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神と世界と召喚法

 蒼依は台所で自分と春香のお茶を注ぎ足し、テーブルに戻り、最初の一杯よりも熱くしたものを春香に渡して席に着く。


「それで、春香さんはこの世界について何かアリーに教えて貰ったりしていませんか?」


「えっと…すいません。全く教えて貰ってません」


 春香の答えを聞いて、蒼依は軽く嘆息する。


「春香さんが謝らなくていいんですよ。──全く。アリーさんや、全部俺に丸投げですかい……」


 後半は春香に聞こえない様に呟く。


「まぁ変に知識があると教えるのが大変になるからある意味教えてなかったことに感謝なのかな。───それじゃあ、最初はこの世界のことから教えましょうか」


「お、お願いします。蒼依さん」


 春香が頭を下げる。


「はい、わかりました。───この世界。と言うよりこの大陸、『ハイアレスト』は、簡単に言えば剣と魔法のファンタジー世界です」


 大陸ハイアレスト───広大な土地と豊かな緑を持ち、人族、亜人族、魔族の3つの種族がこの地で生を受け、そして生涯を終える。


 蒼依はそう言いながらテーブルの隅に置いてあった紙とペン、インクケースを自分の所に持ってくる。そして、ペンをインクケースに浸け、紙にペンを走らせる。


「これがハイアレストの大まかな形です」


 そう言って蒼依がテーブルの真ん中にずらした紙には、五角形をそのまま大きくしたような図形が描かれていた。


「思いっきり五角形ですね……」


「細かく描くと少し形は変わりますけど、そうですね。五角形です」


 蒼依は、そんな五角形の頂点から中心まで、一本の線を描く。そこから、左斜め下にペンを下ろし、一辺の真ん中まで進ませる。右も同じように描く。

 まるで、五角形に‘Y’を上下逆にした物をはめ込んだような形になった。


「最初に描いた縦の一本線が『テスタ川』と呼ばれるこの世界で一番大きな川で、その次に描いた右と左の線が『デルド山脈』と言って、俺達人族は“聖峰”と呼んでる山脈です。この2つが大陸を3つに分けてまして……」


 蒼依は五角形の下、デルド山脈によって囲まれている部分に指を置いた。


「この部分が俺達人族が生きている場所」


 次に五角形の上、テスタ川によって左右に分かれている部分の右側に指を置き


「此処が亜人──獣人やエルフ等が住んでいる場所」


 そして、左側に指を置き


「最後に、此処が魔族が生きている土地です」


「テスタ川とデルド山脈の2つを境界線の代わりとして使ってるんですね」


 そう言った春香の言葉に


「使っている。というよりそうなるように‘創った’そうですよ」


 蒼依はこう返した。すると春香はきょとんとした顔になる。


「ふぇ?そうなるよう造った…ですか?じゃあその2つは人工的な?」


「ああ、いえ。そう言う事ではないんですよ。今のは後でお話ししますね」


 蒼依は一口お茶を飲む。春香も飲もうとしたが熱かったらしい、ふーふーと息を吹いてから、少しだけ飲んだ。


「話を続けますね──ハイアレストは1年が360日で12ヶ月。1ヶ月は30日で1週間が6日になってます」


「1週間が6日ですか。本当に地球と違うんですね……」


「俺も最初は驚きましたよ。まぁ6日の方が平日が4日なので楽でいいんですけどね。」


 そう言いながら先程と同じ紙にペンを走らせる。

 紙には日本の月と曜日が縦に書かれており、その隣に矢印とカタカナで何かの名称が書かれていた。

 

「マクスウェル……ネスト……ベルサリア………蒼依さん、これって……?」


「これは、曜日と月のハイアレストでの名前ですよ。月は神の名前を、曜日は精霊の名前がつかわれています。1月はマクスウェル。2月はネスト。それから順にベルサリア。エウィン…」


