この方々はいったい!?
「あのお。」
私はおずおずと、イミテーションジュエリー三人組に切り出してみた。
「はじめましてでは、ないと思いますが中崎 瑠奈と申します。非常に失礼ですが、山本さま、佐藤さま、田中さま。では、ありませんよね?」
この世界に来てから変化の連続で毎日の時間がとても長く感じていたが、私がニッポンを離れたツアーを添乗したのはホンの2週間程度前。
しかも、私はそれまでに数度の添乗でこのお三方とはお会いしている上に。添乗員に渡される参加者名簿に極秘かつ極太の丸をいつもつけてしまっていた。極秘丸のマイルールは何度でも何度でも集合場所・時間をお伝えすべき方。有り体に言ってしまうと人の話しを絶対聞いていなさそうな人だ。
名前はしっかり脳内過去の添乗メモに刻まれていた。
ただ『勇者さまと竜の卵』というその一言だけで、特有の世界観を表せそうなペアと同じ扉から登場。公爵夫人さまともお知り合い的な話しを(お互いに被せすぎで、噛み合っていたかは不明だが)されていた。こんな状況で出会った方々が、ニッポンを代表するほどの名前であるはずがない。
「わたしはルビー。この二人はそれぞれサファイアとペリドット。」
え、そこ。まさかの見たまんま!?工夫はないの?とか一瞬生暖かい目で見てしまいそうになっていたが、隣にいた赤ドラちゃん(失礼継続中)がなんかお三方をみてきゃっきゃ喜んでいるので、一応控えておいた。
エリアルさまが唖然としたように言う。
「まさか、炎の精霊王女 ルビーさま、水の精霊王女 サファイアさま、地の精霊王女 ペリドットさまですか?」
セオロナさまが前に進み出て、なんと膝を折り、頭をたれた。いわゆる臣下の礼というものなのだろう。それにしても、45度の前傾姿勢にさらりと落ちるブロンド、綺麗な角度を描いた長い脚。やっぱりどんなポーズを取っても決まるなあ。なんてポワンとしている場合ではないんだけれど。
そしてその後ろに他の方々4名も臣下の礼を取っている。あわてて私もライユさまのお姫さまに礼をする侍女風のスカートのはしを少し持ち上げた礼の真似をする。
「はじめまして。勇者 セオロナです。お目に描かれて光栄です。おそらく皆さまは私とお会いするのは初めてではないかと思いますが、ご挨拶をさせていただくのは初めてかと。」
「はじめまして。旅では賢者を務めさせていただきましたエリアルです。精霊王女さまとお会いできるとは、感激です。グレイトドラゴンさま、勇者の恩恵を感じます。」
「はじめまして。レンジャー クレイです。いつも存在は感じておりましたが、お姿を拝見することができて光栄です。」
「はじめまして。パラディン ブルートです。いつも大きな支援の存在を感じておりました。お会いできて光栄です。」
「はじめまして。踊り子 ライユです。何度か尊敬の念をもって、お三方それぞれを模した舞を舞わせていただいたことがあります。皆さまにお会いできるなんて。踊り子冥利につきます。」
パーティの皆さまのご挨拶を受けて、精霊王女3名(もうイミテーションジュエリー三人組とは口が裂けても言えないだろう)が満足そうに全員を見渡された。