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ありのダンスコンテスト

 「なるほど。旅程管理人か。時間を管理し、その時間帯の密度をあげる、か。」

「面白いかも。」


 話ながらお屋敷街をぬけ、よく行く公園に出る。ここでまたお仕事の紹介を。


「たとえば、この公園で1時間取るというスケジュールがあるとします。」


「この公園は広くて綺麗だけど、芝生と花壇とお茶、お菓子の屋台がいくつか点在しているだけ。参加者は15分で飽きてしまうか、完全に日常に戻ったお喋りに高じ、旅であることを忘れてしまう。

 そんなとき、1時間を無理にでも楽しんで貰えたらと小さな楽しみを提供するんです。あの花壇こっちから見てください。ほら、白い花だけに目をこらしてみれば、ありのダンスコンテストに見えますよね~とかいって、花壇をじっくり眺めてもらったり。」


 あっ。ど庶民の私には大発見的な喜びだけど。世界規模で冒険をして、帰ってもセレブ暮らしが待ってる皆さんにありのダンスはショボすぎか。


「あり?」

「ダンスコンテスト?」


 ん。クレイさまとライユさまが、ピクリと。

 あ、本業に触れてしまったのに、このショボさ。


 でもついつい、若干の妄想話をたしてみる。


「ありのダンスは剣の舞なんですね。角度をつけた剣を左右に振りかざして、大物への戦いを挑んで。で、コンテストに優勝した舞は、周りの花たちを巻き込んで目眩ましもできてしまうレベルで。とか。」


「ほおお。剣の舞とは。」

「しかもコンテスト形式。」

「大物は大物らしく舞えと。」

「ライユ、背中に垂らした布貸してくれ。」


 突然、クレイさんが、歌いだす。風に揺れる木々の音が、パーカッションのように歌声を支える。

 目の前に上から3人が跳んできた。私の頭上を悠々と越えるハイジャンプ。

 ライユさま、エリアルさま、そして勇者さままでが、色とりどりの布を振りかざして舞っていた。


 腕を動かす範囲に若干制限を加え、キレで蟻であることも表現し、剣ではないのに、布はしっかり剣に見える。

 揃って見えるのは、さすが、踊り子さま。ライユさまが振り付けをリードしている。エリアルさま、勇者さまがそれに続くように舞う。


 ブルートさまは、かたき役か。雄大な舞を見せている。


 クラップが聞こえる。いつのまにか集まった街の方々が、クレイさまの歌声に合わせて手拍子でリズムを取る。


 勇者さまとエリアルさまがなにかを呟くと。

 幻想!?風に無数の花びらが舞って、背景を彩る。


 歌声がクライマックスを向かえ、3人の舞は、もう超人的に右へ、左へハイジャンプを繰り返し、美しさも去ることながらその迫力に手拍子すら忘れて見いってしまう。


 ライユさまがウィンクをしたとたん、急に静寂が訪れ、ブルートさまが、ドスリと土に落ちる。花びらが空からふりおちる。


 うわああああああああああ!周りの人たちから大拍手が巻きおこった。


 すごい。大きな拍手が再度手拍子になり、アンコール的に軽めのダンスを行う皆さんを見つめてた私のくちは、あんぐりとあいていたに違いない。


「無理やりの楽しみでもなかったな。」

「1時間があっという間だ。」

「やっぱり観られるっていいわ。」


 勇者さまが、こちらを見て言う。

「魔王を倒して、平和な世の中になったら、この剣の腕・魔法があったとしても何の役にも立たず、何の楽しみもないって思ってた。でも、違ったんだな。平和であっても一生懸命楽しみを追及したり、人に楽しみを与えたり出来るんだな。ついて来てくれないか。僕たちの帰路。もっとなにかを発見出来るよう添乗員として。」


「添乗員はついでだろう。」

「瑠奈ちゃんが見てなかったら、ダンスなんかに本気出すようなセオじゃないよね。」

「まあ、いつものセオらしく、すらすらキラキラ台詞言えたからいいんじゃないか?」


 あれ、勇者さま~。英雄じゃなく、若干イタイ人扱い受けてます?とか、思いつつ。


「旅程管理はお任せください。」

 と、業務な笑顔を張り付けてお答えしていた。


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