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「勇者さまご一行、こちらでーす。」添乗員はじめました。異世界で。  作者: 爽村 愛
サマソニア・そして神殿へ
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海辺の二人

 エリアルさまが、心の底から笑っている。隣で笑いあう女性は、腰までの栗色の髪をすその方だけ大き目にカールして、風になびかせている。顔の作りは長いまつげに縁どられた髪と同じ色の大きな目、高い鼻梁と大振りな美人で、白いノースリーブの上に原色に近い花柄のくるぶしまでのスカート。この異国の街からみても異国なエキゾチック美人というイメージだ。

 二人で、一冊の本を仲良くならんで見ながら、熱心に語りあっている。


「もう、ここに来るのに、途中村にも泊まらず、急いだのは目的があったのかもしれないですね。」

 と、問えば

「まあ、エリアルにとって良い時間を過ごすことができるんじゃないかな。一緒にいるサテューはこの海の向かいの大陸から来ている留学生だよ。エリアルは、昔から古代勇者学や神殿学を学ぶため、この海辺の街の神学校や図書館によく通っていてね。そこで知り合ったらしい。エリアルは優秀すぎて書物から学べる知識なんかはすぐに覚えてしまうし、他の大陸についても本で学べることは学びつくした感じだから。他の大陸の生の情報を語ってくれる人が貴重らしいし、頭もいいらしくてね。彼といろんなことを討論できる珍しい人だといっていたね。何度か徹夜で語りあったと言っていたよ。」 


 へえー。堅物っぽいエリアルさまもなかなかやりますなあ。ふふっ。

 頭が良い故の孤独感を癒す美女、いいですね。並みの女子だと退屈してしまうんだろうな。


「ただ、次の新月あたり国に帰ってしまうんじゃないかな。王族の一員だといっていたし。この国で勇者や魔獣についても学習して自国の魔獣被害を最小限に抑えるのが、留学の第一目的だといっていたし。」


 えっ。ええええええっ。あんなに嬉しそうだし、仲もよさそうなのにお別れですか。次の新月あたりということは、今回の滞在が一緒に過ごせる最後のチャンスかもしれない。


 なにか、できることはないか考えよう。でも、夕刻の用事の方が優先だ。なんといっても古代から受け継がれる勇者さまの儀式っぽいんだから。

 夕日ってどこに落ちるんだろう、方向感覚がまるでわからない。そのあたり、ほんとはエリアルさまに確認したいけど、お邪魔しないようにセオロナさまに尋ねておこう。


「浜辺に出ると夕日がでる方向も見えると思うよ。浜辺、散歩で下見しておこうか。」

 やった!テラスデートの続き!?なんて思ってしまわないように注意して、でも一番お気に入りとなった空色の女子力高めなワンピに着替えて部屋を出る。


「お邪魔しないように反対側の出口からでましょうか。」

 エリアルさまたちのいる方向とは逆の出口から宿を出て、海に繰り出す。

 途中、一角にある露店で、何かを買ってくれるという。子供のころから海イコール海の家で粉ものなんかを食べていた私は、条件反射でイカの姿焼きとか巻貝の炭火焼きと言ってしまいそうに。

 もちろん言えばセオロナさまは満面の笑顔で買ってくださるだろうし、下品だなとかそんなことを思う勇者さまでもないだろうが。ブロンド美形のとなりでイカの姿焼きはないだろうというわたしの見栄で、ミント系アイスを買ってもらう。

「僕は、大貝の焼き物にしようかな。」

 と、何を食べられてても優雅さを損なわず、むしろギャップ萌えの小道具のようにみえる、王子さまな外見が心底うらやましい。ミント系アイスももちろんおいしいのだが・・・ミントってチョコが入ってこそのミントじゃないのか?若干じとーっとした目をしつつも、塩田の作業風景や、沖に浮かぶ漁船を眺めながらの浜辺の散歩時間は楽しく過ぎていく。もちろん、3秒ぐらいは、夕日の沈む場所を確認するというお仕事も忘れず行った・・・。


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