空の旅へようこそ
うわああああっ、飛んでる!?私飛んでるの!?
ここまでの学習のなかで、大人の竜の飛ぶ最大速度はほぼ音速とあった。つまり、竜にのって飛ぶというのは、コンコルドの上にくくりつけられて、飛ばされるということだと思っていた。
でも、体感は違う。セオロナさまと、私の体はグレイスの上で、暖かい光に包まれていた。景色の移り変わりからみると魔法馬車より、明らかに速いが、感じる風は爽快ドライブの窓から吹き抜ける強さ程度。
落ちたらどうしようとか、吹き飛ばされそうとか、そんな不安も全く感じないのは、乗り物じゃなくてちゃんと信頼あるグレイスの上だからだろう。
とりあえず、公爵邸の上空を旋回してみて、私も大丈夫そうだとわかったため、少し領内の様子を見てみる。
公爵領は、上空からみても広大で、海、山、森の大自然と、広い広い小麦などの農園地帯、沢山の馬や牛を育成している牧場地帯、いくつもの屋根や煙突の見える工房地帯、大きな街と、豊かさを誇る景色が続いている。
そんなとき、遠くに火が見えた。
「山火事?隣の領地だな。行ってみよう」
と、セオロナさまが、言うとグレイスがそちらに向かう。
さっきまでの遊覧飛行の様子とは変わり、すごいスピードだ。近づくとやはり、山火事のようだ、範囲が広く消火の手だてはないように見えた。
あの近くの湖の水、なんとか持ってこれないかななどと考えていると。
しかし、グレイスが長い首をこちらに向けて目をあわせるとパチリッとウィンクしてみせた(ように見えた)。
〔僕、グレイトドラゴンにおまかせあーれ!〕
そう、頭の中に声を響かせるとブワサン・ブワサンと大きな翼を何度も何度も上下に振る。
突然、グレイス足元近くに黒い雲が集まりだした。そして大きな雲の塊になると、下の一帯に大雨が降り出す。ズワアアアアアアア。バケツをひっくりかえしたようなの表現に近い雨が降り、山火事はあっという間に沈下、と同時にあんなに集まっていた黒雲がさっと霧状になり文字通り霧散する。
[なんでも成功率50%アップ以外にもすごいでしょ。僕?]
グレイス・・・・。グレイトドラゴンらしくない『どや顔』。まだまだ子供のようである。
が、確かにすごい力を見た気がする。
「この雲を操る力。素晴らしいんだ。でも、この力、山火事消火や、いつでも晴れ男なんて使い方以外にもっと素敵な使い道があるんだ。
と、セオロナさまはこちらを向いて微笑み、工房の街にグレイスを誘った。