明日は王都へ
お式の後、公爵邸では、使用人の方々やら、街の名士さまやらが集まり、数百人規模の大祝賀会が夜更けまで催され、翌日はお昼頃の起床となってしまった。
少し寝ぼけた様子で玄関ロビーを通ると、すっかり旅装の準備を整えられた公爵夫妻と、お母さん。
あれ、王都行きは明日では?
「先に王都へ向かうわね。」
「凱旋パレード出迎えの準備をしなくっちゃ。」
「グレイスの神殿準備は出来ているから、今日のうちに案内をよろしく頼む。」
凱旋パレード・・・!公爵家は、筆頭貴族だけあって、領地が王都に隣接している。そのため、公爵邸から馬車で数時間で王都だ。だから、明日の魔法馬車は、そのままパレードをしつつ王城に向かえるようオープンカータイプだという。
「大丈夫2人×3列だから。6人乗れるよーっ。」
って、ライユさまが、言ってくださるけど、どこの世界にパレードで手を振る側に参加する添乗員がいるんですか!?
何よりキラキラ馬車にキラキラ感満載の5名さま。
無理、無理ですーっ。邪魔な人いるよっていう視線痛そう過ぎて。
「私も一緒に今日お連れ下さい!」
「何を言っているの?あなたは勇者の妻なのよ!堂々と乗っていなさい。凱旋パレード用の衣装もちゃんと作って置きましたから。」
「安心していいよ、グレイトドラゴンが出現したことも、君が勇者の妻となったことも、昨日までにしっかり王都中に広めておいたから。」
公爵夫妻への嘆願もまさかの撃沈。どころか、プレッシャー倍増。おかあさああああん!
「帰るまでが遠足です。小学校で習ったでしょう!添乗員たるもの帰着地、王城までがお送りするのが添乗員の仕事ですよ。あなたは、セオロナさまの妻となったとしても、まだ添乗員契約中であることに変わりないのよ。」
お母さんまで、まさかのお仕事論理で敵側だった。添乗員のお仕事を持ち出されるとつらい。ああ、私も勇者さまパーティのお出迎えパレード待ちでもしながら、絞りたてミルクでつくったソフトクリームとかのんきに食べたいよー。
わがままはそのぐらいまでにさせられ、結局公爵家の立派な馬車をお見送りすることとなった。社会人ってつらいね。
で、公爵さまからの連絡事項だった、グレイスの新居に今日のうちに向かうことにした。王都の東にある広大な洞窟。とのこと。すぐいけるかな。と、アトリエ横の芝生にグレイスを迎えにいく。
何度も飛行訓練を重ねたので、私はすでに手綱なし、立ち上がってもグレイスに乗れるようになっていた。
セオロナさまと二人、グレイスに乗って洞窟へと向かう。そこには、巨大な神殿と化した洞窟で、門扉ははじまりの神殿と似た作りとなっていた。
洞窟内部には、公爵領特産のやわらか、ふわふわの干し草が一面に置かれた快適仕様。門扉の表側には日光浴のできそうなスペースもあり、グレイスもとっても気に入ったようだ。
「今日からは別々暮らしなのね。グレイス。」
[でも、声は聞こえるよ。セオロナ。ルナ。いつでも、声にださなくても心の中で僕を読んでくれたら、向かうから]
と、心強い味方も得て、私たちの王都に向かう準備のすべてが、整ったようだ。