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教会にて

 花嫁衣裳に身を包んだ私は、お世話をしてくれるナターシャさまと一緒に馬車で教会に向かうことになった。今日ばかりは魔法馬車(最近は電気自動車と化している)ではなく、本物の馬車だ。真っ白な馬が4頭立てで引く、純白の車体に金モールが豪華な模様を描く婚礼用の馬車。婚礼の日にふさわしく、淡いブルーの衣装に金モールを施した御者の方の支えを受けて馬車に乗り込む。

 内装もオフホワイトのサテン生地を使ったソファになっており、婚礼にぴったりの様子だ。この馬車は今日の日に備え、公爵様が自領ナンバー1の馬車工房に作らせたもので、婚礼後は少し色付けをして紋章を入れれば長く使えるとの婚礼祝いの品である。本当に何もかもが一流品で、目を見張るばかりだ。


 馬車はしばらく走り、森へと入り、高台へと向かう。

「あれ、街の大聖堂じゃないんですね。」

「いえいえ、この日のために建てたられたんですよ。教会、あの高台の上に。公爵夫人が。」

 婚礼のためには教会建築もいとわない、さすがの公爵家である。いったいいつから準備されていたのかと問えば、なんと精霊王女さまがニッポンに花嫁探しに出る前から、公爵夫人さまはこの日を楽しみに教会づくりに励まれていたようだ。


 曰く、荘厳なお式もいいけど、精霊王女さまと話しあった花嫁イメージからすると、めいいっぱいの緑、燦々とした太陽と、遠くに眺める湖、そんな大自然を感じる方がいいのではないか。と、高台の上にガラスに囲まれたこの教会を建てられたそうだ。


 結婚式専用と書かれていそうなほど、純白の柱。すべての面がガラス貼りながら、ただの透明ではなく、縁取りにはしっかり芸術的な花模様とエレガントなリボンが描かれていた。天井もかなりの部分がガラス張りであるが、絶妙に計算されたように、美しく室内へ陽がさしている。陽光照らす室内は明るい白をベースにバージンロードの深紅と、散りばめるように配置されたフラワーアレンジメントが鮮やかな彩りを添えていた。


 この曲知ってる。結婚式のときによく聞く入場曲?異世界なのに?

 両開きのドアがあき、タキシード姿のお母さんと、教会の入り口に立った私は、あまりにも有名なその曲を聞いていた。すべて花嫁になるあなたの結婚式イメージを実現するために、と私が育成に奮闘している間、公爵夫妻やお母さんは結婚式準備をしてくれていたという。この曲もお母さんが、オルガン奏者の方に口伝えで伝えてくれたのではないだろうか。


 一歩、一歩。お母さんと腕を組み、ゆっくりとバージンロードを進む。公爵夫妻、エリアルさま、クレイさま、ブルートさま、そして結婚式を今日という日に導いてくれた?ライユさま、全員が優しい目でこちらを見つめてくれている。正面には、今日の日のために王都よりお越しくださったという大司教さま、後部のお席には公爵家の使用人の皆さまが満面の笑みを浮かべて迎え入れてくれている。

 あれ、お母さん震えてる、と腕から伝わってくる。お母さんにしてまさかの緊張?と思い、ベール越しにそっと見ると、涙をこらえてる姿が。お母さん、正面に向かうと冗談っぽくしか言えなかったけれど、本当に感謝しています。育ててくれたことと、異世界へのお嫁入りなんて大冒険の背中を押してくれたこと。

 組んだ腕から伝わってくれるといいなと、親子だからこそ言葉にはしづらい、感謝の言葉を心の中でのせ

 て一歩づつ進んだ。


 そして、子供のときからずっとずっと頼りにしてきた腕を離れ、私の腕はセオロナさまの元に。

 純白のタキシード、胸に白いバラを飾るセオロナさまはキラキラ王子さま度が100%の針を大きく振り切っていて、現実の結婚式という実感がないほどだ。


 そんなセオロナさまと向かいあい、目で合図を送ったそのときだった。

 ガラスの天井の向こうを大きなドラゴンの影が旋回し、翼の音をたてた。


 きらきらきらきらきら。


 まさに光のシャワーというべき、虹色に輝く光が空から降り注がれる。私たち二人も参列者の皆様も注がれる光を受けて、全身にダイヤとパールを散りばめられたように輝いていた。


 説明がなくても分かった。成功率50%UPの祝福。この結婚自体の大成功をグレイトドラゴンが約束してくれるために、公爵夫人にガラスの教会を建てさせたのではないかと思うほど、美しい光が天井から注ぎ続けられた。



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