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目覚め、出会い、そして始まり

 初っ端からヒロイン視点で。

主人公視点は次のお話からで。 

リヴィエラ暦398年、グラウの月。


およそ50年の歳月をかけて行われた、人族。魔族。亜人族。3つの種族が殺し合い、奪い合い、争った戦争


[三種戦争]


その戦争を終わらせるために召還され、世界に平和をもたらした2人の異世界人とそれを助けるために集った4人の勇者たちの6人の英雄たち


『六花の勇者』と呼ばれている者たち。

 



これは、三種戦争が終結して2年、

六花の勇者のその後、そして新たなる争いの物語である――――――――



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「………ぅん……んん…………んんんっ」


 目が覚めて最初に見えたのは、純白という言葉がふさわしい天井だった。

 それでありながら、太陽にあたっているような暖かな感覚になる不思議な天井だった。

 自分の部屋の天井はこんなに綺麗だったかな?と考えながら、このままここに居たいという思いと戦いつつ、少女―――冬峰春香はゆっくりと体を起こし―――――そして体が固まった。


「え、えーーっと……ココドコ?」


 燃え盛る炎のように赤く、紅い絨毯が敷かれている床。

 天井と同じような純白の、それでいて眩しいと感じさせない壁。

 右側には、2人で使うぐらいがちょうど良いと思われる丸いテーブル。その隣に、ティーカップや、茶葉が置かれてある棚。壁の窓は押して開けるタイプのものが2つ。

 左側には、かなりの腕を持つ職人が作り上げたと思われる、木の机。その上に教科書のような物が何冊か、綺麗に立てられている。

 

「何で私こんなところで寝てたんだろ………?」


 明らかに自分の家ではない場所のベッドで寝ていた。何故こんな事になっているのかわからない。

 春香は、何故こんな事になっているのか、考え始めようとした──直後、ガチャッという音がし、次いで、ドアが開いた。


「ああ!目が覚めたのですね!」


 ドアを開けて中に入ってきたのは、輝くような金色の髪を肩辺りまで伸ばした、美しい少女と、給仕服を着た、かなり貫禄がある女性だ。

 少女の年齢は17、18くらいだろうか。端整な顔立ちで、瞳は海を彷彿とさせる深い青。でる所はでていて、くびれもある。10人とすれ違えば10人が振り返る。それほどまでに美しい少女だ。

 

「綺麗…………」


 少女を見た春香は、それしか言う言葉がなかった。


「あら、ありがとうございます。やはり、純粋に綺麗と言われるとうれしいですわね。」


 綺麗と言われた少女は、嬉しそうに微笑みながら、ベッドの右側にあるテーブル。そこにある椅子に腰掛けた。


「気分の方はどうでしょうか?」

「あ……き、気分は大丈夫です。」


 その時、部屋に、くるるるとかわいらしい音が鳴った。


「あぅ………。」


 音を鳴らした春香は、頬を紅く染めながら、自分のお腹を押さえた。要するに空腹なのだ


「ふふ、寝ていればお腹も空いてしまいますわね。リーリャ、何か食事をお願いします。それと、お父様に勇者……いえ、守護者様が起きたと伝えてください。」


 少女は、給仕服を着た女性──リーリャにそう言った。それに対してリーリャは、


「畏まりました。それでは、失礼いたします。」


 そう言って、微笑しながら部屋から出ていった。





 「さて、リーリャが来るまでの間に、自己紹介などしておきましょうか。色々と聞きたいことも有りましょうから。」

「あ、そうですね。お願いします」


 少女の提案に、春香は頷いた。春香としても色々と知りたい事があるのでありがたい。


「では自己紹介から。私の名はアリエル。アリエル=レイ・クライン。ここクライン王国の第1王位継承者。簡単に言えば、この国の姫です。」

「へぇ、お姫様なんですか………ふぇ!?」


 春香は2度目の硬直をした。


 それもそうだ。何しろ目の前の少女──アリエルが、自分は姫だと言ったのだから。

 本来であれば上手く受け流したり、会話に乗る事も出来る春香だが、今居る場所が自分にとって、全く知らない場所ということ。そして、アリエルから漂う雰囲気から、本当なのだとわかってしまった。

