条件も続くよ、どこまでも
四つ目の条件となる世界的に平等というのは、勇者さまと賢者さまが敢えて自ら魔力を落とされたのと同じように、戦いごとに利用されないようにするためらしい。
勇者さまの出現は、人々の犠牲の涙が堆積し続けると、短ければ数十年、長ければ数百年の期間ごとに現れる魔王と対である。その間隔を出来るだけ、長く保つたため、特定の国や地域間の戦力などの均衡に影響を与えるような婚姻はご法度である。巫女や永世中立国の王女以外であれば、可能な限り平民の幼馴染などが望ましい。
しかし、この世界には、まだ永世中立国と呼べるだけの国はなく、また今回の勇者さまが平民のご出身ではなく、超名門公爵家の出自であったため、幼馴染やまわりを取り囲む女性たちははみんなものすごく、いろんな意味で影響力のある方々だった。そのため、精霊王女さまたちは『召喚』の道を選んだという。
その際、勇者パートナー選定4か条のひとつめ・ふたつめを守るには「添乗員」という職がよさそうということに気付き絞り込みを行ったほか、勇者のお母様に気にいられることという命題も欠かせない。もちろん勇者さまご本人の嗜好も外せない点である。
お母さまの公爵夫人の望みは「魔王討伐後も彩り豊かな人生を歩んでほしい」ということだけであったので、イコールご子息勇者さまが気に入ることにポイントが絞られた。勇者の気に入るタイプをお母さまに尋ねたところ、刑事以上の観察眼で勇者さまを見守られた結果として伝えられた。
「あの子、子供のころから動物も好きだけど小動物ほんと好きなのよね。小動物っぽい、ちっちゃい子がきっと好みだと思いますわ。ちっちゃい子が一生懸命がんばっている姿なんてみたら癒されてくれるんじゃないかしら。あと、雄大な人物でありたいとして隠してるんですけどね、ちまちま細々したこととか一見つまらないようなことに凝ったりするのもきっと好きでしょう。そういう息抜きを与えられる人だと素敵ですわね。」
召喚する先の地球上で、小さくて細かなことが好きな人が多い国「ニッポン」を選び、添乗員探しを行うため、ツアーに参加してリサーチをされたという。
でも、なぜ『日帰りバスツアー』(出発地:郊外ターミナル)なのかと問えば。
「決まってるじゃなーい。」と、炎の精霊王女。
「お仲間が沢山いて、わいわいきゃいきゃいできるからよ。」と、水の精霊王女。
「しかも、あのお値段でランチもお風呂もお土産まで、お得感満載なのよ。」と、地の精霊王女。
あの、確かにバスツアー、皆様と同じタイプのお話に夢中になるタイプの方たくさんいらっしゃいます。お得感という点も、それをウリにしていますからもちろんあります。
でも、あなた方にこれ以上お話し相手いります???あと、精霊王女さまにお得感いります???と、心の中で突っ込んでたら、ばれてたようだ。
「お話しはね。聞いている人が多いほど、話しに熱が入ってテンションあがるのよ。」
「たしかに、私たち沢山の財があります。このジュエリーももちろん本物だし。」
「でも、それとお得感は別。高い洋服は値段がいくらでも欲しければ買うけど、牛乳はいつもの価格より1円でも安ければ嬉しくなって周りの人に言いたくなるでしょう!?」
あ、精霊王女さまって、人間心理に。
お詳しいんですね。