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「勇者さまご一行、こちらでーす。」添乗員はじめました。異世界で。  作者: 爽村 愛
サマソニア・そして神殿へ
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移動日徒然 ~野生馬と~

 移動日。ガイドのいないツアーの場合、添乗員にとって、最も苦難となるスケジューリングである。

 と、私としては言ってみたいところである。日帰りツアーの添乗の日々では「移動日」なるものはもちろん存在しない。渋滞やらで長時間のバス乗車にならない限りは、2時間程度に一度リフレッシュのため(お土産購入でお金を落としてもらうためもあるだろうが)バスを降りて休憩するし、最長でも片道で5時間を超えることはほぼない。


 海外の周遊ツアーなどでは、旅程表で見る限り、移動日っぽいものが存在するがそんなツアーに添乗すること自体がいまのところ夢の状態である。自分で行く旅行は「添乗員付き」なんてエグゼクティブなツアーには参加できないし。


 なので、本日が「移動日」初添乗。張り切っていかねば!

 とはいっても、ここに来たのは仕事の帰り道だったし、ニッポンの秘儀「折り紙」やらけん玉やら、熱中して遊べる道具は持ち合わせていない。どうするべきか。


 結局は胃袋をつかむしかないか。と、ランチにはオムレツを作ってみた。メイド喫茶っぽくケチャップでお絵かきも加えて、さあ、外でタープを建てて待ってくださっている皆さまにご提供だ。


 結果、メイド喫茶もどき!は本家本元のメイドさまを従えている皆さまには(当たり前だが)伝わらず、

 なんか絵かわいいよね。ぐらいで、いただきますをされてしまった。はりきりすぎは失敗の元だ。

 そんな、ランチタイムに周りを見渡せば、きたーっ。トピックス的な景色。

「見てください。あの馬、牛みたいな模様ですね。」

 本当に形は馬なのに、模様は見事ホルスタインな馬がいた。テンション上がってくれるかな。


「お、野生の馬か。たくさんいるな。乗るか」

 クレイさまが、立ち上がってみている。

「いいねー。2日間も座りっぱなしじゃ、体なまるしな。」

 とブルートさま。

 あれ、違うところに食いつかれた?でもいいや、皆さまが楽しければそれに越したことはない。でも、移動時間大丈夫なのかな。


「魔法馬車でこのずっと先のアキマクの池まで進んでおいてもらえない?お・ふ・た・りで。」

 ライユさまがそう言うと、

「だな。夕方までには到着するだろう。じゃ、用意をするか。」

 エリアルさまが決定を下す。え、私は馬に乗れないけど、セオロナさまは?置いてけぼり?


「僕もエリアルもいないと魔法馬車は動かないよ。魔法がいるからね。だからといって、君とエリアルを残して僕が行くと思う?」

 ずきゅーん。とセオロナさまの甘い言葉にワタワタしているうち、セカンドカーからいつのまに用意されていたのかの簡易の鞍と手綱が取り出され、4名さまは馬の近くに。


 野生の馬って人間が近づくとすごい勢いで走って逃げちゃうイメージがあるけど、そこはさすがのクレイさまだ。逆に馬の方から寄ってくる。顔を撫でると気持ちよさそうに鳴いてしっかりなついてしまっていた。簡易の手綱と鞍を軽々と4頭にかけてそれぞれに馬を預ける。


「よっこいしょ」なんてことは勿論なく、皆さま颯爽と馬に跨る。おお、馬がつやつやに見えて、まさにお貴族さまの乗馬シーン。載せている馬も心地よさそうだ。くるくると周囲を軽く走らせて、遠乗りができそうな様子を確かめる。


「じゃ、行くか。」

 ドラマのシーンにしか思えないほど、優雅に駆けて行かれる姿を見送ってしまった。二人で。



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