 蒼依はそうして12ヶ月全ての名を教えていく。


「最後にリリス。この順番は、1月が一番強い神で、順に弱くなっています」


 そう言いきってから一度春香を見る。

 すると、春香は何かを考え込むように顎に手を置いていた。


「マクスウェル。スロウネ。それにベレス……」


 春香は蒼依が言っていた神々の内の3人の名を呟いていた。


「その3人の神がどうかしたんですか?」


「えっと、その神様の名前を聞いたことがある気がするというか。なにか引っかかっていて……」


 マクスウェルと言う名は様々な作品に使われているので、それだけならばあちらの世界でよく使われていたからと言える。

 が、スロウネとベレスと言う名は聞いたことがなく、この世界だけの神の名のはずと蒼依は思っていた。しかし、蒼依が召喚されてから4年が経っているのでもしかしたらそう言ったキャラクターが何かにでていたのかもしれない。

 そう思い蒼依が口を開こうとした時、春香が先に口を開いた。


「あの、蒼依さん。神様たちの姿が描かれている本ってあったりしますか?」


「神々の姿が描かれている本ですか?少し待っていて下さい」


 椅子から離れ、廊下の3つある部屋の扉の一番奥へ。

 その部屋は蒼依がいた部屋とあまり違いはないが、この部屋には大きな本棚がある。

 そこから一冊の本を取り出して春香の所まで戻る。


「お待たせしました。確かこれに載っているはずです」


 そう言って春香が手渡されたものは、有名な週刊誌をそのまま薄くして表紙を堅い紙に変えたような本だった。


「それはイラスト集とでも言えばいいんですかね。神や、古の魔物や種族と呼ばれているものが描かれているんです」


 その言葉を聞きながら。春香は頁をめくっていく。

 蒼依は春香が目当ての頁を見つけるまでに何故、春香が三人の神の名が頭に引っかかったのか考えた。そして、蒼依が一つの推測が導き出され、顔を上げた正にその時。


「あああぁぁっ!!!!」


 春香が椅子を倒す勢いで立ち上がった。

 

「うわぁっ!?」


 蒼依もこれに驚いて少し体を仰け反らせた。


「そうだ……そうだ………思い出した…!!」


「び、びっくりした……」


 蒼依が素直に口に出すと興奮して顔を赤くしていた春香が羞恥で赤くなる。


「ご、ごめんなさい!」


「いえいえ、大丈夫ですよ。それで、なにを思い出したのか教えてくれませんか?」


 蒼依が聞くと、春香が思い出したようにハッとする。


「えっとですね……、蒼依さん。私、その神様に会ったんです」


 その言葉は、蒼依が推測を決定付けるものだった。


「……はぁ、やっぱりそれですか……。予測してたとは言え……まったく、何が起こるんだよ平和になったばっかりなのに……」


 蒼依はぼやく。春香が何故、神と出会っているのかを知っているから。

 一方、春香は分かっていないのでぽかんとしている。


「あの……それって、どう言うことですか?」 


 春香の疑問に答える。


「それって言うのは、春香さんは転移召喚されたと言うことです」








「転移召喚……?それって、どう言うことですか?」


「簡単に言えば召喚されるのが転移なのか転生なのかの違いです。」


 蒼依の言葉にもっと分からなくなる春香。

 それをみた蒼依が苦笑する。


「分かりづらいですよね。……春香さん。異世界物を読んでたんですよね。なら、異世界に来る時ってどういう方法か覚えてたりします?」


 蒼依からの質問に、春香は、特に考えるそぶりもなく答える。 


「えっと、先ず私みたいに誰かに召喚される。2つ目に死んだはずなのに異世界に飛ばされる。3つ目にいつの間にか異世界に飛んでいる。4つ目に異世界の人間として生まれるけど、前世の意識がある。大まかに言ってこれ位でしょうか」


 春香のその淀みない答えに苦笑しながらも頷く。


「はい。その通りです。にしても春香さんは沢山読んでいたんですね。そんなにスラスラ答える人はあまりいませんよ」


 春香は照れたように笑う。


「すごく好きで、よく読んでましたから」


 蒼依はその言葉に微笑んだ。


「それで、この世界の召喚方法ですけど、春香さんが言った2つ目と3つ目の2個あるんです。」


 そう、この世界に召喚される者は、2種類いる。

 

