三三七拍子
魔法馬車に荷物をのせてもらい、おかみさんと最後のお別れをして、いよいよ宿をでる。
おかみさんへの労働と宿泊費の差分精算は、セオロナさまが金貨を数枚おかみさんに握らせ、ものすごーく恐縮された状態で完了したようだ。
私にはこの世界で、街を出る第一歩だ。
怖くないといえば嘘となるけど、精一杯頑張ろうと、皆さまにもこの街の屋根色の見方を説明しつつ出発する。
「三三七拍子ってご存知ですか?」
反応はきょとん。
「私の国では応援を表すリズムです。笛で表現したりします。」
そして口頭ではあるが、ホイッスルのリズムを伝える。
ついでに応援団よろしく、左右手を斜め下に三拍子、両手を下から七拍子。とってみる。
「ピピピッ。ピピピッ。ピピピピピピピッ。」
「ピピピッ。ピピピッ。ピピピピピピピッ。」
こういうことが恥ずかし気もなくできるようになって初めて一流の添乗員だ。
そのまま、きょとんとされ続ける可能性もあるけど、そこはいわゆる「旅の恥はかき捨て」(職業=旅だけど)というのが通用する・・・。と信じる。
ちっちゃい背だけど、手、めいいっぱい伸ばして応援団にみせてみせる!とはりきってみる。
「なるほど、そういわれてこのリズムを唱えつづけると応援されている気分となるね。」
「キレのあるダンスね。短いけど、気持ち伝わるね。」
やったー!乗ってきてくれた。まあ、お客様たちっていい人で、はしゃいでくれようとするものです。
このリズムを覚えて、この宿から街の入り口にむかいつつ、民家の屋根色をご覧いただくように、ご一行さまに促す。
「赤・赤・赤・青・青・青」
「黄・黄・黄・黄・黄・黄・黄!」
「ね、この街出る人を応援してくれてるんですよ!」
と、いってみて、出発する皆さんと誰より自分を鼓舞する。
「瑠奈さん!やっぱり大好きかも。」
ポツリと呟くセオロナさま。
きゅーん。ポツリいう告白っぽい台詞って反則級です。
で、街の入り口には、魔法馬車なるものが、用意されていた。
カボチャの馬車なイメージ?まんま、巨大カボチャな外観が、ある意味しっくり森になじんでる。
でも、ドアを開けると、円形のふわふわソファー席がテーブルを囲み、さながらサロンバスでのツアー(超豪華版)
みたいで快適そう。
これで出発って、わくわくしない人いないと思う!