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「勇者さまご一行、こちらでーす。」添乗員はじめました。異世界で。  作者: 爽村 愛
平和の森からシーズナルブラン村へ
26/82

洞窟の奥には

 洞窟の入り口はたいていそうであるように、レイトオリーブ洞窟も天井は高めで、外からの陽ももれ暗くはない。しかし、奥に行くにつれ、徐々に道幅も狭くなり、暗くもなる。

 クレイさまが皆さまにランタンのようなものを配布するが、炎はない。どうやら透明なケースの中に、セオロナさまを愛して寄ってきた光の精霊たちを集め、明かりがともっている状態のよう。魔法も精霊さんもこの世界では身近でありがたい存在だ。


 クレイさまは他にも荷物を背負っているが、冒険道具だろうか。横にはエリアルさま。お二人で何かを真剣に話ながら進んで行かれる。その後ろをブルートさまとライユさま。天井の凹凸があったり、狭くなったりしているところをブルートさまがさりげに手を添えたりして、ライユさまを護ってる。さすがです。


 そして添乗員である私は、本来皆さまの安全を確認しつつ最後尾を見守るところなんだけど。全く知らない洞窟であり、水たまりをよけたり、飛び出した岩を超えたりと、そんなことが皆さま同様の速さでできるわけもなくみまもるどころか、遅れがちなだけでお恥ずかしい限り。でも、持ち前の根性でなんとかリタイアだけは避けなければ。ここで頑張れれば、将来ハイキングツアーなんて鼻歌まじりでこなせそうだ。


「僕と瑠奈さんでは、この凸凹や、水たまり、まったく大きさが違うようにみえてるのかな。だって、瑠奈さんは水たまりの前、岩の前で一回一回立ち止まって、息とめて飛んでる。」

 水たまりの前、岩の前で、さりげなく手を貸してくれながらセオロナさまがおっしゃる。

 いやいや、セオロナさま、もともと足が長いうえにものすごいばねで飛んでるから、障害じゃないようにおもってるかもしれないけど。あの水たまりも、この岩も、凡人には全力で飛び越えたり上ったりする大きさでものすごい探検状態ですから私。


 人によって障害が違うように見える。それは、私たち添乗員が常日頃から意識しないといけない問題だ。バスのステップ、歩道の幅、歩いての移動の多い旅では、最も体力の劣る方を水準に歩行速度を決めていくが、それだけでは歩くのが早い方が不満に思われる。そんなときに、前の方に面白い景色などを提案し、歩く速度を緩めさせるのも添乗員の手腕だ。そんな、私が最も体力の劣る人になってしまうなんて。つらい状況だが、凡人ではなくヒーロー・ヒロイン集団相手なのでそこはあきらめるしかないだろう。


「ごめんね。僕としたことが、レディに全力を出させるよう気を使わせるとは。道理で口数が少ないと思った。」

 あ、いえいえ先ほども言おうと思っていたのですが、レディではなく添乗員ですから。こちらこそ気を使わせてしまい、また気遣いの言葉どころか常に息切れ状態、全力ですみませんと言いたいところだが、まさにしゃべる余裕もない状態。がっくり。


 先頭を行くクレイさまにセオロナさまが声がけをする。

「先を急ぐ旅じゃない。洞窟のも何かを発見する気分でゆったり探検しながら進まないか。隠れた鉱石もみつかるかもしれない、そんな洞窟だよね。」

 私の申し訳なさがる気持ちを推し量って、違う理由で進む速さを抑えようとしてくれてる優しい提案。セオロナさま添乗員経験あるんじゃないかと思わせるその気遣い、素敵です。


 クレイさまとエリアルさまが振り返ってこちらをみる。

「ああ。なるほど。ごめん、ここを冒険したときの話に夢中になっていて速さに気づかなかったよ。」

「瑠奈さん、だめだったらセオに背負ってもらえばいいんだからね。」

 あ、せっかくのセオロナさまの気遣いだけどしっかりばれてる。添乗員として、ほんとのお荷物のように背負われないようにだけは、気ををつけます。


 そろそろ体力も限界かと思うころ、洞窟の先に光が見えた。

「エメラルドの湖?」

 そう呟いてしまうほどの、深い碧をした大きな湖がその先にあった。


 




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