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出会いの朝

 まだ陽が昇る少し前。

 ここ、クライン王国の北の大門のすぐ側にある武具屋〈オリジン〉。その2階の一室にあるベッドから少年───姫野蒼依は身を起こした。


「んっ…………ふぅ」


 大きく体を伸ばし、ベッドからでる。

 オリジンの2階は、階段を上がってすぐの所が客間となっており、右手の廊下は、蒼依が今いる小部屋の他に2つ。計3つの小部屋に繋がっている。左手にはキッチン。その奥には、トイレと風呂場が別々にある。

 蒼依が客と武具の受け渡しを行ったり、召喚された者達にこの世界のことを教える。さらには、友人達が泊まりにくる時のために使用されていたり等、様々なときに利用されている。

 そこで何故蒼依が寝ていて。朝早くに起きたのか。

 理由は最初の、武具の受け渡しのためだ。といっても受け渡しの客は、こんな朝早くに来るわけではない。朝早くに起きたのは蒼依の日課、というより癖のようなものだ。


 蒼依は、ベッドの横の棚に置いてあるリストバンドを両手両足に付け、服を着替えて扉を開ける。

 廊下を渡り、そのまま階段の方へ。

 階段へ続く扉を開け、玄関で靴を履く。

 2階では階段を上がると靴を脱いで入るという、日本人である蒼依の決めごとだ。

 隣の棚の上から鍵束をとる。階段を下り、1階へ、そのまま外に出る。


 外は、ようやく陽が出てきた頃で、通りには朝早くから準備をするパン屋や料理店、武具屋などの人々が数人見える。

 蒼依は〈オリジン〉の扉の鍵をかけ、その場所で、屈伸、申脚、アキレス腱などして、体をほぐす。

 やがてほぐし終わると、徐に中央部へ向けて走り出す。


 ここ、クライン王国は大きく分けて東、西、南、北、中央と、5つに分けられている。

 東は、クライン王国と同格で、戦時中は主に亜人族と戦闘をしていた、ヴェーロノート帝国。そして、他の小国等があるため、他国からくる商人や旅人達のための宿や、他国の品々を取り扱う店が多くある。


 西は、戦場での武勲や、何かしらの褒章で上り詰めた貴族や、位の低い貴族達とその従者が暮らしている。


 南は、この国を治めるクライン王家。そしてそれを支える、古くから王家に仕えていた3つの貴族、通称〔三大公爵家〕が、この国の事を思い、考えながら過ごしている。


 北は、魔族領に一番近く、戦争時に魔族が攻め込んでくるのを防ぐために砦──[ブレスト砦]がそびえ立ち、またこちらが魔族に攻め込む時に、武具の予備を揃えたり、最高の状態で戦場に出るために武具屋や、戦場から帰ってきた者達のために、美味い物を食べさせる料理店などが建てられ、今も人気がある。


 中央は、教会やギルド、魔法学園、騎士学校など国の主要施設が建ち並んでいる。


 蒼依は、中央部に向けて走りながら、店や、家の外に出ている人々と挨拶を交わす。


「アオー、おはよー!」


「お、アオの坊主、おはようさん」


「アオ君おはようございます。」


 蒼依は、この辺りの人にはアオと呼ばれ、親しまれている。

 挨拶を返しながら、蒼依は中央部に向かって走る。速度を上げることも、下げることもなく。ただ同じペースで走っていく。

 中央部に近づくにつれ、周りに見える人の数が増えていく。

 ああ、今日は祈りの日だったな──そう思いながら蒼依は走る。

 人族の宗教はいくつかあるが、すべての宗教は、週の始めに教会に出向き自分が信仰している宗教の神に祈りを捧げる事になっている。これを、宗教を信仰している人は祈りの日と呼んでいる。


