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ここは???

  「集合時間は14時半です。バスは、この駐車場に止まってますので、遅れないようにお願いします。」


 あ、だめだ。あそこのイミテーションジュエリー三人組トリオ絶対聞いてない。お喋りに夢中で遅れる典型???


 私は、中崎なかざき 瑠奈るな、26歳。


 学生の頃から海外旅行にはまり、新卒で事務職についたもものの。3年で休みも取れず、旅に行けないストレスから、

 自律神経失調症という、語るも涙な事情で退社。

 遊んで暮らせるほどの余裕があるお嬢様でも、奥様候補でもない私は、旅を仕事にするしか選択肢はなかった。

 中堅の旅行会社に添乗員として派遣契約できたものの。


 遠くに行きたいよおおおお。


 添乗先は毎日毎日、郊外ターミナル駅初の日帰りバスツアー。1年もすると、はじめてポイントなんてなくなってしまう。

 ここで、入社案内のパンフレットなら、

「同じ土地を訪ねても、バスに集うメンバーが違うから。

 毎日の充実度はマックスです!」

 とか、記事書いちゃうんでしょうが、仕事だからといっても判で押したようなパターン固定の日帰団体客様相手では、変化を感じるのも厳しいところです。


 そりゃあ、旅の終わりのアンケートでは、ホロリとするコメントいただけたり。いいこともいっぱいあるんだけどね。 

 いつもの午後の行程を終え、アンケートを回収し、ツアー最後のお客様のお見送り。


 バス会社の車庫に戻り。私たち以上に毎日同じルートを運転される運転手さんに精一杯の感謝を込めてお礼を告げて。

 派遣先会社に完了連絡を入れたら、本日の業務完了!


 あれ、あのバス電気つけっぱなしだな。見に行ってみようと、近づいたら、レインボーどころか、煌めくストーンでデコられたバスが。

 なんじゃこりゃーーー。セレブツアーでもあるのかあ?

 興味津々間近による。


 と、プシューっドアが開いた。

 運転手さんはいないのにセンサーか?と疑問には思ったけど、旅行とわくわくには目がない私。

 そこには『ご自由にお入り下さい』の案内。少し不審に思いながらも好奇心には勝てず、ちゃっかり見学のために足を踏み入れた。

 靴が沈むっていう感触の見本のような絨毯じきの車内は今どき流行りの三列シート。半個室気分で、たああっぷりリクライニングを味わってたら。ふわああん。なんだかあったかい光に包まれた気がして。

  あれ、眠い?そう思っていたら、そのまま爆睡!枕が変わっても、どんな場所でも図太く眠れる添乗員に必要不可欠な能力、こんなところで発揮してしまった。

  う、反省・・・。 

 差し込む朝日の眩しさにに、目が覚めたら、もちろんバスの中だった。

 ダッシューーーーっと、ドアから降りて。

 バス会社駐車場から猛ダッシュでおうちに!


 ん。ここって、停留所?目の前に、宿。。。なんだけど、絵にかいたような、中世ヨーロッパ風。黄土色のワンピースに若干フリルのついたエプロン。いかにもな宿屋のおかみさんがドアをあけ、話かけてくる。


「風変わりな格好だね。旅の人かい?」


 風変わり?あ、添乗員業務の帰り、紺色のスーツのまま。

 この中世ヨーロッパからみると、こちらが異国か。

 降りてきたバスを振り返ると、停留所をすでに出たようで遥か彼方に。


 声をかけてもらっても、きっと通貨も違いそうだし、私どうすればあ。というか、たった今からどう生きていけば、いいんだあああああ!!!

 どんなことがあっても落ち着いて、その場で出来る限りの解決をする。添乗員マインドで、とりあえず、話すチャンスをくれたおかみさんに。。すがろう。。

「そう。。旅の者(どっちかと言うと旅のプロ!)です。いま、バスを降りたんですけど、次のバスって。元の行き先に戻りたいんですが。」

「あらあ困ったねえ、次のバスは3年後だからねえ。まあ、ともかく入りな。お代は気にしなくていいからさ。湯あみだってしたいだろ?」

「ありがとうございます!では、お言葉に甘えて!」


 次のバス3年後ってとんでもないことが、聞こえたような気もするが、とりあえず、添乗員マインドで目の前を乗り切ろうか。


 宿屋さんは、中までイメージ通りの内装で、木製のテーブルと椅子が並べられてるここはダイニング、案内された2階には10室ぐらいの個室が並んでた。

 厚意に甘えてのため、遠慮しながらお風呂に入って、これまた厚意に甘えておかみさんのお古のワンピースをお借りして着替える。

 寝起きスーツの最悪状況から一息ついたわたしは、おずおずとおかみさんに申し出てみる。


「ごめんなさい。私、ホントに(ここでの)お金も持ってなくて。出来れば数日おいてもらえませんか。水汲み、お掃除なんでも手伝いますから。」

「そうかい?いつもだったらこんな貧乏宿屋。人手は余りきってるんだけど、もうすぐ勇者さまがこの街に寄られるからね。若くて可愛い看板娘は大歓迎だね。」


 若くて可愛い。。。たしかに背も低く、おかっぱ頭で童顔の私って年より若く見えるけど、26だよーっ。中世ちゅうせいぽいところじゃどんなもんなんだ?


 心の中では突っ込んでみたけど、ともかくここは、当面の身の置き場が確保出来たから万々歳だ。

「ありがとうございます!ところで、ここって?どこの街なんです?」

 と、いまさらながらの質問。


「ここ?シャンタ町だよ。グランドティナサーラ城下と魔城のちょうど中間になるね。」


 えっ。世界旅行マニアの私も聞いたことないって。。。


「それって、何大陸?」

「大陸?レビート大陸だけど。」


 えええええっ。まさかとは思ってましたが、まさかまさかの異世界トリップってやつですかあ!?

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