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神殿からの出発

 結局、グレイトドラゴンさまとの関係・効果・勇者とそのパートナーはどう生きるのかなどは、精霊王女さま達がおっしゃるには、


「また今度会うときにね。」

「いずれわかるわ。お楽しみに。」

「うーん、どれぐらい先になるのかしらね?」


 と、その時聞くことはできなかった。


 私の頭に直接響く、[ママアアアア]の声が可愛らしく鳴り響いたので、手持ちのリンゴを全部あげた。

 それでもすり寄ってくるグレートドラゴンさまの姿が可愛すぎたためいったん精霊王女さまのもとを離れて、セオロナさまとグレートドラゴンさまと一緒に神殿の中を抱っこ散歩したり、『解禁』になった祭壇の見学にいって神殿を満喫することにした。

 (本当は精霊王女さまの長いお喋りをきき続けたときに、副音声がかなりまずいことになるんじゃないかと逃げたというのが事情だが。)


 一緒に時間を過ごしても、まだまだ熊のぬいぐるみサイズであり、頭も大きくて、エメラルド色の目でじっとこっちをみつめるこの子が、将来はグレートドラゴンさまとなって何人もの人を背中に乗せて空を飛ぶ姿はまだ想像できなかったが。


「名前を決めないとな。」

 と、セオロナさまがポツリとつぶやく。

「ポチ・タマ・ゴンタ……。」

 あれ、私ネーミングセンスゼロか!?という名前を私はつぶやいてしまっていたようだ。将来、グレートドラゴンさまになるというのに。セオロナさまが目を丸くしてこちらをみていた。

「呼びやすいね。確かに。」

 超ウルトラ紳士のセオロナさまらしく否定はしないが、笑いをこらえるのには必死のようだ。

「グレイスかな。グレートドラゴンさまらしく成長した時の姿を見据えて。」

 さすが、勇者さますばらしいネーミングだ。私も大賛成して、赤ドラちゃんは『ベイビーグレイス』となった。いまのところベイビーをつけておいた方が、なんか可愛いしイメージもあうよねという、私の主張をセオロナさまも受け入れてくれたからだ。


 そうこうしていると、神々しいまでに神殿を照らしていた陽は赤く染まり、すでに夕刻となっていた。精霊王女さま方も長い長いお喋りが終を終えてそれぞれの家路(?)につかれるときが来たようだ。


「ひとつだけ伝えておきます。あなたには選択権があるのよ。召喚によって迎え入れられたパートナーだから。」

 炎の精霊王女さまが神妙な顔でおっしゃられた。


「あなた方が王都に着くとき、王都の脇にデコバスを止めておくわ。ドラゴンさまも勇者さまも、あなたを勇者さまのパートナーとして受け入れたようだけれど、あなたが王都に入らず、デコバスに乗った場合は、すべてを白紙にすることもできるのよ。」

 水の精霊王女さまも優しい顔で微笑まれた。


「その場合も、この世界にすぐ魔王が復活することはないわ。あなたが去った後、グレートドラゴンさまがとび去り、コインが残るだけ。また一から、勇者さまのパートナーを探すことになるだけよ。そんなの寂しいけどね。」

 大地の精霊王女さまが最後にぎゅっと抱きしめてくれた。この世界に残ってねというメッセージに思えた。


 にぎやかだったけど素敵な精霊王女さまを見送って、いよいよ私たちも神殿を出る。


「次は王都ですね?」

 と、エリアルさまに問いかけたところ。

「いや、グレイトドラゴンさまの出現により、行き先が変わった。」

 え、そうなんですか?

「ではどこに?」


 その返事をされるときのエリアルさまの表情が、なぜか『どS的微笑み』に見えたのは気のせいだろうか。




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