控え室にて
王城の長い長いふかふかの絨毯を進んで、謁見の間へと進む。観光ではなく、本当に謁見に向かう日が自分の人生におこるとは。半年前の自分、いや、セオロナさまや皆さんと一緒に旅をはじめたときの私でも、思いも寄らなかっただろう。
大きな扉の手前に通路があり、そこで一旦控えの間に入る。そこで一旦、パレードでついた砂埃などを洗い落とし、着替えをする。が、勇者さまご一行の服装は各役割のアイコン的なものであるから、基本デザインは踏襲する。その上で、より上質な素材の品の良いものへと変わり、謁見装備だからだろう、頭への被り物衣装は外す。
私の女神イメージドレスも、継続なのが、畏れ多いが、仮装パーティだと思って乗り切ろう。まあ、仮装といえど、ストーンとした女神ドレスじゃなく、着る者をトコトンまで選ぶ踊り子衣装だったら逃げ出してるとこだけど。
畏れ多いことは、他にも。入場順がなんと、1番身分も高いセオロナさまの次、2番目であることだ。セオロナさまと、結婚したからには慣れないと、と思いつつ私の後ろが、エリアルさまであることに身が縮こまる思いだ。
準備ができたと、女性用控えの間から出ようとすると、廊下で、長い髪のエキゾチック美青年と、エリアルさまがお話中のようだった。
「事情が事情だけに、この国の宰相にはならないが・・・。」
よくは聞こえなかったが、エリアルさまがそう言ったように聞こえた。
宰相さまって、え、もしかして?あの超絶美青年って。
「サトゥーさまあああっ?」
あ、しまった。大声を。そして、エリアルさまがこちらをギロっと睨んだような・・・。
「ご無沙汰しています。瑠奈さん。」
凄い美貌で近寄って来るのやめて貰って良いですか。この男子高校生!と、女装時代の敗北感から抜け出せず、心の中で毒付く。
「サトゥー、いやサトゥーさまは18歳になられたため、男装に戻られた。そして、先月無事、国に戻られて王太子となられたんだ。今日は、凱旋帰還謁見式にイルパラネリア王族としてご出席となる。」
「わあああ、おめでとうございますー。」
と、談笑しながらも、エリアルさまの先ほどのご発言が気になる。が、私が口出しできる立場ではないし、と黙るしかなかった。でも、私が公爵さま邸にこもってた間、ほんとに時がたったんだなあ。と、超絶美女から超絶美青年に変化を遂げ、ご立派な王太子様になられたサトゥーさまをみて感じた。
が、一方で
「では、先に行っているから。」
と、謁見の間に入っていかれるサトゥーさまを見送りつつ、美しく着飾っても超絶美女と呼ばれる日が来なさそうな自分をいたわってしまった。
そろそろ全員の準備も整ったようだ。いよいよ、凱旋帰還の謁見式の始まり、緊張が高まる。