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平和の森から旅が始まる

 電気自動車のスタートが静か過ぎてといわれるが、魔法馬車での出発はまさにそんな感じだった。


 音で表現するとすると、スーッ。でも、カボチャがスーッとだと、気分が盛り上がらない。


 セオロナさまを見つめてお願いしようと思ったけど、真っ直ぐ見つめるには眩し過ぎて無理なので、エリアルさまにお願いしてみた。


「あえて通ったあとにキラキラと光の粒を撒き散らし、若干のキラキラ効果音も出して貰えませんか。」


 あれ、何故かエリアルさま苦い顔。しかも無言で、セオロナさまに、視線を流す。ケチですか!?

 仕方なく眩しさに耐え、セオロナさまに同じお願いを。

「もちろん、喜んで。まあ、僕よりエリアルが先ってどうなのかとは。」

 と、若干ぶつぶつ言いながらも、魔法馬車に向かって何かを言祝ことほいでくれる。

 すると、車輪の下から移動したあとに、水面が太陽を反射したときのような、キラキラが流れ、うっすらとキラキラ音も聞こえ出す。


 旅は演出だ。一気に魔法馬車の神秘旅とでも題せる雰囲気が出来上がる。


 魔法馬車のドアに取り付けられた丸窓から演出を確認してすっかり満足した私は、座席に座ろうと周りを見る。


 ドア部分だけ、視力検査のわっかのように、あけながら、テーブルを取り囲むソファー、皆さん遠慮の固まりに正面向き上座、セオロナさまの隣が空いているが、まさかそこに座る訳にも行かず、ドア横のちょこんとした半人分の空きスペースに腰掛ける。


 と、腰をスルッと持ち上げられ、ライユさまからブルートさまにパスされて、ブルートさまとセオロナさまの間のスペースに。

 無言でさらっとパス出来てしまう、華奢なライユさまのあまりの怪力ぶりに、腰を触られた恥ずかしさも吹っ飛ぶ。さすが勇者さまご一行の踊り子さま。

 そして、ちょこんとセオロナさまの横に陣取れてしまったことに緊張が止まらないはずが、裏人格の私がニヤニヤしているような気も。


 そんなドキドキを落ち着けるような、クレイさまの低い声。

「本当に昔の森に帰って来れたんだな。」

 それに続く皆さんの1年前の記憶。

「1年前は数十匹のピンクの魔獣に囲まれたよね。」

「木々も薄暗い紫色に染まってたな。あの頃は。」

「枯れずに残ってくれたんだね。」

「また、鳥の声が聞こえる日が戻って来るなんてね。」


 いま、帰り道を走りはじめたこの旅は、静けさを感じることも最大の観光ポイントだと考え、しばらく黙って平和の森の空気を味わうことにした。


 そして、皆さん揃って、静けさを味わうために目を閉じた。


 風にそよぐ緑の音、鳥の声が遠くに。そこに魔法馬車の進むキラキラ音が溶け込む。

 

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