村の大地に
外に出ると、皆さまが既に揃われていた。クレイさまは、大事そうに碧の水に入った箱を抱えている。
「あ、私お水持っていきますね。ライオスの滝で汲んだお水があるんです。皆さまがもっと武器を浸したいと思われる時があるかと思って。珠の場所にお花飾ってあげようかと、朝探した野生のマーガレットがあったので。」
「まずは飼い主だったところだな。声をかけてあげないと。」
村を歩いて、雑貨屋に向かう。その道途中には田畑の実りなどがあるにも関わらず、何故か寂しい。
きっと、いくつかの家が依然の魔獣被害の際に主を失い、空き家になっているから、寂寥感が拭えないのだろう。
「おはようございます。」
まだ、開いていない雑貨屋のドアをたたくと、母親と8歳ぐらいの少年が中から出てきた。
「もしかして、勇者さま。おっ、おはようございまーす。私は、エレナ、この子はライトといいます。」
「はじめまして。僕はセオロナ、ご存知の通り、勇者の命を受けています。」
挨拶だけをしてクレイさまに引き継ぐ。
「お久しぶりです。今日は、ロンの・・・。」
そこまで言って言葉を詰まらせる。張り裂けそうな気持ちを抑え、続ける。
「ロンちゃんの想いがこもったジュエリーボックスをお持ちしました。この地でこれからも想いを引き継げるよう、土に還してあげたいのですが、ご同席いただけませんか。」
そういって、箱を示す。
と、雑貨屋の家の中から猛スピードでクリーム色の毛の子犬が駆けてきた。まっすぐ箱に向かってくる。
短い脚が絡んで、こけてしまいそうな勢いだ。
「あらあら、かわいい。この子は?」
ライユさまが問えば、
「プロンです。まだ、1歳のほんとはプチロンで、ロンと隣のスワンとの子供なんだけど、大人になると僕より大きくなる種類だからプチはダメだっていわれて。」
ライトくん、ここで初めて笑顔をみせた。
「プロンちゃんはわかるようね。ロンがここにいるって。一緒に連れて行ってあげましょう。」
そして8人と1匹で裏の庭の先にある大きな木に向かう。
「ここがいいわ。いつも近くでいれるから。」
と、エレナさん。みんなで木の根元に穴を掘り、土に碧の湖水をしみこませていく。
クレイさまが、箱を開けて、象牙色の珠を取り出して、ライトくんの手に優しく置いた。
「ロンの色だね。」
と、象牙色を毛並みを整えるようになで続けた。横で見守るエレナさんは声を失ったように象牙色を見つめていた。プロンはまだわからないのか、象牙の珠をおもちゃのように欲しがってしっぽを振り続けている。
「そろそろ。」
長い時間がたって、エレナさんがライトくんを促す。ライトくんは目にいっぱい涙をためたまま、土に置いた珠の上から土をかけていく。
「くううううううううん。」
プロンの悲しげな、細い鳴き声だけが、響きわたって、より寂しさがつのる。
ライトくんが抱き上げても、頬ずりしても、いつもならキャンキャンと嬉しい声を出すのに、いつまでも細く、長く鳴いていた。