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「勇者さまご一行、こちらでーす。」添乗員はじめました。異世界で。  作者: 爽村 愛
平和の森からシーズナルブラン村へ
31/82

続く旅程は

「まず、今回の移動は長距離になる。ここから2日間は走りっぱなしだ。」

 エリアル様の説明が始まる。

 ふむふむ、究極の移動日なのですね。何か楽しみでも見つけないと。

「まあ、懇親でも深めてくれ。」

 エリアルさまがこちらを見て続ける。えっ、深い意味じゃないですよね。ずっと隣でとか、あんなことやこんな・・・・。あ、本業に戻ってメモを取らねば。妄想している暇はなかった。


「今から3日先となる日にサマソニアの街につく予定だ。移動の連続となるからサマソニアの街では1泊しようと思っている。そのあと、さらに一日走ったのち、本旅でのメインとなる『はじまりの神殿』につく予定だ。」


 はあ、美形に美声っていいよね、こんな簡単にポイントだけの旅程案内であっても、みんな引き込まれるように聞いちゃうもんなあ。

 手帳に書き留めながらも、ニッポンでの私の毎日と比べてしまう。

 マイクを使って、バスの中でお客さまに重要なことを含む旅程説明をしたところで、お客さまは気のないそぶりでボーッと窓の外に目をむけてるか、隣の席の方とのお話に夢中か、なんとなく聞かれてる感じかが大半だもんね。

 もしも、私の外見がライユさまだったら、お客さまじっとこっちを見て聞いてくれるんだろうな。遠慮なく見つめられるチャンスだもんね。集合時間より早く来て、お話しできるチャンスを伺われたりするのかな。もしかしたら、観光に行かなくなっちゃうもんね。添乗員さんの美しさが一番の非日常!とかいわれちゃったり。


 あ、またしても自分の世界に・・・・。こんなことをしている場合じゃない。地図で方向をつかんでおかないと。そういえば、旅の始まりのときに帰路は三角形に進むとエリアルさまがおっしゃってたな。

 平和の森からみて途中にシーズナルブラン村に立ち寄ったのちまっすぐ、進んだ先がサマソニアの街か。

 地図のはしっこってことは、もしかして海沿い?リゾート地だったりするのかな。

 そのあとはまた、陸地中央に向かって、走るのかな。あれ、はじまりの神殿って地図にない。


「あの、エリアルさま、はじまりの神殿って。場所が」

「その神殿は神聖なものだから、地図には載せていない。心配するな。魔法馬車が方向を間違うことはない。」

 ここまでも、魔法馬車は、迷うことなく目的地に走ってきた。当たり前か、この馬車のナビ役はエリアルさま、動力エンジンはセオロナさまの魔法のよう、お二人と間違いは縁がなさそうか。

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