「今日はこれ辺りで良いかな。」


 蒼依はそう言って速度を落とす。

 いつもは、ここよりも先の、オリジンから約2キロの場所にある魔法学院まで行ってから、戻るのだが、今日が祈りの日のため、ここで戻ることにした。

 きた道を走って戻り、オリジンに着く。その入り口の前に、一人の女性が立っていた。

 

「あれ?ネアさん。どうしたんですか?」


 蒼依が女性に声をかけると、女性は蒼依を見つけたことにほっと安堵し、笑みをみせた。


「ああ、アオイ。良かった。入り口開いてなかったからまだ寝てるもんだと思ってたよ。」


 女性──ネアはそう言いながら布に包まれている物を蒼依に渡した。


「それ、明日までに研いでもらえないかい?」

「わかりました。いつもの通り研ぎ代は良いので。」

「助かるよ。今度来たとき、料理代無料にするからね。」


 布に包まれた物の正体は包丁。ネアは、旦那のウォルフと共に、酒場〈空の息吹〉を営んでいる。ウォルフが作る料理はとても美味く、冒険者の間では、ここの料理を食べてから依頼をこなすと、必ず成功するなどとも言われている。


「ウォルフさんは?どうかしたんですか?」


 普段、この様な時はウォルフが来るので疑問に思い聞くと、今日が祈りの日だったので、教会で食の神に祈りに行っているとネアは答えた。


 それから少しネアと話をしていると何処かから鐘の音が聞こえてきた。その音は6回なると聞こえなくなった。


「おっと、もう6時か。そろそろ旦那が戻ってくるから戻って来るるわね。それじゃ、それお願いね。」


 そう言ってネアは店の方に戻っていく。

 先程鳴った鐘の音は中央部にある、この国唯一の時計が付けられている鐘楼──時計塔の頂上にある鐘から鳴ったものだ。

 時計塔の鐘は、朝の6時から夜の8時まで1時間ごとに人が鳴らす仕組みだ。


 蒼依はネアを見送った後、入り口の鍵を開け中に入る。

 2階に上がり、包丁を壁際に置く。


 キッチンを通り過ぎ風呂場の扉を開ける。脱衣場と洗面所があり、蒼依は衣服を脱ぎ、タオルを手に取り2つめの扉を開ける。

 風呂場は少し大きめの浴槽と、水と湯をだす蛇口。さらに、シャワーも付いている。

 浴槽の縁にタオルを置き、湯をシャワーから出すようにレバーをひねり、浴槽の隣にある少し大きな箱のような物のつまみを捻る。すると、湯がシャワーから出てきた。

 蒼依は、寝ていた時や走っていた時に出た汗を流すために頭からシャワーを浴びた。


 シャワーを浴び、水分を拭き取った蒼依は、服装を作務衣に着替えたキッチンへ戻り、コンロ台の下の棚からフライパンと片手鍋を、コンロの横の壁に付けてあるポーチから仄かに赤みを帯びている小石を2つとる。

 小石を左右のコンロの火が出る部分バーナーの中央にある窪みにはめ込み、フライパンと片手鍋は水を入れてその上に乗せる。

 その後、蒼依は後ろにある大きな冷蔵庫のようなものから、食材を取り出していく。

 赤と橙を足した色の身に皮がついた魚の切り身を3つ。白く、四角い形状をした、少し弾力がある食材。ケースに入った茶色い調味料。わかりやすく言えば、鮭の切り身、豆腐、味噌である。

 

 片手鍋の方のつまみを回す。すると、窪みにはめた石が赤く光り出し、そこに火があるかの様に熱くなり、鍋を温める。

 蒼依は次に、冷蔵庫の左にある棚から鰹節のような物を取り出し、細かい編み目のあるパックに詰め、鍋の水が沸騰する少し前にパックをいれる。

 フライパンには油を薄く引いて火をつけ、少ししたら切り身を乗せる。

 鍋の水が沸騰したのでパックを鍋から出し、次に包丁で一口大に切った豆腐を入れる。

 フライパンの上の鮭の両面に軽い焼き目がついたので水を鮭が少し浸かる程の水を入れ蓋をし、火の勢いを強める。

 鍋の中に味噌を少量入れ、味を確認しながら量を増やす。味が決まったら、鰹節を取り出した場所からわかめを乾燥させた物を取り出し、手で少し掴んで鍋の中に入れ、少し混ぜてから蓋をしておく。