 硬直が解けた春香は、緊張しながらも自己紹介と、ある疑問を投げかけた。


「私は、冬峰春香と言います。あの、アリエル、様…ここは──いえ、この世界は……」


 春香は、他人よりも小説やゲーム、アニメなどが大好きなタイプだ。オタクと呼ばれる者達ほどではないだろうが、様々な種類の物を持っていた。その中でも、春香はRPGや、ファンタジー系の小説が特に好きだった。

 だからわかった。いや、わかってしまった。


「私のことはアリーと呼んでください、ハルカさん──。ハルカさんの考えている通りですよ、此処は、貴方のいた世界ではない。異世界です──勝手ながら私達がハルカさんを召喚させていただきました。」


 普通の人ならば、此処で茫然としたり、すぐに元の世界に返せと怒ったりするだろう。

 しかし、春香は違う。

 先も言ったが、春香は小説やゲーム、アニメ。その中でも特に、RPGやファンタジー系の物が大好きだったのだ。そのため───


「あ、やっぱりそうなんですか。ははぁ……まさか召喚ものを自分が体験するなんて……。」

 

 春香の声には自分たちの世界に対する悲しみや、召喚した物に対しての怒りはなく、むしろうれしさや楽しさが隠れ切れていなかった。


「あら、あまり驚かないのですね。」

「いえ、これでも驚いているんですよ?でも、なんて言うか私の居た世界では本とかアニメの世界だったから、自分がこれて嬉しくて。それに、私は自分の世界には未練がないって言うか……。」


 春香は、少し俯きながらもそう言った。

 アリエルが何か言おうとしたとき、扉が控え目にノックされた。


「アリエル様、守護者様のお食事をご用意致しました。」

「どうぞ、開いています。」


 アリエルに言われ、扉から入ってきたのは、小さめの配膳台車を押してくるリーリャと、40代だと思われる、朗らかな男性だった。

 

「失礼します」

「失礼するよ」


 入ってきた男性に対し、春香は誰だろうと疑問に思ったが、アリエルは少し驚いたように目を見開いた。


「お父様、もう来てしまいましたのね。ハルカさんの食事が終わるまで待っていて欲しかったのですが…。」

「ああ、それは済まなかったねアリー。だがすぐに守護者殿と話をしたくてね。」


 アリエルと男性の会話を聞いて、春香は男性が誰かわかり、驚いていた。

 その時、男性がこちらを向いたので、体が緊張により固まった。


「そんなに固まらなくて良い、一度、深呼吸をしなさい。」


 男性に言われた通り、深呼吸をする。それだけでも少し緊張がほぐれた。

 それを見た男性は頷いて、


「うむ、大丈夫そうだな。それでは、私の名を教えておこうか、私はゼクト=レイ・クライン。クライン王国を統治している、この国の王という存在だ。」


それを聞いた春香の、“スイッチ”が切り替わった。


「────お初にお目に掛かります、国王陛下。今回、この世界に召喚されました、冬峰春香──ハルカ・フユミネと申します。このような形での挨拶となり、申し訳ございません。」


 それは、普通の日本人では習うことは無いであろう、このようなかなりの高位の者達に対し使われる言葉遣い。

 体からでる雰囲気は、先程のふんわりとしたものではなく、ゼクトにとって、精鋭の騎士のようなものに感じられた。

 

