魔法馬車を使う理由は?
まあ、お金のことは長い目でみれば、いつかは返せると、置いといて、次は移動手段だ。
「あのー、私、馬とか乗れないのですが、皆さま馬車だったりします?」
「乗馬遊びか?」
「馬車遊びも楽しいかも!」
ではなくてですねー。
「次の街か村まで、どうやって向かうのでしょう」
「それは、転地魔法でさくっとだと、大きな魔力が必要となるため、魔法馬車にしている。」
旅程担当の賢者さまがおっしゃる。
「スピードはほぼ、早馬並みだが、浮いているので揺れません。荷物の重さも問わない。トランク、馬車までは、ブルートに手伝って貰って。ブルートからみたら、ポシェットレベルの重さだ。」
「添乗員なのにすみません。すっかりお世話になって。」
添乗員として、大事なのは、自分に絶対的に出来ないことは、上手に上手に得意そうな人に甘えてしまうことだと思っている。全部自分で出来れば素晴らしいけど、桁外れの能力を持っていらっしゃるこのご一行さまに合わせるのは無理でしょう。
「ところで転地魔法が大きな魔力を使うって?」
「魔獣と対峙して、魔王討伐に向けて勇者のセオ、賢者の私は、強大な魔力をいつでも爆発出来るよう鍛えてきた。」
セオロナさまも補完してくれる。
「炎の壁とか、無数の氷の矢とかね。森とか一体を焼き尽くすパワーのね。」
「しかし、魔王という強大な敵と共に魔獣たちも消えた。そして、このような強大な魔法を人間同士で戦に使い合うことのないように、私たちは昨日、王都との中間地点となるこの地で祈りを捧げて魔力の9割方をあえて消し去った。そのため、自分たちをテレポートさせるような大きな魔力を使えず、魔法馬車の動力程度のわずかな魔法のみは使うが、今後は普通の人に近い能力で生きていくことになる。」
「なるほど。それが、今後の日常への憂いにつながったのでしょうか。でも、魔法馬車での移動、きっと転地魔法より新しい発見もあり、楽しいかもしれませんよ。」
「さすが、我らが添乗員。いい意見だ。楽しみにしているよ。」
「では、この朝食が終わったら荷物を魔法馬車にのせて出発だ。」