 フライパンの蓋を取り、鮭を返し、水を少し足しまた蓋をする。

 その隙に食器棚から長方形の皿とお椀、茶碗を取り、コンロの右にある、丸みを帯びた大きめの容器の蓋をあけ、中にある米を茶碗によそう。フライパンの中の鮭もいい焼き色が付いたので火を止める。こうして、焼き鮭と豆腐とわかめの味噌汁が完成した。


 鮭を一枚は皿に、残りの二枚は皿に載せ、紙を上に載せて冷蔵庫に。お椀に味噌汁をよそい、客間のテーブルに並べる。

 日本の朝食の献立と全く同じである。


 「頂きます。」


 両手を合わせてから、橋を手に取る。

 最初に味噌汁を飲み、次に焼き鮭を食べる。

 味噌汁は少し味噌が少なくしたが、鮭の塩のおかげで物足りなさを感じない。

 鮭は身がふっくらとしていて、かなり美味しくできたと蒼依は思っている。

 米は、クライン王国の主食はパンや麺などの小麦なのであまり出回っておらず、あっても質が悪いものが多い。蒼依が食べている米もそうだが、かなりの間食べているのでどうでもよくなってしまっている。



 それからおよそ20分後


「…………はぁ…御馳走様でした」


 米の最後の一口を食べ終わり、手を合わせる。

 食器をすべて片付け、テーブルを台ふきで拭いた後、洗面所へ向かい歯を磨く。

 鐘の音が7回鳴り、7時になったところで1階に降り、入り口の鍵を開け、開店の看板を外に出す。

 その後、すぐに2階に戻り、朝食で使用した食器や調理器具を洗う。

 洗い終わると1階に行き、カウンターにある椅子に座り、椅子に置いてあった本を読み始める。

 その本は昔共に旅をした詩人でありながらこの世界で一番の弓使いが書いた六華の勇者の戦争を終わらせるまでの物語だ。本を読みながら、自分の中にある記憶を掘り起こしていく。

 8時をすぎ、本を読んでいる途中、ふとネアから渡された包丁のことを思い出した。客はこの時間はあまり来ないので今のうちにやってしまおうと、蒼依は2階に上がる。

 2階に上がり、包丁と砥石をキッチンに持って行こうとしたとき


「すいませーん」



 下から女性の声が聞こえてきた。


「あらら……研ぎは後だな。」


 蒼依は苦笑しながら階段を降りていく。


「ああ、すいません。少し立て込んでいたもので。オリジンへようこそ。今日は何をお求めですか?」


 そう言いながら、目の前にいる女性をみる。

 髪はきれいな黒で、胸辺りまである髪を後ろの下の辺りで縛っている。目も髪と同じ黒で、大和撫子といった感じの女性だ。蒼依は、綺麗な人だなと思いながら、予想が立っていた。こんなにも美人な日本人・・・は今いる召喚者の中にはいない、と。



こうして、蒼依は春香──冬峰春香と出会ったのだった

 

投稿したい時間に間に合わなくてちょっとテンション下がりました(´・ω・`)

 今回、色々とわからない単語とか出てきましたね。私の物とにた感じのお話を読んでいる方々だと何となく予想は付いてたりするかもしれませんが説明は次回からです。絶対に一話で説明できないよ………

 まぁがんばります。殴り書きならぬ殴りだたきしますよ(あれ、急に暴力的になった……?)

 

 では、また次回でお会いしましょう<(_ _)> 

 

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