「ほう…………」

「あら…………」

「なんと…………」


 それを聞いたゼクト、アリエル、リーリャの3人も驚きと感心の籠もった声を出す。


「ふむ、その様な話し方をするとは、そちらの世界で特殊な家に生まれたようだね。」

「は。私の家系は代々、国王陛下のような方々をお守りする盾となる事を仕事としております故。」

「ほう。なるほど……。ああ、言葉遣いは元に戻して良い。今は公式の場ではないのだからね。」


 ゼクト王に言われ、春香は分かりました。と元の口調と雰囲気に戻った。

 そこに感心したようにアリエルが春香に話しかけた。


「すごいですね、ハルカさん。いきなり雰囲気が変わりましたわ。ですが、何故私の時は変わりませんでしたの?」

「えと………それは……その…、気が動転していて……。アリー様が姫だと言われても、思考がまだ追いついていなくて……」

「あら、そうでしたの?てっきり私に今の言葉遣いで話し合うにはまど早いと思っているのかと思いましたわ?」

「い、いえ!?そんな事はなくてですね!?」

「ふふ、冗談ですよ。冗談。」

「あぅ………。」


 頬を朱らめる春香。そんな光景をアリエルとゼクトが微笑ましく見ていると、リーリャが


「姫、ハルカ様をからかわないでください。それよりも、食事が冷めてしまいます。」

「ああ!そうでしたわね。すっかり忘れていましたわ。」


 会話を聞いて思い出したのか、春香のお腹が鳴りそうになる。が、春香は今度は鳴らすまいとお腹の辺りに少し力を入れる。


「すいません。助かります。」


 そう言うと、リーリャはいえ。と微笑みと暖かい視線をこちらに向けた。その時、お腹を多少見られた気がする。

 春香が力を入れていることが分かったのだろう。

 それが分かった春香は少し顔を朱くしながら俯いた。

 リーリャはそれを見て、さらに笑みを深めた。


「ああ、そうだった。食事前だったか。その前に、ハルカ殿。1つ良いかな?」

「あ、はい。何でしょうか。」


 ゼクトの問いに、春香は頷く。

 直後、ゼクトの纏っていた雰囲気が変わる。

 それがわかり、春香もスイッチを切り替える。


「ハルカ・フユミネ殿、貴殿には謝らなければならない。我等が我等の為だけに、貴殿のあちらの世界での生を無碍にし、こちらの世界へ召喚させてしまった。すまなかった。だが、そんな我等の、この国のために、守護者となってくれないだろうか。頼む。」


 そう言って、ゼクトは徐に頭を下げた。

 春香は驚く。王が自分に頭を下げたのだから。

 だが、何となく予想は出来ていた。だから春香はこう返す。


「お顔を上げてください国王陛下。」


 そう言って、ベッドから出る。

 自分の寝間着───寝ていたときに着替えられたのだろう───の襟を正し、ゼクトの前まで歩く。

 そして、春香はゼクトの前で跪いた。


「私、冬峰春香──ハルカ・フユミネ。国のため、民のため、守護者となることを誓います。」


 此処に召喚される前に読んでいた、自分の一番大好きだったファンタジー小説。異世界に召喚された主人公が勇者になって欲しいと言われたときに言った台詞を自分なりに変えて言う。

 

「………そうか。ありがとう。こちらの世界の事については我等が責任を持って支援させてもらう。それがせめてもの御礼だ。」


 ゼクトは春香の台詞に安堵したように笑った。


「さて、私が言いたかったのはこれだけだからね。失礼させてもらうよ。」


 そして、椅子から立ち上がり、部屋を後にしる。

 ゼクトが部屋御出た後、リーリャが配膳台から料理をテーブルに並べていく。

 その様子を見ながら春香はベッドに腰掛ける。アリエルと目があった。

 アリエルは、少しの後悔と自責の念が顔に出ていた。


「本来であれば父よりも私が先に言うべきでしたのに……すみませんでしたハルカさん。」


 落ち込みながらも謝るアリエルに対し、春香は


「いえいえ、いいんですよ。アリー様。最初にアリー様が普通に話しかけてくれたから落ち着くことが出来たんです。他の人が入ってきていたら私、泣いてたかもしれないですし。」


