試験も続くよ、どこまでも
で、結局バスツアーでターゲットとなる私を選定した後も、本当に勇者さまのパートナーとしてふさわしいかの試験が課された(らしい)。
まずは、そもそもの召喚方法から。4ヶ条のふたつめ。判断は常に前向きかの最終試験だった。
バス会社に煌めくストーンで飾られたデコバスを置いて近寄らせた後、ドアを開けて入るかどうかの確認だった。わたしは見事、入ったわけだ。
次はそのバスで、試験する側も予定はなかったけど見知らぬバスで「眠る」というところで、4ヶ条ひとつめの「物事に動じない」も自動合格になったようだ。本当は、バスの帰りが3年後と言われたときの反応を見るというのがハードルだったようだけど、それも難なくクリア。
その次、お母様のお見立てである『ちまちま細々したこととか一見つまらないようなことに凝ったりする』だが、これは、日常生活での観察とされていた。で、観察してみたら。
凝ったりする……。どころか、ちまちま細かいことと一見つまらないことが大好きすぎて、そればっかりやってしまっているぐらい。屋根裏ごっこやパンへの動物描画など、どこまでいくんだの凝り具合。上位合格といったところだ。
最後は、勇者さまがお気にめすかどうか。の外見だが、これだけは、社交辞令もあるだろうし、どこまで本気で、気にいってるのかわからない。勇者さまより目立たないという部分だけは、たとえ1億人にヒアリングされたとしても、Yesの回答率100%という悲しい状況であることは保証されているが。
「それについてはね。うふ。」
またしても切り出しは、炎の精霊王女さまだった。
「私たちには聞こえるのよね。ちょっと副音声的な感じで。」
精霊王女さまのお喋りって、かぶせすぎでルールがないように見えて、実はきっちりルール化されているのかいつも2番目は水の精霊王女さま。
「そうそう。勇者さまの本音だだもれだったりするんですよねええ。あはは。」
そして、3番目は地の精霊王女さまという順番も、やはりルール通り。
「少し副音声再生してみようか。」
「初のご挨拶のとき。」
「ああ、屋根裏部屋ごっこの夕食のときかあ。」
と、精霊王女さまはお決まりの順番でご発言。
「まってえええええ。おやめください。」
私とセオロナさまが声をそろえて止めに入ったのは言うまでもない。