謁見の間
高らかなトランペット。
「勇者 セオロナ・グランフォードご一行さま。ご入場です。」
近衛兵の方だろう、鮮やかなグリーンに、金のモール飾りをつけた華やかな兵士の方が会場に向けて入場を告げる。
真っ白な天井には金色の縁取りがなされ、その天井から吊るされた重厚なシャンデリアは、日本のワンルームマンション1室分くらいの大きさはあるんではないだろうか。高い天井、広い部屋だからこそバランスがとれているが。いくつもの半円形の優美な曲線を描いた窓には、真紅のベルベットらしきカーテンがかけられ、外からの柔らかな光で、更に華やかさを添える。
床は深いグリーンの絨毯、その中央に真っ直ぐ、紅いロールの絨毯が真っ直ぐ玉座へと伸びている。
このまっすぐな絨毯を辿って、王座の前に進み出で頭を垂れるのだろう。
淑女の礼を頭の中で復習した。
色とりどり綺麗な色の正装をお召しになった高貴な方々が一斉にこちらを見て拍手をされる。数百人はいらっしゃるだろう。しかも、奥にいらっしゃる方々は外国の方に違いない。様々な国を来賓として呼ばれているのだろうか。こちらも暖かな眼でこちらをご覧になっている。
右手、右足を同時に出してしまいそうになる緊張を抑えながら、セオロナさまの背を追ってゆっくり奥へと。
再奥には数段高い台が設えてあり、金の縁取りにふかふかの紅いベルベットで彩られた玉座が2台。
その横には、結婚式の時に来てくださった神官長が、結婚式の日以上に重々しく豪奢な正装を纏って、立っておられる。
玉座に向けてご挨拶と思っていた私は、思わずキョトンとしてしまう。
ん?空席?玉座が空席なのだ。
玉座の正面に相対するところまでくると、なんと、玉座の段を降りたところに、公爵邸の肖像画でお見かけした国王さま、王妃さまが。
たくさんの勲章がついた 正装軍服らしい濃紺のお洋服が、とても素敵なナイスミドルだ。セオロナさまの叔父さまらしく、その美しい顔が、どこか似ている。王妃さまは、栗色の髪に同じ色の瞳、何処かおっとりとしたおもむきの方だ。確か隣国のお姫様だったが、それだけに上品さが溢れ出ている。国王陛下とお揃いの色のドレスもよくお似合いだ。
「よくぞ、お戻りになってくださいました。」
なんと、国王さま自ら、壇上へとセオロナさまを誘導される。と、迷っていると、
さ、さすが勇者さまだ。破格の扱い。でも、私のような小者まで、便乗して上がっても良いのだろうか。
と、迷っていると、なんと、王妃さまが壇上に私を誘導される。うわあああああああ、王妃さまのお手を煩わせるなんてスミマセン。
最上段まであがり、謁見の間にいる皆さまを見渡したその時。
他国の王族の方々を含め、 謁見の間にいらっしゃった全男性が膝まづき、全女性が腰を折って淑女の礼を取った。