 そう言ってアリエルを慰める。たが実際アリエル以外の者が入ってきていたら春香は泣いていただろう。


「そう言っていただけるとありがたいです。ありがとうございます、ハルカさん。」


 今の言葉で落ち着けたのだろう。アリエルが礼を言ってくる。


「いえ、礼を言われるほどのことをした訳じゃありませんよ。それとアリー様。その…さん付けは出来ればやめていただきたいんですが……」


「あら、そうですか?では、私のことも様など付けないで下さい。そちらの方が私も楽ですから。」


 そんな話をしていると、料理がテーブルに全て並べられた。すべての料理からは出来立てのように湯気が出ている。先ほどは出ていなかったのに。

 その事で疑問に思っていると。アリエルが気付いたのか答える。


「ああ、これは火の魔法を使って暖めなおしたのだと思いますよ。」

「はぁ~。やっぱり魔法もあるんですね~。」


 ほのぼのと、応えた春香だが、内心では大いに喜んでいた。


「それよりも、お食べになって下さい。うちの料理長が作った物なので美味しいと思いますよ。」

「そうなんですか。それでは。頂きます。」


 実際、料理の一品一品が丁寧でとても美味しい物だった。

 春香は、食事を摂りながらも、アリエルとの会話に応じていた。

 そのおかげで色々な事が分かったが、何よりも驚いたのは──


「えぇ!?私、一週間も寝ていたんですか!?」

「はい、そうなんです。おめでとう御座います。」


 何故、一週間も寝ていたのにおめでとうなのだろうか。微笑んでいるアリエルに聞いてみると


「そうでした。加護のことについて説明していませんでしたね。」

「加護。ですか?」

「はい。あちらの世界から召喚される方。ハルカ達は、召喚されるときにこちらの世界の神から加護が送られるんです。」


 つまり、チート能力を2つ手に入れたということだ。

 

「今、その加護が何なのか知る事って出来ないんですか?」

「いえ、知る以前の問題に、今はまだ加護を発動する事が出来ないんです。」


 春香は驚く。小説やゲームでは急に能力を得ても、何となく。や、使い方が分かる等言って最初から使えるのを知っているからだ。


「じゃ、じゃあどうすれば使えるようになるんですか?」

「それは安心して下さい。明日、彼の所で加護の解放をしてもらいますから。」


アリエルの言葉にほっと安堵する春香。だが、新たな疑問が浮かぶ。


「解放……ですか?」

「解放と言うのは、初代の召喚者様がそう言ったからと教えられています。彼は解錠の方が正しいと、言っていましたが……。召喚された時に加護を送られるというのは先程言いましたよね。その加護の内容は、私達召喚した側、更にはハルカの様な召喚された方も分からないのです。その所為なのか、召喚された方がこちらの世界に来た時に自分と加護との繋がりを切り離すんだそうです。まるで、扉を閉めるように。」

「なるほど……。その扉を開けて繋がりを元に戻す事を解放と言うんですね。では、解放をしてくれる彼とは?」

「彼と言うのは先代の召喚者で、今はハルカの様な新しい召喚者の方々にこの世界のことを教えているんです。」


 食事をしながらこの国の歴史や、クライン王国の事など様々な事を話した。

 食事が終わると、リーリャから着替えの服を渡され、アリエルに王城の中の案内をしてもらった。

 着替えの服は白のブラウスに少し長めのスカートと、アリエルの私服だ。アリエルはドレスよりも前のような数多く持っているそうで、一国の姫にしては少し質素ではないかと思ったが


