非学生の日常
「あ、あの〜、すいませーん!」
「ん?何だい?」
「何で僕ここにいるんですかね、ちよっと状況の把握に困ってるんですけど、」
「何でと言われてもねぇ、僕も君をここには入れたくないんだけどね、上の命令だから、」
「はあ、何だこの状況は、」
僕は一体どうして、牢屋なんかに入ってるんだ?
〜数時間前〜
「うわぁぁぁぁ!!!!」
手にナイフを持った男に向かって絶叫しながら走った。
刺される事は覚悟していた。もちろん死ぬのは怖い、しかし何だかイケる気がしたのだ。理由はたったそれだけ、それだけの理由で立ち向かえる自分を褒めてやりたいよ。
意表を突かれた男は座り込んでいた警察の足に躓きよろけた。
今だ!と思い、殴るために拳を男に向かって振った。しかし男は咄嗟にナイフを前に突き出した。このままではナイフの刃で手をバッサリやってしまう。
だがもう遅かった。完全に拳を振り抜いた。
そこで予想外の展開が起きた。自分の拳が相手の顔面にめり込んでいた。次の瞬間、男は50メートル先まで吹っ飛んだ。
それもすごい速度だった。50メートル走だったら全国で1位は取れていただろう。
そんな訳のわからない状況で唖然としたが、咄嗟に自分の手を確認した。
「き、切れてないんだけど、、、切れてないんだけどぉぉ!!」
全く切れていない訳ではなかったが、バッサリではなかった。拳の先がカッターで切れたぐらいの感じだった。
20メートル先に刀身の折れたナイフが落ちていた。
「なんだこれ、どうなってんだよ、」
頭の中が混乱して、息が荒くなった。
「お、おい貴様、今のはなんだ!?人間のできる技ではないぞ!」
先程、少女を追っていった方の警察が立っていた。足下にはナイフがある。
どうやら少女を見失って戻ってきたようだった。
混乱しているせいで上手く話せない。
「あ、あの、これは、なんて言うか、その、、、よく分かりません。」
混乱しているのはこちらだけではなかった。
さっきあの女の子に銃を向けたように、今度はこっちに、無言で銃口を向けてきた。
「な、なにやって、ふざけんな、止めろって!」
走って逃げた。
このままじゃ殺される!
バンッ!!
後ろから銃声が聞こえた。
その時僕は、倒れこんだ。それは銃弾を回避しようとか、そういうものではなかった。ただ足がいうことを聞かなかったのだ。
後ろから走っている足音が聞こえる。
このまま殺されるのか?なんの意味も分からないまま死ぬのか?嫌だ!死にたくない、嫌だ!
しかし、実際には殺されなかった。
僕は取り押さえられた。ナイフの男に襲われていた方の警察が床に押さえつけていた。彼は救ってくれているのだ。
「何をしている!?そいつは人間ではない!人外である対象への発砲許可は出ているんだぞ!そこをどけ、今撃ち殺してやる。」
「待って下さい!彼が人間ではないと決まったわけではありません!それに、もし仮に彼が人間ではないのなら、GPS社からは捕獲命令がでているではありませんか!」
「構わん!こんな危険な存在はすぐに抹消すべきだ!抵抗をされ、つい撃ち殺してしまったと報告すればよい!」
ふざけんな!このおっさん頭のネジ飛んでんじゃないの!?
「それはできません!彼はあの男から僕を救ってもらったんです、そんな命の恩人を見殺しにはできません!」
どうやら本当に庇ってくれているらしかった。
その後も30分言い合った挙句に、ようやく殺す事を諦めた。この人達お互いに往生際が悪いな、
「ふん、それならさっさとそいつを連れて行け、俺はもう関わらんぞ、」
そう言っておっさん警察はどこかへ行った。
ホッとした最中、何処へ連れて行かれるか分からないこの状況で全く落ち着けなかった。
しかし、
そこで連れて行かれた先が、牢屋だった。
「え、いや、なんで牢屋?僕悪い事してなくね!?」
「君の事を上に話したらここに入れとけって言われちゃって、でもまあ、すぐに出られると思うよ。君は捕獲されただけだから。」
「そんなニコニコしながら言われても、、、
僕は猿ですか、こんな檻に入れられちゃって」
そんな僕の嫌味に、若い警察の人は苦笑いを返した。
こっちからしたら苦笑いすらできないよ。
「一つ、聞いていいかな?」
「え?な、何ですか?」
唐突だったのでビックリはしたが冷静に答えた。(自分なりにだけど)
「君は人間かい?それとも、、、」
「人間です、僕は絶対に人間です!アマゾネスに誓ってもいい!!」
「なんでアマゾネスなんだ、ま、まあいいよ。コホン、じゃあ、どうしてあんなに人一人が吹き飛ぶ程のパンチを繰り出すことができたんだい?」
「それは実際は僕にも分かりません。あ、あの男はどうなったんですか?」
「無事ではいるんだけど、気は失っているよ。今は病院にいるけど、出たら即逮捕だね。
」
流石に死んでいるとは思わなかったが少し安心した。
奥の方から話し声が聞こえた。
あれ?この、声だけなら可愛い感じの声は、
「拓真が何をしたんですか!?あのビビリに犯罪を犯す勇気なんてありませんよ!痴漢ぐらいしかできません!それなら牢屋じゃなくて死刑にして下さい」
「お前僕をなんだと思ってる!!痴漢だってしねぇよ!それだけが取り柄です、みたいに言うんじゃねー!」
妹の兄に対する当たりが強すぎるだろ、そしてそんな事を響き渡るような声で言うな!
立派な名誉毀損だろ!
牢屋に入れられた直後に住所やら電話番号やらを聞かれたが、その連絡が妹に行ったか、
友人のいない俺にはこれが唯一の助け舟か、黒船に見せかけてただの汚い泥舟だったとは、
〜数分後〜
「君にはまだここにいてもらうからな、妹さんとの面会が終わったらすぐに帰ってもらうように伝えなさい、」
ちょっと偉そうなぽっちゃり警察にそう言われ妹との面会が始まった。
面倒だとわかってこっちになげやがったな、
そしてこの面会は、面会というより、ただの拷問でした☆