うー! にゃー!
お昼休み、私と不入斗さんは知内さんから部室へ呼び出された。
「やあやあ! 今日はカラオケ大会の練習をしようと思って、お二方にご光来願った次第だよ」
「カラオケ大会!? 楽しそうですね!」
「ああ。これで勇くんのハートもガッチリさ」
「はい! 勇せんぱいのハートを握り潰します! 目指せ湘南ひらつか七夕祭り!」
握り潰す!? 何か精神攻撃を仕掛けるつもりなのかな?
湘南ひらつか七夕祭りは、不入斗さんの出身地、神奈川県茅ヶ崎市の西隣、平塚市で七夕の週末に開催される大規模なお祭り。当日は身動きが取れないほどの人混みで、道路や商店街に屋台やお飾りを設置して会場とするため、道路が封鎖されたり、路線バスのルートが変更される。湘南に住む若者がカップルで訪れたいと夢見る一大イベントなのだとか。
「そうだ! その意気だ! ではミュージック、スタート!」
言って、知内さんがミニコンポで流した曲は、うー! にゃー! でお馴染みのあの曲。
「あ、これ聴いたことあります! 麗せんぱいたちの修学旅行に付いてってお友だちの家に泊めてもらった時テレビで見ました! 楽しい感じの曲ですよね!」
「よーし! ならば早速練習だぁ! 麗姫はこの曲知っているよね?」
「うん」
流れているのは、札幌が舞台なのに北海道では地上波放送されていないアニメのオープニング曲。私はヒグマさんと一緒にソファーに掛けながらアニメ専門チャンネルでの放送を楽しんでいる。
「この曲は三人分のパートがあるから、メインは私、このキャラのパートは水菜っち、んで、こっちのキャラは麗姫ヨロシクぅ!」
私のパートは淡々と歌うキャラだ。
結局、この日は部活が終わった後まで女子だけ居残り、歌唱と振り付けの練習に付き合わされた。
夕暮れ時、私は置いてきてしまったライトノベルを取りに行くため、一人で教室へ向かってしまった。
そう、向かってしまったのだ。
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麗が向かってしまった先は、後ほど公開予定の神威編、第67話でご覧いただけます。