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「勇者さまご一行、こちらでーす。」添乗員はじめました。異世界で。  作者: 爽村 愛
サマソニア・そして神殿へ
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夕暮れの中

 「太陽が大きくなったねー。」

 とライユさま。海辺の夕暮れは迫力がある。

 私たちは、古代勇者学に出てきたやるべきことをするため海岸沿いに集まっていた。


「光の帯の中っていうのは、太陽から一直線に海岸に伸びている赤いところだろうな。空と海は揃ってるな。あとは大地?」

「とりあえず、勇者が立つことが大事なんじゃないかな。光の帯に。」


 そう言われ、セオロナさまは光の帯に立つと。

「天啓を感じる。心が洗われるみたいだ。」

 セオロナさまはつぶやいて目を閉じた。と、勇者さまの元に吸い寄せられるようにボトルが流れ着く。

「この夕日が照らす海水を入れ、また海の恵みを添えて、神殿にむかえと」

 と、そのボトルにガラス細工で文字が入っていた。

 セオロナさまの手で少し水を汲み、蓋をした。あとは野菜や麦など大地の恵みを持っていくといいということだろう。

 儀式的なものはこれだけだが、神聖な気分で勇者さまが空と海と大地のすべてを感じることに意味があったのだろう。


 魔獣がひしめく昨年は、この街の空も海も森もすべてが薄紫色にくすんで見えたという。いま、太陽の光によって色を変える、空と海、生命の力によって鮮やかな色を帯びる大地の色を感じることで勇者の輝きが一段階トーンアップしたようだ。


 神聖な儀式も終えて、夕食タイム。今夜はお泊りのため、街で一番高級といわれるレストランに繰り出して、魚介を楽しむ夕べにするとのこと。お昼に露店で食べ損ねた分期待も高まる。

 イカ・エビ・貝・そして赤身・白身といろんな魚。それが、おフランス風な感じにたっぷりのソースがかけられてテーブルにそっと置かれる。

 皆さま、さすがのお育ちでお行儀よく満足したようにお召し上がりだが。これでいいのだろうか。昼間の大貝のあぶりが頭をかすめる。

「少し外していいですか。」

 お断りして、裏手に、レストランのオーナー様っぽい方を見つけて話かける。

「あの、このお魚たち、朝採れですよね。ご提案があります。」

 そのあと、テーブルに出てきたお料理には、勇者さまご一行のみではなく、レストランのほかのお客様の注目を集めた。


 バラの形に置かれた赤白のお刺身、本日塩田から採れたての粗塩を添えて。

 地元産エクストラバージンオイルであげたカリカリ白身魚フライに今採れの実の酸味を添えて。


「地産地消っていう言葉が私の国にはあります。その土地で採れたものをその土地で食すという意味です。調理の時に使うお水や気候など、すべてが相まって、最高の風味を作り出すからそんな言葉があるんだと思います。やはり、その場にいってみないとわからない感動もありますよね。」


「その地にいってみないとわからない感動か。でも、よくプロが作ったメニューに対抗するようなもの提案したな。」

 とエリアルさま。


「伝えたいことは、伝えたいときにタイミングを逃さず言わないと。後悔しないためにも。」

 きょとん。とエリアルさまがこちらを見て、なるほどとうなずいたように見えた。


 その夜、テラスで手紙を書きとめるエリアルさまを見た。深く考え込みながら、便せんに向かっている。

 もしかして、私背中を押せたのだろうか。がんばれ、エリアルさま!と心の中で祈って邪魔をしないようにその場を離れた。




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