「私は変にドレスを着るよりもそちらの方が楽で良いんです。」


 などと言っていた。

 大広間に執務室、書庫や謁見の間等、様々な所を案内してもらった。

 今は昼過ぎだったので食事をしているということもあり、あまり人に会うことはなかったが、今度会うことになるとアリエルに言われた。

 そうこうしているとすぐに夜になる。

 案内して貰っているときに分かったが、春香が寝ていた場所はアリエルの私室だった。春香はアリエルと場所を変わろうと言ったのだが


「良いんですよ。一週間も寝ていましたし。1日2日使って貰っても構いませんよ。」


 と言われ、結果、アリエルの部屋で春香は夜を過ごした。




 翌日。


 春香は朝から馬車の中で揺られていた。

 昨日アリエルから聞いた、加護を解放するために彼に会いに行くためだ。

 馬車の中には誰もいない。アリエルは付いてきたそうだったが、魔法学院という魔法の学校の様な所に生徒として通っているので、行かなければならないそうだ。

 春香は、手渡された手提げ鞄を膝の上に置き、アリエルの話を思い出していた。

 加護の解放をしてくれる彼はアオイと言う名で、この世界については春香より4年先輩になる。

 当時続いていた、三種戦争を止める為に召喚され、和平という形で戦争を終わらせた六花の勇者の一人。

 今は2代前の召喚者が残した武具店を営んでいる。更に、今回のように新しく来た召喚者にこの世界についての事を教える役もしているとのこと。

 中々に凄い人生を送っているな~。などと思いながら、馬車に揺られて30、40分くらいだろうか。馬車が停まり、御者が着いたと教えてくれる。

 春香は御者に礼を言い、馬車から降りる。すると


「それではハルカ様。失礼します」

 

 御者はそう言って、馬車と共に去っていった。


「え?あ、はい………。って、帰りはどうすればいいんですかー!?」



 と、叫んでみたが馬車はもう見えなくなるほど遠くにいた。先程の速度が嘘のような速さである。

 春香は呆然とそれを見ていたが、すぐに諦めて目の前にある店───武具屋〈オリジン〉を見上げる。

 建物は2階建てだろうか、横幅も広く、外へ見せるショーケースにはゲームでしか見たことがない直剣や弓、盾などが置かれている。

 扉の横にある看板にはこの国の文字で、開店と書かれている。

 春香は店の扉を開け、中に入った。

 

 「ふわぁ………」


 店内は少し広く、棚や壁に剣や槍、弓に、防具などが綺麗に並べられている。

 並んでいる装備を見ながら奥のカウンターに移動するが、誰もいない。遥香は、声を上げてみた。


「すいませーん。誰か居ませんかー?」


 すると、カウンターの奥にある階段からトントンと音を立てながら人が降りてくる。


 「ああ、すいません。少し立て込んでいたもので。オリジンへようこそ。今日は何をお求めですか?」


 そう言って頭を下げてくる少年。

 黒髪で優しい面差しをしており、目は左目が髪によって隠されている。

 身長は175位だろうか、春香より頭半分位大きい───因みに春香の身長は165丁度だ。

 服装は黒い作務衣を着ており、これがかなり似合っている。

 醸し出される雰囲気もかなり優しいものだ──が、春香はこの少年が、自分と同じ人種だと感じた。何故か?簡単だ。自分と似ているからだ。少年から滲み出る、“もう一つの雰囲気”が。

 

「あの……?すいません。ご用件の方は……?」

「はいっ!?あ、すみません!?あの、アオイさんと言う方にこれを預かってまして。」


そう言って、春香はアリエルから渡された手紙を少年に手渡す。


「そうでしたか、ありがとうございます。」


 そう言って少年はアリエルから渡された手紙の封を切り、中身を取り出す。

 呆気に取られている春香を余所に、少年は入っていた手紙を読み出す。


「…………あ~、なるほど……アリーめ、召喚した時はすぐに教えてって言ってたのに……。」


 やがて、読み終わったのか、手紙を入っていた物に戻し、カウンターの壁に掛かっていた、板を取り、入り口に向かう。

 外にあった看板を店内に入れ、手に持っていた板を扉にかけた。

 扉を閉め、こちらに戻ってきて春香に話しかける。


「さて、と。ハルカさん。ここで話すのもあれなので上に行きましょうか。」

「え?……あ、はい!……あの、もしかしてあなたが……?」


 そう聞いた春香に少年は振り返る。 


「ああ、アリー。……アリエル様から聞いてないんですね。俺が武具屋〈オリジン〉の2代目店主で、召喚者の人たちの教師役の蒼依です。」



───これが、《六華の付術士》姫野蒼依と、冬峰春香の出逢いだった───


 

 

 



 

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