 一つは召喚魔法が発動するタイミングで死んだ人の中で一番能力値が高い人間が召喚されるパターン。《転生召喚》


 そしてもう一つ


「これは、あちらの世界で“生きていた”人を無理矢理こちら側に召喚するパターンがあるんです。これを《転移召喚》と俺達は呼んでいます。春香さんは、この転移召喚したんです」


「その2つの違いって?」


「そうですね……転生召喚と転移召喚は、一言で言えば宝くじと誘拐ですね。ひたすら能力値が高くて良い加護を持っている人が召喚されるまで待つか、ハイリスクを覚悟でそういった人を連れてくるかの2つと考えて下さい。」


 蒼依は話を続けていく


「それで、転生召喚は、肉体が死んで、死んだ人の魂が召喚魔法に掛かって此方に魂だけ召喚されるんです。その時此方の世界に来るときに、肉体が復元されるんです。でも、転移召喚は最初に神々がその力を使って、肉体ごと魂を自分たちの領域に連れて行くんです。その場所でこちらの世界に順応させるために体を作り替えるんです。その時に会ったんだと思います。」


 言い切ってぬるくなったお茶を飲む。


 「何というか……分かったような分からないような」 


 春香の言葉に笑


「正直、全部は分からなくていいんですよ。神様が無理矢理こちら側に能力値と加護が良い人を召喚させたと思っていて下さい。だから、春香さんはかなりすごい人なんですよ。ですが重大な事もあるんてすけどね………春香さん、神様が話していたことがあると思うんです。それを思い出す事ってできますか?」


 そう、これは何よりも大切なことである。“この世界”が危険に犯される前に知らなければならない。

 それを知らない春香は蒼依に質問を


「え?………は、はい。やってみます…」


 したかったが蒼依の有無を言わせない、それでいて懇願するような顔を見て、思い出そうとしている。

 そして


「ごめんなさい………全部は思い出せそうにないです」


 そう力なくうなだれる春香。

 

「いえ、謝らなくて良いですよ。全部は誰も思い出せませんから……では、思い出したところだけ教えてくれませんか?」


「はい。───先ず、すまないと何回も謝られました」


 無理矢理連れてきたからだろう。神にも少しは責任を感じると言うことだ。

 蒼依は先を促す。


「それで、加護の話をしてたんだと思います。それで、体が作り変わったみたいな事を言っていたんです」


 体が作り変わった。この言葉はハイアレストの地に降り立つ準備が出来たと言うことだろう。

 分からなかったかと蒼依が思ったときだった。


「最後に、『500を越えた年のグラウに気をつけなさい。願わくば、その時にお主の力が洗練され、共に運命を歩む者と、始まりの二人と同じ途を辿ることを』って言われた…と思います」


 その言葉に喜び、すぐに考え込む蒼依。


 そして、大まかな答えがでる


「あの、蒼依さん……?」


 同時に、春香から呼ばれる。 

 春香が目の前にいることを蒼依は忘れていた。


「あ……っと。すみません。考え事に集中してました」


 そう春香に謝る。春香は慌てて首を横に振り


「ああいえ、大丈夫ですから。それで、何か分かったんですか?」


 春香の問いに頷く。


「はい。色々と、ただ、六割程予想なんですけどね」


 そう言って立ち上がった。春香が蒼依を見上げる。


「さて、座学はいったん終了です。春香さん」


 その一言で春香はピンときたらしい。嬉しそうに顔が綻ぶ。


「蒼依さん。もしかして……!」

 

「ええ。ここからは実技。魔法の授業です」



 遅れてすみません……いや本当にごめんなさい……(泣)

 多忙で、執筆に全く手が着けられない状況にありまして……。


 ほんと申し訳ないです。次回はこんな事にはなりません。と言うかさせません。


 次回からようやく魔法が出てきます。それで少しはファンタジーらしくなるのだろうか……


 

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