚けるのか!
臆病者になるのか!!
俺の口からでたのは・・・・
「あ、ま、まだいたんだ。帰っていいよ。」
「!!!?」
塩対応だ!
やってはいけないこと一位!
臆した俺はまさかの言葉を間違えてしまったのだ。
本当は
「まだいてくれたんだ。帰らなくていいの?」
のはずだったのに!
怒っているはず。
じーっと見ている芦川が動いた!
うっ!叩かれる!
そう思って身構えたときだった。
「・・・はいっ。」
なにか入ったビニール袋を俺に渡してきた。
中にはコンビニで売っているサンドイッチとおにぎり、お茶が入っていた。
「あ、芦川これは?」
「先輩の残業用食べ物と飲み物です。」
俺はポカーンとする。
何故なら今、『帰れ』と言った奴に食べ物や飲み物をくれるんですよ?
驚く俺に芦川は
「先輩、私も待ちますから一緒に帰りましょ?」
そう言うと隣の椅子を持ってきて俺の横に座りサンドイッチを食べ始めた。
えっ!
聞いていなかったのか?
「待たなくていいから・・・!」
「んっ!んんっ。」
芦川は俺の唇に指をあて話しを遮る。
モグモグ・・・・ゴクン。
飲み込んだようだ。
そして芦川は
「好きな人の頑張っているところ、女子は見たいんです。だから隣に居たいだけですが?駄目ですか?」
首を横に少し傾げながら言われた。
満面な笑みで。
「・・・・・・・・ああ、わかった。」
恥ずかしい。
言葉が出ない。
朝礼のお喋り。
それでの罰。
こんなダサい残業なのに。
彼女はイライラをぶつけた俺に優しくしてくれるのだ。
「でもあと一件で終わってしまいますね。」
俺も必死に片付けたので残り一件の資料をだった。
まあ横に監視がいたから急いだのだが。
「終わったら飲み屋に行きませんか!」
「駄目だろ?チェイリンに入らないと。」
「少しぐらい!」
「・・・・・・・」
「一時間は?」
「・・・・・わかった。」
「やったー!!!先輩とご飯!久し振りのご飯。」
ふっ・・・。
子どもみたいに喜びやがって。
そう思いながら片手におにぎり、もう片方はペンを持ち資料を片付けた。
十五分後。
「よしっ!すべて終わった!」
本日の仕事を片付ける。
机を片付けて立ち上がる
「先輩、終わったなら帰ろっ!いこっ!」
待っていた芦川が腕を組んでくる。
ニコニコしている。
そういえば少し飲むと約束していたな。
「わかったから引っ張るな!」
「待ってたんですから良いじゃないですか!」
上機嫌で引っ張っていく。
そんなに喜んでいるなら嬉しい。
ぐいぐい引っ張られるが。
ん?
そう考えればさきほどの隣にいた時の睨みはなんだったのか?
つい好奇心で聞いてみた。
「芦川。」
「ん?何ですか?」
呼んだので引っ張っていた手後からを緩める俺を見上げる。
「隣にいたときの睨みは何だったんだ?」
ー ピシッ! ー
彼女の動きが止まる。
えっ?
何か言ってしまった?
すると・・・・
「えへへへへへ・・・・・」
笑いだす。
少し不気味だ。
「あの・・・・・変なやつと思いませんか?」
ん?
いきなり何を言い出すんだ?
「ああ、大丈夫だ。」
「へへへっ。じゃあ言いますね。先輩と二人きりでしたよね?」
「ああ、二人きりだな。」
「あの時もしオフィスラブを繰り広げたと・・・・」
「オフィスラブ・・・・・なっ!」
内容がわかった。
そう、あれは半年前。
ドラグさんに女性向けコミックを熱く説明されたことがあった。
「バイジャさん、会社員ですか!」
「ああ、そうですよ!何かありました?」
「ならオフィスラブ繰り広げているんですね?」
「オフィスラブ?」
そう、そこで聞いたことが後々ひびく。
「知らないんですか?」
「ああ、知りません。どのような内容ですか?」
「それは・・・・・」
会社の御曹司にOLが俺様パワーに負けて食べられてしまったり。
OL同士のいざこざでイケメン部長に助けついでに「ああん。」となってしまう展開とか。
一番いけないのは先輩と後輩の恋物語だ。
まあお酒の席で「ああん。」になる。
そう!
すべて「ああん。」に繋がるのだ。
しかも、ドラグさんに進められたもの以外も!
俺はこうならない!
そう決めたのだ!
「芦川!」
「きゃっ!先輩!」
目が潤む芦川。
俺は・・・・・
「俺はオフィスラブで「ああん!」はしないぞ!さあ飲みに行くぞ!」
そう伝え帰る仕度をするのであった。
「・・・・ちぇっ。つまらないな。」
拓巳に聞こえないように少しすねる芦川涼子であった。
オフィスラブ。
それは魔の言葉。
ちなみに勉強するため、立ち読みしました。
回りの視線が冷たかったです。
ちなみにオフィスラブとスクールラブが多かったです。
あと異世界も。
異世界と言えば最近かいていない!
また書きます!
次回もよろしくお願いします。
那祢でした。