儀式の目的は?
一斉に礼を取った列席の方々!一体何が起こるのだろう。あんなに修行した礼儀の練習も忘れて、ボーっと見てしまっていると。突然、国王様が宣言をされた。
「ただいまこの時より、グレイトドラゴン様の生を受け、世界53ヶ国全ての国が中世を誓いグランドアース帝国を設立することをここに宣言します。続けて、セオロナ・グランフォード・シルヴィー皇帝 陛下および、ルナ・グランフォード・シルヴィー皇后陛下の戴冠式を執り行います。」
「ほへ?」
あやうくそんな声を出しそうになるのをなんとか堪え、厳粛な表情を保つ。
皇帝・皇后?聞いてないよおおおおおと、心の中では叫びっぱなしだけれど。
いつの間にか後ろに控えていたエリアルさまが、そっと囁く。
「セオロナさまの後、膝を折って冠を載せて貰って下さい。」
えっ。エリアルさまが私に敬語?と、驚きながらもセオロナさまの真似をして冠を戴く。
同時に列席の方々が再度深々と頭を下げた後、盛大な拍手が巻き起こった。
「ここに皇帝の命を受け、皇后とともに全世界の和平のために精進することを誓います。あわせて、エリアル・ド・ララドシェルをグランドアース帝国宰相として指名します。皆さまのご支援をお願い申し上げます。」
セオロナさまが、高らかに宣言すると、再びの大拍手。そして窓の外ではグレイスが翼をはためかせる音がすると一面の窓が開き、光の渦が流れ込む。ここでも祝福の光だ。
その後、クレイさまの伯爵家復帰、ブルートさまの騎士団長復帰とライユ伯爵令嬢との婚姻宣言等いくつかの儀式が続いていたが、私は、というと理解を超えた儀式に驚き過ぎて、エリアルさまの名字、ララドシェルっていうんだあ、可愛いなあとか完全脳内現実逃避に入っていた。
「 どういうことなんですか!?」
仰々しい、謁見の間を退席した私は、添乗員としてお客様不利となることを防ぐ際のクレーム申し入れ!並みの迫力〈本人談〉で、エリアルさまに詰め寄った。セオロナさまにだと、詰め寄ったはずが『イチャついた』ようにも捉えられかねないので、相手は選んだつもりだ。
「聞いていたでしょう。この度、全世界の53ヶ国を統括する帝国制度を作り、勇者であるセオロナさまが皇帝を務められるのです。同時にパートナーである瑠奈さまは皇后になります。」
「どうして言ってくれなかったんですか!?」
「もちろん、あなた様のお気持ちを疑った訳ではないのですが、万一ですよ、万一重みに耐えかねて、王城前のバスに乗ってしまうと事態ことを避けるためです。グレイトドラゴンさまに認められた時点で、あなた様がもたらすものは勇者セオロナさまやその一行ではなく、全世界53カ国の人々に幸せなのですから。そのためなら、策の一つや二つ・・・。」
いや、どんな小さなことでもエリアルさまは策士でしょうと心の中で突っ込んでたが、言い負けそうなので黙っていた。
「それに、間違いなく瑠奈さまはこのお役目を気に入ると思ったのです。」