レイトオリーブ洞窟への道
朝食を終え、もう一度魔法馬車に乗り込む。朝からこの草原地帯を抜け、また森に入って夕方までにはレイトオリーブ洞窟に到着する見込みだとのこと。
昨日、滝の恵みをめいいっぱい受け、もともと美男美女揃いのこのパーティが、さらにキラキラ感を増したようで、魔法馬車の中も華やいだ感じだ。
セオロナさまが華やぎすぎて見えるのは、きっと私の贔屓目だろう・・・。昨日の夕食・今日の朝食と、本気にならないように気をつけながらも、どうしても意識してしまう。特に魔法馬車の中で隣り合った座席だと、時折ふれあいそうになる手にきゅんとしたり、常に体温を感じてしまったりして。
しかし、公爵さまだというのに、一添乗員の私への気配りはなんだろうか。
昨日からの旅の記録をとどめようと手帳をあけると、テーブルの上の茶器をよけ、書けるスペースを空けてくださる。旅の出来事を私の見えていないところすら時系列でわかりやすくお話しされ、記録の手助けまで。夕食・朝食のメニューまできっちり記憶されているのには驚きを隠せません。その上、車窓の風景すら
どの地点で見るべきものがあったのかなど、どんなすばらしい能力なのか。
全力で頑張っている添乗員がすべき業務。手伝いとはいえ、そんなやすやすとこなされては、私の立場がありませんが。
「風景の特徴を覚えられるのは、クレイのおかげかな。」とセオロナさま。
池や、木々、同じようにみえても、一つ一つの形にも個性があり、じっとみて特徴を感じることをクレイさまから習い、見知らぬ土地で魔王討伐への旅を続けていくうちに、得た能力だという。封印した転地魔法は、見たことのない土地には飛べず、一度覚えた景色の場所に瞬時に飛ぶものだそうなので、景色を覚えるのは必須の能力なのだろう。レンジャーのクレイさまは、魔力がなくても、自然の特徴を感じるこの能力で道に迷わず、自由に森の中などを探索できるという。
その能力と、景色をものの形に例えて楽しむようにする私の時間つぶし技を合わせて、見事な車窓日誌ができそうだ。
ああ、添乗員でなければセオロナさまのまぶしい笑顔と素敵な声で窓の外の案内を受けながら、一日移動していたい。あっと、仕事中だというのに妄想癖が、あぶない。あぶない。
お昼を過ぎたころ、森に張り出し、崖っぽくなった場所に洞窟の入り口が見えてきた。
「あれが、レイトオリーブ洞窟だ。」
エリアルさまの声。今回の旅、第二の目的地に到着ですね。